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2013年5月

【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-120-

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 行く手の空、水平線の彼方より見え始める青い領域。
 その青みは、次第に周囲を夜の闇から解き放ち始める。
 天文薄明と呼ばれる、夜と朝とのはざま。
 空が闇を、星を失い、次第に青から“空色” へと変わって行く。
 波頭が煌めき、浮かぶ雲が白く輝く。船は今、海面すれすれを超高速で東方へ馳せている。
 海面の向こうが赤みを帯びた。
 水平の赤味から天へ向かい、黄色へ青へとグラデーションが描かれる。赤みは光芒となり、真っ直ぐな光の道と化して水面を伸びてくる。
 その道の彼方。
 赤みが円弧を描いて盛り上がり、まばゆい光輪が、血潮と同じ色の巨大な光の球が、ゆっくりと、しかし堂々と、生まれ出ずるように姿を現す。
 母なる太陽。
 魔法が解ける。
「朝がきたよ。まいかちゃん」
 まいかちゃんは頷いた。
「夜は、明けたよ」
 レムリアは、言った。
 まいかちゃんは頷き、少しまぶたを開き、その瞳を金色に輝かせてから、再び、まぶたをゆっくりと閉じた。
 安心したように微笑を浮かべる。その体から力が抜けて行く。
 レムリアは両の足を踏ん張り、しっかりと彼女を両の腕に抱き、朝日に向かう甲板に立ちつくす。
 腕の中の少女は髪の毛が抜け落ち、あまりにもあまりにも痩せ、肌の色には生気無く、そして目の下には、ひどい隈がどす黒く腫れ上がっている。
 だが、その安らかに眠る笑顔に、レムリアは赤ん坊のような愛らしさを感じた。
 思わず漏れた彼女の微笑みを、地球大気に今日の上昇気流を与え始めた日輪が、白く、強く、明るく照らした。
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-終章-
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 夜の部屋に鳴り響く着信音。
 暗闇の中で、布団の中の男は手だけ伸ばして電話を受けた。
 液晶画面には発信者として“姫”。
「なんじゃ?」
『ごめん、音信不通で』
 レムリアである。別れてより2週間。
「いいよ」
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-119-

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 その理由。眠ったらそれっきりになるのでは。という非常な恐怖。
 夜だからと眠ってしまったら、朝が来るという保証はない。それを本能的に判っている。
 だから恐らく何日も満足に寝ていないのであり、寝不足の表情なのだ。朝が来るまで安心感が得られない。
 心地よい眠り。夢見る子供の表情は、人間の最も幸せな状態を示すはず。
 なのに、それが、恐怖でしかないなんて。
 しかし、今の彼女に、彼女の身体に何より必要なのは、信じて、安心して、眠れること。
 そして、その答えを、レムリアはたった今、狼から得た。
「大丈夫。神様とケンカするから」
 レムリアは囁いた。
「天使があなたを迎えに来ても、私はあなたを渡さない。神様が来いって言っても、蹴っ飛ばして追い返す。
 私が助ける。何度でも助ける。
 お昼にあなたにそうしたように、私は絶対にあなたを神様に渡したりはしない。引き替えに私を地獄に落とすというなら落ちましょう。代わりに私に来いというなら行きましょう。
 それで、あなたが、助かるのなら」
 レムリアは言い、ゆっくりと、トーンと、リズムを下げながら、この船ならではの方法で彼女を睡眠へ誘導し始めた。温度を整え、気流を呼び込み、星の海の中を行く。
 腕の中の少女の身体から、こわばりと震えが徐々に抜けて行くのを感じる。
 あとは、あと出来ることは。
 朝への確信が持てないのなら……。
 船を東へ向ける。
「また狼に会いに来る?」
 レムリアは問うた。
「うん」
「じゃ、魔法を使うから、目を閉じて」
 レムリアは、そっと言った。
「……うん」
 まいかちゃんは頷き、そのまぶたをゆっくり閉じた。
「一緒に言ってね。(私の道は私の力で。あなたの光に守られながら)」
 レムリアはまいかちゃんが復唱するのを待ち、船の速度を、格段に上昇させた。
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(つづく)

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【恋の小話】星の生まれる場所(6)

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 彼女はスピーカの傍らに積んであるフライヤーを紹介するでなく、そう言った。
 それは、このノリ、流れを生かしたいという彼女の考えだと僕は受け取った。
「スマホ貸して。録画しちゃる」
「あ、はい」
 多く創作する人は自分のしたこと細かく覚えているものだが、記録しておけば尚良かろう。
 彼女はたい焼きむしゃむしゃの子ども達に目を向けた。
「ワン、ツー、スリー、フォー」
 それはテンポの良い早い歌。小さい頃夢見た自分へ全速力で突っ走って行きたい。そんな歌。少し自信を失いかけたこともあったけど、そんな自分に気付いた人がそっと背中を押してくれた。頑張れば何かが見えてくる……。
 カシカイタカンペより随分前向きでテンポの良さと相まって受け入れやすいじゃないか。それが僕の印象。テンポが早いので聴衆も手拍子で乗ってくれる。当然それなりの音になるので何事かと更に人が集まる。
 星は引力で次第次第に星間ガスが集まって、やがて高密度になり光り出す。
 僕が思い浮かべたのは図鑑のその辺と、その瞬間が今まさに目の前で展開されたということ。
 夢はまだ続く、みたいな歌詞で、じゃん、とばかり曲は終わった。鋭い切れ味は格好良くもあった。
 お義理では無い拍手が彼女を包んでいた。
 そこまで収録して、録画停止。
「ありがとうございました」
 彼女が頭を下げると、人々は立ち去り始め、否否、近づいてくる男性1名。
「あ、場所待ちですか?すぐ撤収します」
 彼女は僕からスマホを受け取ると、ポケットに戻しながら言った。
「そうじゃありません。自分……」
 出された名刺はこの街駅前ライブハウスの店長氏。要はスカウトである。
 彼女は名刺を受け取り目を真ん丸。次いで店長氏の目線は僕へ。
「あなたマネージャーさん?」
「いえただの聴衆1号」
.
(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-118-

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 その言葉に、まいかちゃんはポカンとしてレムリアを見つめた。
 9歳の彼女にはやや語彙が堅かったかも知れぬ。
 要するに。
「我慢しない。頑張らない」
 レムリアは、言った。
 まいかちゃんの目が大きく見開かれる。
「大事なのは、あなたが、一番、ほっと安心できること。だから私はあなたから離れない。あなたが望むなら、あなたといつまでも」
 レムリアは言い、まいかちゃんに向かって両腕を広げた。
 これだ、という確信がある。
 今のまいかちゃんに必要なもの。
 それは恐怖をぬぐい去ること。
 “そのこと”を考えずにいられること。
 完璧な味方にして、一瞬たりとも目を離さない、全てを託せる存在であること。
 相原の言った通り、それに呪文は必須ではない。むしろ呪文ではそうはなれない。
 呪文ではない。
 頑張れ、でもない。
 守る、こと。
 そして、
「大丈夫、だから」
 レムリアは、言った。
「うん……」
 まいかちゃんがしがみついてきた。
 レムリアは彼女を抱きしめる。
 その目を見つめる。
 月明かりの中ではプリンセスまいか。
 でも腕の中の少女の真実はそうではない。
 憔悴と、疲労と、極度の睡眠不足。
 数日寝ていないと見られる。加えて、病気でただでさえ体力に乏しい身体。一度心停止に陥った身体。
 その身体を離れようとしない間断なき恐怖。
 レムリアはまいかちゃんを“お姫様だっこ”する。
 微笑む彼女。その目の下の色濃い隈。
 揺らぐ瞳。対して抗うように震えるまぶた。
 首を横に振る。否定するように首を横に振り、その目から涙が溢れる。
 ぎゅっと唇を噛む。
「もっと……どこか……」
 振り絞るように声を出し、再び唇を噛む。
 意図的に自分に刺激を与えている。
 レムリアは気付いた。
 今、彼女を捉えているのは強い眠気である。しかし、彼女は眠りたくない。
.
(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-117-

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 去った、終わったという認識が、彼女の意識をどうにもそういう方向に引きずり込んでいるようだ。彼女は、恐らく本能的に、忍び寄るものを、至近まで迫ってきているものを、
 残された僅かを、
 全て、知っている。
「そのあこがれが、シリウスって星を、天空の孤高の狼と呼ばせたのかもね」
 レムリアは言った。会話を途切れさせてはならない。
 空白を作ってはならない。
 次を考える。北極圏に来たついでだ、今度は一足飛びに南極に行こうか……。
 船を南天に指向させ、加速する。伴い、白銀に輝く孤高の星が正面に捉えられ、水平線の向こうから徐々に上がってくる。
「あの一番明るい星がシリウス」
 レムリアは指差した。
 まいかちゃんがその指先に目を向ける。
「そういえばシリウスって、世界のあちこちで、狼とか犬とか言われてるんだよね」
「人類共通の記憶というか認識なんだと思うよ。だんだん野性を失って、野性には無かった地位とか名誉とか、余計なことに悩むようになっていった人間にとって、身近な野性であった犬や狼は、野性の象徴として憧れの存在に変わっていった。だからひときわ輝いて見える星にその姿を見たし、妬ましさが童話の悪者にしたんじゃないのかな。そして……今の狼の彼には、そんな人間たちが、かわいそうに見えたんだよ。病気の時くらい野性に戻ったらどうだって……」
 レムリアは言い、言ったその自分のセリフに、三たびハッとした。
 天啓と呼ばれる洞察が訪れようとしているのを感じている。紡ぎ出される言葉をそのまま口にしてみる。
「人が病気になるのは、人も野性を身体の中に持った動物である証だ。だったら、病気のことは野性に任せればいいじゃないか。変に頑張って人間らしく振る舞う必要がどこにある。
 怖いのも道理。痛いのも道理。必然として存在するモノをなぜわざわざ耐えたり我慢して打ち消そうとする。その我慢自体ストレスだ。発散しなければたまって行く。怖ければ怖い。痛ければ痛い。声に出して何がいけない。人が人である以前に、生き物としてあるがままにあるのはいけないことか?」
.
(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-116-

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 まいかちゃんは叫んだ。私は狼になりたい!
 まいかちゃんの声は残響を持って荒野に広がり、吸い込まれ、小さくなり、消えた。
 遠くの狼から反応があった。
 まいかちゃんに再び笑顔。
『なかなか筋がいいぞ。仲間たちもおまえを歓迎だ。じゃぁ、走れるようになったらまた来いな。おい魔女、まいかは今からオレたちの仲間だからな。泣かしたらお前のこと食ってやる』
 狼はニタッと笑うかのように、唇をよじらせて牙を見せた。
「受けて立ちましょ」
 レムリアは真似して歯を見せて応じた。
 同時にこの狼に会えたことを良かったと思う。いろんな示唆を得られたし、何より再会の約束をした。今のまいかちゃんにとって、それは目標を与えることそのもの。しかも、うまく言えないけれど、単に治れ頑張れというより、プレッシャーも恐怖感も少なくて済む、と感じる。
 最も、実は、真実を敏感に感じ取ったであろう狼の、精一杯の優しさなのかも知れないが。
『いい返事だ。まいかはどうだ』
 狼は問うた。
「うん。走れるようになってまた来るよ」
『よしいい返事だ。約束だぞ。そうだまいか。もし苦しいことがあったら、オレを思い出して吠えろ。まいかがどんなに遠くにいても、オレはお前の声を聞きつけて返してやる。たとえお前が地の果てにいてもだ。じゃぁ、またな』
 狼は再び華麗そのものの跳躍を見せ、併走していた群れに戻った。
 家族で吠え声を上げる。
 まいかちゃんは左舷に駆け寄り、彼らに手を振る。バイバイと大きな声を上げて手を振る。
 まいかちゃんはもう一度、狼になった。
 群れが応じ、森の中へ消えて行く。
「人間も、狼になれればいいのにね」
 まいかちゃんは、狼が去った方向を、ずっと見ながら、言った。
 寂しげな横顔。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-115-

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「いいかも」
『歓迎するぜ。でも今のまいかは走れないな』
 狼のその言葉にまいかちゃんはしょげた。
「……うん」
 うつむき、一瞬にして楽しそうな笑みを引っ込めてしまう。
『あー、だめだだめだ、そんな風になっちゃ』
 狼は言い、怒るようにウーと唸った。
『ひとつ訊くが、まいかの病気、まいかが悩んで治るモノか?」
「ううん……」
『だったら悩むな』
 狼は力込めて言った。
 まいかちゃんがカルチャーショックという顔で、瞬きを忘れ、口をポカンとあけて狼を見る。
 その言葉はレムリアにも少なからず衝撃。
『人間の悪い癖だな。何でも自分でどうにかなると思ってる。だから、どうにかならないと自分が悪いと悩む。お前たちがオレたちと獲物を取り合っていた頃は、そんなこと無かったはずだがね。いいか、治るものは放って置いても治る。でもそうじゃないのものある。そして、そうじゃないものを、どうしようどうしようと考えて、余計悪くしているのがおまえら人間だ』
 レムリアは再びハッとした。
「治らないのを不可能と思いこみ、転じて恐怖となり、身体を縮こまらせ強ばらせ、元気を失わせ、血の巡りを悪くする」
 レムリアは納得して補足した。
『その通りだ。身体はいつでも治ろうと頑張ってる。でも、早い遅いはまちまちだ。重い病気なら当然遅い。悩んでもそこは変わらないだろ。だったら、治らないって幾ら悩んでもしょうがねぇじゃねえか。それどころか、悩めば悩むほどかえって悪くなる。だったら悩むなってわけさ。望む答えはないのに悪くなる。そんなの損だろ?。だったら、その間楽しんだ方がいい。だからオレたちは走って、吠える』
 狼はもう一度吠えた。
 答えが返る。
『ほれ、まいか、今しょんぼりしたろ。そのしょんぼりを怒鳴りつけろ。アホバカ出て行けって。全部出せ』
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-114-

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 レムリアはハッとした。
 しかし、の中身はこれである。狼だから月という直結思考ではない。大声によるストレス発散だ。自分自身調べている段階なので詳細は判ってない。ただ、ストレスは往々にして……ストレスがもたらす危機感からの防衛であろうか……身体を縮こまらせ筋肉を固くさせ、身体全体を肩凝り同様にしてしまう。従って、それは血行に影響を与えるであろうと容易に想像がつく。対し大声を出す行為は、結構な全身運動であり、そうした縮み固まりを解き放つことは確かであろう。
『先にオレがやるぞ』
 狼は言い、率先して遠吠えを披露した。
 頭を天に向け、朗々と、尾を引くように。
 思わず耳をふさぎたくなる。生き物が発したと思えない大きな音声(おんじょう)。
 と、遠く近く、他の狼や、コヨーテも混じっていようか、声が返ってくる。確かに“無人”の荒野であるかもしれないが、“生き物”自体は数多く息づいている。
 レムリアも声を出してみた。あの院長を思い浮かべてばか~っとやってみる。
 この荒野である。誰にも何にも遠慮はいらない。
 誰かがうおーんと返してくれた。別段テレパシーで呼んだわけではない。
 異種動物間で受け入れてもらえているようで楽しい。レムリアは思わずまいかちゃんに笑顔を作る。
『さぁ、お前の中の嫌なもの、デカい声にして捨てちまえ!』
 狼に促され、まいかちゃんは声を発した。
 それは彼女の、心のありったけを託した絶叫そのものであった。
 うわー、と、バカー、と、恐らく、いやー。
 以後しばらく、3人(!)で交互に一緒に白銀の荒野に声を上げる。
 まいかちゃんは笑った。
「おもしろい。狼になったみたいな気持ち」
『少しすっきりしたか?』
「うん」
『じゃぁ次は思い切り走る。オレたちならな。これからオレんとこへ来るか?』
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-113-

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『お前はどこに行くんだい』
 その問いにまいかちゃんの表情が曇る。
『どうした。元気が無いじゃないか』
「病気なのあたし」
 まいかちゃんは、どうにかそれだけ言った。
 話す相手を間違えたか……とレムリアは一瞬思った。まいかちゃんの今の状態に対し、酷寒の地を生き抜くバイタリティ溢れる野性。
 すると、予想もしなかったことを狼は口にした。
『そっちに行ってもいいか?』
「えっ」
 レムリアは、まいかちゃんが肯定も否定もする前に、船の高度を下げた。
 それは直感である。この狼に出会ったことは何か意味がある。
 船体を傾け、左舷を地表へ向けた。
 狼が白い大地を蹴る。
 跳躍し、甲板へとドンと降り立つ。その全身は深々とした灰色の毛で覆われ、付着した雪氷が甲板に散る。
 まいかちゃんが思わず後ずさる。
 現生の狼は、一般の家畜大型犬よりも更に一回り大きい。体重も彼女たちと同等以上は優にある。後足で立ち上がれば、恐らく見上げるほどはあろう。実は昔話に出てくるニホンオオカミは小型種なのだ。
 そのサイズと纏った野性のオーラは、最も野性が退化した人間と、正に対極に位置する存在といえる。
 それは狩る者と狩られる者との対比そのものであり、たとえ人間であれ、否、人間ですら、気圧される、迫力に圧倒されるような感じを受けても不思議ではない。
 狼は、まいかちゃんに生じたであろうそんな気持ちを、それこそ狩る者の野性で敏感に感じ取ったようだ。
『怖いか。悪かったな。でもお前に力を感じなくて、つい、な。名前は』
「まいか」
『そうか。まいかか。じゃぁいいかまいか。あれに向かって吠えろ』
 あれとは満月である。いかにも狼の発言。しかし。
「吠える……」
『そうだ。目一杯の、お前が出せる目一杯の声出して吠えろ。ありったけでっかい声でな。スッキリするぞ』
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-112-

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 甲板を浮遊する金色の粒子達に、命じるように指を出す。
 粒子達が輝きを潜める。金色の粒子達は甲板を淡く照らしていたので、甲板は真っ暗。
 そして。
「オーロラ……だよね」
 まいかちゃんが気付いた。
 風に舞うカーテンさながら、極光が種々色を変えながら天から舞い降り、視界を横切り、揺れ動く。
 音もなく。
 眼下は湖であろう、鏡のような氷面に自らの姿を映し、静かに舞う光のカーテン。
「こんな綺麗な眺めがあるなんて。あ、あれは何?」
 まいかちゃんが気付いたのは湖の傍ら、雪原を行く数頭の動物。
「犬?」
「いやあれは……狼」
「狼!」
 驚くまいかちゃん。レムリアは頷くと、船を狼たちに近づけ、速度を合わせた。
 雪原を蹴立てて走って行く、5頭ほどの小さな群れ。
「お話ししてみる?」
「えっ!?」
「魔女だもの」
 レムリアは指を振るった。
 光のリングが飛び、砕けて粉となり、狼たちに降りかかる。
 リングを投じたその後も、レムリアの指からは光が尾を引き、まるで残像のように軌跡を描く。
 それは魔法がフルパワーであることを意味する。彼女は今、ありったけの能力をもって、まいかちゃんに“マジック”を披露している。
 さながら、この一晩に全てを凝縮するかのように。
『珍しい物に乗った人間がいるな』
 男の声で、そのように、まいかちゃんには聞こえたはずである。
 レムリアがテレパシーを仲介している。動物とのコミュニケーションは魔女のイロハ。従って、今の魔法は狼に対してというより、まいかちゃんに使った、と言った方が正確。
「どこへ行くの?」
 まいかちゃんは訊いた。
『食える土地までさ。一族の命を繋ぐ責任がオレにはあるからね』
 走りながら答えたのは群れの先頭、と知れる。
 群れのリーダー。専門家が呼ぶところのアルファ。
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(つづく)

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【恋の小話】星の生まれる場所(5)

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 それは彼女の喉、気道がストレスで縮こまっている。僕はそんな気がした。
 一策。
「え~通りすがりの皆様、これからたい焼き屋アルバイトの娘あやなちゃんが歌います~!」
 風俗の呼び込みよろしく周知。
「ちょっ……」
 彼女驚くが気にしない。
「先着2名様には焼きたてたい焼きプレゼント!」
 以上ブチ上げたら……小さい男の子と女の子が走ってきた。
 その後ろから母親らしき女性が慌てて。いやいやそれも大事なリスナー。
「あやなちゃんアニソン幾らか知ってるか。“ワルキューレ”とか」
 それは北欧神話に範を取った幼女向けの正義ものテレビアニメ。女の子が正義の味方ワルキューレに変身して敵を倒す。
「あ、ええ、はい」
 ショルキーがオープニングを奏で出し、子ども達は曲が判ってノリノリ。
 追いついてきた母殿は少々不機嫌。余計なことをってなところであろう。
 説明責任。自分は彼女のサクラでたい焼きは本当に焼きたてだ。裏切ることになるので上げるモノ上げて下さい。
 袋の中のホカホカを確かめさせたら、母殿は2匹は多いと一つだけ取った。
 歌はサビに入って子ども達が振り付き踊り。微笑ましく眺める通りすがりの大人達。
 と、気付いたこと。あやなちゃん何て楽しそうに歌うんだ。
 これが彼女本来の持ち味なのだろうと思う。知ってる歌好きな歌。それなりレッスン受けてりゃそれなりの出来になる。それは多分、当面の目標。
「あなたも誰かのワルキューレ!」
 曲の締めのセリフが決まったところで拍手が沸いた。
 そこで“聴衆”が付いていることに彼女は気付いたようだ。
「ありがとうございます。私あやなって言います。歌手目指して勉強中です……えーと即興で浮かんだ曲を歌いたいんですけどいいでしょうか」
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-111-

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 但し。
「すごい素敵……あ、あ、消えちゃう」
 まいかちゃんは船から身を乗り出した。レムリアは背後の月に目を向け、その姿が雲に隠され始めたと知った。
 月の光は太陽に比べ非常に弱いため、月によるこの種の光学現象は、非常に不安定だ。
 そして、今のまいかちゃんに“消える”という現象はあまりいい影響を与えるとは思わない。加えてレムリアの変身能力は月明かりの中だけ有効。月が隠されたら、この姫君の変身も消えてしまう。
 それは夢から覚めるようなもの。できれば避けたい。
「また別の時に来ましょう。姫を待ってくれている場所は他にもあります。次は光のカーテンです」
 レムリアは言い、船を浮上させつつ、北へ動かし始めた。
「光のカーテン?」
「そうです。今度はあの星が真上に来たらお知らせ下さい。あの星は光のカーテンが現れる位置を示します」
 あの星、と今度レムリアが指差したのは北極星である。それが真上に来るということは、ほぼ北極に達することを意味する。
 層状に広がる薄雲を突き抜け上へ出る。雲自体が水面であるかのように、船が高速で突っ走る。空気の温度が下がるのに応じ、船体を包む金色の粒子が増加する。ちなみに、この粒子の圧力を一種のエアカーテンとして働かせ、甲板上の気圧や温度をコントロールしている。
 天空の星々がぐいぐいという勢いでダイナミックに動く。そして、雲による海の彼方には、金色の月。
「真上ですよ」
 それを聞いてレムリアは船の速度を落とした。
 下へ降り、見える地上は白い平原である。但し針葉樹が所々に森をなし、北極海氷ではなく、ツンドラ領域であると知れる。
 レムリアはアラスカに来ていると承知している。
 周囲100キロほど人家はないはずだ。見られる心配はないので、船の高度を雪原近くまで一気に下げる。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-110-

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 非常な高速。
「どこへ」
「月の架け橋を眺めに」
「え?」
「あの赤い星が、見上げる位置に来たら到着。あの星は、月が橋を架ける位置を教えてくれる」
「星が教えてくれるの?」
「そう」
 とはいえそれは魔法ではない。あの星、とレムリアが指差したのはさそり座の主星、赤く明るいアンタレスである。それが頭上に来るということは、赤道近くまで移動したことを意味する。
 次第に空気が暖かくなるのを感じる。
 さそりが天頂を這う頃、レムリアは船の速度と高度を落とす。
 昼間であれば、珊瑚礁特有のブルーグリーンの海原であり、緑に覆われた山が双つ、並んでいるように見えたであろう。
 しかし今の時間、その二つの山の間に、月を背にして目を向けると。
「うわ……」
 まいかちゃんが、あんぐりと口を開けた。
それは確かに“架け橋”である。淡い白色を呈するアーチがぼんやりと空中にあり、二つの島をちょうど繋ぐような形になっている。
 ただ、その淡いアーチは、よく見ると、いや時々、色が付いて見える事がある。
 その色の付き方は。
「これ……ひょっとして、虹?」
 まいかちゃんが言った。
「そう。月明かりの虹、月虹(げっこう)、英語でムーンボウ(moonbow)」
「ムーンボウ……」
 まいかちゃんは響きを楽しむかのように、その名を口にした。
「なんて淡くて、はかなくて……きれい……」
 まいかちゃんは呟き、引き寄せられるように自らレムリアの腕を離れ、降り立ち、舳先へ歩いた。
 そのまま見入る。レムリアはそんな彼女を見つめながら、次に行く場所を考える。船速が船速ゆえ、対象は全地球と置いて良い。ちなみに、この船を用いる方のレムリアの活動は、彼女の魔法が最大能力となる時期を狙い、満月に行う。だから逆に、月によるこの種の現象がどこで見られるか、レムリアはそれなりに把握している。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-109-

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 心理精神が、身体の状態に影響を与えるなら、そのような、恐怖にさいなまれる精神状態が、病気に対して良い作用をもたらすわけが無い。
 一国の王女を呼びつけてくれという、端的には無茶至極の要求も、必死さの表れとするなら、むしろ当然。
 彼女としては、それなら可能性がある、と言われたのだから。
「今日は、私のことを呼んでくれて、ありがとう」
 まいかちゃんが少し落ち着いたところで、レムリアは囁いた。
「聞こえたよ。私に魔法を掛けて欲しいって。だから、私飛んで来た。この船で飛んで来た。私のこと必要と思ってくれて、とっても嬉しいよ」
「まいかも嬉しい……」
 まいかちゃんは小さく言った。
「夢じゃないよね、これは、夢じゃないよね」
 尋ねるまいかちゃんにレムリアは頷く。何度も頷く。
「どこにも行かないよね」
「どこにも行かない。ずっといるよ」
「もう終わりじゃないよね」
「あなたが望むなら、ずっと飛ぶよ」
 全て肯定する。
「良かった……」
 まいかちゃんが、一応の、と書けるか、安堵を含んだ笑みを浮かべる。
 その表情には憔悴が見られる。精神を鼓舞し続けた事による疲労、間断なく襲ってくる恐怖がもたらす心理的ダメージの蓄積、明らかな寝不足。
「ずっと、ずっと、あなたと飛んでいたい!」
 思いのたけをぶつけるようなその言葉に、レムリアはまいかちゃんを抱きしめ、そして抱き上げた。
 軽い身体。病気との闘いで文字通りすり減った、何という軽い身体。
 神様、恨みますよ。
「大丈夫、あなたが望むなら、ずっとこのまま」
 レムリアは耳元で囁き、まいかちゃんを抱きかかえたまま、船の針路を南方に取った。 加速させ、その速度をPSCの許容上限に持って行く。列島の海岸線が遥か後方へと去り、プラネタリウムの早送りのように、星空が目に見えて動く。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-108-

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 その手をレムリアはそっと握る。言うまでもなく、まいかちゃんに今“確固たるもの”はない。たった今も、この先も。それが彼女の心理を非常に不安定なものにしている。
「大丈夫。私はどこへも行かない。私を呼んでくれたのはあなただから……」
 レムリアは力強く言った。
 まいかちゃんに笑顔が戻る。笑顔を作りながら、その目から涙が流れる。
 そしてレムリアにしがみつく。しがみついて、大きな声で泣き出す。
「ずっと我慢してたんだね。そうだよね。一生懸命頑張ってきたもんね」
 レムリアはまいかちゃんを抱きしめる。彼女の意識を流れる数々のフラッシュバックがテレパシー能力に補足され、まるで自分の体験のように感じられる。
 レムリアは涙を抑える。必死になって涙をこらえる。
 疲れ切ってしまった彼女の心を思う。頑張って、我慢して、闘って……病気の子どもに掛けられる言葉として、圧倒的に多いのはこれらではあるまいか。
 親として、大人の立場として、必死に励まし応援する気持ちはよく判る。
 でも、子どもの側からすれば、我慢・頑張るより以前にまず、病気に対する恐怖が、暗闇の斜塔のように立ちはだかっているのではないか。
 今にも倒れ掛かりそうに立っているのではないか。
 気を抜けば、目をそらせば、その斜塔は倒れてくる。
 のみならず、足下の左右も、背後も、底知れぬ深い闇。
 逃げ場はない。
 その状態で、その状態のまま、じっとそこに踏みとどまることを要求される。
 常に全力を発揮して対峙していないと、全てが終わる。
 生まれてより十指に満たない年数しか生きていない子ども達にとって、青春も恋も知らぬ、“大人”の時空が遥か未来という子ども達にとって、それがどれだけ、どれだけの絶望と恐怖をもたらすか。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-107-

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「上も下も星だね」
 まいかちゃんが言った。
 彼女の言う通り、この高度からは、地の灯火は星に覆われた如く。他方天空の星々は、都市から巻き上がる煤煙に阻害されることなく、夥しい数の煌めきとなる。そして、その夥しい煌めきの中にあって、月明かりは戸惑うほどに鮮烈だ。
「少し飛びましょうか」
「うん!」
 レムリアの提案にまいかちゃんは一も二もなく頷く。レムリアは指を舳先に向け、船に加速を命じる。
 西へ向かう。光による日本列島の輪郭線は途切れることなく、地図さながらの形を夜闇に描いている。深夜帯に地域・国家が放つ光は、豊かさと幸せの象徴だ。すなわち、潤沢にエネルギーを消費することが可能であると共に、襲い来る敵から身を隠すため、闇に紛れる必要がない。
「綺麗……」
 遥か下方を飛行機が行く。欧州へ向かう夜間便である。亜音速の夜間飛行を軽々と抜き去って行くことで、この船の速度が知れる。
 12分で地球を一回りすると言ったら、驚異を感じるであろうか?
「プリンセスまいか」
 レムリアは、マストより舳先へと配されたロープを手にして、主賓に問うた。
「何でしょうプリンセスメディア」
「これよりこの船を、姫がぜひにと思う地へ差し向けたいと思います。どちらか、かねてより行きたい、見たいと思っていた場所はございますか?」
 すると、まいかちゃんはすぐには答えず、レムリアの顔をじっと見つめた。
 まるで迷子にでもなったかのような、不安そうな表情である。事態が事態ゆえ、ここに来てようやく夢との疑いでも持ったのであろうか。
 まいかちゃんは、レムリアの元に歩いてきた。
 ガラスの靴で、少し不器用に、コツコツと甲板に音を立てて。
 心配そうな顔で、まいかちゃんが自身を見、レムリアに手を伸ばす。
 まるで、現実かどうか確かめるように。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-106-

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 ちなみに半人前と書いたが、それでも少し前、相原が船に乗り組んだ時には、変身ですら全身が脱力するほどの精神集中と、手順に沿った儀式と呪文を要した。相原が言った通り、比して成長していると言えようか。
「さぁお姫様、今宵はようこそ私どもの船へ。これよりひととき、姫を夜の空の旅へとご案内申し上げます。まずは姫の国を遥か高みよりどうぞお目にお収め下さい」
 レムリアは言い、頭の上に腕を持ち上げ、くるりと円を描き、その動きに応じて現れた金色に輝くリングを、船の舳先へと投げた。
 リングが舳先に投げ輪のようにひっかかり、くるくる回り、周りながら光の粉を放ち、バラバラに散ったようになり、舳先の部分全体がキラリと光る。
 船が動き出す。
「あ……」
 まいかちゃんが慌てて舳先部分の木(実際にはカーボンナノチューブ)の柵に掴まる。
 船はゆっくりと浮上を始める。上がって行く船を母親が病室から見つめ、二人は母親に手を振る。
 浮上からゆっくりと前進のベクトルを混ぜて行く。前へ行きつつ、上へ昇りつつ。
 金色の光の粒子が吹き上がるように甲板周囲に現れ、海行く船から上がる波しぶきのように、船の周囲を覆う。
 視界が広がって行く。
 病院が小さくなり、周囲に広がる森の中で月に照らされる様子が見え、森の向こうの市街地が目に入る。道に沿う街灯が縦横の模様を描き、やがてそれが網の目となり、一つに繋がり、光の絨毯と化す。
 光の絨毯が遠くに広がる。高層ビルを擁する都会の灯火が銀河中心のように華やかに光を放ち、やがて、神奈川から千葉にかけての海岸線が、光に彩られて浮かび上がる。
 甲板上は風が緩やか。夜間の屋外であり、季節と高度を考慮すれば凍えるほどでもおかしくない。しかし、その穏やかな風はむしろ暖かい。無論、船の能力による小細工の結果である。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-105-

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 それが何であるか説明すべきではあろう。しかし技術用語は雰囲気を阻害するためここでは略す。また、読者にあっては、レムリアが例のコントローラを耳に装着していることを含み置き願いたい。
 レムリアは、まいかちゃんをそのまま甲板の前頭部、船の竜骨が舳先となって天を指向する位置まで誘った。
「本当におとぎ話みたい」
「おとぎ話は、普通の女の子が魔法の力でお姫様に変身」
 レムリアは、自らの右手人差し指と中指を揃えて伸ばし、
 まず口づけて想いを託し、
 その指をまっすぐ天へ向け、月の光を与え、
 そのまま腕を伸ばした状態を保ち、円を描くように動かし、
 一周したところで、指先をまいかちゃんへと向ける。
 その指先の動きを追うように、光が尾を引いて走る。
「今宵この時この愛すべき我が友にひとときの夢の時間を」
 指を動かしながら、レムリアはそう口にした。
 豪奢なドレスをまとったプリンセスが現れる。
「わぁ」
 まいかちゃんは気づき、目を輝かせて自分を見た。
 だが足は素足。
「ガラスの靴も」
 レムリアは指をパチンと鳴らして靴を取り出し、彼女に履かせ、ティアラをヴェールの上に戴せた。
「素敵ですよ。お姫様」
「嘘みたい……」
 まいかちゃんが自らを見回す。
 レムリアは額に汗して小さく笑う。彼女の魔法は月の精霊に力を借りるもの。
 その力は月光に乗って手のひらに届き、指先の想いを形にして解き放つ。
 アルフェラッツ・ムーンライト・マジック・ドライブ。
 但し彼女は半人前である。力の強弱は月の満ち欠けに左右され、満月の光の中ではこうして変身すら可能とするが、新月の日中には手品がせいぜい。だから、相原は彼女を呼ぶに当たって月齢を調べたのであり、彼女が手品で子ども達を楽しませるのは、それしかできない時でも可能な範囲で、という逆転の発想の産物なのだ。
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(つづく)

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【恋の小話】星の生まれる場所(4)

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 例のピラミッドは別のユニットが演奏中。ギターとヴォーカルで会いたいよ~会えないよ~系列。
「音程さておき詞がありきたりなんだよな。みんな同じ事しか言わないというか、ボキャブラリーが貧困すぎる。最近の女の子とか超とヤバイとカワイイしか言わねぇし」
「ごめんなさい」
 思わず愚痴ったら脇から小さい声。
「ああ、あやなちゃんのことじゃないよ」
 見ると、彼女はスマホでフリックフリック。言ったことをメモしている。
「……でも、私も似たようなもんだなって。だけどどうしたらいいかなって。本読めとか良く言うけど今更」
 彼女は作家の名前を幾らか挙げた。ノーベル賞候補になるとかならないかの大家、推理小説、ライトノベル。それらは本屋の広告、平台積みで良く見る名前。
 いずれもするりと読める。比してワンフレーズに情熱込める歌詞に対してはどうだろう。今の彼女に必要なのは速効性があって語彙力が付くモノ、と僕は理解した。ならば。
「短歌だ」
「え……」
「百人一首覚えろって事じゃ無い。今の言葉で綴られたモノもあるのよ」
 いわゆる現代短歌で知られた名を幾らか挙げる。
「この辺なら聞いたこと位あるでしょ。三十一文字。そこから色んな色んなことが考えられる思い浮かぶ。そのためには応じたいろんな言葉を駆使する。例えば夜明けっていっても暁とか早暁とか薄明とか言い換えると空の色が変わる。その辺と心象を絡めたりしてるのが短歌」
 彼女は頷いていたが、スマホでフリックの前に動き出した。その会える会えないバンドが拍手パラパラ終わって撤収開始。
 配線を手伝う。アンプスピーカーにショルキーとマイク繋いで音量調整。
 音出し確認OKでたい焼き片手に聴衆側へ。
 彼女がショルキー構えて大きく一息。引きつるほどの緊張。
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(つづき)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-104-

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「いえ、いいんです。いいのです。あなたは、今こうしてここへ、まいかの元へ来てくださった。王女様であるあなたが、世界の、幾千幾万の子ども達のお姉さんであるあなたが……」
 言葉にならない。母親は大きな声を上げて泣いてしまう。
 レムリアはそのはるか年上の女性を抱きしめ、抱きしめつつ、まいかちゃんに手を伸ばす。
 まいかちゃんは満面の笑みで自らに伸ばされた手を握る。
「やっぱり魔法使いだったんだ」
「ごめんね。お昼は、あなたに充分に楽しんでもらえなかった」
 まいかちゃんは首を横に振った。
「ううん、ううん、まいか、魔法で助けてもらったよ」
「マジックをまだ見てもらってないもん。……お母様、今宵、彼女をひとときおとぎ話の世界へ招いてもよろしいでしょうか」
 尋ねた母親は、涙で何も声に出すことができない状況であったが、それでも、問われたからにはと思ったか、ハンカチで涙を拭い、しゃくりあげつつ、レムリアに目を向けた。
「ええ。ええもちろん。あなた様のお心のままに。まいかを、まいかをお誘い下さるというのでしたら」
 レムリアは、ゆっくりと頷き、母の肩に回していた腕を解いた。
 両の手でまいかちゃんの手を取る。
「立って、歩けるかな?」
「うん……。わぁ、この船に乗るの?ピーター・パンみたいに?ウェンディみたいに?」
「ネバー・ランドには行かないし、私に、翅はないけどね」
「じゃぁ、影じゃなくて翅を縫えばいい?」
 まいかちゃんの瞳が輝いている。今、彼女は確かに、物語の魔法の国に、遊びに来たヒロイン。
「さぁ、船が出ますよ。急いでください」
 レムリアは、まいかちゃんを、窓から外へと引っ張った。
 そこは、船の甲板。
 月明かりが落ち、その白銀の光で満ち、それと同時に、金色の光の粒子と感じる物が、煌めきながらふわふわと舞っている。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-103-

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 母は顔を、窓に向けた。
「まいか……」
 母は、その光景を、揺らめく瞳で捉え、娘の名を呼んだ。
 まいかちゃんは、ゆっくりと影を追い、目線を動かす。
 窓の外。
 女の子がそこにいる。月を背後にし、放つプラチナ色の光に照らされて、女の子の姿はシルエットとして母子の視界にある。ショートカットの娘であり、その髪が緩くなびく。
 髪に続いて女の子の身もゆらりと動く。女の子は不動の場所にいるわけではない。何かに乗り、窓の外に浮いている状態。
 船。
 深夜の病院。窓の外。
 月明かりの中、明らかに空中と思われる場所に、船が浮いている。
 空飛ぶ船に女の子。
 童話世界さながらの超絶の光景が母子の眼前で展開している。その映像の鮮烈さと衝撃は、常識による否定の開始を許可しない。夢かと問うことすら認めない。ただ、その光景を目にしているという認識のみが存在し、母子の心を捉えて離さない。
「こんばんは」
 シルエットの少女が声を出した。
 その声に、まいかちゃんの瞳には、自ら光を放っているような輝きが宿った。
 花が咲くように形作られる笑顔。
「お母様におかれては初めまして。わたくしは、メディア・ボレアリス・アルフェラッツ」
 少女は、名乗り、胸に手を当て、頭を下げた。
「メディア……だってそんな魔法なんておとぎ話……」
 母親は言ったきり、手を口に当て、言葉を失う。
 震えわななく肩、ぼろぼろとこぼれ落ちる涙。
 王女メディア……レムリアは、窓より病室に降り立ち、母の手を取る。
「お待たせをしてしまいました。まず先に、お招き下さったお母様に、ご挨拶を差し上げるべきでした。昼間はすれ違いになってしまいました」
 片膝を突き、母を見上げ、お詫びの言葉を口にする。
 母親は首を横に振る。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-102-

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「まいか……」
 まいかちゃんは母の呼びかけに答えず、両の手で胸元を押さえ、身体をぎゅっと、胎児のように、小さく丸める。
 目で見て変化が判るほどに、彼女の身体が小さく縮こまる。
 激痛である。激痛に対する生物としての反射で、体中の筋肉が縮み、固くこわばり、身体全体を縮こまらせたのだ。
「痛い。やっぱり痛いよ。すごく、すごく痛いよ。まいか……死にたくない。死にたくないのに」
 母は身を寄せ娘を抱きしめる。言葉がない。痛みという現実を、言葉だけで消すことは出来ない。抱きしめ、さするより他に、出来ることは何もない。
 まいかちゃんは歯を食いしばり、まぶただけ辛うじて開き、その眼(まなこ)にティアラの輝きを収めようとする。それは目を閉じることを頑なに拒否し、溢れ来る光にだけ目を向けようとしているかのようである。確かに、目を閉じること、目を閉じた姿が想起させるもの。そして、訪れる闇の向こうに繋がる絶望。……想起すらしたくないであろうそれらは、目を閉じれば、現実の恐怖として、襲ってくる。
 その時だった。
 ティアラの輝きの源である、月の光を、何かが遮った。
 影であった。
 影が窓よりすっと入り込み伸びて来、ティアラを月から隠してしまった。但し、雲ではない。
 伸びてきた影は人の形をしている。風に揺らぐショートカット、女の子のシルエットだと判る。
 まいかちゃんはゆっくりと、震えながら母親に目を向け、笑顔を作った。
「おかあさん、あのね、魔法の国のお姫様、来てくれたよ」
「え……」
 母親は、瞠目を我が子に向けた。
 死に直面して精神状態に、と思ったのであろう。
 しかしその時。
 気流が、病床の母子を捉えた。
 窓の向こう、開いていれば聞こえるはずの、遠い都市部のざわめきが、今確かに耳に届いている。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-101-

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 女の子は目を開けている。その瞳には、月光に含まれない種々の色の光がきらめく。
 種々の光をもたらすもの。女の子の目の前、シーツの上に置かれたティアラ。
 まいかちゃんの病室である。
「きれい……」
 まいかちゃんが口にしたその言葉は、消灯を過ぎて何度目かになる。散りばめられたジュエルは国力を反映してか決して大きくはなく、また数も少ない。しかし、月光はブリリアントカットを経て幾つかの光に分解され、陽光と異なるスペクトルで、小さな虹の王国をシーツの上に作っている。
「これ、王女様が魔法で出してくれたんだよ。まいかのためにって魔法で出してくれたんだよ」
「そうね」
 答える母親の目から、雫が筋を描いて伝う。
 “魔法”というフレーズに娘が全てを託し、僅かな光明を見いだそうとしているのが如実に判る。その姿を見ることは、親として、不憫でならないであろう。
「まいか助かるよね」
 まいかちゃんは突然の動作で、母親を振り仰ぎ、尋ねた。
「え、ええ」
 母親は慌てて涙を拭く。
「だって一度助かったし。お姫様が来て魔法で治してくれたし」
 まいかちゃんが自分に言い聞かせるように言う。
 その顔が歪み、僅かに震え、歯を食いしばる。
 痛いのである。痛みが強く襲ってきたのである。
 その痛みは身体を蝕み、死に追いやろうとするものを象徴している。その自己主張は、魔法の国を信じる心に、震撼に値する恐怖を招き寄せる。今の彼女に、9歳という年齢相応の子どもの心に、それと正面から向き合う強さを求めるのは酷であろう。健気な心ができることといえば、それを誤魔化し自らを鼓舞するために、意識をティアラと、それをかぶせてくれた年上の娘へと向けること。文字通り一心に意識を向け、痛みをやり過ごそうとすること。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-100-

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「そういうこと。命に制限やこだわりは必要はあるまいて。使える物は皆使う。でね、忘れる前にこれ」
 レムリアは相原に向き直ると、銀色のそれに小首を傾げた。
「ウチのカギだ。オレがいなくても君は来てくれて構わない。ウチは君に対してフルオープンだ。我が家は我が家の全てで君の全てを受け入れる。何も隠せず、制限を設けず、全開でね。さて何も言わないのもアレなのでヒントだけ。さっきのサービスエリアは何の形をしていたでしょう」
 相原はカギをレムリアに握らせ、手を離した。
「無制限全開だ。フルムーンだしな」
 レムリアの目がそれこそ“全開”になった。
 洞察を得たのである。相原を見、月に目を走らせ、セレネの手からPSCユニットを受け取る。
 カギをウェストポーチに収め、PSCを耳に押し込む。
 勢いのままにという感じで相原に抱きつく。否、しがみつく。
「ありがとう……」
 相原はよろめき、頬を赤くし、それを見てセレネがクスッと笑う。
 相原はセレネにVサインをして見せた。
「さぁもう行きな。……夜通し待機してるから、何かあったら電話してらっしゃい。出来る限りの回答を用意する」
 相原はショートカットの耳元に囁いた。
「うん」
 レムリアは頷き、笑顔となり、来た時と同じように、元気よく手を振って、スロープを上がった。
「またね!」
 相原は腕組みのまま頷く。
 次章、彼は登場しない。彼女の心理に、少し詳しく触れてみようか。
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-10-
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 月明かりの病室。
 照明は用いていない。消灯時間をはるかに過ぎているからである。満月の灯りだけ、であるがしかし、室内は充分に明るい。
 ベッドにはバンダナを頭部に巻いた女の子の姿があり、うつぶせ気味に横たわっている。そして、母なる人の手のひらが、背中から腰の辺りを、ゆっくりと、眠くなるほどの緩やかさでゆっくりと、優しく、さすっている。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-099-

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 相原は手を頬からそっと離し、しゃがみ込み、レムリアを見上げた。
「君に出来ることは、呪文を口にするだけかい?」
 相原は、レムリアの指先を持った。
 レムリアは相原に目線を降ろし、しかし何も言わない。
 考える気も、問いに答える気も、どちらもない。そういう気力が生じないのであろう。
 精神的に疲弊している。
 ショックを受けた精神は、視点を切り替えるということが往々にして難しい。
「ちがうよな。そうじゃないはずだ。まず喜んでもらう。今回最初に決めたのはこれのはず。迷うなら原点に戻ろうよ。君にしかできない、君だからこそ出来ることは、呪文唱えることだけかい?そのためには忍び込むしか方法がないのかい?」
 レムリアは否定も肯定もせず、ただ唇を噛む。
 と、その背後、昇降スロープの上に人影。
 件の美女である。その名……この船では互いをコールサインで呼び合うのでそれを書いておく。セレネという。
 レムリアは振り返る。
「副長……」
「PSCが耳栓型に改良されたので持ってきましたよ」
 副長セレネは言い、確かに耳栓様の小さな機器を手のひらに載せてレムリアに示した。
 PSC:Psychology-direct-reflection Synchronization Control-unit。心理同期制御とでも訳すか。それは端的に言えば思った通りに、思っただけで、この船を動かすシステム。従前……相原が乗り組んだ時はヘッドホン型で、何本ものケーブルで船の制御コンピュータと接続して用いるタイプであった。
「そして今夜は満月です」
 副長セレネが微笑を浮かべる。その微笑はエキゾティシズムに溢れ、古代の女王を思わせる。
 相原は頷くと、立ち上がり、はんてんのポケットから銀色の輝きを取り出した。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-098-

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「ずるい言い方」
「仮に今ここで、君がこの月の光を利用して、俺をスーパーエンジニアにしたとする。俺は完璧な製品を作れる能力を得たとする。でもそれ、ブレイクスルーのための新しい発見や、苦労して生み出したって満足感一切無し。答え持ってても方程式がないのと一緒」
「オトナって嫌い」
 レムリアは口をとがらせ、赤い目で相原を見た。
 相原は自分のドッグの残りを全て頬張って、
「仰せごもっとも。でもね。自力でプロセスを踏む事によって初めて身に付くってことも多いのよ。その人ならではの得意な分野、能力であれば尚のことね」
 レムリアは唇をタコよろしく尖らせ、不平をあからさまに表明。
「そういう言い方って、答え知ってる人間ならではの余裕の口調だよね。ねぇ、判ってるなら教えてよ。どうすべきか、見当付いてるんでしょ?ずるいよ。私こんなに悩んでるじゃん……」
「魔法使いに相応しい見当なんか思いつくかい。まだ時間はあるだろ?。ギリギリまで考えてごらんな。紡ぎ出す回路っては脳を働かせないと作られないんだよ。よく知ってるでしょうが。はい帰りましょう。実言うと寒い」
 相原は言うと、くしゃみを一発飛ばした。
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 日付が変わる頃、船は再び丘の上に降り立った。
 レムリアはボストンバッグを手に、昇降スロープに足を乗せ、うつむいたまま振り返った。
 そのまま倒れ込むように相原にもたれかかり、額をはんてんの胸元にぶつける。体のいい頭突きである。
「あうち」
「思いつかない」
 もたれかかったまま一言。どうしてくれるんだこの変態商品、と付け加えても、過剰演出ではあるまい。
 相原は右手を動かし、一瞬躊躇し、レムリアの頬に触れた。
 レムリアがハッとした表情で相原を見上げる。その表情は、瞳の輝きは、幼い女の子の、今にも泣き出しそうな幼い女の子の純粋と透明そのもの。
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(つづく)

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【恋の小話】星の生まれる場所(3)

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「ふ~ん。今度寄らせてもらうよ」
 味は悪くない。ただ、正規の皮とあんこのバランスにしたらどうか判らないが。
「ホントですか?ありがとうございます」
 彼女は今にもピョンピョン飛び跳ねるのではないかと思うような笑みを見せた。
 快速急行でたい焼きに噛みつく。座れたとは言え通勤電車。はみ出るあんこをこぼれないように食うのが中々難しい。

 少し経った土曜日。
 図書館ついでにたい焼き食うかとなったのはそういう経緯による。店にいるかどうかはどうでも良かったが、果たして彼女は店頭で例の鉄板に向き合っていた。
「間もなく焼き上がりまーす。たい焼きいかがですか~」
 道行く人へのかけ声がレッスンの産物と気付いて僕はちょっと笑った。
「あ、あの時の」
「焼きたてちょうだいな。声伸びるようになったねぇ」
「ホントですか?ありがとうございます~」
 2個と言ったのに3つ入り。
「サービスです。ウソです。1コはまた失敗品です」
 そこで奥から声。「あやなちゃん上がっていいよ」つまりあやなというのは本名か。
「はーい!」
「お、今日もやるの?ストリート」
「うん!」
 嬉しそうに答え、待っててと言われて待っていると、店の裏手から何だかんだ抱えた女の子が出てきた。
 キャリーバッグにショルキーに……デカイ黒い箱ひとつ。
 箱はキャリーバッグの上に乗っていたが、段差越える際にどんがらがっしゃ。
「あーあ」
 いたたまれず駆け寄ると箱には著名な楽器メーカのロゴ。裏の端子類から屋外用のアンプ内蔵スピーカシステムと判じた。それはそれでバイトの身には値段それなり。
「持つよ。え?これ抱えて家と店と駅前通ってるの?」
「はい。あ、すいません」
 取っ手があるのでぶら下げる。たい焼き屋があるのは繁華街。夕刻近くなり、外食の人波もある中、大荷物で横切って、ペデストリアン・デッキへ繋がる階段を上がる。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-097-

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「天使?」
「まいかちゃんに誰にも知られず近づける」
 レムリアは言った。
 その瞳が揺れ動いている。
 今回、そもそもの主旨、真の目的は彼女であるのに、オトナの都合で彼女には充分楽しんでもらえなかった上、今現在、彼女に対して何のアクションも取れない。そうかと言って頭から追い出すことも不可能。
 距離を取っても、速度を出しても、逆に心には、それだけが浮き彫りのように残る。
 相原はもうすっかり冷えた自分のドッグの残りをかじった。
「いやだね」
 少年の口調で一言。
 レムリアは目を剥いた。
「君が見えなくなっちまう。天使ってのは見えないから天使なんじゃないかい?」
「じゃぁやっぱりイエスの力だ」
「で、バケモノ扱いされて、磔にされる。君の志はジ・エンドだ。普通命を賭けてと言うとカッコイイ印象があるが、人命救助は逆に当人がたやすく死んじゃいけないと思うのはオレだけか?」
 果たしてレムリアは不機嫌になった。……八つ当たりに近いが。
「意地悪だね。判っててやってるもんね。私が小悪魔ならあなたは大悪魔だ」
「君がなすべき事が何か、オレが決めろと言ってるように聞こえるが?」
「そう言ってます。だってどうしていいか判んないんだもん!だって、だってまいかちゃんは、まいかちゃんは……」
「だ~め」
 相原は“泣きが入る” 前に、断ち切るように、言った。
「その手には乗りません。こと君の能力発揮に関しては、なるべく自分で考え出すようにすることをおすすめします。俺の発想じゃ限られるし、毎度地球の裏側まで状況見に行くわけには行かないし」
 果たしてレムリアは目線を外した。
「学ってもう少し優しいと思ったんだけどな」
「冷たくしたつもりはありませんよ。ただ、ずっと君を見てきて俺の感じる限り、君の力は君の向上心とセットになってると俺は思ってるんだ。実際君は半年前より精神的に成長してるし、力の行使もスマートになってる。んなもん、門外漢手を出すにあらずっていう以外、解釈のしようがない」
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-096-

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 シャンポリオンについては解説する必要はあるまい。
「だから私はあきらめるのは嫌い」
 レムリアは言い、放電灯の届かない海の彼方を見た。
「カッコいいじゃないか」
「嫌い、なんだけど……」
 レムリアがそこで相原に見せた顔は、今にも涙が溢れ出しそう。
「ウリヤの忠誠の方はどういう意味だい?」
 相原ははぐらかすように目線を外して言った。
 するとレムリアは、え?とばかりに表情を変えてから。
「知ってて……」
「わけがない。ヒッタイトつながりか?」
「うん。ダビデ王に忠誠を尽くしたヒッタイトの戦士の名。だけどダビデは彼の妻に懸想した挙げ句、子供までもうけた。こうなると彼の存在そのものが邪魔。そこで、どうせ元々ヒッタイトなんだしぃ、みたいな差別意識から、彼を無茶な命令で戦場に赴かせ、死に追いやった。当時ヒッタイトとイスラエルは敵対していたんだけど、彼はイスラエル人の妻を持ったことから、イスラエルに、その王ダビデに忠誠を誓った。なのに、ってわけ」
「悲劇だなぁ」
「だけど、神様はちゃんと見てますよっていうのが最後に付いてね、ダビデも懸想の子を死に奪われる。旧約聖書に出てくる逸話の一つ。裏切られても忠誠を尽くせ、みたいな話のネタに使われる」
「神様はちゃんと見てます。か」
「私の場合、神様には見てるだけじゃなくて、イエスと同じ力を私にひととき、とお願いしたいところ。だって、だって時間がないから」
 レムリアは真顔で言った。
 相原を見る。
「泣き言うよ。あなただから言うよ。天使になりたい」
 彼女は呟いた。その口調は、子どもの無茶なおねだり……に、印象としては近い。
 人の心は、深く傷つくと、幼い頃と同じ優しさを受けよう、という意識が働くと言われる。
 幼子がわざと悪態を付いたり無茶を言うのは、親にかまってもらいたい裏返し。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-095-

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「寒くないの?」
 ワイシャツネクタイの相原を気にかける。
「全っ然。ヤセの大食いってのは基礎代謝が活発でね」
 相原はホットドッグを一口。
「なるほどね。これ暖かいのはそのせいだね」
 レムリアは相原のスーツに腕を通し、だぶだぶの袖から手先を出して引き続きドッグを頬張る。小柄な娘に男性用スーツのジャケット。袖から伸びた手先と満月、ショートカットとアメリカンドッグ。
「カラシ来た~」
 舌をぺろっ。
 相原はその姿をメガネの奥に収め、小さく笑ってジンジャーエールのペットボトルをプシャッと開けた。
「パンを食べたら次は水が欲しくなるだろう。そこで彼が水だと仮定した語は適切にも正解だった」
 言いながらレムリアに持たせる。
「それは何か解読したと言いたいの?ヒッタイト人のウリヤの忠誠を言いたいの?」
 レムリアは言いながら、その炭酸飲料を勢いよくぐいぐい煽った。
「っあー!」
 少しおどけたように目を閉じて声を出し、痛みに近い喉への刺激を逃がす。
 相原は少し驚いた表情を見せ、そして小さく笑って。
「よろしかったら全部どうぞ。しかしなぜ解読ネタだと判るかねこの娘は」
「シャンポリオンのせいだね。あの人は11歳でヒエログリフ解読を志し、17になるまでに13の言語をマスターした」
「ほう、誰かさんと似てますな」
 レムリアが13歳にして12カ国語を操ると冒頭書いたが、半信半疑の方も多かったと思う。
 しかしそういう人間はこのように他にも存在する。ちなみに、レムリアが血筋の力を“誰かのために”と決意したのは9歳の時である。
 なお、相原が口にしたのは、ヒッタイト語の解読の糸口となったエピソードによる。この場面に合致するという状況なので持ち出したと見られるが、レムリアの知識水準、嗜好分野を考慮し、知的好奇心をくすぐる意図もあったようである。ただ、彼女が即応してくるとは思わなかったようだ。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-094-

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 肥大化した空港を見送り、都県境のトンネルをくぐり。
 そこで相原は湾岸線から離れてジャンクションへ入る。絡んだ紐のような立体交差をぐるぐる走り、一瞬、月を正面に捉えたかと思うと、トンネルに入る。
 高い天井、長いトンネル。
 同じ道を行くクルマは少ない。
「長いトンネル」
 レムリアが久々に声を出した。
 身を起こし、前を向く。少し気持ちに変化があったか。
 トンネルを抜ける。
 勾配を駆け上がると、ビルに埋もれたオレンジの道……ではない。都心とは異なる空間。
 そこは、海と夜空と月明かりの中、場違いに人工物を入れ込んだ、そんな場所。
 東京湾横断道路……通称アクアラインの海底トンネル出口に作られた、海の上のパーキング“海ほたる”。
「へぇ」
 レムリアの瞳が青白く輝く。ライトアップに使われている高演色ランプの光芒を捉えたのである。レストランやアミューズメントの入った施設ビルは、船を模した形。
 施設ビル内の駐車場にクルマを止めると、レムリアは促すまでもなくクルマを降りた。
「屋上へ出られるけど」
「うん」
 展望デッキへ出る。春の夜であり、満月の光は黄砂を横切るせいか柔らかい。が、海を行く風は決して柔らかくも暖かくもない。
「預かって」
 相原はそう言って、スーツのジャケットをレムリアの肩にひっかけ、フードコートへ向かう。
 ジャンクフードを手にして戻る。レムリアは左手より月明かりを浴びて展望デッキの手すりにあり、東京湾の入り口の方を見ている。
「食べる?」
 相原はレムリアの隣に少し距離を取って寄りかかり、アメリカンドッグにカラシを塗って差し出した。
「ありがと」
 レムリアが手を出す。潮風が二人の間を行き、彼女の髪がなびいて頬を撫でる。
 彼女はその髪を右手で押さえ、ドッグを頬張る。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-093-

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「いつも聞いてる音量で」
 相原がひねったボリュームは会話が成り立たない。
 が、レムリアの心理状態にはそのくらいでちょうど良いようである。音楽が思考を邪魔する。強引に入り込んで雑念を消して欲しい、ということだ。背もたれに身を預け、やや苛立ちを含んだ表情で窓の外を見たまま、一言も発しない。
 夕日を背にし、まっすぐ伸びる中央フリーウェイを転がって行く。軽自動車なので速度を上げれば応じた騒音や振動も加味される。だがそれはむしろ猛々しさを演出し、レムリアのささくれだった心理には丁度良いようである。
 であれば渋滞に引っ掛かるなど不相応である。相原は都心方面を避け、首都を迂回する環状路に入り、北からぐるりと巡り、東の方へと向かう。
 まだ夜の訪れが早い季節である。やがて遠い山並みが夕闇にかき消され、対照に東京のビル群が灯火に彩られる。双方を分かつ高速道路は、オレンジのナトリウムランプが行く手に点々と続き、光の道と化す。
 レムリアは変わらず、移りゆく車窓にじっと目を向けたまま、何も言わない。その頬をオレンジの照明がストロボのように交互に照らす。
 北西へ向かう道、北へ向かう道、北東へ向かう道。標識に数百キロ先の地名の書かれた、幾つかのジャンクション。
 分岐合流を次々通り、やがて車窓の風景だった東京の照明ただ中へと、相原はクルマを向ける。
 東京湾岸地帯を行く。光と闇の境界線が街と海との境目を浮かび上がらせる。境界線は弧を描いて南西へと流れている。
 溢れる人工の光の中、背後からプラチナ色の円盤が光を投げかける。
 今日の月、満月が姿を見せたのである。
 三叉路をなす鉄道立体交差をくぐる。程なく左手は日本一著名な遊園地。それを行き過ぎ、海沿いの道をひたすらに行く。針路が西方より南西、南南西と向かうにつれ、月の姿は背後より左方に移り、ナトリウムランプに変わって窓辺の少女の頬を照らす。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-092-

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「大丈夫。身代わりにティアラ置いてきたから。あれは私たちからのプレゼントだから」
 レムリアは言い、シートベルトを外して由利香ちゃんに寄り添い、その肩に腕を回し、手を握った。
「ああ、あなたにこれされるの好き。暴れていたのが静かになって行くような……」
「同じ事は、既にあなたも誰かにしてあげることが出来るよ」
「えっ?」
「保証する。今度、ためしてみてみて」
「わかった。ためしてみるみる」
「動くぞなもし」
 相原は言った。
 クルマが渋滞を抜ける。
 そこから由利香ちゃん宅まではわけもなかった。路上駐車して相原が車中待機し、レムリアが1人で彼女を送る。
 店に入って着替えて出てくる。頂戴した衣装の入った紙袋を手に、玄関先で母親と少し喋る。また来るねという話にしたので、別れの挨拶は深刻にならない。
 手を振り、頭を下げあい、次を約束する。相原もクルマから顔だけ出して頭を下げる。
 レムリアは笑顔で別れてきた。
 相原がエンジンを始動する。あとは帰るだけである。明日は月曜であるから、相原は出勤、レムリアも自宅に戻り、時差ボケ直してフリースクールだ。このため、予定では深夜24時に彼女を迎えに船が来る。それまでに夕食を済ませ、太陽電池充電器やらガシャガシャした物を持たせて……。
 しかし、ナビゲーターシートに身を滑り込ませたレムリアの表情は、こわばっていた。
「走ってよ」
「ん?」
「なるべく速く。なるべく遠く」
「ん」
 相原はただそう答え、財布からETCのカードを取り出してリーダにセットすると、高速道路へと進路を取った。
「激しい音楽ない?いつもあなたが聞いてるヤツ」
 CDを回す。イタリア製ダンスサウンド。ビートの根幹を支配する重低音に、高音を多用したシンセサイザーのメロディライン。欧州人種の体格を存分に生かした、腰の据わったヴォーカルが重畳され、超高速で突き進んで行く。
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-091-

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「そんなに良くない?」
「うん。人と人とが触れ合うっていう肝心な部分が欠けてる。シスターや看護師さんはよさげだけどね。でも……」
「工場勤めの人間の視点から見ると、あの病院の意図はよーく判るよ」
 相原はレムリアのセリフにかぶせて言った。
「ほう。ご拝聴」
「子ども達の治療じゃない。人体の修繕工場の経営なんだよ。合理化によるコストダウンと人寄せのための宣伝。子ども達は病室に押し込んで、その分必要な目配りは削減、転じて人手が減らせますわな。流れでロビーは暗いし自動ドアも止めてある。その一方で宣伝ネタには記者まで使うし、非常持ち出しにご丁寧にAED突っ込んであるのも、その辺の計算の結果を強く感じる」
 相原は言った。クルマは渋滞に捕まっている。都内西部の大通りの一つ、青梅街道に出る交差点が詰まっているのだ。
「なるほどね。まーあの院長“愛と情熱”ってタイプじゃないみたいだからね。純粋に生物学的に治癒するかどうか、それを可能とする技術が存在するか、それだけで判断してるみたいだからね。昨日漁った論文見る限り。……あー納得した。そりゃ持ち上げられるわ。成功すると判っている手術や治療しかしないって事だもん。実際彼女、まいかちゃんだっけ、宣告されてたんでしょ?」
「と、うちのオカンは聞いたって」
「宣告?」
 由利香ちゃんが尋ねた。
「医者が未来を否定すること」
 レムリアはそういう言い回しをした。
 由利香ちゃんがうつむいてしまう。
「それって本人に直接、じゃないよね。最も、親が言われても、親はそれを黙っていたとしても、子どもはそれとなく判るわけだけど……。
 目と命じゃ、ショックのレベルが違うんだろうな。今ね、あなたの言った精神の状態は肉体に影響を及ぼすってのすごく理解出来る。ダメだと言われる絶望は身体を蝕んでしまう。ああ、私彼女のそばにいてあげたくなってきた。どうしたらいい?」
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(つづく)

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【恋の小話】星の生まれる場所(2)

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 道行く人の止まるでなく、聴衆が増えるわけでなく。ある意味ワンマンライブ。
「ありがとうございました」
 それでも僕は盛大に拍手をした。ちょっとしたコツがあって小さな手のひらでも相当に大きく響かせることが出来る。
 突然の拍手に足を止める人少々。
「レッスンとか通ってるの?」
「はい。まだまだですけど」
「詞も曲も自作?」
「そうです」
「シンガーソングライターか。歌詞からして学生ぽいけど……レッスン代は?」
「バイトしてます」
 それはある程度本格的な裏返し。ならば。
「詞は素直でイイよ。ただ曲は声域とコードが合ってないかもね。偉そうなこと言えないけどさ。実力より少し広い範囲に敢えて設定する手もあるかも知れないけど、喉壊したら世話無いよ」
 と、言ったら彼女は液晶画面だけの携帯電話、スマートフォン。略してスマホを取りだして慣れた操作で画面をスリスリしてメモメモ。
「ありがとうございました。参考にします。それとあの、これバイト先で作ったんです。良かったら食べて下さい」
 取り出したのは……たい焼き。
 しかもかなりド派手な外観。皮はプラモデルで言うところの“バリが出ている”状態にはみ出してるし、あんこ詰めすぎなのかおデブ。
「……それ失敗品で」
 じろじろ眺めているの理由を知ったと感じたか、彼女は付け加えた。
「こっちも見習い中?」
「です」
「お店は?」
「あ、えーと」
 彼女はスマホで検索してサイトを提示した。
 携帯電話向けのバーコードがあったのでそっちで捕獲。
「スマホにしないんですか?」
「このリュックにパソ入れて持ち歩いてる。スマホって出来ること限られてんじゃん。へぇ『かのん』ねぇ。音楽流れてそうな名前だね。君にピッタリじゃない?」
「これ『かんのん』から取ったらしいです。千葉の方にそういう駅でたい焼き売ってるとかで」
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(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-090-

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「彼女、どんな病気なの?」
 その問いにはレムリアが答えた。
「そうか……」
「正直なことを言う。彼女の薬は心臓の筋肉に悪影響を与えるタイプなんだ。だから仰臥位(ぎょうがい:仰向けのこと)だし“驚かしちゃいけない”だった。投薬自体が命がけだったわけ。だから、婦長がやらかした時はハッキリ言って背筋が凍った」
 CPRを始める際、レムリアが淡々と事実を並べたように聞こえたのは、実は恐怖感ゆえの硬さのなしたことであったのだ。
「でも……子ども達の気持ちが伝わってきた。やるだけやってみよう、って思った。」
「その気持ちが彼女を救ったんだね」
「えっ?」
「私にくれた物を、あなたは彼女にもあげたんだなって思ったよ。自分のために一生懸命になってくれる人。その存在を知ることがどれだけ、どれだけ心の栄養になるか。安心と平和な気持ちに包まれるか」
 由利香ちゃんのそのセリフに、相原がルームミラー越しに笑う。
「そういう状態の由利香さんを見て感想を述べたのが、昨日の電車のおばあちゃんだとオレは思う。心安らかな人間の表情や気持ちは、それを目にした人もまた安らかな気持ちにするんだよ。その点で由利香さん、あなたは素晴らしい宝箱をその心に持ったんでないかい?」
「え……」
 二人して後席で赤くなってうつむく。
「乙女をからかって……」
「そ、そうですよ」
「変態商品」
「変態商品」
 変態合唱1分間。相原が「うえ~ん」と泣き真似するまで続き、二人は笑い転げた。
 由利香ちゃんが言う。
「……あ~面白い。ね、お二人は漫才のショーはやらないの?今日みたいな病院にはそういうのもいいんじゃないかと。にしても変な病院だったね」
「あれは、子どものいる所じゃないよ」
 レムリアは笑顔を引っ込め、再び言った。
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(つづく)

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