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2013年8月

【恋の小話】星の川辺で-12-

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 であれば、悠里置いて行けば何が発生するか大体予想が付く。この家にある“オレのモノ”に片っ端からウンチの絵を描かれる。
 母親が抑えるだろうが……翌日翌々日まではムリだろう。女の恨みは根が深い。隙見て描かれる。
 仕方がねぇ。
「コブ付きデートとか聞いたことねぇよ……ご飯残さず食べること」
「はーい!」
 ピーマンもニンジンも苦にならないらしい。
 出かける時間になった。
 自転車に望遠鏡システムバラして載せる。赤道儀(三脚部分)は荷台にゴム紐。モータードライブは前カゴ。境筒(望遠鏡本体)はナップザックに突っ込んで背負った。
 で、サドルに悠里を乗せてガラガラ押して行く。
「わー!たか~い」
「しっかり掴まってないと落ちるぞ」
 で、アパートの駐輪場から出たら、そこにすでに安達美奈がいた。
 半袖ブラウスに……スカートはセーラーのまま。
「何か手伝うことないかなって。あらこんばんは」
 挨拶してもらって悠里が両手広げてVサイン。
「ごめん、付いてくるって」
「お姉ちゃん、にーちゃんとちゅーするの?」
「バカモノ。ちゃんと挨拶しろ。これ妹の悠里」
「悠里ちゃんでーす」
 で、ふざけてバンザイするからバランスを崩す。
 ハンドル持って手を出すのは不可能。咄嗟に身体を出したのでオレの胸元に顔面激突。
「……!……!」
 重心が完全にサドルから外れているので自力修復不可能。
「ごめん……ちょっと下ろしてやって欲しい。か、自転車抑えるか頼む」
 安達美奈に手伝ってもらわざるを得ない。
「いいよ」
 安達美奈はオレの傍らまで来、しゃがみ込んで悠里に腕を伸ばした。
「お姉ちゃんの方へおいで~」
 髪の毛から漂う香りふわり。
「うわぁお姉ちゃんいい匂い!お風呂入ったママみたい」
 悠里は顔を上げ、半べそ鼻水で笑顔キラキラ。
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(つづく)

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町に人魚がやってきた【目次】

●あらすじ
 冬の波打ち際。
 ビンに入った手紙でも流れ着いていれば物語の始まりだが、オレの拾ったモノはちょいと違った。
 一見したところでは鯉のぼりを下半身に穿かされたマネキン。
 それにしちゃ上半身が妖艶に過ぎる。ここだけの話だが指先でつんつんした。
【1~5】 【6~10】
【11~15】 【16~20】
【21~24】

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【大人向けの童話】どくろトンネル-2-

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 サトルとしては「下らねぇ」で無視しても良かったが、弱虫呼ばわりは癪に障る。ちなみに当の“幽霊さん”は、走る兵隊の姿であったり、「腹減った、かか、飯」という声が聞こえたり、という。(かか=お母ちゃん、の意)
「判ったよ。つきあってやるよ。いつ行くんだよ」
 サトルが観念したように言うと、タカシはニヤニヤ。
「そう来なくちゃ。サトル坊ちゃまの塾は何時に終わるんだよ」
「5時だよ」
「じゃぁ丁度いいや、終わる時間に合わせるぜ」
 タカシがそこでもう一度耳打ち。
「おばさんにはクワガタ取りに行くって言うんだぞ」
「わかったよ」
 しょうもねぇけどこれも友情。サトルは思った。
 そして約束の時刻。
 集合は学校の正門。
 タカシの他にタイヨーとカケル。全部で4人。めいめい虫カゴ持っているが全部ウソ。
「うわお前ママチャリなの?」
「クソだっせぇ」
「うっせぇよ」
 サトルは言い返した。みんなも自転車だが、変速ギア付きのスポーツタイプ。対してサトルのは、大人が買い物なんかで使う普通の自転車。ママのチャリンコ略してママチャリ。
 自分用のが欲しいとは言ったのだが、母親が電動アシストを買い、それまで使っていたのをサトル用にした、というのが実態。母親のお下がりなど格好悪いこと甚だしい。
「そのカゴ入れさせろよ」
 サトルの自転車買い物カゴに、使う気のないみんなの虫カゴを押し込む。
「くっそムカつく……」
「だってお前の奴にしかカゴとかねぇもん。よし行くべ」
 学校前から走り出す。交差点から片側一車線の県道へ。狭い路肩を一列になって隣町との境目を目指す。
 街並みが途切れると田んぼが多くなり、次第に坂がきつくなり、山の中に入って行く。その鉄道線路が接近してくる。
 タカシたちはギアを切り替え、軽快に昇って行く。
「ちょっと待てよ!」
「トンネルの前の分かれ道で待ってるよ」
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(つづく)

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【恋の小話】星の川辺で-11-

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 聞かなきゃ良かったかも知れない。オレの表情や言動にそうした同情が表れたらどうしよう。
 俳句や短歌をぽんぽん作るような娘が、感受性鈍いわけが無い。
 逆に一発で感付かれる。
「お前が、そばにいてあげたいと思うなら、それでいいんじゃ無いのかね」
 母親は、言った。
 電話を手に取る。
「むしろ立派な男の子だよ。連絡網どこだっけ」
 渡した後の会話はスラスラと進んだ。先方が大仰な反応を示して声が漏れ聞こえる。
『お誘い下さると言うんですか?……ちがうちがう私の方からお願いしたの……ご無理では?』
 オレはたまらず受話器を奪った。
「すいません智です。ムリとかそういうの全然関係ありません。望遠鏡持ってる話をしたら星を見たいと聞いたので。ただ、夜だからご心配かけちゃいけないと電話で確認させて頂いた次第です」
 電話の向こうでお辞儀してるのが目に見えるよう。
 向こうも美奈に変わった。
「てなわけで8時に。商談成立ってことで」
 言ったら、彼女は大笑いした。商談という言い方がツボにはまったらしい。
『私買われるの?』
「オレの責任の下にお預かりするわけだからあながちウソじゃないでしょ。じゃ、後で」
 電話を切る。と、シャツの裾を引っ張る力。
 悠里。ニヤニヤしている。
「お兄ちゃん今の電話のお姉ちゃんとちゅっちゅするの?」
 何と言うか、ムダにおませというか。
「違うよ。難しいお勉強を一緒にしようってお話」
「お星様見るんでしょ?」
 いわゆる“カマ掛け”されたことにオレは呆れるやら驚くやら。
「悠里も一緒に行く~」
 駄々をこねる方法子供によって様々だろうが、悠里の場合、ぴょんぴょん飛ぶ。
「えー兄ちゃん困る~」
 一緒になって飛んでみせる。悠里はゲラゲラ笑いながら、
「お兄ちゃんは悠里と結婚するから誰にもあげないの!」
 そういうことかい。
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(つづく)

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【大人向けの童話】どくろトンネル-1-

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 8月15日。登校日。平和授業。
 今年は震災後最初のお盆と言うこともあり、帰る前にみんなで黙祷。
 震災は東北地方太平洋沖地震、東日本大震災のこと。2万人近く死んだり行方不明になったり。この街もケガや犠牲はなかったが建物の被害はそれなり。
 さぁ帰ろう。そのタイミングでタカシがニヤニヤやって来て、サトルに耳打ち。
「肝試し?」
 問い返したら、タカシは慌てたように教室中を見回し、サトルの口を塞いだ。
「バカ!でけぇ声出すんじゃねぇよ。バレたらどうすんだよ」
「どうでもいいじゃん。くっだらねぇ」
 サトルは口塞ぐ手を払った。するとタカシは威張るように胸を張り、サトルを見下ろした。
「言うと思ったよ。ユーレイなんかいないんだよな。だったら、怖くなんかねーよな」
「怖いもへったくれもねーじゃんか」
「じゃぁ、来いよ」
 タカシは言うと、しゃがみ込んで、サトルにもう一度耳打ち。
「どくろトンネル。行くんだよ」
「でも立ち入り禁止だろ?怖い怖くないの前に」
「関係ねーよ。あるんだよ管理用の道がよ」
 どくろトンネル。この集落は県境にあり、鉄道が通っている。その県境峠越えのトンネルのうち、古い方のこと。古いのは2つあり、半分埋もれている。その埋もれた2つの穴がどくろの目の部分、難しい言葉で眼窩の形に見えるからそう言う。
 この学校に来れば誰もが知るウワサなのでサトルも知ってはいた。が、幽霊なんかいるわけ無いと思っているので興味なし。科学雑誌で“脳に超音波を当てれば幻を見せたり出来る”とあって、全部ウソか思い込みだと確信した。暗いから怖いとか、夜に聞こえる音でいちいちキャーキャー言うのはバカだと思う。
「来るよな。弱虫じゃなけりゃな」
 耳打ち一転、タカシは少し大きな声で言った。教室中の目が二人に集まる。
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(つづく)

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【恋の小話】星の川辺で-10-

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 それは、PTAの間で、オレら生徒の与り知らぬところで、彼女に関し何らかの情報が出回っていることを意味した。
「あんた知ってるの?その子言動が……」
「オレの感想、彼女のべつ短歌とか俳句とか考えてんの。だから傍目に変で不思議なんだよ。めちゃくちゃいろんな事知ってるしめちゃくちゃ好奇心旺盛。そら普通の言動はしねぇだろうよ。今夜望遠鏡担ぎ出すと言ったら一緒に見たいってさ。8時位に出て行くから先方の親に電話してくれよ」
 オレは流れるように必要なことを言った。
「そこまで進んでるの!?」
「何だろ、好きだからちゅー、なんだよ。エロ成分ゼロ」
 言ったら、悠里が「エロちかん、男子は変態エロスケベえ~」と歌い出した。幼稚園で流行っているのだろう。
 母親が怒る。
「こら悠里」
「はい色紙」
 渡すと、エロスケベコンサートは終わった。
 オレは母親に向き直った。
「正直、自分で安達さん好きかどうかワカラン。いきなり言われてピンと来ないしね。ただ、彼女の気持ちは尊重したい。っていうか……」
「ムリに理由を探さなくていいよ」
 母親は温和な表情で言った。
 学校の父母会において、彼女の母親が全員に頭を下げたというのだ。
「迷惑掛けるような子に育てたつもりはありませんが、思ったままを口にしてしまう傾向があります。それがどうしても悪い印象に取られることがあります。味方になってくれる友達がいて下されば幸いですって」
 動揺、した。
 子供にとって、大人に言われて最悪の言葉というのがある。
 ……友達になってあげて、だ。
 言われた他の子ども達が抱く心象は一つである。コイツ仲間外れなんだ。
 大人は気を遣ったつもり。比して子供が持ったのは先入観。
 もちろん、優しい子は友達になろうとする。ただ往々にして、その裏にある心情動機、“友情”でなく“同情”の存在に相手は気付く。
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(つづく)

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今後の生産計画2013年8月

・・・工場の月次報告か。
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「星の生まれる場所」終わりました。これはツイッターや配信で会話してた、とあるシンガーソングライターの(当時はタマゴの)お嬢さん「私たい焼き屋でバイトしてます」が元になっています。但し話の中身は当の彼女と何の脈絡もありませんので念のため。なお当の彼女はあちこちライブに出るようになってきています。
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さてこの水曜枠ですが、元々エウリーの予定でしたが、彼女がちょっと待って、と言い、?に思っていたらこの話が入ってきました。
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「どくろトンネル」
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です。「大人向けの童話」に分類しますが、どんな内容かは、まぁ、冒頭一行目の書き出しで、察しが付くでしょう。私は読書感想文の推薦図書みたいなの好きではありませんが、義務に思う部分もありますので押し込むまでです。その後エウリーになります。
土曜枠は「星を川辺で」がもう少し続きます。短歌がワラワラ出てくるという異例の代物であると同時に、「~場所」とある程度対をなしているようです。「~場所」と同じ位の回数になりそう。
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まぁそんなもん。残暑お見舞い申し上げます。

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【恋の小話】「星の生まれる場所」(17・終)

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 遠い惑星や太陽系外へ出て行く観測衛星の加速にも使われる。
 言い換えると、スウィング・バイした星には戻ってこない。“by”だが“bye”
 ショックを受けたような意識。冷徹に分析している思考。
「どうでした?」
 キラキラ瞳の彼女に訊かれて我に返る。
「あ、ああ、すごく、良かった。振り切って飛びだして行く。不安より期待と勇気が勝ったんだね」
 それはありきたりな物言い。
「そうです!おかげさまで自信付けていただきました」
 考えてみれば10も歳の差が有ったら、それ以上の、それ以下の、人間関係。どちらも生まれづらい。
 ……自分、何考えてる?この事態を何だと認識してる?
「お兄さんの話は本当?」
「いいえ……私一人っ子なので、もしいたらそうだったんだろうなって」
 実際小さい頃ガミガミ叱ったのは父親だと彼女は言った。そして、その結果が、必要なことは教えた云々、なのだ。
「えーと彼氏さん」
 僕は傍らの男性を呼んだ。
 僕は一介の応援者。SNSフォロワー1号。
「いやん」
 彼女がマンガのように顔を両手で隠し、くるりと後ろを向く。
「いやん、じゃねーだろ。何でしょう」
 彼氏のその言は何かの決断を僕に迫る。
「あの、歌詞のネタ作りに短歌とか詩とか色々図書館で見せてたけど」
「あ、そうなんすか?自分そういうのダメっす」
 良かったら引き続き、と言おうとしたが、この一言で全てオジャン。
「……ちいっと古くさい言い回しとか出てくるかもね。見てやってね」
 僕は用意していたセリフを飲み込み、そう繋げた。
「そうっすか。ありがとーございました」
 彼氏は言うと機材配線を片付け始める。乱雑に扱って彼女が文句を言う。
 ただそれは幼なじみの気の置けない。
「じゃぁ、頑張んな」
「はい」
 二人は語りながら去って行った。
「今ならスマートフォン新規ゼロ円です」
 雑踏の中で拡声器のその声はイヤにハッキリ聞こえた。
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星の生まれる場所/終
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special thanks to 森綾加(@watame29 on twitter )
I dedicate this story to young people who dream of a singer.
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【恋の小話】一覧

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【恋の小話】星の川辺で-9-

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 一つだけ確信。それは“オレじゃなきゃダメだろう”という認識。
 すごいおこがましい感覚なのかも知れない。でも多分正しい。
「夜出てこられる?普通女の子一人でってNGじゃない?」
「吾の君(あのきみ)と夜の逢瀬と親には言うから」
 華麗に五七五。っていやちょっと待て待て。
「逢瀬って……今ひそかに五七五にしたろ」
「ラブラブならいいんじゃないかと思うけどあなたと私の二人の世界」
「短歌にしなくていいから。普通の教育を受けた親なら逢瀬の意味をもっと深く取ります」
「智さんどうして逢瀬って言葉の意味知ってるの?」
 ぶっ。
「えーと」
 どこから突っ込んで良い物やら。
「智って呼び捨てでいいよ。天文やってりゃ神話が出てくる。神話の中には恋物語うじゃうじゃ。ゼウスは男女問わず若くて美しけりゃ懸想する。木星の月は彼に愛された女性と少女と少年の名前」
「懸想!」
 急に目がキラキラ。
 萌えるな。
「私とあなたは懸想の間……上の句が思いつかない」
「話が進まないじゃんか。えーとね。お母様には自分と星を観測する。8時から9時の間位。相手は自分、と説明して下さい。ウチの親から電話させます」
「判りました智さん」
「だから呼び捨てでいいって」
「敬語には敬語でお答えすべきかと」
 それは礼儀正しさの裏返しだろう。ちょいとずれちゃいるが。
 一旦お開き。気が付いたら1時間以上過ぎており、帰宅したら母親が呆れた顔。
「どこで何してたの」
「女の子にちゅーされた」
「はぁ!?」
 普通こういうことこんな言い方しないだろう。が、彼女の場合逆にこう言っておかないと後々母親が卒倒する羽目になること必定。
「クラスメートの安達美奈って娘に好かれた」
 すると、母親の表情は一転険しくなった。
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(つづく)

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【恋の小話】星の生まれる場所(16)

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 等身大、あるがまま、それは当然、違和感や不自然無し。いいじゃねぇか。
 終わって拍手2名。僕と、そのフライヤーを手にした若い男性。
 その男性、僕が拍手したと判るや近づいてきた。
「あやなの事知ってるんですか?」
「まぁ、たい焼き作る歌手のタマゴって聞きましてね」
「どうです?」
「悪くないと思いますよ」
 すると、男性はあやなちゃんに親指を立てて見せた。いい仕事“グッジョブ”の意だ。
 知り合いか。
「どうもありがとう。じゃぁ2曲目行きます」
 帰りの切符は買ってない。信じて選んだ道は信じて進もう。困難があっても乗り越えられると考えたのだから。自分に責任があるんだから。自分に責任すら取れないのに、いつかあなたと一緒に暮らすなんて出来ない。
 恋歌。しかも結婚を意識した。
 ちょっとドキッとした。サクラでなく文句なく拍手。
「実は今の歌は……私の大事な人を意識して作りました。幼なじみで、私が歌手になると言ってもずっと応援してくれた人、今ここにいるんですけどね」
 彼女は、僕の傍ら、男性を照れくさそうに手で示した。
 えっ。
「そして今日の最後は、私の背中を押してくれた、とあるお店のお客さんに贈ります。
『風でカンペが飛ばされて』」
 風で飛ばされた歌詞書いたカンペ。
 みんな私を褒めたけど、その人はそうじゃなかった。
 いつも私を叱ってた、幼い記憶のお兄ちゃん。
 一人になって忘れていた。
 あなたのおかげで私は気付いた。
 忘れていた大事に気が付いた。
 だから大事を言葉にして。
 私は勢い付けて飛び出そうと思う。
 私を叱るあなたを胸に。
 ……そんな歌。
 僕はハッキリと悟った。
 それこそは僕であり、彼女は自分と出会って吸収した何かを糧として加速し、僕の影響を離脱して行くのだ。
 スウィング・バイだ。例えば木星のような大きな星に近づいた小惑星。引力によって加速するが、その加速の結果、遠心力が大きくなり、引力を振り切って遠ざかる。
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(次回・最終回)

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【恋の小話】星の川辺で-8-

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 彼女は答えると、顔を塞いでいた手を、自身の胸元に揃えた。
 そして、オレの顔を見た。
 オレは意を決して、
「確認ですが、あなたは自分に彼氏になれ、と、こうおっしゃるわけですね?」
「そのように申しております。わたくしはどうやらあなたが好きなようでございます。あなたとなら一緒にいたいと、ここが、申すものでございます」
 彼女はここ、と、その抑えている胸元をパタパタ叩いた。
「素直だね言われて喜び言い続け数知れぬ人を傷つけてきた」
 それは恐らく、であるが、彼女は対人関係の築き方を把握できないまま今までを生きて来、そして、今もそうあることを示す、そんな気がした。
 ならば、放っておいちゃいけないだろう。それがオレの結論。
 さもないと、多分、ゆえなく、傷つけられる。
「オタク、だぜ?」
「男性に凝った趣味の一つや二つあって当然」
「マンガみたいな、ドラマみたいな、デートコースとか知らないぜ」
「ここで星を見せて下されば充分です。吾(あ)は見たし木星の縞土星の輪今宵あなたと二人っきりで」
 で、気が付いたら唇を塞がれていた。ウソみたいな本当の話。
 もう一度繰り返す。同級生の女の子に抱きつかれてちゅーされた。
「ガサガサ、ですね」
 でも、もう、驚かない。
「ケアとかしてねーし」
 オレが思い浮かべたのはニュース報道の遊園地とか着ぐるみショーとか。
 大好きで大好きで仕方なくて、自分からそういうのに抱きついて行く幼い子。
 そのまんま。
 女として見た場合どうだろう。地味だし髪も無造作、やせっぽちで胸感ゼロ。薄い唇、少しそばかす。
 ただそう、瞳の色は純真で無垢。
 男の本領発揮する相手か?というとそうではない。現時点。
 自分の彼女に対する気持ちは、現時点の気持ちは果たして恋なのか?
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(つづく)

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