【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-02-
「不味い?」
尋ねるおばさん……青年の母親に対し、
「いえ…」
彼女は首を左右に振った。今、彼女は体調の不良に見舞われている。全身が気だるく、火照る感じがあり、他方で下腹が固まったように弱く痛み、その部位だけ冷感もある。身体全体はぼーっと熱いのにそこだけ冷えた石を抱えたような。
それらは過去に無い不快な感覚。
ただ、病気であるという感覚はない。そうであればそうと直感する。一方で恐らくは、例えば傍らの青年に訴えてもすぐには理解されない何か、であろうという確信がある。
何なのだこれは。
すると。
「体調崩したか?今回お前さんずっと鈍い感じだぜ。疲れてるんじゃないか?先週はソマリアだっけか。そのせいじゃないか?」
彼を見る目線に気付いたか、青年が箸を置いて尋ねた。その会話に足を止め注目する店員。青年は手を左右に振って用は無いと示した。
「なの、かなぁ……」
そうかも知れないな、程度の認識で、彼女はゆるく頷く。そして、首を傾げる。ソマリアというのは参加している国際医療ボランティア、EFMM(European Free-will Medical care Mission:欧州自由意志医療派遣団)の活動で訪れた同国首都モガディシオ近郊。名にしおう激戦地・無法地帯であって、防弾着を着用の上、対空ミサイル背負った傭兵を24時間護衛に立てた。そういう状況なのでスタッフも3日で交代、だったが、その72時間ずっと極限の緊張状態にあったというのが率直なところ。もちろん、殆ど寝ていない。寝るなど怖くて出来ず、一方ひっきりなし運び込まれるケガ人もあり、その対応で疲労や恐怖をごまかしていた部分も。
空路目を閉じたが、体調を崩してもおかしくないとは思う。青年が心配そうに自分の額に手のひらを伸ばして来る。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -07-(2021.02.24)
- 【理絵子の夜話】サイキックアクション-01-(2021.02.20)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -06-(2021.02.10)
- 【理絵子の夜話】聞こえること見えること-04・終-(2021.02.06)
- 【理絵子の夜話】聞こえること見えること-03-(2021.01.30)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -07-(2021.02.24)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -06-(2021.02.10)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -05-(2021.01.27)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -04-(2021.01.13)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -03-(2020.12.30)
コメント