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2014年2月

【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-20-

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〈バリアは〉
〈健在〉
 ナイアデスの呼びかけが注意喚起と気付きます。そう、このバリア維持するには気を張っている必要がある。つまりは私の意識次第。あとの心配は酸素の量。ただ、妖精が消費する酸素は小さい時のサイズで考えれば良くて、動物たちも似たようなもの。恐らく問題ない。
 監視カメラが見ていると知ります。大丈夫、バリアの故に見えはしません。
 ただ、生き物であればバリアの中は見えるでしょう。それは“見る”という行為が肉眼で光学的に見ているだけでは無く、バリアの中の私たちという存在を心でも感じているから。無意識にテレパシーが働くのと同じと書きましょうか。
 いわば、幽霊が“見える”のと同じ理屈。
 12分。
 その間に私たちは彷徨っていた動物たちを、その霊を送ります。
 今ここに共にいる、肉体的に生きている動物たちと違いを認識してもらいます。
 もう、肉体は無いこと。
 飲む乳は無く、エサを食べる必要も無いし、くれる存在も無い。そして撫でてくれる手も、舐めてくれる舌も無い。
 寂しい、寄り添いたい、という気持ちが彷徨う子達に生じます。そこで、それが可能なのは“心だけが知ってる故郷”だと教えてあげます。
 太陽が照らしていても、太陽に目を向けなければ太陽の光は見えません。
 同じ理屈で、心の拠り所があることを認識させれば。
 おいでという声が聞こえたはずです。一匹……いいえ、ひとり、またひとり、と、天の高みへ向かって次元を跳躍。
〈全員〉
〈逝ったよ〉
“命奪う場所”特有の空気感が消えました。
 再びのブザーが響き、別の赤色灯が回転点滅。
 そこで私は袖口に手を入れ、先ほどのコンピュータを再び始動。
 バリアの外に出し、二酸化炭素濃度を測らせます。ドンと音がして換気装置が動き出し、風が生じます。画面の数値がみるみる下がり……ちなみに生命警告表示が出ましたが、それが消えました。 
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-17-

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「好き……って言ってくれたよね」
 言いづらい。
「はい」
 相原即応。
「愛してる。って意味だよね」
 今度は意外にスルリ。
「はい」
「女の子を可愛がる、じゃなくて、女性に対する恋愛感情って意味だよね」
「そうです」
 相原は正座不動で即応を続けた。あえて言うなら、都度頷きながら、という程度だ。多少照れても良さそうなものだが、その段階は彼の中でとっくに過ぎている……とテレパスが教える。
 むしろ結果に憂うこと無く、堂々と口に出来る段階に達していると言える。
 今さっき聞いたのがそうであったように。
 この二人出会って1年半。その旨意思表明して半年。23歳が14歳に言うには社会通念上、倫理的な問題もあろうが、二人とも特にそれを壁と認識してはいない。但し、認識していない理由は彼我で異なる。
 彼女は、まばたきを、ゆっくり、3回。
「無理して言わなきゃ、って思わなくていいぞ」
「そんなことは……」
 彼女は反射的に答え、相原は判っているんだと理解する。そう、彼女はまだ、彼に対して正面からの回答をしていない。
 歳の離れたいとこ同士のような関係。それは自分達共通認識だろうと確信している。
 こうして彼の家を別荘同然に訪れ、
 一緒にボランティア活動したり、
 一緒に秋葉原を始めとする都内各所、レジャー施設、博物館。
 世の中は男女で楽しむそうしたお出かけをデートと呼ぶのだろう。
 気がついたら手を繋いでいたり、抱きしめて慰められたことも幾度か。
 そして何より、彼は命がけで自分を救ってくれた。
 で、お断りします?
 キライ、では無いと思う。それは確信を持ってはいる。ただ、だからってこの気持ちが恋心、なのかどうかは判断が付かない。
 恋を知らないから。
 知らないから、適した回答を持たないのだ。それが彼を裏切るような気がして“怖い”のである。この“1万キロ離れたいとこ”みたいな毎日が崩れるのが“怖い”のである。この気持ちは言われるような恋のパターン……胸が熱くなる、ドキドキする、ずっと彼のことばかり考える……ではない。
 

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【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-19-

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 従って当然、“死んだ”という認識はありません。帰るべき親元や飼い主、死後導く者……つまり妖精……そのどれもが存在せず、ここにとどまって困っているだけ。
 トラック側の扉が閉まり、反対側、施設内奥側の同様な扉が開き、フォークリフトが去って行きます。もちろん無線操縦なのですが、決まった軌道を往復するでなく、機械同士が連携して動作しているわけでも無い。それは意志の介在を感じるその動きであって、言うなれば幽霊が乗っているよう。
 ブザーが鳴って赤い回転灯が点滅し、施設側扉が閉まり始めます。
 音声警告。“これからガスが出る。直ちに退出せよ”。
〈エウリーさん〉
 動物たち、とりわけミミズクから感じる不快感。同時に私の袖の中で震えるものあり。
 震えるものは手のひらサイズの液晶画面。そういう携帯電話(作者註:スマートホンのこと)のようですが、実際にはコンピュータ。21世紀になり妖精の基礎知識では判別できない人造物質が多くなり、その解析にと持たされたのです。ガイア様のおっしゃった“あれ”の正体。
 画面には。
 
 警告:根源不明強大磁力
 
 鳥たちは体内磁石で方角を感知します。これだけの磁力があれば体調もおかしくなるでしょう。
 フォークリフト側の扉が閉まります。
 音が聞こえなくなる。
 照明が消える。
 金属の箱。
 重い物が動いてきます。透視に寄れば上からワイヤで吊られた大きな円盤。
 巨大な磁石と判ります。コンピュータの言う磁力の正体。
 コンテナの蓋に吸着し、外されます。
 コンテナの中があらわになります。とは言え照明がついてるわけではなく、暗闇で赤色灯が点滅しているだけ。その周期に合わせてコンテナの中、累々たる亡骸がフラッシュ状に照らされます。
 この鉄箱の中の膨大な死。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-16-

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 彼女は、まっすぐ、相原を見た。
 相原は頷き。
「男ってすけべえです。知ってると思うけどね。なので、そういう方面は予備知識スゴイのよ。自主的に、必要以上に、激しく、勉強するからね。だから何だろ、流星群という現象があります。過去こんな風に絵に描かれてます。動画もあります。で、実際遭遇する。なるほどね、絵や動画と一緒だね。変な話それと同じ。もちろん、能力を持ったと知った以上、恋愛に伴うスキンシップのあり方について、一線と責任を有することを示すんだけれど、そのこと自体は、そういう身体になりましたってだけじゃ意識しないんだ。実際に女の人を好きになって、恋仲になって、進展し始めて、この先どうなる?と意識し始めて、それでようやく現実味が出てくる。この辺、男は本能が引き金ではあるけれども、バイオリズムに左右されないからね。最もぶっちゃけ、実際に目の前で女が裸になって、腕に抱いたらまた別の感慨が沸くとは思うが」
 彼女は、彼の言葉を黙って聞いた。
 男性の場合、理性じゃどうにもならない世界が存在すると聞く。逆に女性の場合、タイミングがどうにもならない。この辺の違いが意識差に表れるという可能性は確かにあるだろう。
 そこで彼女はハッと気づく。そのために彼をここに呼びつけたんじゃない。自分が自分を女であると意識している。急激な変化だがそれは間違いないであろう。受け入れて良いであろう。それは確認できた。変でもないようだ。しかし主題はそれではない。
「女だ、って強く意識した」
「うん」
 即応が返る。どう表現すべきだろうこの気持ち、言いたいこと。
「怖いんだ」
 それは確かな気持ち。でも、何に対してだろう。
 相原は急かさない。不思議そうな顔もしない。
 言いたかったこと。彼について引っ掛かっていること。
 放ったままにしてあること。
 それは。
 

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【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-18-

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 透視を働かせているのでほぼ全容は見えています。鉄板敷きの狭い通路で、トラックはのろのろ走り、ターンテーブルに載って停止。ブザーが鳴って180度回転。
 荷台がステンレスの大きな扉に向きました。赤色灯が回転点滅し、上へ吸い込まれるように開いて行きます。
 それは、逆に言うと、非常時には扉を高速で落とし、遮断できる構造。
 運転手氏が降りて来てトラック荷台の煽り戸をカチャカチャいじって開きました。
 コンテナごと扉の向こうへ送り込まれるようです。
〈どうしましょうエウリーさん。このバリアで耐えられますか?〉
 ナイアデスの問いかけ。扉の向こうは銀色の6面体。壁も天井も全てステンレス製の特殊な部屋です。壁に貼られた注意書き等からガス室と判断します。なお、テレパシーに切り替えたのは万が一にも声が聞こえたら困るから。
〈この中は次元が違うから〉
 私は答えました。開扉完了したらしく、赤色灯の回転停止。中に無人のフォークリフトがいて、意志持つように動き出します。音はしません。電動でしょうか。向きを合わせ、先端の2本のフォーク左右に開き、コンテナの下に差し入れて来ます。足の下に何かが差し込まれる擦れた音がし、ゴトリと揺れ、ふわり。
 荷台から持ち出され、ステンレス6面体の中に持ち込まれ、下ろされます。ゴトン。乱暴というか落としたのと大した差は無い。
 そしてそこは。
 
 行き場を知らぬ悲しい魂のひたすら流離い。
 
〈先にすることがありそう〉
〈ですね〉
 テレパシーによる交感は一瞬です。
 以下一度に全て終わっていますが順を追って書きます。
 ここを彷徨う魂達は私たち妖精の存在を知らないようです。野生であれば代々遺伝子に刻まれますが、ブリーディングであればそうはならないでしょう。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-15-

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 彼女は視界が歪むのを感じた。
 自分がボロボロと涙流しているのを人ごとのように感じる。別に泣き顔を見られるのがイヤなわけではないし、見られたことも十指に余る。ただ、昨今その頻度が増えていること、及び、その質が都度異なっていることを同時に意識する。
 それは恐らく、自分が変化の真っ只中にあったを意味した。ただ、そうと気がついたのは今があるから。
 彼は傍ら箱ティッシュから一枚スッと抜き、彼女に差し出す。
「うん」
 彼女は幼女のようにこくんと頷いた。
 ティッシュに涙を吸わせる。そして、そういう頷きは今が最後であり、自分に幼女との決別の時が訪れたのだと意識した。
 たった今、自分は変化の終焉の迎えたのだ。内的な完了を経て一気変身。それはさながら昆虫の脱皮、しかも羽化である。
 それは心と体が密にリンクした新しいパラダイム。こう急激に変わるものなのだろうか。身体的な変化の認識で、一気に精神的にも変化したりするものか。それこそ昆虫の変態のように。
 視界良好。ティッシュをポイ。
「へ……変なこと、訊いていい?」
 わたし何言おうとしてんだろ。
「判る範囲なら」
 相原は軽く頷いて応じる。それはいつもの、というか予想通りの反応。
 でもいいの?とんでもないこと言うよ?
「男性も、そう、なの?」
 う、うぅわっ!
「ああ、こういうことか。かな」
 相原は表情一つ変えず、言った。
 その即応性と恬淡さは彼女が拍子抜けするほど。
 それは相原が全くの平常心であることを意味した。
 これは父親の姿勢だ。彼女は得心が行った。小さな洞察と小さな驚きが彼女の心理を揺する。確かなのは少なくとも友達感覚で二人ここにこうしているのではなく、“公式設定”としているいとこ同士みたいな関係でも無い。友達や血縁者という枠に収まらない、されど近似性を有する何か。しかも、もっと強い。
 

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【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-17-

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「監視カメラとか」
 ナイアデスの指摘。コンテナに乗っている姿を見られてしまいます。
「リクラ・ラクラ・バリア」
 私は胸元の石を手にして呪文一閃。
 名の通りバリアに自分達を包んでしまいます。中は外界と次元が異なるので電子回路ごときに解像は不可。
 エレベータが到着し、ガラガラと音を立てて扉が開き、ピッピと何やら電子音。思わせるのはレジスターのバーコード。
「認証作業……厳重だよこれは」
 トラックが動きます。ゆっくり大きく揺れながら動き、エレベータケージの中へ。
「エウリーさん、天井が低いです」
 ナイアデスが気付いて指摘。トラックにコンテナ載せた状態でエレベータケージの天井一杯。
 このままでは乗ってる私たちは“そぎ落とされて”しまいます。
 仕方ありません。
「リクラ・ラクラ・テレポータ」
 テレポータ……瞬間移動……テレポーテーション。
 その行き先。
「これは……」
 ナイアデスは絶句しました。
 コンテナの中。それは山積みの死。
 バリアを解かない方が良いと私はすぐに結論しました。
「みんな病気か……天国には行けたのかな」
「いいえ」
 ナイアデスの思いに、私は、別の見解を示すことになりました。
 この骸になった犬猫達は。
「中絶です。だから、そもそも降りて来さえしていない」
 中絶、という概念が動物たちに無いので説明。
〈なるほど。お腹の中で病気だったのかな?〉
「生産数調整」
 その、殺伐そのものの、私の言葉は、“暗黒”という色イメージで動物たちに広がりました。
“ビジネスモデル”という奴です。“需要”に合わせて“生産”し“鮮度”を管理する。
 血統書付き20万円。
 トラック・エレベータが停止しました。
 再度セキュリティチェックを経て走り出します。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-14-

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 しかし、やはり、話をそこへ進めるきっかけが掴みづらいか。
 相原は自ら、但し、ゆっくりした口調で切り出す。
「昔、日本では……今もあるけど、お赤飯でお祝いしたんだ。子どもの死亡率が高かった時代に、女の子がそこまで成長した。そして、子孫への準備が出来た。純粋に二重の喜びだったわけ。今は、それで当然だから、むしろ、そういう風習を、わざわざ触れて回るなんてデリカシーのない行動!。って取る向きもあるけどね」
 彼は言い、反応を待った。
 彼女は彼の言葉の抑揚に“海”の印象を受けた。
 彼女は少し、時間をおいて。
「喜び……だよね確かに。あなた前に言ったよね。私のこと華奢で細いって」
「今は違うよ」
「そうじゃなくて。その時あたしそれ聞いて、ふーん……位にしか思わなかったんだ。誰々と比べて体格違うね、みたいな程度にね。でも、こうなってから、そういうセリフが何故か思い出されて、しかもことごとく印象が違って聞こえる。なんだろ……。
 自分、女だし、あなたも自分を女として認識してるんだな、って。えーと、言ってること、わかるかな」
 彼女は苦笑いした。伝わるかどうか心配で悔しくて、でも判ってもらいたくて。適切かつストレートな言葉がどうにも見つからない。
「俺、お前のこと好きだ」
 相原は、そう返した。
 彼女は、自分自身驚く位、身体を強くびくりと震わせた。
 首をひねって相原を見る。その顔は、相原には、少し涙ぐんだように、少し悲しげに、見えたようである。小刻みに震える瞠目が、振り返った少女を彩る。
 対し相原は特段驚いたようでは無い。正座不動のまま、彼女をまっすぐ見返す。それは彼女にとって逆に意外だった。自分の反応が通常と異なる時、いつもの彼なら『どうした、大丈夫か』と気遣って手を差し伸べてくるからだ。
「全然違うんだろ?聞こえ方が」
 それは、自分の苦笑いに対する彼の答えであった。
 

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