【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-52-
珍しい列車は城壁内部で気付いた衆目を集めていたが、降り立った客が彼女と知るや、恭しい会釈が返り、人々は散るように去った。日本で皇族方が市中にお出まし、となると数多携帯電話のカメラが向けられ、となるが、比してかなり雰囲気が異なると書いて良い。
改札はさながら牢屋の鉄柵と扉である。国境でもあるから当然だが物々しい雰囲気は否めない。改札係員が彼女の姿に制服姿で直立不動。
「この方はわたくしの客人です。諸手続は城内で行います」
「御意」
しかし言葉の割には目に軽侮。相原はそれがよくある“有色人種への目線”であることに気付く。
駅前へ出る。石畳の車寄せロータリーになっている。中央部に芝の植わった噴水。但し、時節柄、芝は枯れ草色。
道は相原見渡す限り石畳であり、無粋なアスファルトの色はない。メインストリートはゆるく右に曲がりつ上り勾配を描いて伸びる。その道の広々と、視界をぐるりと囲む城壁の圧迫感。
建造物はレンガに漆喰、スイスの山里という風情。まぁ地勢上も近く、外れた観測ではあるまい。高層建築は見当たらず、いずれも3階建て未満。城壁を考慮した景観保護からの高さ制限だろうか。
相原はまとわる視線に気付く。係員と同じく異邦人に対する目線であり、特段超感覚の類いを持たぬでも判る。遠巻きする彼らの肌の色は白く、瞳はブラウン、髪は金或いは赤。欧州系と書いて良く、対しレムリアの外見体格はアジアそのもの。ここで王家と言われても違和感の方が強い。末期エジプト王朝がマケドニアやローマの影響を受けていたのに近いが、類例であるモンゴル大帝国の残滓であろうか。
人々が歩道を空けたので歩き出す。
「国家国体はこの中だけ。人口1200。主な産業はスイスとかその辺の精密加工の下請け、魔法グッズ。国外への出稼ぎ労働も当然多い。まぁ、王家養って行ける状況でも時代でもないよ」
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】聞こえること見えること-02-(2021.01.23)
- 【理絵子の夜話】聞こえること見えること-01-(2021.01.16)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -04-(2021.01.13)
- 【理絵子の夜話】午前二時の訪問者 -20・終-(2021.01.02)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -03-(2020.12.30)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -04-(2021.01.13)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -03-(2020.12.30)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -02-(2020.12.16)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -01-(2020.12.02)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -36・終-(2020.07.08)
コメント