【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-24-
ベルト金具のクロムメッキが銀の閃光を発し、次いで肌を弾く鈍い音がし、今度こそ血の飛沫が散った。
金具が一名の鼻を強打したのであった。ボトボトと音を立てて赤黒い血が落ちる。
獅子だ……彼女は思った。メガネが光ってよく見えないが、恐らくは憤怒の形相であろう。
剣と甲冑を備えた白馬の騎士ではない。勝利が約束された映画のヒーローでもない。
それ以前に、外見はむしろひ弱そうと言って良い。どころか、ベルトが無いので脱げかけのスラックス。
なのに立ち向かうその動機を自分は知っている。
身を挺して自分を守る男であるとよく把握している。
確かにボランティア団体の屈強連や守備の傭兵など、自分を守るために尽力してくれた男達は他にもある。しかし彼らにとってはそれは“仕事”。同じ作業を同じレベルで他者にも発揮されるものであって、その点で自分のみに集約されているこの男の動機と異なる。
従い、もしこのまま放置すれば、彼は彼らを殺すにまで至るであろうと彼女は知っていた。
なぜなら、ひ弱な一人、対、犯罪に慣れた暴力集団であって、本気で殺すつもりでなければ気圧される、と彼自身が考えているからだ。一瞬も攻撃を止めてはならないのである。
そこまでさせるつもりはなかった。
「(その姿心に描く有様に似て)」
彼女は特異な語を再度口にした。
口にするその唇に人差し指で触れ、指先で天を指し示し。
その指先が金色に輝くのを待ち、自分を守る男へと振り向ける。
相原学の姿が変わった。
顔かたちはそのままに、身につけている衣服が変じた。
変身、であった。
「polizia!(警察)」
男達は叫び、一斉に逃走に転じた。
相原学は逃げ去る者たちにそれ以上何かしようとはしなかった。
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