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2014年9月

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-48-

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 そして今気付いたこと。自分について、多くの人はまず外見について述べるが、ことこの男に関する限り、外見に関する意見はたった今初めて聞いた。
「恐れ多きこと。俺の姫様」
 相原は言い、握手をするように手を出した。
 テーブルを挟んで互いに手を伸ばし、そしてどちらともなく、そのまま立ち上がって、そっと顔を近づけ、
 キスした。
 目を閉じて、首傾けて、唇と、唇が触れ合っただけ。
 但し相手の体温が判る程度に。
 見つめ合ったまま、距離を離し、お互いの椅子に戻る。
 レムリアは震え戦慄くような自分を意識する。
 大きな変化が自分の身に生じたことは理解した。人間として、女として、男を愛せるようになったのだという実感であった。この感情と衝動のことであったか。
 身体が熱い。だから相対的に空気が冷たく感じ、震えが出るのだ。
「ああ姫君、大丈夫ですか」
 身震いの仕草を見、コンパートメントの列車長が腰を浮かせる。
「いえ大丈夫です」
 レムリアは畳んだブランケットを軽く羽織った。ジェフ氏は大げさなまでに胸をなで下ろすジェスチャーを見せ、コンパートメントの椅子に戻った。携帯電話を手にしており、漏れ聞く英語ではディナーやらベッドメイクやら。
 震えが収まる。
 熱さが、強さに、変わる。
 そしてレムリアは目を見開いた。このアナロジー、シンクロニシティ。
「どうした?」
「あのね」
 自分の魔法能力。アルフェラッツ・ムーンライト・マジック・ドライブ。
「最初に身体が熱くなる」
「確かに」
「で、力になる」
「うん」
「同じ現象が起こった。今のチュッで」
 相原は頷くと、すっかり冷めたコーヒーを飲み干して。
「君はずっと能力の使い手としては半人前だと言ってたね」
「うん……あ」
 後はわざわざ言葉に置き換える要はなかった。この気持ちを載せて送れば良い。
 月がなくても、同じ事が出来る。
 

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ユカちゃんハテナ王国へ行く【17】

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「うるさい!……気付かれなきゃいいだろうと。もう手遅れだけどね。でも安心しなさい。このユカちゃんを無事に返し、人民に中つ国と同じ程度の生活と知識を与え、民主的な国としての体裁を整えること。そうすればあなたがたがここに暮らすことを許します。だってそうしないと、あっという間に、中つ国の食べ物を食べた瞬間、本当の年齢になってしまいますからね。私もだけど。こいつらはその辺解決すれば中つ国へ行くつもりだわ」
 それは、ユーカ姫も中つ国……今の日本に戻れば“243歳”になるということ。つまり多分は死んでしまう。
「ここにいればずっと生きられる。でもずっと今のまま。誰にも会えない。会う人ももういない。でもだからって今すぐ死ねるか?……私にはもう選ぶ道は無いんだ。さぁ、ユカちゃん。帰りなさいな。馬車を!」
「はい。はい、仰せのままに。おい、馬車を」
 セバスチャンは慌てたように言い、乗ってきた馬車を用意させた。
 どこからか蹄鉄カッカと音立て走って馬車が来、人々がスペースを空け、馬車の戸が開く。
「この馬車はドミニオン。こいつらが持ち込んだ。この果ての国みたいな、切り離された国へ行くことが出来る」
「ドミニオン……天使の名前の?」
「よく知ってるね」
 ユーカ姫が驚いた。天使は9つの階級を有する。トップがセラフィムで一番下が普通の天使、エンジェル。ドミニオンは4番目。ちなみにエンジェルは人間の姿に似ている。上に行くほど人間的では無くなり、セラフィムはもはや光の塊とか。
「幼稚園に教会の人が来て習ったもん」
 ユカは答えた。ちなみにお寺と教会の交流会みたいな催しがある。
 馬車に乗る。ふんわりした、抱っこされているような乗り心地は、ひょっとすると、こういう形の天使様に抱かれているのか。
 眠い。
「じゃぁね……」
 見送るユーカ姫にどう返事をしたのか、覚えていない。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-47-

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「その、いつから私のことを、そんな風に。今更だけど」
 自分が、彼の気持ちを薄々感じ始めた時期は、前述の通り。
「命がけで守りたい思ったのは2度目に会った時だ」
 それは彼女が感じ始めたタイミングに一致する。が。
“好き”のタイミングと異なる?
「その時点で、ざっくばらんな言い方をすれば、抱きしめてちゅーして押し倒して服脱がして、という状態をすっ飛ばしたと思う」
 相原はそう言った。
「それってエロ足りないってこと?いや真剣に。妻になるとして問題」
 相原はしばらく考えて。
「父親的な認識と、夫的な認識、兄の認識でもある。その複合。言うなれば家族」
「女としては?ううん、メスとしては?」
「だから、日本の法律では16歳で縛っているんだ。とオレは考えてる。初潮から生理の周期が安定するまで数年の単位を見るべき、とか母親に読まされた本にあったけど、のみならず、必要な体格の成長もなくちゃ。女性がダテにふっくらした体型になるわけじゃないし、とりわけ骨盤周りは確実に成熟していなくちゃダメだろう。生理が始まることはそれら成熟過程の一環であって、完成の合図じゃ無い。オレの認識は間違いか?だろ?まぁ、応じて色香出てくると思ってるから心配しなさんな。危険な性行為はしたくない。そう考えてくれ。お前絶対スゲエいい女になるから。だって美少女だもんよ。王女の風格備えた天下一品の美少女だもんよ。世界一の客車でコーヒー飲んでる姿がサマになる娘がそうそういるかよ。自信持て。男が最高という女はメスとしても最高のできばえというこった。こと女に関する限り男の審美眼ほど正しい物なし。何せ本能だからな」
「その言葉、ありがたく受け止めようぞフィアンセ殿」
 レムリアは少し笑い、王女の位置から少しお高く止まって言った。
 

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ユカちゃんハテナ王国へ行く【16】

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「ひ……姫様……」
 それは最高の秘密に属することなのだろう。ユカは直感し、次いで、自分たち殺されるんじゃないか。そう思った。しかし。
「大丈夫。卑弥呼様味方だから」
 ユーカ姫は自信満々にそう言った。
 卑弥呼。大昔の日本の巫女。女神のような人。古事記のついでに聞かせてもらった話。
 すると、セバスチャンが後ずさりした。
 まるで呪文を聞かされた悪魔のように。
「私分かったの。みんなで仲良くしているのが本当の平和なんだって。でも、こいつらには“勝ちと負け”がはっきりしてるのが平和なの。そして狙ってるの。ここの金を持って中つ国に躍り出る機会をね。中つ国では金があれば権勢が手に入るでしょ。自分が勝ちでいられる。世界を支配できる。そして、支配するためには、住んでる人が“負け”と感じたら困るわけよ。だから何も教えず、負けを感じさせずに、負けににしておきたい。それを多分ここで練習している。でも、そうは行かないから」
「いじめっこみたい」
 ユカは言った。
 そういう子なら幼稚園にいる。みんなで仲良くすればいいのに、おとなしい子にわざわざひどいことをする。
 泣かせて、それを見て、喜んでる。
「ひ・み・こ……」
 ユカが言ったのに、セバスチャンは感電したみたいにびくんとなった。
「なんで怖がるの?」
 ユカは逆に不思議に感じ、姫様に訊いた。
「この人たちはこの人たちなりに神様がいるわけ。で、何がどうしたか、はてのくににたどり着いた。そこは違う神様でみんなニコニコ。争いが起こらない。それはものすごい強力な神様が支配してると。仲良くが理解できなかったわけよ。ところがある時、みんなが“怒ることを知らない”ってことに気付いた。それでやりたい放題」
「お姫……」
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-46-

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「何って、我が家を養い会社に貢献。するとほら、家族個々の状況が抜けるだろ。社会の縮図なんだよ。特に日本の場合、家庭内の役割分担で妻が担う仕事の方が多い。ウチもそうだったけど、父親は土日へたばって朝からゴロゴロって多いよ」
「自己管理が出来てないんじゃん」
 相原は笑って。
「ごもっとも。でもね、全てを会社に捧げるとも言う。逆に言うとね、妻がそれだけ負担してくれてるから、余力を会社に使えた。それが今の日本を組み立てたとも言える」
「歪んでる風に見えるよ」
「それで正しいよ。歪みが常識だと歪んでいると気付かないのさ。いいよ。君は君のままに動きなさい。必要なことだ。ただ……普通に中学校に通うことになるぞ。何せ日本で結婚できるのは16歳からだからね。通信制にするかい?」
「ううん。制服着て通うよ。ちょっと憧れだったし日本の女子の制服。しかし、そうすると私どういう身分で日本滞在しよう」
「留学扱いで就学ビザでいいのと違うかい?公式実務訪問は大げさだろうし」
 公式実務訪問とは、“外国の元首、王族、行政府の長あるいはこれに準ずる者が実務を主たる目的として訪日すること”を言う日本側の法律用語で、要は“仕事による来日”である。
「まぁ法的側面は後で調べりゃいい」
「了解。わぁ堅苦しい話しちゃった。婚約してすぐする話ってこういう内容?って、あなたに訊いてもしょうがないか」
「一般大衆がそうなのかはワカランが、どこに住むのか、食って行けるのか、そういう話は否が応でもしなくちゃならんだろうし、そういう現実問題クリアして結婚しようぜが普通だろう」
「私とのことで考えた?」
「給与水準は問題無いから住む場所だけだな。自宅から通ってるけど社宅借りても構わんし。それは……ずっと考えてたと言っておくか」
「ずっと……」
 レムリアは驚いた。知り合った時点、彼は学生だったはずだが。
 

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ユカちゃんハテナ王国へ行く【15】

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 はてのくに、今はハテナ王国。
 過去、その出入り口だったところは、入ると行方不明になる。だから禁足地。
 例えばお寺の裏手。
「竜宮城のお話は知ってる?」
 姫はユカに聞いた。
「うん」
 ユカは予想が付いた。出てくる海底の不思議な国はここだ。
「ここでしょ?」
「そう。馬車に乗って何にもぶつからなかったでしょ。水の底に潜っても同じよ。亀って書いてあるのはあの馬車。当時は水の底にあったの。ひところ海の水が増えたことがあってね。その後水が引いて地上に出てきたの」
 縄文の頃、千葉から茨城は広く海底であり、弥生時代以降は湿地帯、そして陸地へと変わっていった。現在の霞ヶ浦は海の名残。
 と、そこでユカは怖くなった。竜宮城は過ごしている間に何百年も経っていた。
「え、じゃぁ。私がここにずっといると?」
「時間の進み方は変わらない。ただ、ここにいて、ここのモノを食べ続けると、歳を取らない。ずっと青春。そして、だから、『成長』しない。私243歳。信じられる?。ここにいるみんなもそう。ずっと昔から、ずっとこのまま。増えもせず、減りもせず。みんなここで生まれ育ったわけじゃ無い、そうやって時代時代で繋がった中つ国から紛れ込んだ客人(まろうど)。最も、多くの人は記憶を無くしているけどね。あまりに長すぎて。私もだけど」
「姫様!もう、あの、大概に……」
「いいじゃない!どうせ彼女にしか分からないんだし。それに、だから来るな、って言えるでしょ?ここは地獄よ。だから私たちは、あなた方中つ国の皆さんに来てはいけないと言わなきゃならない。はてのくには、あなたの星から来た異邦の支配下に入ってしまった。この者たちは私たちを管理しようとする。愚かだから何をするか分からないと言ってね。だから管理しようとする。その大義名分のために人民を愚かなままとしようとする」
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-45-

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 相原は即座に頷いたが、その背景として、レムリアが日本で何をしていたか書く必要があろう。多いのは小児病棟や児童館等でマジックショーだ。通じてみんなの友達になり、病気の子が生きる勇気を持った。挙げ句“日本語が喋れる姫様看護師”というキャッチーなポイントでマスメディアに出たことも。EFMMは国際救助ボランティアであり、災害や戦役対応、更には、それらと分かちがたく結びついている貧困地域での活動が多い。逆に言うと最も縁遠いのが裕福で医療福祉とも整った日本、なのであるが。
「これだろ?」相原は前置きして、
『自分の国で苦しんでいる人がいるのに、他の国の人間を助けようとする人は、他人によく思われたいだけの偽善者である』
 相原が口にした、マザーテレサが言ったとされる言葉に、レムリアは頷いた。
「そう。特に子ども達。あれだけ豊かな国で子どもが虐待されたり、傷つけあったり、何事?」
 レムリアはコーヒーを口にし、テーブルに戻し、相原を見た。
「怒られてる気分」
「“いじめ”って減ってないんでしょ」
 詰問調。レムリアは解決に1件関わっている。
 相原はコーヒーを一口し、ため息をつき、
「お察しの通り。君の言う通り、かも知れない。でもテレサの言葉の通り、とは思わない」
「え?」
「偽善じゃ無いんだ。本当に困ってる人の手助けはしたいんだ。ただ、自分を後回しにしてるだけさ。いや違うな。完全な自己保身か、完全な奉仕の精神かで、真ん中が抜けてるのかも。そこが育児に悩むお母さんや、子ども達の孤立に繋がっている。自分か、遙か遠くか、どっちかしか見ていないから、目の前が見えてない」
「何それ。父親って何してるの?ニッポンのオトーサンは朝早くから夜遅くまで、とは聞くけど」
 

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ユカちゃんハテナ王国へ行く【14】

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「そう。この国、いえ、この星と言うべきね。小さいけれど殆ど金なの。星が死ぬ時の大爆発で出来た。その際の大きな重力で中つ国と繋がってしまった」
 セバスチャンが頭を抱える。それは、お姫様が言って欲しくないことをベラベラ喋っているためだ、とユカは理解した。
「昔、あなたの国が金の生産で世界一だったことは知ってる?」
「ああ、黄金の国ジパング……」
 図鑑の……堅苦しく言うなら海洋開発史に相当する部分に書いてあること。
 お姫様は頷くと、服の後ろからユカの図鑑を取り出した。
「あ!あたしの」
「馬車の中にあったわ。その黄金の国はね、中つ国、つまりニッポンね。そこと、ここ果ての国(はてのくに)と、繋がる口が佐渡島にあったからなの。その前は、今で言う千葉や茨城にあってね……中つ国からタケルが攻めて来たから……」
 この説明には地史が要る。記紀に出てくる東方征伐・遠征の終着点が今の茨城・千葉のあたりである。ただ、それは。
「知ってる。『古事記』で読んだ」
 ユカは喜んで言った。
 くっついて行く、という気がしている。読んでもらったこと、教えてもらったこと、関係ないように見えてどんどんくっついて行く。
 何か楽しい。
「その通り。でもね。あの書物が全てじゃ無い。隠しておきたかったことは書かなかったみたい」
 姫は古代、千葉茨城にここへの出入り口が出来ており、ヤマト王権から見て東の果てにあるから、はてのくにと呼んだ、と言った。
 ただ、金の所在のゆえと、出入り口が彷徨うゆえに伝承には載らず封じられた。金は人の目を欲で眩ませる。そして彷徨う出入り口は通常とは違う空間を作り、多くの人を行方不明にさせる。ちなみにそれは科学的知見で説明するならワームホールであり、すなわち、存在する宇宙が異なる。
 

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