【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-20-
どう返事をしたらいいのか……フリースクールなので、単位さえ取れば顔出すのは好きな時で構わない。それをいいことに実はもう、一ヶ月、ここにある。相原宅で世話になる前からの話だ。学校も行っていない。当人からは避けたと取られているであろう。そしてそれは、確実に“彼”に傷を与えた。されど、素直な気持ちは更に彼を傷つける。
前はそんな事は無かった。あっさりゴメンね考えられないで断ってきた。しかし、今は、今回の彼は、それが与える傷の大きさが容易に想像できる。
是か、非か、如何にあるべきか、悩んだ挙げ句答えが見いだせず、その時間がさらに傷を深めると気が付く。
思い詰め、限界と見て衝動のままにメッセンジャーを開き、しかし肩すかし。
「頼るな。ってことか」
鉢の上、小さな花をつん、とし、彼女はアパート自室を出た。
触るだけで冷たい鉄のドアを開けると、冷涼な夜気に気管と肺が凍り付きそうになる。北緯50度。暖流が達する欧州とはいえ、12月は緯度に応じた寒さと暗さ。7時だが深夜さながらだ。マフラー巻いて口元まで覆う。
古びた鉄階段をカンコン下りる。目的地は2ブロック先のマーケット。悩むうちに夕食の買い物を忘れていた。それでもお腹は減るもんだと苦笑しつつ。
のみならず、うろついて店のおばちゃんと少し喋って、厨房に立てば気分転換、という目論見もある。
居並ぶテント下をあっちへこっちへ。結果買ったのは小エビに貝柱、キノコ類。何を作ろうって天ぷらだ。相原の母親に教えてもらった。
勘定を終えて帰路につく。夜空に出、しかし帰ればテーブルの上に手紙があるんだ、と思うと途端に気が重くなる。傷つけず、しかし断ることは出来ないものか。“考えられない”……今まで使ってきたこれは、肯定も否定もしないという受け止め方も出来、実は何の答えにもならないと判断する。何せ、そういう立場の相原学が“耐えている”ことはよく判っているからだ。彼が自分自身の“どっちとも言えない気持ち”を認識しているのもまた判っている。ちなみに彼を人に紹介する時、年上の知り合い、友達というのも妙なので、彼氏が……と言うこともあるが、実際そういう存在と言ってもいいのか。
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