« 【恋の小話】星の川辺で-5- | トップページ | 【恋の小話】星の川辺で-6- »

【恋の小話】星の生まれる場所(13)

←前へ次へ→
.
 後は彼女の感性の問題。どれがいい?と訊いたら与謝野晶子に取り付いた。否、取り憑いた。
 僕は僕で立ち上がって自分自身の本を探しに行った。品質改善だのQC活動だの。ちなみにQCというのは……野暮だ、説明しない。高いから買わずに借りてる、とだけ書いておく。
 選んで戻ると、どこを読んだか半べそで引き続き熱中。借り出すわけにも又貸しするわけにも行かないので、隣に座って品質改善。
 双方幾度かトイレに立ったりした後、
 彼女が一首指さしながらパソコンに書く。
“これ”
 斎藤茂吉、のど赤き……
 ムネアカツバメの説明が必要かと思ったら、そうじゃなかった。
“短歌って遠回しの表現が多いって思ってたんですけどこれ違いますね。死、ってダイレクトに書いてある”
“そういう点ではなるほど珍しいかもね。比喩って奴ね”
“なんだろ、死にたもう、死んだって言葉がすごい強い”
“何で直接、死んだ、と書いたんだと思う?”
 が、そこで蛍の光。閉館時刻が迫って参りました。
「え?何時ですか?」
「4時だよ」
「やばいバイト」
「早よ行き。後はやっとくから」
「すいません」
 彼女は図書館にあるまじきドタバタぶりでその場から走り出した。
 パソコン筆談に残った言葉。
“何か胸の中でもわもわする”
 それは、読みあさった作品たちが、自分の経験や心情と混交を始めたと言うことであろう。
 そこまでのプロセスがこの筆談である。僕はそのまま保存した。
 メールが飛んで来たのはその晩10時。
“もわもわするんだけど言葉が出てこない。言葉を表す言葉が見つからない”
 言葉にしたいがうまく行かずイライラしているらしい。
 が、ここで僕が思い出したのは、再び星が生まれるプロセス。それこそ、ガスが充分に凝縮しないと、星として光り出さない。
.
(つづく)

|

« 【恋の小話】星の川辺で-5- | トップページ | 【恋の小話】星の川辺で-6- »

小説」カテゴリの記事

小説・恋の小話」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【恋の小話】星の生まれる場所(13):

« 【恋の小話】星の川辺で-5- | トップページ | 【恋の小話】星の川辺で-6- »