« 2013年11月 | トップページ | 2014年1月 »

2013年12月

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-09-

←前へ次へ→

 

「そりゃお前、下心はあったさ。でもギラギラしてればあっさりバレる。それだけってのは女の子感づくもんだ。大体お前、女の子と付き合うって“それ”だけか?」
 父親の真意はさておき、そのセリフは相原の視点を少し変えた。そもそも生理は“命のシステム”の一部のはずだと。
 友人達が“それ”だけを求めて下世話な雑誌を鼻息荒く読み回す一方、相原学は図書館へ向かった。図鑑を見るのが好きだった手は自然とそのワンランク上、学術書に伸びた。生物、医学、看護。
 得た知識は……彼自身予想外なことに、考古・天文・地球物理学と有機的に結合した。

 

 壮大な地球生命38億年の歴史が燦然と姿を現したのだ。

 

 こちらは少し解説を加えたいと思う。地球生命は少なくとも38億年より以前には既に存在したことが判っている。多細胞生物となり、顕微鏡レベルを脱するのは6億年前ごろからである。その間、約30億年。生物は母なる海に抱かれ、たゆたい、しかし確実に全地球へ広まって行った。生命が地球上一カ所で生まれ拡散したのか、似たような条件を備えた各所で生まれ、混交を繰り返したのかは定かではない。ただ、追って多細胞生物へ進化する礎となる、“異なる生命同士の出会い”は、確実に繰り返されたものと見られる。その一つの証明が、細胞中に取り込まれたミトコンドリアである。ミトコンドリアは諸生物細胞中に共通にあって代謝を担い、所要のエネルギを産出するが、ミトコンドリア独自のDNAを有する。これは、ミトコンドリアが元は別の生命体であったことを意味する。
 一方、深海調査等の成果から、原始生命は深海底の噴火口など、非常に条件の限られた場所でのみ生息したことが判っている。従って、深海レベルに達するダイナミックかつ高速な海水移動が生じないと、原始生命同士の接触はあり得ないはずである。しかし、現在観測される深海水の動きは非常に緩やかであり、生命間接触を生じさせるエンジンとは考えにくい。実際、現在も原始のままで残る生命は、その生息場所から動いていない。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-11-

←前へ次へ→

 
 普段はひたすらに温和で優美で。
 しかし、その言葉から発せられた峻厳さは、人間さんが“自然の猛威”と受け取る感覚そのもの。
 青天の霹靂。
「あなたの念動力を解放します。応じた権限を与えます。あなたは、あなたの意志のままに力と権限を行使し、全てをつまびらかになさい。心ある人々の目に触れさせなさい。翼の方々には私から伝えておきます」
 込められた言外のメッセージが一つ。人間に見られても構わない。
 私たちは基本的に人間さんとのコミュニケーションを許可されていません。これは人間さんが“妖精の存在を認めない”としていて、これを覆す権限が私たちにないからです。
 だからこんなことをを聞いたことがあるはずです“妖精が見えたと思った瞬間見えなくなった”。これは、そうした制約に伴うものですし、応じた超常の能力を私たちは与えられています。されど、私が象徴的ですが、翅の有無以外は基本人間さんと同じ外見。これは、往時同じ空間に暮らしていた裏返し。実際、ギリシャ神話にもありますが、ニンフの仲間には人間さんと夫婦になった者もいます。
 でも、この場合は違うでしょう。
 構わずなすべきことをせよ。
「承知いたしました」
「任せます。最後に確認と連絡です。まず確認です。人工構造物を相手にします。あれは持っていますね?」
「はい」
 あれ。それは妖精にあるまじき、とある機械です。追って使うことになるでしょうからその時に紹介します。
「なら結構です。連絡はこちらです」
 ガイア様は言い、映像付きのイメージが送られてきました。
 地上でさっきの動物たちがそのまま待っている。
「これは」
「彼らに事象を伝えました。そうしたら、あなたを手伝いたいと」
 つまり、動物たちと協力し、事実を白日の下に。
「判りました」
 私は答えました。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-08-

←前へ次へ→

 

「それもそうか。……ああ、上がったみたいだね。お前には自室警備員を1時間命じる。引っ込んで出てくるな。彼女と話がある」
「承知」
 相原学は立ち上がった。のだが、母親が呼び止める「ああちょっと待った」
「何?」
「私の部屋の本棚の推理小説の後ろに、“妊娠と出産”って本がある。その中に“パパになるあなたへ”って夫向けのコラムのページがあるから目を通しておけ」
「だからメカニズムは知ってるって」
「教科書や学術書に“心”のリズムまでは書いてないだろうが。ほれ、早く消えて失せろ」
「へいへい」

 

 

 生理・月経について本稿で解説を加えるつもりはない。ただ、相原が小学5年生だったか、男子を追い出して行われた“女子達だけの特別授業”の中身が何か知ったのは、中学に入ってからだ。“性”に興味を持った男子達が“情報交換”を始めたことで、ようやく“だからあの時”……と察したのである。そして昆虫や動物に言う交尾との同一性はすぐ理解した。
 男の子であるから、それこそ彼女に話したらひっぱたかれそうなことは一通り手を出した。本もビデオも見まくった。男性器官は文化や時代・価値観に寄らないあからさまな野性であって、御して従う代物ではない。スポーツで発散するとか保健体育に書いてあったが、書いたヤツはバカじゃなかろうかとしか言いようがなかった。身の回りで何十人という単位で、次々“色香”を放ち始めるのだ。ムネに太ももに、のみならず本当にいい匂いがするのである。教科書通り発散したって翌朝には見事にリセット。あの曲線織りなし構成される肢体の美、それが制服に包まれ振る舞うの芳香は豪奢な景の一言。
 やがて目が離せなくなった少女が現れ、それが恋と判って思いを告げたがあっさり振られた。何度も失敗を重ねる過程で、父……故人……に、母とのきっかけについて尋ねた。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-10-

←前へ次へ→

 
 今回は違いました。
 人間さんのサイズで、同様にtogaを纏った姿で立って待っておられました。
 身長はすらりと高く栗色の長い髪の毛。私は人間サイズで170センチあるのですが、その私が見上げる程の背丈。実数値に起こすことは失礼かも知れませんが、イメージのために敢えて書けば2メートル近くあります。そして、その、面持ちは、不思議な感想になるかも知れませんが、満月の輝きの如く。
「大変な思いをしましたね」
 ガイア様は膝を折り、腕を広げ、犬猫達をお迎えになりました。
 それだけで全部を把握されたようです。犬猫達を両腕に抱えて立ち上がります。
 犬猫7匹を一度に。この際、犬猫達の身体のサイズが変わったのですが、ガイア様の腕の中にあって何故かを問うのは野暮というもの。
「エウリディケさん」
「はい」
「いえ、拝跪の姿勢は不要です」
 片膝突こうとする私を制し、ガイア様は言いました。
 そういう儀礼などどうでも良い……事態は深刻。
 私は気付いて顔を上げました。
「恐ろしくおぞましいことが生じています」
 送られてきた“ビジョン”は衝撃という次元を越えた内容でした。
 勇気を持って書きます。死んでしまった、或いは病気等で商品価値の無くなったペットを“エサ”に加工している工場なのです。
「人間同様に弔ってあげたい。そういう気持ちに乗じた悪徳な業者も結託しています」
 ここで人間の皆さんに一言申し上げておくとすれば、ペット販売、および葬儀墓地を運営する企業はよく調べた方が良い、でしょうか。採算悪化でペットを放置し夜逃げ、などのニュースはまま見聞きすると思います。
 私は拳をギュッと握りました。皆さん看過できますか?
“いいえ”ですよね。
「暴きなさい」
 ガイア様は一言おっしゃいました。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-07-

←前へ次へ→

「お説高尚だな母殿。とりあえず……彼女のことは好きは好きだ。本人にもそう言った」
「愛情って意味か?将来を見据えてか?」
 母親の言葉に相原学は少し瞠目。
「将来て結婚て意味か?」
「当たり前だろうが。それとも、そんな中途半端な気持ちなのか?」
「いや……」
 相原学は目線を外し、小さくため息、そして舌打ち、
「しょうがねぇなぁ。俺個人は就職できた以上、社宅がどうの給与水準がどうのは常に考えております。でも14の娘にそこまで意識させるもんでもねーだろ」
「それはどうかと思うけどね。日本の法律は16で結婚できるんだぞ?」
「知ってるよ」
「そうじゃなくて。知り合って1年続いた。16歳まであと2年。交際続くだろうし、あっという間だってこと。だったら、そこまで考えてて普通だと私は思うし、そう動くべきだと思う。男の責任とはそういうもんと違うかい?逆に言うとそこまでで結論出なけりゃそういう仲じゃ無いんだよ」
「そんなコソコソ外堀埋めるようなマネしたかぁねぇよ。もう3年経った、それで?みたいなマネはさ。だもんで、お前は命がけで守るに値する。とだけは表明したわけ。その先は成り行き次第だろうよ」
「彼女は何と?」
「何も。だから恋愛だと確認し合って交際してるわけじゃないんだよ。正確には“はぐらかされて幾星霜”状態。好きになる気持ちなんて、まず自分がなってみて、それで初めてなった側の心理が判る、ってなもんだろ。急がせちゃいねぇし、いけねぇだろ」
「……やっぱりお義理でウチに来てるのかねぇ」
 腕組みする母親に、相原学は手先を左右にパタパタ。
「ああ、それはない。そんなことをすれば逆に……自分で言うのもあれだけど、俺を傷つけるって知ってる」

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-09-

←前へ次へ→

 
 
 その呪文はテレポーテーション能力と書けば説明は簡単です。
 実際には次元を跳躍するのですが、科学的にどうこうという説明は書けないので横に置きます。
 湖の傍らです。足下には7匹の犬猫たち。
 彼らは一見して成犬・猫の肉体を持っているように見えますが、それは魂本来の状態を反映してそう見えているだけ。
 以下人語で書きます。
「ここは」
「天国。でもあなたたちが本来戻る所じゃなくて、フェアリーランド」
 高原地帯、と書ける風景です。一面の草むら。湖があって、向こう岸にギリシャ神殿様式の城が佇んでいます。実際標高は高く、雲がその草むら表面すれすれを滑って行きます。空気は概して冷涼。
「遊びたいかも知れないけれど少し待って。会ってもらって、状況を説明して欲しい方がいらっしゃる」
 目指したのはそのお城。中に女神様がおいでです。名をガイア。
 Gaia。言わずと知れた地球自体の精霊。
 天使さん達は人間さんの指導・後見が任務です。比して地球という生態系全体の庇護者がガイア様です。
 テレポーテーション。
 城の入り口、列柱ホールの片隅窓口に声を掛けます。
「重要な用件だとはガイア様も既にご認識です」
 若い彼女は答えて頷きました。私たち妖精、中でもニンフ族は、人間さん同様に19歳位まで成長し、以後そのままの姿で千年、となります。その点で私は19歳より210年ほどが経過。比して彼女は本当の新入りさんでリアル17歳とか。
 許可が出たのでホールに遊ぶ子達を集めて奥へ向かいます。複雑な回廊を歩き、奥まった空間。
 謁見室。
 四角四面の大理石の空間で、しかし窓も照明も無いのにほんのりと明るくなっています。普段ガイア様はアストラルボディ(霊体)で降臨されるので、姿が見えて会話は出来てもそれまで、なのですが。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-06-

←前へ次へ→

 

「体型が子どもっぽいってことさ。“ぼん・きゅっ・ぼん”になってない。水着を着たがらないってこと」
 相原学の物言いは古いので補足する。ぼん、は胸がふくよか、きゅっ、はウェストはきっちりくびれ、尻がまたふくよかであることを意味する。女性のセクシーなボディラインを表した擬態語である。20世紀後半くらい。
「そりゃ、あんたのことを男として意識してるってことだよ」
「そうかいな。むしろ、男と見なしてないから、抵抗なく話してる風でもあるが?」
「その医療ボランティアってのはどのくらいの割合で行ってるんだい」
「毎週末インターシティで動ける範囲のどこかの孤児院。3週に一度地球のどこか。その他に大きな災害や戦乱があればランダムに呼び出し。2ヶ月に1度はキャンプや野戦病院に1週間程度缶詰。ウチに寄るのは海外からの帰り」
 この説明には若干ウソがある。追って説明する機会があろう。
「国際寄り道とはすごいね。さすが王女様。インターシティって何?」
「オランダの特別快速みたいな列車。アムステルダムから半日の範囲に出かけるって」
「なるほど……いいかい学」
 母親は無意識に、であろう、声を小さくし、
「なんじゃい」
「意識してると悟られないように、デリカシーを持って普通に」
「そりゃ、そのつもりだが」
「あたしゃ明るく笑ってるあの子が好きだよ。あんた以上にね。のほほんとしてる彼女はこの上なく素晴らしい。文字通り姫だ。世界に誇るべき姫様だ。子供達共通の宝だ」
「そういうことは本人に。だから世界中に友達がいるよ」
「そんなこと想像つくさ。重要なのは、その彼女がなんでウチにはお泊まりしてくれるんだってこと。要するに安心してくれてるわけだろ?お前の言動、対応如何では彼女の安心を奪うことになる。知っておくべきだが触れて欲しくないことなんだ。あんたと彼女の関係がそういう状態ならね。最も、夫になるとかステディな仲なら、逆にそれで話し合えない方がおかしいとは思うけどさ。お前、男女交際の経験無いだろ?その辺が心配なんだよ。経験も傷つきもせずいきなり昇華できるか?」

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-08-

←前へ次へ→

 
 すると口々に。
〈判らないの。何も見えなかったから〉
〈見えた時には箱の中に入っていたの〉
〈お店にいたの。みんなカワイイねって言ってくれたの。でもそのうち『もうダメだ』って言われて箱にポイって。痛かった〉
 三番目のテリアの子は推定ができます。販売用血統書付きで、
“期限切れ”
 判らないのは他の子達。すると。
〈私どもの基準で言えば、このマンチカンは親が食べてしまいます〉
 ネコが一言。つまり病気の子。
 要するに。
〈みんなおいで〉
 霊体を抱きしめるという行為が適切な表現か判りませんが、悲しみと、ねぎらいと、謝罪の念で私は幼き魂達を囲い込みました。この翅霊体に触れることが出来ます。
〈何で泣いているの?〉
〈何で謝っているの?〉
〈翅あたたかい……〉
 理由を説明しなくては。
 あなたたちは捨てられた。
 捨てられて処分された。
 売り物にならないから捨てられた。
 そして、死んだ。
〈だから、君たちを見ることが出来る人間さんは、他の動物たちは、少ない〉
 余りのひどさに息が苦しくなります。一般に死を理解し、安心と安寧を自覚した意識は、意識だけの世界……天国へ昇るわけですが、生まれて程なく、何の感情も愛も無く、機械的に殺されたこの子達にとって“安心”とは何なのでしょう。
〈行けるなら行きたいです〉
 誰かが言いました。私が思い浮かべた天の国。
 妖精の本拠、と言うべきでしょうか、通称フェアリーランドは天国の一角にあります。そこでは、何らかの生命体は生命体として好きな姿を取れます。ただ、死を自覚せぬままそこへ昇ると、その時点での滅び行く肉体の姿で彷徨うこともあります。
 彼らが、今ここで、肉の身を無くしたまま、死を知らず彷徨うように。
〈そこには、みんないるの?〉
〈ええ〉
 そう答えたら、幼い意識は一斉に同じ意図を示しました。
 すべきことは一つのようです。私は腕や肩の動物たちに降りてもらいます。
「送ってきます。そして、ここが何なのか暴く必要があると思っています。人間さんの産物に手を加えるので許可をもらってきます」
 幼き魂達を抱え、呪文一閃。
「リクラ・ラクラ・シャングリラ」
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年11月 | トップページ | 2014年1月 »