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2014年1月

【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-16-

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 二手に分かれます。ナイアデスには動物たちと一緒に現地に向かって歩き出してもらい、その間に私が空から超常感覚の限りを尽くして構造確認。
 施設の監視センサービームは天へ向けても放たれ、旋回していました。それは人間サイズなら応じて引っかかりもしましょう。しかしこちらは身体を縮めて昆虫サイズ。
 能力が捕らえたのは何の変哲も無い森に見えます。ただ、多分に“嘘くさい”雰囲気ふんぷん。
 透視して施設は地下です。ついでに施設ができるまでの軌跡も判明します。ここは往事御影石の石切場だったのです。このため地下に大空間が形成され、そして石の切り出しはほぼ終了した。
 底が抜ける可能性があることと、資材保護の観点から、国立公園として保護された。
 そこに、こっそり、作り込んだ。名目は地下の補強。
 設備も見えましたが、何をするものかは具体的には判りません。ただ、トラック用エレベータに繋がる大きな空間があり、そこに“死”の大量を感じますので、その空間が命を奪う場所であるとは明らかです。大きなタンクが隣接埋沈されているのでガス室の類いでしょうか。
 ならば。
 施設近く、センサーの探知範囲近くまで移動していた動物達の元へ戻ります。
「処置したはずの動物たちがガス室から堂々と歩き出てくる、にて始めましょうか」
 
 
 深夜というか、明け方近く、午前3時。
 トラックがやって来ます。荷台にはコンテナがあって“産業廃棄物”と書かれています。
「廃棄物……」
「人命じゃないから」
 私の知る“法的区分”にナイアデスはショックを受けたようです。今でこそ動物虐待という文言が法に含まれますが、他人様のペットに手を掛けると“器物損壊”になります。
 搬送エレベータを待ってる間に私たちはその荷台、コンテナの上へ。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-13-

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「ひとり?」
 相原は問うた。この喉が渇くような感じは何か。
『うん。買い物だって……あの、ちょっと来てくれる?』
 昨夜来ほぼ一日ぶりの言葉のやりとり、と、相原は脳の片隅で意識した。無駄な緊張はそのせいか。
「調子でも悪いか?」
 言葉を選ぶ。腫れ物に触るような……我ながらどうしたことか。
『ううん、そうじゃなくて。大丈夫。話したいこと……あってさ』
 そんな状態の少女の部屋に男訪のうていいのか。相原は自問した。しかし断るのも不自然。
「そうか、判った。行くわ」
『待ってる』
 嬉しそうにも、頼っているようにも聞こえた声を耳に残しながら、相原は受話器を戻し、部屋を出、2階へ上がり、和室入り口敷居を軽くノックして、ふすまを開いた。
 日没直後、残照差し込む畳の部屋。
「お呼びで」
「迷惑ごめん」
 彼女は布団の中に座し、短い髪を下ろし、うつむいていた。その有様は、髪の毛と逆光を使い、表情を判りにくくしているようにも見えた。
 話題が何かは考えるまでもなかった。普通に、自然に、と言われてはいたが、この場においては無意識を装うことはかえって不自然に思われた。
 ふすまを閉め、歩いて近づく。
「お傍に来ましたぜ」
 傍らに正座する。姫に仕える侍従の口調はいつものパターン。
 彼女は相原の顔を見ない。
「生理になった」
 彼女は、そのまま、ぽつんと言った。
「聞いたよ。素敵なことだ」
 相原は姿勢を変えず、既知である旨正直に言う。
「ありがとう」
 彼女は言ったが、続く言葉はない。
 一般にこういうのは、全部知ってるからそれ以上何も言わなくていい、が理想であろう。恥ずかしいとされる内容であり、わざわざ言わせることではない。
 相原もそのつもりであったが、わざわざ呼ばれた以上、それを越えて、彼女からのメッセージがあると思った次第だ。
 

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【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-15-

 
〈ああ、久しぶりですこの感じ〉
 抱きしめられた老犬が言いました。名はケンタ。主人氏が孤独死し、行く末を感じた近所の人が逃がしたのだとか。
 出発の儀式のように、ハグが一通り終わりました。
 動物たちは準備はできた旨の意思を送ってきました。
 さぁどうしましょう。行くにせよ。具体的な作戦が必要です。
「ここは基本、死んだ動物か、死なせることを前提に動物を運び込みます」
 対象を声出し確認しながら念動力のチェック。大したパワーはありません。右腕を持ち上げ、拳を作り、見えない何かに手の甲を向け、その手の甲を叩き付けるように振り下ろすと、アスファルトが銃弾受けたように衝撃し、クレーターが生じて煙。
 “力の塊”を出せると書けば判りよいでしょうか。
 動物たちは一様に大きな驚きを見せました。
〈妖精の怒りの魔法〉
 ネコの表現。
「そういう名で伝わっているならそうしておいて」
 魔法。
 死ぬが前提、そこに、魔法を持ち込む。
 ナイアデスが花咲くように笑顔を見せました。私に訪れたアイディアの中身を見知ったのです。
「ここは基本、死んだ動物か、死なせることを前提に動物を運び込みます」
 今度は動物たちに説明するために。
「なので、生きている動物が、存在してはならない場所にいれば、応じたパニックを作り出すことが出来ます。まず、それをみんなに協力してほしい」
〈殺したはずの奴が生きてる……怖がるだろう。走り回れと〉
「そうです」
 提案に、動物たちの意識が青い色を見せます。ただ、それは青ざめるの意味ではなく、むしろ高温の炎が見せる青に同じ。
 静かだが強い、言わば義の力。
〈我々に出来るのであれば〉
「ありがとう」
 決まれば作戦を練ります。まず、全容の把握が必要でしょう。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-12-

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 そして大学在学中、就職への糸口が見え始めた頃、理系の大学では少ない方だろう同学の女性にアプローチする。一般に物静かな女性というのは応じた余裕と落ち着きが背景にあり、その源の一つは知性の故に慌てる場面が少ないからだ、と書ける。比して相原は、ここに書いたようなことを脳にデータベース化している、いわゆる“オタク”であり、逆に話が噛み合うのであった。
 が、この恋は結局は成就しなかった。それは彼の経験不足の露呈であった。相手の女性が求める水準に達していなかったのである。
 彼女と出会ったのはその頃である。ハイテク満載の空飛ぶ船で極秘の救助ボランティア……その途上で救助した拉致被害者の日本人少女を連れて降りて来たのだ。実はこの出会いこそが上記彼の恋にピリオドを打つのだが、委細はさておく。以降、彼はそのプロジェクトに深く関わるようになり、応じて、彼女にとって彼の家は極東の別荘とも言える程近しい存在となり、
 遂に今日、彼女が14歳を迎えて数月、彼女は命のバトンの担い手になった。
 
 
 当初予定では、彼女はその晩“空飛ぶ船”で飛び立つ予定であったが、慎重を期し、体調が落ち着くまで相原宅にとどまることにした。精神的ショックも手伝ったか、少し貧血気味となり、翌日婦人科でビタミンや鉄剤の処方を受けた。
 “念のため病院に行った”……メールの文言に心配した相原が、フレックス退社を使って陽のあるうちにと帰宅すると、母親の姿はなかった。玄関足ふきマットにネコがいてニャアと言うだけ。それは母親の帰宅待ちのスタイルであり、実際三和土に靴が見えない。外出であろうか。
 親子電話で母親の部屋を呼び出すと、彼女が出た。この同床は何かあった時女同士の方が良かろうという考えによるもので、彼女が泊まりに来るようになった当初からの対応。
 

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【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-14-

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〈エウリーさん、黒い〉
 ネズミのつぶやき。
 黒いのはオーラライトから受ける心証。怒りは赤く、破壊の衝動が混じると赤黒く変わって行く。黒はその極北。
 つまり今、私の心は荒んでいる。
「あなたが来てくれたのはとても素晴らしいことなんだって今確信した」
 私は言って傍らナイアデスを見ました。
「え……」
 戸惑う彼女のオーラは薄紅。照れた気持ちの反映ですが、彼女の基本スタンスはショックと悲しさで、怒り狂ってる私と対極。
 そんな私を動物たちは近寄りがたいと考えているようです。詳しく言うと、心の中に暴風が吹くというか、その風の騒音で私の意図が聞き取れない……そんな状態になるようです。
 人が悪意持って近づくと動物たちが感づいて逃げ出すのはそのため。カラスなど顕著でしょうか。
 そこで。
〈あの、エウリーさん〉
 老犬が改まって。と、言っても、その時点で彼の意図するところは判明しています。
〈来るな、とか……〉
「言わないよ。他にも、手伝ってくれるというなら、一緒に行きたいと思います。あなたたちだからこそ、お願いできることも沢山あると思うのです」
 マムシの熱感知など良い例です。他にも小さい故にセンサの盲点を突ける、などいろいろ頼めることはあるでしょう。
 総意は、明確でした。
「動物たちにこんな悲壮な決意をさせねばならないなんて……」
 ナイアデスが力抜けたようにしゃがみ込み、膝を突いて両腕を広げます。
 集まる動物たちをナイアデスは一匹ずつ丁寧に抱きしめ、抱き上げて撫で回します。
 その間に私たちの間でやりとりされた幾つか。
 まず、ナイアデスが地上担当にならない理由。感情の起伏が大きすぎる。感情を殺してでも対処優先という状況に不安がある。
 対しナイアデスの今ここでの必要性。動物たちの拠り所であり庇護として。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-11-

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 後はダーウィンで説明できる。月のリズムを持つ物が選択的に生き残って行ったのだ。サンゴの放卵、カニの繁殖、そして人体。際立ったバイオリズムである女性の生理は、偶然の一致ではなく、太古より連綿と引き継がれてきた地球生命基本原理の発露、命のリレーの凝縮された一つの側面と言えるのだ。そして、人間が他の哺乳類……身近にはイヌ・ネコ、同様な霊長類であるサルなどに比して、毎月必ず受胎の機会を持つのは、種の維持にそれだけ多く機会を持つ必要があった、非常に死亡率が高かった裏返しに他ならない。異常に脳神経系の発達した人類は、その方面のダメージが容易に死に直結するのである。
 この認識は当然、相原学に女性観の転換を迫った。すなわち、38億年続く、地球生命のリレーを経た結果、女性という存在は人間という生物種におけるその最先端に他ならず、初潮とはそのリレーのバトンを持った、という意味なのだ。
 その認識は、エジプト王朝が女系であったこと、ミトコンドリアDNAが女性のもののみ継承される、といった背景と結合し、平塚らいてうの“古来、女性は太陽であった”というフレーズに収斂した。その言葉はそれこそ太陽の如く、燦然と、彼の意識に焼き付き輝いた。女性とは“地球が選んだ”生命の継承者であり、故のバイオリズムなのだ。
 最も、この観念は彼の恋愛対象を複雑にし、アプローチの手段タイミングを大きく変えた。彼の場合、まず、“下手な鉄砲”で、話はそれから、と言って良かったが、一転、声を掛けるのも容易でなくなってしまった。また、どちらかというと静謐でたおやかな気配漂わす女性を好むようになった。それは見いだした巫女性、神秘性に通ずる雰囲気を求めたのかも知れない。
 

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【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-13-

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 彼女の名はナイアデス。泉の精と言ったところでしょうか。私エウリディケも神話上は同じく泉の精霊。
 ナイアデスは窓口からそのままテレポーテーションで出てきました。
 奥の方から慌てた様子のもうお一人。
「ちょっとエウ……」
 窓口事務は担当2名。そのもう一人、名をパシパエ。新入り事務のナイアデスにOJT(オン・ジョブ・トレーニング)……だったのでしょうか。
 パシパエはふくよかな身体で窓口から飛び出さんばかりに乗り出して来、はっとしたような表情を見せました。
 並び立って見返す私たち。オーラライトが見えたでしょう。本気のそれは白く見える。
 そして、事態は、一瞬にして伝わったはずです。
「判りました。ガイア様のご下命とあれば」
 渋々承知。パシパエごめんね。
「謝らなくていい。あんたは私の誇り高き友達」
 パシパエはそう言って胸を張りました。
「ありがと、ナイアデス、行きますよ」
「はい」
 私は言うと、呪文一閃。
 戻ったのは動物たちが待っていた先のベンチです。午前1時21分。
 分かれてから40分程経過、という所でしょうか。安堵という名の歓迎の意を多数受けます。それなりに心配してくれていたようです。
「みんなありがと」
〈おや妖精さんがお二人になった〉
「彼女はナイアデス。今からすることを手伝ってくれます」
「よろしくね」
 概要説明します。内部を調査し破壊する。そしてこれが大事“白日の下にさらすこと”。
 破壊。この概念を私から聞いたことに動物たちは一様に驚きを示しました。
 確かに天国サイドの住人は“守る”“生み出す”側には立っても、逆は無い。
 ただ、自然は時に破壊を伴う。
 破滅はされるべくしてその種を見舞う。人間さんはそれを淘汰と呼ぶ。
「あっては、いけないんだ」
 私は自分に言い聞かせるように言いました。
 
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-10-

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 では、38億年前と現在海洋とは、何か異なる点があるのだろうか。相原の独断では答えは然り。その海水移動を生じさせたエンジンこそは。

 

 月。

 

 一般に太陽系惑星は太陽の副産物……端的には“残りカス”であり、各惑星の従える衛星は、その更なる残りカスである。よって当然、衛星は惑星本体に比して小さく、例えば火星の衛星フォボス、ダイモスなど、球形ですらない。その中で地球の衛星、月だけは親分たる地球の四分の一ほどもあり、他の惑星に比べると際立って大きい。
 このため、月の出自は他の衛星と異なると考えられた。諸説立てられたが、コンピュータ演算などから21世紀初頭で最終回答とされているのが、地球に他の天体が衝突した、とされる“巨大衝突(ジャイアント・インパクト)”説だ。この衝突で地球はマントル物質までえぐり出され、そのマントル物質と、衝突した天体の物質とが地球外で集成し、出来上がった球体が“月”というわけである。これは月の物質構成、および、次の力学的性質を上手く説明できる。すなわち。

 

1.重心が偏っており、この結果、重い側をいつも地球に向けている
2.地球も月も、太古自転は早く、彼我の距離は短かった

 

 ここで着目するのは2.である。月はその引力により、地球に潮汐現象をもたらす。現在でも、有明海やポロロッカ現象に見られるように、波動の“共振”条件が整うと、大量の海水が高速で移動する。月が地球により近かったなれば、引力はより大きくなり、従い、潮汐のエネルギーは格段に大きかったことは容易に想定されよう。すなわち、ポロロッカのような巨大な波動が、巨大な月の満ち欠けに呼応し、地球全体という規模で駆けめぐった。その波動は、有明海で海底が露わになることを拡大すれば、深海レベルにも容易に達したであろう。そう、この潮汐力こそが、地球上に生命を“まんべんなく”分布させた原動力と仮定できる。しからば、太陽が父であり地球が母であるなら、月は嬰児(みどりご)を揺らすゆりかご、と言えようか。命は、その存在を月へ託すことにより、地球上に広がる……生き残るチャンスが増えたのである。

 

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【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-12-

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 ガイア様と犬猫たちの姿は既にそこにありません。無事に“召された”のだと得心します。
 なれば、私のミッション。
 城の入り口まで戻ります。後は飛ぶだけですが、視線に気付いて振り返ると、窓口彼女がこちらを見、ついで不思議な表情を見せます。
「さっきの子達は?」
 犬猫のこと。
「ガイア様にお任せしました」
「そうですか……あの、今日のエウリーさん何か怖いです」
 そこで私は微笑みの一つも作れたでしょうが。
 彼女も妖精として応じた能力を有しており、隠し事は無意味。
「何てこと……」
 私は怒りを覚えました。比して彼女は悲しみに包まれたようです。
 顔を両手で覆い、溢れ出した涙がボロボロ。
「ああ、ごめんなさい……あなたに悲しい思いをさせるつもりは無かった……」
「いえ、いいんです。何も知らない方がもっと不幸です。で……地上へ行かれるんですよね」
 ええもちろん……私は答えて消えようとして、彼女の気持ちに気付きました。
「だめでしょうか。地上の経験は確かにありません。でも、知ってしまって座して為さずなんて」
 ガイア様は、私の意のままに、とおっしゃいました。
 勝手判らぬ素人が、となってもおかしくない状況ですが、私たちは妖精ニンフ属です。その仕事、昆虫や動物たちの相談相手。
 一瞬で状況を把握する能力は必要故にDNAに。無知はハンディキャップになりません。
 必要なのは、違ってくるのは、そこから的確な結論を導く能力。
「手伝ってくれるならこの上ありません。いますぐですが来てくれますか?」
 私は訊きました。この事態、彼女が知り得てそう思う、ということは、そうすべきだという大いなる采配なのでしょう。
「はい、行きます先輩」
 彼女は立ち上がり、奥の方で別の窓口担当さんが気付いて振り向きます。
「判りましたいらっしゃい」
「はい!」
 

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