« 2013年9月 | トップページ | 2013年11月 »

2013年10月

【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-03-

←前へ次へ→

 
 それとも無意識にそういう価値観が、人間的価値観が私の中にあって、伝わってしまっているのでしょうか。
〈例えばここなんかそうです〉
 国道行くこと60メートル余。未舗装でデコボコした道との交差点でネズミは止まりました。
 違和感2点。まず、そこにはチェーンが渡してあって、看板がブラブラ“管理用・立入禁止”。
 こんな道あったっけ、というもの。
 そしてもう一つ。
〈これはひどい〉
 (人間的に表現すれば)顔をしかめたのは老犬。鼻に皺寄せ不快の意識。
〈死臭が漂っています。死が、多くの死がこの道を通っています。幾度となく〉
 道。
〈管理用……なのに?〉
 公園のそれ、と思います。普通なら。
 私たちは少し道を進んでみました。
 すると、未舗装だった道は、しばらく進んだ位置から逆にアスファルトで舗装され、さらに奥へ続いています。
 ただ、市街で見かける道路とは舗装の造作が異なるようです。両端は路肩から溢れ出してそのまま固まったような様相を呈しており、路面もかなりデコボコ。昨日の降雨のせいか、油光りのする水たまりがそこここに見えます。
 そして轍。街路はそうはなりませんから、舗装前の必要な調整をしてない証でしょう。ここは国立公園。管理用とはいえ、こんな“雑”な道路を作るでしょうか。むしろ化学物質の汚染になるはずですが。
 見上げる夜空は木々の梢に覆われてて見えず。
 それは、裏返せば、“見えないことをいいことに”。私が感じたのはそれ。
「誰か、この先には?」
〈さぁ〉
〈入れないと思いますよ〉
 割り込んできた意志の声はミミズク。
 ばっさと羽ばたき、速度を落とし、差し出した私の腕に。
 彼の言ったことを要約します。市街地の電線から感じるような、電磁波を出すモノでぐるりと囲まれた領域がある。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

生産計画2013年秋冬

なんだこの見出し。

完全に工場職に毒されておる。
 
さてそんなわけで水曜・土曜とも小話系終わってシリーズが連チャンで来ます。
 
・水曜
既に走ってますがこのブログのアドレスflyupfairyの語源たる妖精エウリーのちょっとグロ怖い話「けだもののそんげん」・・・かなり異質です。
 
・金曜
久々登場。そして「本体」にも未発表ですレムリアのお話「Baby Face」。シリーズの一大転換点になる、とだけ書いておきます。
 
これ以外ですが、理絵ちゃんが助走状態にあるほか、久々の童話「ゆかちゃんハテナ王国へ行く」というのをポチポチ書いてます。歌手であるうちやえゆかさんのついったーでのほのぼの発言で沸いて出た小さな、そして?なお話。
 
揃って年越します。まぁこのサイトあまりそういう暦の上のマイルストーン関係ないんですけどね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

星の川辺で~あとがきもどき・短歌詠むこと物語紡ぐこと~

この物語は歌人、笹公人さん()のラジオ番組中の発言
 
「『短歌くん』というキャラクターがいましてね。いつも短歌書くための短冊持ち歩いているんです」(註:「すのぴさんそれいて欲しいなぁって空想キャラだからね」by笹さん)
 
に触発されて出来たものである。短冊は大げさにしても、ノートや手帳に短歌や俳句を作っちゃ書き留め、ていう方はあろうし、スマートフォンでツイッターなど、こと日本においては、そのためのデバイスなのではという気すらする。
元より物語に関しては「書きたい」という衝動に駆られて書いている節があった。そのショートバージョンとして「これ短歌にまとめたい」というのも、ある程度の割合存在した。前述笹さんのラジオ番組で短歌を募集した際に、その出されたお題に衝動が反応した。で、応募してみた結果、結社へ誘われ、塩尻で3ショット、となるのである。なんぞこの急展開。
さておき、もちろんそういう流れであるから、短歌に関して積み上げは皆無である。そこで色々試した結果、結局のところ必要なのは「短歌にまとめたい」という衝動であることに帰着・回帰した。脳内で活動するエンジンも、物語紡ぐのと同じ場所である。すなわち得られる結果は天啓待ち(後述)に近い。ある意味で楽ではあるが、ある意味無理ゲーである。物語は浮かぶまま気ままで良いが、短歌は結社に属した以上コンスタントなアウトプットが必要になるからだ。最も物語自体量産が効く状況になっているので、短歌も衝動働く(何だこの似た文字3連発)ように、アンテナの感度を上げて対処しているところである。ただ、短歌の大いなる特徴は「歌」であることだ。つまりリズムがある。物語は速度もリズムも好き放題コントロールできるが、短歌はある程度束縛する。ただそこに如何にして突っ込むか、が醍醐味とも言える。共通点は「稠密さ」と書けるか。だらだら引き延ばそうとしたらいくらでも伸ばせる。美少女だと表現するのに産毛輝く白い二の腕とか始めればエロスまでくっついてくる。だが本質とは無関係だからバッサ切る。冗長を切り落として本質を純化結晶し、それで臨場感備えればベストと言えるか。さて私はどっちについて述べたでしょう。ね?一緒でしょ?百枚二百枚引きつけて引っ張れば勝利。三十一文字から無限を見せればまた勝利。オレの場合ね。ちなみにこういうギュウギュウ押し込むのって、日本人古来大好きであることに注意されたい。縄文土器の文様から万葉の建築装飾から蒔絵に螺鈿、模型やフィギュアもその系統。単に精密なだけでは無い。ギュッと詰まってる。エレクトロニクスの小形化軽量化の波に乗れたのはある意味当然。
戻って。
この話では一切のコントロールを「二人」に、とりわけ彼女に任せた。プロットもシノプシスも作っていない。いやいつも作ってない成り行き任せの極北、前述の通りある種天啓待ちとすら言えるものだが、それにもまして作ってない。文字通り沸いて出るに任せて放っておいた。また、書き出すに当たり「彼女」が条件を付けてきた。BGMにうちやえゆかさん()を使えというのだ。彼女が物語の魂「言霊」だと仮定するなら、過去に例の無い「ニュータイプ」。そして仰せのままにできあがってこうなった。ぴたり20回・10月最終土曜日に最終回・しかもその日は塩尻の短歌フォーラムのテレビ放送日。偶然だけでこういう結末を迎える確率はどのくらいなんだろう。蓋然性を吟味せよってか。
以下に作中歌(川柳含む)を掲げる。基本短歌をブログに掲げるつもりは無いので(そればっか見せられたらアレでしょうが)レア。
 
レアな人友達自体がレアアイテム
どこにいる動く天然記念物触らないから姿を見せてよ
生き延びた妙(たえ)なる命よあるがまま
彼氏なぞ欲しいとも思っていなかったのに今目の前にその人のおり
吾(あ)は見たし木星の縞土星の輪今宵あなたと二人っきりで
吾の君(あのきみ)と夜の逢瀬と親には言うから
ラブラブならいいんじゃないかと思うけどあなたと私の二人の世界
一筋の光描いて天を行く天空先端研究所のあり
天才のこぶと言いたる天体を我は輪としてこの目で見たる
数多なる光と同じに見えたるも真の姿は他とは違う
目の中に手のひらの中に見えつつも実際の距離は幾十億キロ
麦わらのツバかと思いし輪のありて無数の星のくずの集まり
斜にしたシャッポをかぶったその姿次に見えるのは十数年後
星虹(せいこう)は亜光速だと君が言い星虹の如く人生を思う
幾千の星の光に守られてあなたとわたし二人の始まり

| | コメント (2) | トラックバック (0)

【恋の小話】星の川辺で-20-完結

←前へあとがきもどき→
.
「別に多重人格ってわけじゃないんだ」
「微塵も思ってないよ。いや、たとえそうであっても気にしない」
 オレは言うと、彼女の隣に座って、寝転び、見上げた。
 街中とはいえ、応じて目が慣れたのか、見える星の数は先ほどより多い。
「自分は違うんだ、って話は幼稚園の頃から朧に記憶があるんだ」
 彼女は、上を向き、髪を流し、星空に視界を向けて言った。
 悠里は川に石を投げて遊んでいる。
「変な奴、みんなそう言って、離れて行くんだ。そうしなかったのは高台君が初めて」
「なるほど」
 オレは一息置いた。
「オレは今、君の最大の秘密を聞いた」
「話したのはあなたが初めて」
 髪の毛が流れ、見つめる瞳が自分へ向かう。
「また一つ君のこと知った」
「あなたには、言ってもいいというか、言わなくちゃいけない、そう思った」
 それは恐らく彼女独特の言い回し。恐らくは、何らかシンパシー感じるところがあり、理解してもらえると確信もって打ち明けた、そんなところか。
 ならば。
「男の子ってさ、ナントカヒーローとか、好きになるじゃん。ゲーム機大好きじゃん。そうじゃない奴は置いてけぼりなんだ。同じだよ」
 夜空に向かって言ったら、風が動き、彼女の付けてるコロンか湯上がり故か、香りが漂い、白い顔と髪の毛が上から降りて来て、髪の毛がオレごと包んで唇を塞がれた。
「これは愛情表現」
 チュッと音を立てて唇が離れた。
 悠里は気付いていない。
 つまり自分達どこか一緒。オレは見下ろす女を見上げて思った。
 女の身体がオレの身体をクロスオーバー。その片手をクローバーの上に付き、もう片手でしなだれる髪をたくし上げ、
 そうして、確保された視線で、オレを見つめる。
 こいつは、女になったのだ。男の確信。
「オレでいいのか?」
「うん」
 笑ったその瞬間、少女の笑顔に戻る。
 年齢相応、中学校の同級生。
「じゃぁ、一緒に行こうか」
「うん!」
 幾千の星の光に守られてあなたとわたし二人の始まり。
.
星の川辺で/終
.
あとがきもどき

恋の小話一覧へ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-02-

←前へ次へ→

 
〈いっぱい、落ちてるんだ。落ちてたから、その……〉
 ネズミの一匹が言いました。確かに丸々と太っています。まるで残飯食べ放題の都会のネズミを思わせます。こうやって落ちている遺骸を食べており、その数が多いということでしょう。
 ですが、ここは都会からは遠く離れた国立公園雑木林。最も、中を一本、この国道が貫いてはいるのですが。
〈私らは放置したりしません〉
 ネコが自らの潔白を主張するように言いました。その言い分、ちょっと人間の皆さんにはショッキングですが説明します。
 ネコは自分の子供が死ぬと食べます。
 臭気で存在を他の肉食獣や猛禽に察知され、生きてる他の子供が襲われたら元も子もないからです。
「疑ってはいませんよ……あなたは無実です」
 私は応じ、仔猫の遺骸をすくい上げ、老犬にも頷いて見せました。
「この子は、どこからか持ち込まれたものでしょう。この周りには何もありませんからね。あと、残酷な話ですが、人間さんには捨て猫するより殺してしまった方がいい、という理解しがたい考え方の向きもおられるようです。そういう人が夜この場所を捨て場所に選んでいるのかも知れません」
 私は言いました。ただ、継続的に、というのは可能性は少ないでしょう。一人が連続であれ、入れ替わり立ち替わりであれ。
 意図した何かの介在を感じます。
〈人間に敬語なんて〉
 ハクビシンが吐き捨てるように。まぁ、彼らは生息範囲を人間さんに翻弄された割に“駆除対象”とされていますので、応じた反応でしょうか。
「気持ちは判るけど、まだ確証がないからね。ネズミたち、どこで良く見つかるか教えて」
〈は、はい〉
 ネズミたちは随分畏まった反応です。別に死体を食べるのは彼らにとっては通常の食行動に過ぎず、私も嫌悪を持っているわけでは無いのですが。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【恋の小話】星の川辺で-19-

←前へ次へ→
.
 救命救急という言葉が頭をよぎる。呼吸を確認して……心臓マッサージ。
「お兄ちゃん!お姉ちゃんは?」
 悠里が足をジタバタさせる。
「大丈夫だ」
 オレは自分自身言い聞かせるように声に出し、草むらに彼女を横たえようとした。
 呼吸の有無は鼻の所に耳元を近づけて。
「お姫様にちゅーするの?」
 悠里の無邪気に、バカ!と答えようとしたが、
 少なくともこの抱きかかえて感じる身体の動き、伸縮は呼吸のそれだし、なら多分心臓も動いてる。
「美奈ちゃん」
 王子様のキッス、じゃないが、オレは呼んでみた。
 少なくともインパクトはあるからだ。
 キスは昼したし(おいおい)。
 果たして、小刻みな震えは収まった。
 が、目を開ける気配はない。
 失神しているのともどうも違うようである。なぜなら失神なら力が抜けてぐにゃぐにゃになるからだ。何らか過敏な意識反応を起こしているのだろう。トリップしているという奴だ。
 などと思いながら、女の子の顔ここまで間近でじろじろ眺めたのは初めてだと気付く。いわゆる美人でも可愛いでもないが、何だかんだで大和撫子である。ただ、少し青白いような肌の色は、苦労してるというか寝不足なのではないか。
「ひとりでずっと抱え込んでいたか」
 呟いたら、彼女はゆっくり目を開けた。
 そして涙ぼろぼろ流し始め、ぼろぼろ流しながらオレの腕の中にあった。
「お兄ちゃん泣かせてる!」
「ううん、違うよ」
 囃し立てるような悠里の物言いに、彼女は静かに一言。
 身を起こし、クローバーの上に体育座り。
 更に三つ編みを解いてしまう。さらりと広がって流れ、彼女の横顔を覆い隠す。……隠すことが目的か。
 するとまるで別人の体である。静謐さをたたえた、年齢相応以上大人びた若い娘の肖像をオレは見ている。
「星虹(せいこう)は亜光速だと君が言い星虹の如く人生を思う」
「オレはそばから離れんよ」
 これでいいだろう。
 
(次回・最終回)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

けだもののそんげん【目次】

【あらすじ】

国立公園横切る国道沿いに丸々と太ったネズミ。何を食べてそんなに大きく。
その理由を知り、彼女は震撼し、そして、怒った。(全32回)

01-05 06-10 11-15
16-20 21-25 26-30
-31- -32・終-

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-01-

←妖精エウリーシリーズ一覧次へ→

 
註:かなりショッキングです~エウリーより
 
 
 家畜を飼育、という歴史は、現生人類ホモ=サピエンスの創成当初に遡るとされます。
 その歴史の半ば、7万年前、ホモ=サピエンスは大規模な地殻変動で絶滅の危機に瀕します。しかし、そこを乗り越えてなお、ペットが人と共にあるのは、人類の皆さんを繁栄たらしめた根幹が博愛の精神にあり、それが彼らにも向けられたことを傍証します。
 しかし。
 21世紀、日本。
〈この森なんですがね〉
 老いた野犬が耳打ちするように私に言いました。もちろん犬は人語を話しませんが、そう話したように私には認識できています。
 私が人間ではないからです。テレパシー能力。
 ここは夜闇に埋もれた国道の駐車スペース。あるのは灯火の壊れた公衆トイレ。そしてベンチ一つの休憩所。元は屋根があり自動販売機なんかもありましたが、洪水で流されました。
 そのベンチに座っている女が一人。私です。白い装束で背中には翅。
 人間型生命体ではあります。されど翅でお判りのように人間ではありません。
 妖精、と呼ばれる種族です。名前はエウリディケ。ギリシャ神話のニンフの血を引き、ゆえに身体は基本、人間サイズ。但し、ケルトのフェアリの血筋も引いており、彼ら同様手のひらサイズにもなれます。
 対して、私の周りには件の老犬、ネズミ数匹、野良猫とハクビシン。
 仕事が動物たちの相談相手ですので、こうして一緒にいること自体は不思議ではありません。ただ、今夜はちょっと尋常ではありません。
〈ほれ〉
 老犬に促され、野良猫が口にくわえたものを私に見せます。
 仔猫の遺骸。
 経緯を説明して言うには、最近、付近のネズミ達がぶくぶく太りだした。何食ってるのかと発見した現場にあったものがこれ。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【恋の小話】星の川辺で-18-

←前へ次へ→
.
 正直、中学生の女の子と話すのにここまで細かい話が要るとは思わんが。
 知ってること、全部、話した方がいいように思うのだ。
 知りたいと思っているだろうから。
「ドップラー……効果?」
 彼女はそっちに興味を示した。接眼レンズから目を離してオレを見る。
 の、オレたちの視線の間に割って入る悠里。
「ハイ!あたし知ってる!死ぬ前に出てくる自分のオバケ~」
「そりゃドッペルゲンガー。ドップラ……」
「救急車のサイレンなんかが急に低くなるあれだよね」
 ドップラー効果自体の説明は必要ないようだった。
「光でも起きるの?」
「波動だからね。だから、光の速さに近いような高速宇宙船で星の海を進むと、近づく星は青っぽく、今まさに抜こうとする星はくるくる色を変えて赤になって、去って行くに従い見えなくなる、だろうと言われてる。星が虹色に変化するのでスターボウ(starbow)」
 わぁ、と彼女は言った。
「スターボウ……なんて響き。レインボウ、ムーンボウ、スターボウ。太陽と月と星と全部揃ってるんだ……」
 言われて、ああそうか揃ってるなとオレの方が逆に感心した。空で輝く連中みんななにがしか虹現象を有しているわけだ。ちなみにムーンボウとは日本語では月虹(げっこう・つきにじ)と書き、月の光で生じる夜間の虹のこと。月光が淡いこともあって極めて珍しい。
「ねぇお兄ちゃん。お姉ちゃんが変」
 今更変は百も承知……と思いつつ、そういう意味じゃ無いとハッとし彼女を見ると、祈るように両の手を組み、上半身のけぞらせてガクガク震えている。
 昏倒しかかったところでオレの腕が間に合った。抱き留めると固まったように動かない。
「おい安達、安達美奈!」
 揺するが変わらず。
 何が起こった?
.
(つづく)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【大人向けの童話】どくろトンネル-8-終

←前へ大人向けの童話一覧→
.
 墨で書かれた便箋であって、崩し字でサトルには読めなかった。ただ、表題の「遺書」本文中の「未来」、そして「技術」だけは読めた。そこに髪の毛が数本挟んである。
 すると、おまわりさんは、気を付け、をして、帽子を胸にし、深々とお辞儀した。
「承りました。旦那様におかれましては長い長い間のおつとめ大変ご苦労様でございます。こちら、一旦『行旅死亡人』(こうりょしぼうにん)として書類上の手続きをさせていただき、その事後対応という形でお帰りいただくことになろうかと思いますが、それでよろしいですか?……その、こういう言い方はまことに申し上げにくいのですが、いわゆる検死という手続きを行う必要がありまして」
「ええ、それでよろしゅうございます。法律に則り粛々と手続きいただいて構いません」
「判りました。では所轄部門へ連絡を取ります……ええっと、悟君は、じゃぁ、この友達と帰れるかな?」
「はい、もちろんです。僕のためにお手を煩わせてしまったようで申し訳ありません」
「構わんよ。それが自分の仕事だからね」
 家へ連絡し、サトル達は橘さん、警察官と別れて細い道を戻り始めた。
 もう日が落ちる。先頭に立って草むらをサクサク歩く。
「あのさぁ……」
 後ろから、タカシが声を出す。
 何があったのか教えてくれ、と言うので、サトルはトンネル工場のことを話して聞かせた。
「爆撃を受けた後、死んだ人を探すとかしないで、そのままトンネルにしちゃったのさ。で、その時埋められた部分が地震で崩れて、あの人の旦那さんがようやく見つかったんだよ」
 サトルは仲間達の足音が聞こえないことに気が付き、振り返った。
 3人少し離れて立ち止まっている。
「どうしたんだよ」
 サトルが戻ると3人は涙ぼろぼろ流して震えている。まるで溺れた子猫みたいだ。
「見たんだよ、オレ達」
「何が」
「兵隊。トンネルでさ『ああ、やっと帰れる』って男の兵隊が歩いて行って、消えたんだ」
.
どくろトンネル/終
.
大人向けの童話一覧

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【恋の小話】星の川辺で-17-

←前へ次へ→
.
「ううん、まだ早い。これでこの他の星見たら爆発しちゃう」
 トランジスタ。それはある電圧を超えると急激に電流が流れる。なのでスイッチに使われる電子素子。彼女の感性、ものの見方も恐らくそれに近い。あるレベルを超えると急激に。
 でも単なるスイッチオンで終わらせたくない。オンで終わらない。
「小さいね」
 しばらく眺めて、彼女は言った。
「接眼レンズ変えればもう少し大きくなるけどね。像がぼやけるし歪む。都会の限界」
「地球より何倍も大きいのにね。視界の中に小さくぽつんと」
「それでも倍率90倍」
「遠く遠く、見た目は他より少し明るい。でも私たち太陽系の仲間。46億年前同じ星屑の中から生まれた大きな兄弟」
 独り言を言っているんだと判ったので黙っていると。
「で、合ってるよね」
「その通り。それこそ土星のようなディスク状の集まりから地球は生まれた。ただ、土星の輪は後から粉々になった奴じゃないかとも言われてる。だったらやがてバラバラになって飛び散るから、我々が輪を見ているのはたまたま見えてる幸運な時期に生きてるため、という説有り」
 一問一答でも独り言でも無いのだ。知らないこと吸収したいのだ。オレはそう思って一方的に話した。
 で、理解した。これで別の星見たら“爆発”しちゃう。の真意……把握しきれない。好奇心、吸収意欲が制御不能になる。
「輪が無くなっちゃう?」
「億年単位の話だけどね」
「億年か」
 彼女は言い、望遠鏡から目を外す。
「この空って億年掛かって届いた光で満ちてるんだよね。暗いから見えないけど」
「その通り。遠い天体ほど宇宙膨張の影響を受けて高速で遠ざかる。だから、光自体がドップラー効果によって波長を引き延ばされ、色が赤い方へ、更に赤外線へ変わって見えなくなる。一番遠いのは今のところ日本の『すばる望遠鏡』が見つけた128.8億光年」
.
(つづく)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【大人向けの童話】どくろトンネル-7-

←前へ次へ→
.
 女性は近寄り、跪き、背を向いている服を返して胸元を見た。
 カラカラと骨の動く音。縫い付けられた名札。「橘」。
「橘弥太郎(たちばなやたろう)。私の夫です」
 気が付いたらサトルも一緒になって正座していた。
.
“どくろトンネルに肝試しに行こうぜ”
.
 これ、戦争で亡くなった人をどれだけバカにした物言いだろう。
 戦争は恐ろしい。戦争はしちゃいけない。世界の平和。
 教科書に書いてある。親が言う先生も言う。
 うんうんと頷く。判った判った。
 逆に言ってみる。戦争が起こると言うこと。
 オレ達、全然判ってない。
 どころか、とんでもなく“死ぬ”ってことが判ってない。
 サトルは泣いた。わんわん泣いた。ごめんなさいとか、バカだったとか、そういうのがぜんぶごちゃ混ぜになって、大泣きになってしまった。
「あらあらボク大丈夫?」
 涙ダラダラ鼻水ダラダラ。みっともないの極値。
 でも、でも、こうやって、戦争の中でそれこそ“放ったらかし”にされてたのに比べたら。
 その時。
「あーいたいた!」
「おい!サトル!大丈夫かお前」
 仲間の声に顔を向けると、タカシ、タイヨーとカケル。
 それに、おまわりさん。
「お前探したんだぜ途中で……うわガイコツ!!」
「黙れ!」
 サトルは思わず怒鳴りつけてしまった。
 タカシもタイヨーも、カケルも、感電したみたいにびくんとなって固まった。
「岩井悟君だね」
 おまわりさんが話しかけて来、一旦帽子を脱ぎ、ハンカチで額の汗を拭う。
「そうです」
「失礼ですがそちらは……」
「橘佳枝(たちばなよしえ)と申します。この骨の者の妻です。こちら折笠山第一隧道(おりかさやまだいいちずいどう)工事において行方不明になった夫を参っておりました際、こちらのお坊ちゃんに道案内をいただき、聞けば先の震災の故とか、崩壊しておりまして。えー今は骨や髪の毛から遺伝子鑑定が出来るとか。ここに生前の髪の毛を持っておりますので、これで是非に」
 おばあさん……橘さんは紙を一枚取り出して開いた。
.
(次回・最終回)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年9月 | トップページ | 2013年11月 »