【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-57-
部屋に窓は無い。四隅にはエンタシスを描く大理石の柱。天井は半球形で竜の彫刻。星座が宝石の象眼で表現され、竜は夏の天の川の姿をしているとは相原の認識。四方の壁には何と干支のレリーフ。即ち北がネズミ(子)であり、こぼれた穀物に群がる姿が可愛らしく描かれ、東がウサギ(卯)で草原に遊ぶ数匹の自由な姿、南がウマ(午)で凜々しく一頭、そして西がワシだが酉の意であろう、木の枝に一羽止まってウサギを睥睨。
メイドさんがいて、スタンプ他一式をテーブルに置き、下がる。
「えーと、こっちが運営会社の管理印だね、入国審査はここと」
レムリアは相原のパスポートにスタンプをし、万年筆でサインした。
一方相原は天井と壁から目が離せない。
「お判りになったようですね」
女王が訊いた。
「ええ、干支がここまで伝わっているとは」
「太古、東洋からも使節があり、施術の礼にと施していったと聞きます」
相原は頷き、天井に目を転じ。
「北極星がトゥバンだな。シリウスは赤か」
その発言にレムリアが反応した。
「そう。どういうことなのこれ。これも歳差?」
スタンプの余分なインクを吸わせて尋ねる。自分の知るシリウスは全天一明るい白い星。一方、北極星は歳差であるとそれこそ相原から聞いた。歳差……地球は止まりかけのコマのような首振り運動をしている。その結果、コマの回転軸の延長線上、すなわち指極星は時代と共に変化し、応じてどの季節にどの星座が見えるかも変化する。例えば紀元前1万年代(および西暦1万4千年代)、北極星は織り姫で知られること座のベガであり、東京で南十字星が見える。が、シリウスの色が変化するとは聞いていない。なお、トゥバン(Thuban)はりゅう座α星で、メソポタミア文明期の北極星である。
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