【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-105-
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それが何であるか説明すべきではあろう。しかし技術用語は雰囲気を阻害するためここでは略す。また、読者にあっては、レムリアが例のコントローラを耳に装着していることを含み置き願いたい。
レムリアは、まいかちゃんをそのまま甲板の前頭部、船の竜骨が舳先となって天を指向する位置まで誘った。
「本当におとぎ話みたい」
「おとぎ話は、普通の女の子が魔法の力でお姫様に変身」
レムリアは、自らの右手人差し指と中指を揃えて伸ばし、
まず口づけて想いを託し、
その指をまっすぐ天へ向け、月の光を与え、
そのまま腕を伸ばした状態を保ち、円を描くように動かし、
一周したところで、指先をまいかちゃんへと向ける。
その指先の動きを追うように、光が尾を引いて走る。
「今宵この時この愛すべき我が友にひとときの夢の時間を」
指を動かしながら、レムリアはそう口にした。
豪奢なドレスをまとったプリンセスが現れる。
「わぁ」
まいかちゃんは気づき、目を輝かせて自分を見た。
だが足は素足。
「ガラスの靴も」
レムリアは指をパチンと鳴らして靴を取り出し、彼女に履かせ、ティアラをヴェールの上に戴せた。
「素敵ですよ。お姫様」
「嘘みたい……」
まいかちゃんが自らを見回す。
レムリアは額に汗して小さく笑う。彼女の魔法は月の精霊に力を借りるもの。
その力は月光に乗って手のひらに届き、指先の想いを形にして解き放つ。
アルフェラッツ・ムーンライト・マジック・ドライブ。
但し彼女は半人前である。力の強弱は月の満ち欠けに左右され、満月の光の中ではこうして変身すら可能とするが、新月の日中には手品がせいぜい。だから、相原は彼女を呼ぶに当たって月齢を調べたのであり、彼女が手品で子ども達を楽しませるのは、それしかできない時でも可能な範囲で、という逆転の発想の産物なのだ。
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(つづく)
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