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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【130】

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 気恥ずかしいがそれは真実なのだろう。経験はないが、〝恋心〟がそういうものだと容易に想像が付く。恋する女は美しいという物言いが納得できる。血の巡りが活発化し、代謝も良くなる。
「まるで魔法。そうあなたは魔法使い!」
 奥様は納得したようにハイトーンの声で言い、手を叩いてパチンと鳴らした。
 快活そのもの、と言えるその音は、回廊を行き交う人々を、さすがに幾人か立ち止まらせるに充分だった。その立ち止まった中から一人、進路を変更して歩いてくる老男性。
「ほほう……あなたが、その魔法の看護師さんというわけですな」
 医師であろう。白衣の男性が、古風な発音の英語で話しかけ、ゆっくり歩いてくる。薄くなった頭部、度の強い老眼鏡、ふくよかな頬や顎の回り。
「あら見つかったしまったのね。所長さん」
 悔しそうな奥様。
「初めまして。こういう者です」
 レムリアはウェストポーチからEFMMのIDカードを取り出し、所長と呼ばれた老男性に提示した。
 所長氏は老眼鏡を上下に動かしながらIDカードを覗き込み。
 目を見開いた。
「おお。……これはこれは。足をお運びいただき光栄です。ハイネス。いやマジックショーの姫君がなんと……まぁ、ここで声を大にする物でもありますまい」
「あら。所長さんは殿下のことを……」
「ええ、誰もを元気にする奇蹟の姫君、ミラクル・プリンセスってね。我々の前にいるこのキュートな姫君はそれはもう伝説です。マダムがそこまで快復されたのはある意味当然かと。そうかそうか。殿下の魔法の秘密が判ったぞ」
 所長は笑みを見せた。
 その言いぶりは褒めすぎであって本来照れるべきであろう。しかし、その言葉には本質的な気付きが含まれていると知り、レムリアはただ「恐れ入ります」とだけ返した。この所長氏は、自分が今回、この施設にこれまで無い物を持ち込んだと理解したのだ。
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(次回・最終回)

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