アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【66】
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子ども達を詰め込んだ状態で船はひっくり返り、水面上に出ている船底に男性、否、男が2人立っているのだ。幸いにも水槽の蓋は水圧の故かまだ開いていない。ただ、子ども達の心理をテレパシーで捉えられないのが気がかり。
何が起こっているのか。
自分の経験が導く答えは一つ。
「人身売買」
セレネが呟いた。レムリアの認識もまさにそれ。海賊が船を襲ったら、たまたま子どもの密輸船だった。
『船長どうする』
甲板の声。子ども達を助け、双方の男共を拘束できるか。
何であれ、使える時間は短い。
船長が応じる。
「シュレーター。光圧シールド解除」
「了解」
光圧シールドが解かれた。
書いた通りそれは船の姿をカモフラージュするためにも用いられる。解除はすなわち、海賊船の傍らに帆船が忽然と姿を現すことを意味した。
当然、海賊達は驚愕の瞳を帆船へ向ける。
その瞳に映ったであろう、帆船と、その甲板上から向けられた2挺の黒い銃。
銃。2人が肩口に据えているのはレムリア自身の背丈以上ある長銃である。ラングレヌスの方が更に二回りほど銃身が太い。この船が装備している救助活動を支援するための工作機械だ。銃の姿をし、同様の機能を持った。
唐突すぎる状況に海賊達の動きが凝固。
「やれ」
アルフォンススは短く言った。
その一言に、レムリアはハッと目を見開いてアルフォンススを振り返った。そういう声を出したかも知れない。
2人の銃口からそれぞれ緑と銀色が生じる。緑色は光条であり、チカチカと数瞬にわたり線を描き視界を走り、他方銀色は光が走った後、パンと弾けるような音を寄越した。
海賊が叫び声を上げる。彼達の手にしたAK47は銃身が溶解した。
次いで銀色の光は海賊船甲板に幾つもの穴を穿ち、穿たれた穴からは海水が滲出する。
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(つづく)
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