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2013年6月

【恋の小話】星の川辺で-3-

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 短冊指さしたら、彼女はそれを買い求めた。
「ムリして取り寄せてもらってるんです」
「結構作るってことかな?消費してるわけでしょ?」
 言ったら、彼女は一瞬目を見開き、次いで笑った。
「消費……」
 別にボケかましたわけではないのだが、ツボにはまったらしい。
「確かに……失敗して捨てるの多いから……消費かも……」
 ツボにはまって抜けられない。吹っ切れたようにあははと笑う。
 ここでもし誰か入店したら唐突にセーラー服の娘が爆笑こいてるわけで。
「ごめんね、変な奴だと思ったでしょ」
 笑いすぎて零れた目尻の雫を彼女は指先でぬぐった。
「んにゃ、ただ笑ってるとこ初めて見たから。あ、おばさんありがと」
 ここで彼女が歩き出し店を出、一緒について行ったのは、バイバイと言われなかったので何の気無しの何となく、そのものなのだが、無理矢理説明を付けるとすれば、笑ったところ見たことが無いというギャップを埋める役どころが自分にあると無意識に思ったからかも知れない。
 向かったのはオレの家とは真逆の方向。彼女はうつむいて少し歩く。宮沢賢治の写真として後ろで手を組みうつむいている写真を良く見るが、それを思わせる。
「なんつーか、ついて行けないんだよね」
 彼女は唐突に顔を上げて言った。
「ん?は?オレ?」
 反射的にオレは言ったが、オレの方が後ろにいるのでそれはない。
 彼女は首を左右に振って。
「クラスにさ……変な子、なんだろうね。私って変?」
 立ち止まり、オレの方を向き、自ら顔を指さし、真ん丸の目で尋ねる。
「変」
 オレはひとこと言った。
「やっぱりそうか」
 傷付くと思いきや微笑んでひとこと。
 やっぱり変だ。
「でも……」
「でもいいんじゃね?近寄りたくないって意味の変じゃなくて面白えって意味の変だから」
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(つづく)

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【恋の小話】星の生まれる場所(10)

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 てなことが読み取れるし予測できると言ったらスマホでメモメモ。
「何か質問はありますか?」
 彼女は特に無い様子。でもそれで本当に大丈夫か?
「曲の事前審査は?5曲まるっとOKなのか、デモをお渡しして中から選ぶのか」
「ああ、それは当店の基本契約条項通りです」
 つまり、イベントのスペシャル条件ペナルティ無しとは別の話。従って落選考慮で5曲以上作っておくこと必須。
 彼女は一瞬悲しそうな顔をした。が、すぐにキュッと口元を結んで。
「判りました。頑張ります」
 メモして僕を見。
「しばらく……ライブお休みします。曲作らなくちゃ。それで」
 図書館付き合って欲しい。住民票を移してないので借りようにも借りられない。
「ああ、いいよ」
 たい焼き屋の前を通って大通りを横断し、商業ビルの多い地区を過ぎ、橋を渡ると視界が開けて市民公園。
 その一角に図書館はある。そこまで歩く間に、彼女の通う大学は商業科で、歌のレッスンは親には内緒で、まで聞いた。白いレースのカーディガンに薄いブルーのワンピース。公園の藤棚の下を歩く姿が様になる。
 こちとら32歳のしがないサラリーマンだが傍目にはどう見えているだろう。
 飛び回るクマバチさんちょっとどいて。
Img_1061
(クマバチさん。近づいて撮ってますが針自体は持ってますのでマネしないで下さい)
「住民票移さなかったのは失敗だねぇ。20歳になれば選挙権とか健康保険の払い込みとか国民の義務と権利が出てくるぜ」
 あーおっさんくさい。説教臭い。
「自覚が足りない……かなって思います。親に隠れてクラブ行くみたいな、そんなノリかもって」
 しょげた横顔。喜んだりこうやって不意に落ち込んだり、
 感受性の鋭さと、恐らくは自分に自信が無いことによる不安定感。
「年寄り臭いよりいいんじゃね?最近の若いもんは言葉を知らねぇって愚痴ってるおっさんがここりありけり」
.
(つづく)

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【恋の小話】星の川辺で-2-

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 あだちみな。そのぼーっとしてる彼女。
「あなた大山中の子でしょ?」
 ワイシャツの襟に校章バッジ付けてるわけで、ハイもイイエも無し。
「そうですけど、あの、妹が幼稚園の七夕で短冊作るのに使う色紙(いろがみ)、の間違いです」
「あらがっかり。美奈ちゃんにタンカ友達が出来たのかと思ったのに」
 おばちゃんは短冊をひっこめて“たのしいいろがみ”をカウンター後ろの文具コーナーから取ってきた。
 タンカ。短冊を使うのであるから担架や石油輸送船ではあるまい。
「短歌……五七五七七の?ですか?」
「そう」
 なら、合点が行った。
「いつも考えてるのはそれか」
 にしても渋い趣味。
「あら、ずーっと考えてるのね。授業おろそかは良くないわ」
「でもテストの点が悪いとは聞かないっすよ」
「頭いい子だからね。でも授業態度として感心できないわおばさんは」
 自動ドアが開き、センサーのチャイムが鳴ってふわりと翻る夏服のセーラー。
「え?高台(こうだい)君も詠むの?」
 驚いたように、当の安達美奈が目を見開いた。視線の先はカウンター上の短冊。
 ……良く考えたら彼女がオレの名を呼んだのは初めてではないか。
 そして、オレが彼女に声を掛けるのも。
「違うよ。妹が七夕の短冊つくるから色紙買いに来たんだけど、まさか本物の短冊が出てくると思わなかっただけ」
 すると彼女は人目を気にするような素振りで周囲を見回しながらちょこまかした足取りで近づいてきた。
 顔真っ赤。
「あの……短歌とか俳句やってること、クラスには秘密にしといてもらえませんか?」
 そんなに恥ずかしいことだろうか。最も、言いふらすつもりも何もなかったが。
「ああ、いいけど」
 お会計。
「難しい本読むんですね」
「興味持つとのめり込むのが男。で?これ?」
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(つづく)

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【恋の小話】星の生まれる場所(9)

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 目尻の小雨がどしゃ降りになったのでその間荷造り。アンプをキャリーバッグの上に載せ、電気ケーブル共で軽く巻いて固定。
「明日からは自転車の荷物巻きに使うゴムのアレで巻いてらっしゃい」
 頷くだけで声にならず。
「急にすいません……」
 テレパシー使える訳じゃ無いが、新入社員の反応なんかと照らし合わせると涙の背景、抱え込んできたことの内容は想像つく。要するに今まで何でも一人で一人でだったので、伸びてきた手に不安な気持ちが解けて、というとこだろう。
 気付かぬふりして頬行く通り雨の過ぎるを待つ。
「あの……」
「何も言わなくて良し。送って行く必要あるか?」
 彼女は首を横に振った。
 ならばとキャリーバッグをしっかり握らせる。
 ネット上でSNS何かやってればフォローするぞと伝えたら、アカウントを教えてくれた。その場で相互フォローする。
 彼女のフォロー数“2”。
「歌手として、のアカウントなんです」
 もう一つはたい焼き屋の公式アカウントだった。
 つまり実質僕が1番。
「ほんっとうに始めたばっかりなんだね」
「はい」
 当該ライブハウスもフォローさせる。で、後は頑張んな、なんだが、ライブハウスとのそれは社会人としての“契約”だ。

 そういう経緯でライブハウスとの契約に付き合う。前払いするお金の有無、ドタキャン等違約金の取り扱い、ギャランティ。チケット販売。
「本当に関係者の方じゃ無いんですか?」
 ハウス店長氏は訝しがって僕に訊いた。
「単なる通りすがりの行きがかりです。まぁ情熱に絆されたとでも解釈下さい」
 皮算用では観客100。
 20分ずつ5人のプログラム。ダンドリ含めて全体で120分。即ち従前の5曲は1曲4分以内に収める要あり。以下自由。従ってお喋り……いわゆるMCを挟むなら挟めだし、チケットのノルマも基本は20枚ということになる。チケットに関しペナルティがないのは前述の通りだが、“売り上げ”は当然今後の活動に影響してこよう。
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(つづく)

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星の生まれる場所【目次】

・あらすじ
ガラス板で出来たピラミッドの類似品、“ピラミディオン”に、ショルダーキーボードを背負った女の子が貼り付いているというのは、ちょっと見ない光景。手を伸ばすその先には「カシカイタカンペ」が
(1) (2) (3)
(4) (5) (6)
(7) (8) (9)
(10) (11)
(12) (13)
(14) (15)
(16) (17・終)

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【恋の小話】星の川辺で-1-

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 授業中気になったというのがそもそも問題なのだが。
 目を向けるといつも“うわの空”の姿というのが、それまでオレの記憶にある彼女の全て。
 斜め上とか、外とか、ぼーっと眺めている眼鏡の娘。
 特に国語の時間は酷かったように思う。まるでストップモーションが掛かったビデオのよう。
 一度まさにその瞬間に当てられたことがあったが、彼女はまるで最初から全て知っていたようにスラスラと答えた。
 でも、椅子に戻るとまた上の空。何を考えているんだろう。
 知ったのは、ひょんなことから。
 夏服に着替えて1ヶ月。
「智(さとし)」
 帰宅早々母親に呼ばれた。中間テストの結果の話か?
「なんじゃい」
「本屋行くんでしょ?色紙(いろがみ)買ってきて。悠里(ゆうり)が短冊作るから」
 月末買ってる科学雑誌。短冊作る……ああ七夕か。
「駄賃はおつりで」
 千円札片手の母親に抱きついてニコニコしている。妹の悠里。幼稚園年長。オレ中2だから8年離れてる。
「おつりて10円じゃん」
「バカ、雑誌代はあんたの小遣いから出すに決まってるだろ」
 なんだちくしょー。
 もらった札を財布に入れて、本屋のポイントカードに、チャリンコのカギ。
 部屋着はジャージなので、本屋との往復如きに外出着に着替えるのはムダ。
 半袖ワイシャツでちゃりんこ漕ぎ漕ぎ。本屋へ5分。
 雑誌と、そうそう頼まれた奴。
 探すの面倒レジで聞け。ここでオレは間違いを犯した。
「すいません短冊ってどこですか?」
 あ、違う。
「ありますよ……みなちゃんのお友達?」
 オレが何か言う前に、店のおばちゃんはカウンターの下から“短冊”を出した。
 タレントにサイン書いてもらう色紙を細長く切ったような奴、短歌や俳句を墨でペロペロ書く本当の“短冊”だ。
 何故そんなもん売ってる?ちょっと待て。みな。みなって安達美奈。
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(つづく)

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お話の投入時刻について

【基本更新日】
水曜と土曜
【基本更新時刻】
昼の12時
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です。「星の川辺で」6月15日昼12時に公開します。当館で過去に例のない、最強素っ頓狂お嬢にご期待下さい(^◇^;)

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【恋の小話】星の生まれる場所(8)

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「私、まだホントに一人で作った歌って無いんです。さっきのは使えるかもだけど」
 手にしたチラシを見せられる。新人ライブの応募要項。
“オリジナル曲であること”
 カヴァー禁止。必要数5曲。
「でもこの間歌ってたあれは?」
 曲は先生氏のお手本ベース。詞は友人作成。
 他人のレールに乗っただけ。
「やっぱり断って……」
「まぁまぁそう慌てない」
 ちなみに僕は彼女より15年ほど長く生きてる計算。
「やり方二つ。ひとつ、エントリー期限まで必死こいて考える。だめなら諦める。ふたつ、エントリーしておいて逃げ道塞ぐ。自分で自分を追い込む。大学受験はどっちのパターンだったの?」
「推薦……です」
 高校はワンランク下を選び、そこで当然成績上位に来るので推薦枠ゲット。
 賢い、ある意味賢いが、ぶつかった壁を越える力は身につかなかった。
「説教臭いこというの嫌いだけどさ」
 僕はひとこと言って頭をボリボリ掻くと、
「歌手になりたいか!」
「なりたいです!」
 強く訊いたら即答が来た。
 口調だけ聞けばケンカに聞こえたかも知れぬ。応じた周囲の目線を感じる。
「じゃぁ応募しろ!……幾らでも手伝うからさ」
 後半口調を変える。彼女は笑みを見せ、しかし困惑の表情に変わった。
「でも……」
「即答したってのは本音だろ。だったら諦めるのは損だと思うよ。曲は知らんが詞の方なら幾らでも手伝うから」
「え、でも巻き込んでしまうみたいで」
「すでに首に紐巻かれてる状態で何を言うか」
「あ、すいません」
 そこで彼女が涙ぐんだはなぜか。
「若い娘泣かせてる悪いオッサンみたいだからやめれ」
「でも……」
 笑いながら涙ぼろぼろ。
 大体そういうのは誰にも言えず抱え込んでいる何かがあって、今この瞬間解放されたか指摘されたかの裏返し。
.
(つづく)

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【あとがき】ミラクル・プリンセス~奇蹟の姫君~

Lemuriametamol11

 

 


レムリア-lemuria-幻の大陸の名を持つ娘。
元々、本作にも登場する「アルゴ号」の冒険物語は、相原を主役にしてと考えていました。でも男だけだとどうにも殺伐とする上「奇蹟」の顕現と雰囲気的に相容れない。巫女と女神はどうしても必要だ。斯くて招集掛かったのが魔法使いの血を引く彼女、レムリアでした。
その点で厳密に言うと、本作はその彼女を主役に据えたスピンアウトになるにはなるのですが、むしろ彼女が主役として全体を立て直した方がすっきりすることから、全体を調整し直した経緯があります。結果、彼女により深く入り、「奇蹟」-ミラクル-をカンバンに掲げたのが本作、となります。ただ、その「奇蹟」がどういう形で現れるのか、具体的にどんな経過と結果になるのか、書き始めの段階では、彼女は私に教えてはくれませんでした。欧米映画に良くあるように、悲劇寸前の状況で形而上の存在が出てきて代打逆転サヨナラ満塁ホームラン風に劇的な奇蹟を起こすのか。それとも、言っても信じてくれないだろうけど実はね、みたいな、小さくて可愛い不思議になるのか。作者である私自身、何がどうなるか判らないまま、話が進行して行ったわけです。
その結果。
本作の「奇蹟」は、そのどっちでもないけど、彼女らしい。と、言えましょうか。
納得できない方もあるかと思います。魔法そのものが奇蹟を呼んでも良いはずなのですから。それこそ必殺技的に炸裂して、死の淵から引き戻してしまう逆転サヨナラホームラン、その方がよほど劇的で「感動的」だったでしょう。「歓迎される予測可能な最高の終わり方」(予定調和とも言う)として自然ですし、畢竟、ドラマとしてはそう作りたくなるモノです。
でも多分、私がそんなエンディングにしたいと言ったら、彼女は私から去ったでしょう。理由は言うまでもなく、彼女は意図して「奇跡的な」展開にしようとはしていないからです。
ハッとした方もあるかも知れません。でも実際、彼女は特段ドラマチックな話にしようとは、これっぽっちもしていないのです。全編を通して、ただ、「味方でいよう」としているだけなのです。
由利香ちゃんと、彼女のお母さん。まいかちゃんと、彼女のお母さん。
そして、二つの病院の子ども達。
楽しんで、喜んで、心配しないで、安心して。
そのままでいいから。
確かにその指は光を放ち、紡いだ呪文は不思議な事態を起こします。でもそれは、味方であるための必然に過ぎません。実際、彼女が味方したこうした人たちは、やがて変わって行くわけですが、それは呪文で変わったわけではありません。味方を得たが故の安心と自信で変わって行ったのです。そしてその延長線上が予想外の結果……奇蹟と認識される状況になっているだけです。
「誰かが悪いだけでも、何かが悪いわけでもありません。ただ、そのおかげで、私は、由利香ちゃんと出会えました」
「神様があなたを迎えに来ても、私はあなたを渡さない」
ここまで味方になってくれる存在はそうそうはいないでしょう。しかもリップサービスではなく、実際に神様と張り合ってしまう。
彼女に掛かると、心の傷も、絶望も、瞳輝く笑顔に変わる。それは、奇蹟の始まる合図。
相原の言う「呪文なき魔法」
いろんな示唆、暗示、寓意(全部一緒やんけ)、が含まれていると私自身思います。それは私が織り込んだものではなく、恐らくは彼女自身からのメッセージです。彼女のような、彼女ほどの味方がいるなら、傷つく人はいないか、その傷の回復は早いでしょう。全部認めてくれるなら、誰も不安は抱かない。そして、彼女は、自分が子どもであることを大切にしている。
対し現実の世間はどうか。
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呪文が不要な魔法なら、きっと、あなたにも。
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【恋の小話】星の生まれる場所(7)

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 名刺をもらったので返す。社会人同士でペコペコバッタよろしく挨拶。ライブハウスと生産管理の名刺交換というのも……それはそれで面白いか。
「ああ、あそこの工場」
「ええ、工場の隅っこで動かしたり壊したり」
 その後二人が話してる間に配線片付け。それはそれで次やりたいバンドがいる。1回15分で交代とか彼女に聞いた。
 そばだてているわけでは無いが、会話は耳に入る。現在当該ライブハウスでは新人発掘イベントみたいなのを企画中。一般に新人や歌手のタマゴは、実績あるアーティストの前座やオープニングを通じてまず周知。対して新人ばかりを集めてというわけ。また、ライブハウスというのはある程度の動員が見込めないと場所を貸さない。達成出来ないと使用料を上乗せする場合が殆ど。でもこの企画ではその上乗せをチャラにする。
「君ならビジュアルも見込めるし、どうだろう」
 つまり顔立ちもカワイイと言うこと。
「あの……先生に相談させてもらってからでいいでしょうか?」
 彼女の問いに店長氏の目は僕へ。
 手をぶんぶん、僕先生ちゃうちゃう。
 彼女はレッスン先の先生氏の名を言った。
「ああ名前知ってますよ。駅裏で教室開いてる」
 店長氏は言い、幾らかのアーティストの名を挙げた。いずれもテレビやアニメソングで聞いた名前。その作曲やアレンジメントをしているそうな。
 ……実はすごくね?
「じゃぁ今週いっぱいエントリー受け付けてるから、お返事下さい」
「はい!」
 彼女は元気よく応じ、ハウスオーナー氏は手を上げて去った。彼女は上気した顔でその背中を見送ったが、一転、深刻な顔になった。
「どうしたの?」
 僕はキーボードとアンプを背負い、手に持ち、ケーブル類を首に巻いてという電設の戦士状態で尋ねた。
.
(つづく)

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今後の生産計画2013年6月

以上にて「ミラクル・プリンセス」は終わりました。あとがきを土曜日くらいにアップします。これでレムリアのお話手持ちの在庫は全部出しました。つまり次出てくるのは「どこにも載っていない」ものになります。
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当面の予定を書きます。現在水曜更新で走っている「星の生まれる場所」はもう少し7月いっぱい続きそうな勢いです。ただ、後ろは見えてきました。
別のお話を6月15日から始めます「星の川原で」。どうやら「生まれる場所」と対生成の運命にあったようです。内容的にも接点が多数。ただ全く関連はありません。全長未定。完結未定。とんでもねぇ娘が出て来ますのでお楽しみに。
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水曜更新はその後久々にエウリーが、但し厳粛な話を持ってきました「獣(けだもの)の尊厳」と言います。相当ショッキングな内容ですが対峙してやってください。
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そして土曜更新は「~川原」の後に、「どこにも載ってないもの」始めます。魔法少女レムリアシリーズ「Baby Face」
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・水曜「星の生まれる場所」(終了未定。7月いっぱい?)→Next「獣の尊厳」(その後)
・土曜「星の川原で」(6/15~)→Next「Baby Face」(その後)
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いつもありがとうございます。
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【補遺】
ここご覧の皆さんにお知らせ。原稿用紙200枚だギャーギャー書いてる人間が真逆?対偶?「短歌」のシンジケートに属しました。「未来短歌会」において、笹公人さんを師範とする「抒情の奇妙な冒険」(例のマンガのもじりです)の団員に登録されております。8月くらいから(審査が通れば)三十一文字が会報誌に掲載される模様。
実は上記対生成はこの結果によります。

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-123-終

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「そんな娘、応援しなけりゃ男が廃るだろう。いろいろ言ったがもういい。君は君のあるがままにありなさい。そのために俺は、君のそばにいよう。考えろなんて意地悪言わない。地球の裏からでも電話してらっしゃい」
 相原の台詞にレムリアは小さく笑って。
『とっちゃんぼうやの研修生がかっこいいことで』
「キミキミ、それは今このビシッと決める場面で言ってはいかんよ」
『だって似合わないもん』
 レムリアの口調に明るさと元気さが戻ってくる。
『でも良かった。また邪魔しに行くね』
 その安堵に満ちた弾む声は、ほんのりと頬を染め、笑顔を浮かべるレムリアのもの。
「はいよ。邪魔されるの待ってるよ。ところでお前さん。ウチのネコタレ籠絡したろ。あれ?」
 電話は、切れていた。
「この娘は」
 相原は、笑った。
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- 大きな病院の小さな奇跡 -
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 あまり気乗りのしない取材ではあった。病院自ら「取材しに来てくれ」などというのは、十中八九宣伝目的だからだ。おまけに記事の掲載先は支援財団の機関紙。書ける内容は最初から決まっている。
 だがドラマがあった。今回の取材は少女二人が小児病院にボランティアのマジックショー、というものだった。
 マジックはそれはそれは鮮やかであった。次から次に飛び出す。変わる。隠れる。消える。筆者のカメラもいつの間にかオモチャにすり替わっていた。ずっと持っていたはずなのだが、いつどうやってすり替わったのか未だに判らない。子ども達が驚いていたが、大人でも圧倒される。あそこまで鮮やかなマジックはそうそうあるものではない。
 トラブルが生じたのはそんな時。重病とおぼしき少女が心肺停止に陥ったのだ。率先して動いたのはマジックを披露した少女であった。少女は鮮やかな手つきで心肺蘇生を開始した。場に居合わせた教会関係者は子ども達と共に祈りを捧げた。
 そして重病の少女は回復した。
 信じられないのはここから先である。
 どうやら、マジックを披露したその少女は、知る人ぞ知る某国のプリンセス“奇跡の王女”らしいのだ。その王女が子ども達に微笑みをもたらす時、奇跡が始まる合図なのだという。
 それが本当なら、王女様がこっそり日本の病院を訪問し、身分を隠してボランティア活動をしていたことになるが、果たして。
 ちなみに、その重病の少女は、それこそ“奇跡的に”完治して間もなく退院という。
 少なくとも、一つの奇跡は起きたようだ。
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ミラクル・プリンセス/終
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あとがき
レムリアシリーズ一覧

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-122-

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「それだ」
 相原はニタッと笑って言った。
「彼女は起きぬけ一番こう言いましたそうな『私は狼になります。無理はしません』って」
『ああ、なるほど』
「薬も治療も素直に受ける。その代わり痛くなると布団に潜って怒鳴るわめく。でも、前のように病院スタッフや親御さんに当たったりはしない。するとあら不思議、ぜんぜん悪化もしないし痛いのも収まり始めた。最も、それは痛み止めの作用か、単に一時的に進行が止まっただけかも知れなかったけどね。ただ、シスターに言わすとその頃彼女は『目覚めた』らしい。君の魔法が効いたと解釈したらしいんだ。そうなるともう後は螺旋階段を上って行くように状態。そういうのって『目覚めた人』の特徴的な変化なんだってね。自分と同じことを他の子ども達にって言い出して、教会がやってるお話会にお話する側で参加したりとか、君のティアラを女の子にかぶせたり、画用紙でつくってみたり。言うことすごいってさ、『婦長が何か言ったら私が守る。院長が来たら蹴っ飛ばす』……そりゃ最初は揉めたらしい。でも、シスターが徹底的に彼女の味方をした。彼女が君に直接“魔法”を掛けられた当事者ということもあるだろうがね。やがて病棟全体の雰囲気が変わり始めた。子ども達の笑顔が増えて、食事や、投薬、治療に対する姿勢が前向きになった。こうなるとギャンギャン吠えてた方も黙ってしまう。あとは喜びと楽しさの連鎖と言えばいいかな?それこそ目覚めた病棟の螺旋階段。“楽しむことが元気の源”がここでエンジン始動、と。
 つまり君は、由利香ちゃんに続き、今度はまいかちゃんを変えてしまった。彼女を神様の腕から横取りしてしまったのさ。そして、それをきっかけに、病院全体を変えてしまった。
 ミラクル・プリンセス看板に偽りなし」
『……大げさだよ』
 相原の台詞に、レムリアはワンテンポ置いて微笑混じりに応じた。
「否定するもんでもないでしょに。しかしまぁ、君は会う人を片っ端から元気にしたり治したり。君は自分は半人前だとこぼすけど、こういうのは君だけにしかできない、それこそ魔法だ。呪文無き魔法だな。言っておくけどこれ最上級のほめ言葉だからね」
『……うん』
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(次回・最終回)

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【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-121-

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 相原は起きあがり、寝グセ頭をガリガリ掻きながら照明を点ける。
『昨日由利香ちゃんからメール来てさ。子ども達のためのアロママッサージやりたいから資格を取るって……』
 レムリアはそこで一呼吸置いた。
『嬉しくなってやっと勇気が出たから単刀直入に訊く。その後、まいかちゃんは?』
「どうなったと思う?」
 相原はイタズラ小僧のように、ニタッと笑って言った。
『焦らされるのいや……って。やっぱり言うのを躊躇するようなこと……』
 レムリアの声のトーンが下がる。
 相原は少し慌てたように。
「待て待て悪かった悪かった。不安がらせるつもりじゃなかった。明日彼女は退院する」
『は!?』
 レムリアが目を剥いている様が容易に想像出来る。
『嘘でしょ?だって……あ、最期の時くらい自宅でという』
「何でそう新月時は悪い方にばかり考えるかねこの娘は。その逆だよ。君が帰ったあと、彼女は丸2昼夜、昏々と眠り続けた。そして目覚めたら人柄ががらりと変わってたそうな。我が儘ばかりですぐに癇癪を起こすような状態だったのが、一転して周りの小さな子に絵本を読んだり、画用紙でティアラ作ったり、そんなことを始めた。そうしたら、リンパ節にまで転移していたのが消えたとさ」
 そのセリフにレムリアは黙った。無線通信ノイズが少しの間ジリジリ言った。
 そして。
『本当に?』
 疑念の問いかけ。
「本当に」
 自信の応答。
『ホントのホントに?』
「ホントのホントに。嘘だと思うなら飛んでおいで。君は彼女に何をしたんだ?」
『え?って船で空を飛んだだけ。船の上でマジックを見せただけ』
「ホントにそれだけかい?詳しく話した方がいいと思うよ。どうせ君自身知りたくなるから」
『え?じゃぁ……うーんと南の島でムーンボウを見せて、アラスカでオーロラを見て、そこに狼がいたもんだからお喋りして、また来るって約束して、そう、それで私は狼の言葉から天啓を得て彼女に言った。頑張るなって。だって彼女……』
.
(つづく)

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