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2014年12月

【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-12-

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 褒めそやされて歯が浮く。
 が、それと同時に、身体が軽くなるように感じる部分も正直言ってある。「意識してもしなくても、自分と他人を比較して自己評価行動をしちゃうのが思春期」とは他ならぬ理絵子から聞いた言葉であり、文芸部の発表するマンガ小説表現上の留意としているが、その“無意識の比較”をたった今自覚させられ、そして自己評価が多分にネガティブだった、という理解に達した。
 牧師が謝礼の言葉を締め、アーメン。
 北村由佳が言う。
「黒野さんがあなたのことを親友と思っている理由が判った」
 田島綾は首を傾げた。
 逆なら判るが。自分を?……顔を指さす。
「私?」
「そう。あなたと居ると心地いいんだと思う……その、知っての通り私、黒野さんには邪推していたことがあって」
 端的に言うと北村由佳の片思い相手が理絵子を好きだと知って嫉妬したのである。
 ただ、彼の告白を理絵子が拒絶、失敗に終わった。その旨伝え聞いて落ち着いたのが昨今北村由佳の状態。
 比して理絵子の方はどう思っているのか。それで田島綾に声を掛けた。北村由佳は時系列をそう説明した。
 彼女が自殺未遂騒ぎを起こしたことは、騒ぎの最中駆けつけた当人としてよく知っている。ただ、そうなるに至った背景を理絵子は言わなかったし、田島綾も問わなかった。
「背景初めて聞いた。りえぼーは、一言もそんなこと言って無いよ」
 田島綾は言った。
 逆に驚いた表情を示したのは北村由佳。
「え?だって親友じゃ」
「だからって、それって北村さんの最高の秘密でしょ。べらべら喋る?しないよりえぼーは。りえぼーなら」
 すると。
「それは、少し、問題かも知れませんね」
 どこぞの母親殿から声が上がった。
「ええ、その、黒野さんの心持ちには思い上がりを感じます」
 別の女性。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-61-

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11
 
 古来、王権が国政を執する時、何らかの政策発表は城内からお触れを出した。洋の東西を問わず、まま見られたパターンである。
 ここアルフェラッツはそれを継承する。無論ウェブサイトにも追記されるが、報道媒体を要するほどの国家規模では無いこと、お触れを出すというプロセス自体も一つの観光資源に使える、という判断もあるようだ。
 午後3時。城のカリオンを鳴らして住民が城壁周囲に三々五々。カメラ構えたお出かけ着はそれこそ観光客か。
 自動演奏が止まったところで、王女メディアは布告台から身を乗り出した。ちなみに、応じた発声レッスンは受けており、最悪、その大声を武器的にも使える。
「お集まり頂きありがとう御座います。本日は王家より国民の皆さんにお知らせがあります」
 声が城壁に反響し、尾を引き広がる。
 聴衆は百名程か。少しざわめくのは普段ここにいない彼女が布告台に立っているからか。
「2つあります。まず1つ、わたくしは本日、この日本人、相原学さんと婚約しました」
 相原は傍らに立って聴衆に対して頭を下げ、一歩下がった。
 拍手。ただパラパラとお義理な印象で、変な表現だが独裁国家の議会のそれと位相を逆にする。
「もう1つ。伴い、私は16歳の誕生日をもって日本国籍を取得し、応じて本国王権は継承しないこととします。審議中の王権廃止案の可決を持って、私どもは労働と納税の義務を負う一国民になります」
 こちらにはさすがに聴衆からどよめきが上がった。
「質問をお受けします」
「それは、為政放棄では無いのですか?」
 挙手があるでもなく、早速投げかけられるその言葉尻は、糾弾調。
「もちろん、委譲期間を設けます。ただ、王家に付与された為政特権、例えば拒否権や税率改定の強制権は、案の可決と同時に停止で良いと思われます。政権委譲委員会を立ち上げると聞きましたので、公開議会で話し合いになるかと思います」
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-11-

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 すると牧師が。
「それは私の至らぬが故です。客観的に疑われるような内容である、ということでございましょう。神様どうぞこの者北村由佳をお許しください」
 ああ。田島綾は概要を察した。相互にポジティブシンキングすることで己を肯定する。
 ……自分のさっきはどうフォローしてくれるんだろう。
「田島さん」
 指名される。言ってみようか。
「自分の体格についてコンプレックスを抱いています。太っているんじゃないか、不細工なんじゃないか」
 すると。
「いいえ私はあなたが好きですよ」
 牧師はそう返して来、にっこりと笑みを浮かべた。
「女性は本来ふくよかであるべきなのです。美醜という観点を持ち込むことがそもそもの間違いです。飢餓というリスクのなかで子供を生み育てる。そのための栄養蓄積がふくよかな身体なのです。あなたの身体は安産が保証される。神様どうぞこの娘、田島綾に祝福を」
 気分悪くないと言えばウソである。
 例えば理絵子と一緒の状態で男子達と喋ると、男子の目が自分と理絵子を往復するが、理絵子は顔を見、自分は胸を見られる。自分の外見の美醜について男子から直接何か言われたことは無いが、そうした視線の動きは全て物語っていると思えた。否、それは正確では無い。
 お前おっぱいでっかいな、そう評した男子はいた。小学校6年の頃。
 反射的にビンタした。
「ありがとうございます」
 果たして、当時に比して、謝辞の言葉は自然に出た。
「ああ、なんと素晴らしい」
 即座に牧師はそう返して来た。
 同師が拍手を始め、周囲が追随し、拍手の輪に包まれる。
「あなたは今、神に対して感謝の意を示されたのです。私からも、イエス様の名によって感謝が伝わるようお祈りいたします。皆さん、この会でこのように感謝を返された方を他に覚えていますか?ご自身はどうでしょう。自分を慰めて欲しい。それだけで参加されている方からは絶対に出てこない言葉です。ああなんと素晴らしい。神様、私(わたくし)たちにこの素晴らしき女の子……」
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-60-

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 父王は頷き、しばし、相原の目を見た。
 相原は応じて目を合わせ、一回、まばたき。
 一般に国王を異国人が真っ正面から見返すなど失礼千万に値しよう。
 しかし今、相原は、男として、父王と相対している。
 父王が口を開く。
「異存は無い。既に貴殿は我が娘の夫たる資格を備えている。即ち、娘を女として、妻として、守れる存在でいられるかどうかだ。その点、貴殿は幾度となく娘の命を助けている。しかも、自らの命を賭してまで。最高の存在と絶賛を惜しまない」
 相原は「おっ」と声こそ出さなかったが、そんな形に口を開き、応じて目を見開いた。
 すなわち、父王の評価は彼に取り望外の賛辞であった。
「恐れ入ります」
 座ったまま、頭を垂れ、礼。
「だから……これは単なる個人的興味に過ぎないが、差し支えなければ教えて欲しい、貴殿の父たる方は一体どのような」
「既に他界しました。証券会社で取引用のオンラインシステムの管理をしていました」
 相原の言葉を聞き、女王と父王は一様に目を見開いた。
 レムリアは『交通事故で死んだ』とさらっと一言いわれたことを思い出した。
「なるほど……」
 父王は、ゆっくり、深く、頷いた。
 次いで思い出したように。
「ご兄弟は?」
「ありません」
「では貴殿の母君は事後お一人になられるのでは?」
「一国一城の主になって初めて男と称せ、が母の口癖です。しかし、生きている限り母であり息子です。幸い現代はネットワークでいつでもコミュニケーションが取れます。そして日本では、夏と冬の長い休みに親元へ遊びに行くのが習わしです」
 父王は再度頷いた。
「承知した。貴殿が娘と一つ屋根の下で暮らすことが他の不幸を招いてはならない。そう思ってお尋ねしたまでだ。であれば問題ない。以上だ。さぁメディア……幸せになりなさい。そして、お前が思う幸せを、より多くあまねく、月の光のように、届けなさい。そのための地として、東方の幸多き国、日出る(ひ、いずる)国の一員となることは、まこと相応しい」
「はい、お父様」
 それは、本来、親との別離。
 しかし不思議と、涙は感じない。
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-10-

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 すなわちプロテスタント系ということか。中に入ると廊下を通って家屋を出、別棟プレハブへ通される。プレハブ内部のイメージは“町内会の集会所”。ざっと見る限り、いわゆる“宗教くさい”什器デザインは見られない。日曜学校の後なのでパイプいすが並んでおり、大人と子供数名で片付け中。目に付くのは賛美歌用であろうかオルガン、壁にはイスラエル地域の地図。左右は本棚で聖書や関連絵本っぽいもの。百科事典のようにズラリと並んだ凝った装丁の書物群。
「どうぞこちらへ」
 促されて目を向けると、いすが除けられ出来たスペースにカーペットが一枚。北村母子が正座し、他の数名も同様に正座。他の数名はいずれも母子の組み合わせと見られ、2人ずつ計4人。隣同士に座っている。
 全体としては車座の形状、空いたスペースは自分が入れと言うことか。
 子供達の声が聞こえなくなった。
「失礼します」
 周りに合わせて正座。カーペットを敷いたとは言え、板の間、痛い。
「何も難しいことはありません。神様にネガティブな意見を報告します」
 牧師はいきなり言った。
 見上げると自分を見ている。自分へ対する説明を始めたのだと田島綾は知る。
 座した他の人々に目を走らす。北村母子は自分を見ており、他は両手指を祈るように組んでうつむき加減。
 北村由佳が口を開く。
「ネガティブ意見ってのはね……何だろ、イヤとか、悪口を思い浮かべたとか、自分を否定したとか、そういうのを口に出して神様に聞いていただくの」
 補足説明。彼女は理絵子と一悶着あってからここに通うようになったと言った。なるほど、判らぬでは無い。
 そして、その北村由佳が挙手した。
「じゃぁあたしからやります。田島さんがもしかすると来ないかも知れないと思っていました。人を疑う心がわだかまっています」
 こう言った。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-59-

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 頼ってる。私今このひとを頼ってる。
 自分の全てがこの人の言動に掛かっている。
 お願い。どうかお願い。
 一緒になりたい。
「はい、日本の法の許す滞在基準に基づき、私の居所から日本の学校へ通ってもらう所存です」
「判りました。となるとメディア、あなたが王族であり続けるならば、それだけで日本政府へ滞在許可の申請が出来ますが、どうでしょう。マナブさんとの婚姻が成立するまでは王女のままでは」
「その方がスムーズ?」
 レムリアは相原に尋ねた。
 裾はギュッと握ったまま。
「多分ね」
 相原は軽い声音で返した。日本の滞在条件は、異国王族が相手の場合、かなり緩い。
「判りました。では、法の許可が得られる日まで今のままで」
 レムリアは答え、父母に向き直った。こだわりは無い一方、この王家という肩書きを毛嫌いしているわけでも無い。ただ、背負って行く、継いで行くという重責は無い。それだけの話。
 母の目を見返す。それは、今までの母を見返す娘の目では無いことを自覚している。母子であり女王と王女であるが、“お互いに誰かの配偶者”という立場が新たに加わる。
 レムリアは、掴んでいた相原の袖から手を離した。
「よろしい」
 女王なる人は声を響かせた。
「判りました。メディア、わたくしはあなた方の結婚を前提とした交際、および同棲を許可します。父王の意見はありますか?」
 女王は宣誓するように片手を挙げて述べ、その手を夫君に振り向け、発言権を渡した。
 父王ゲンマ・メリディアーナ・アルフェラッツ。相原は王なる父に目を向けた。
 レムリアには相原の心理に去来したものが見えている。日本で一般に結婚の挨拶は婿が嫁を娶る形態を取り、嫁の父が最終判断権者である。その情景はあまた物語でクライマックスとして扱われる。
 娘の将来を他人たる男に委ねるのだ。応じた判断を要する。
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-09-

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 当初この宅を訪れた意図目的と乖離していることは承知。だが、結局、北村由佳の心理を知るにはその中枢に入り込むより術はあるまい。
 トンカツと白飯登場。
「あら、見つける会に入ってくださるの?」
 母君がジージー音立つカツの皿を置いて尋ねる。
「いえ、入るというか、そんな心変わるならちょっと覗いてみたいと思った程度で」
 予防線は張っておく。
「もちろんかまわないわ。兄様(あにさま)に話しておきますね。日曜学校の後なの。9時からで、場所は……」
 
 
 日曜朝、田島綾が教会を訪れると、バンと勢いよくドアが開けられ、子供達がキャッキャ言いながら飛び出してきたところ。
 住宅街の真ん中。傍目には民家である。表札の下に小さく教会である旨書いてあるだけで、意識しなければそうと判らない。
「あ、知らない人」
「おねーちゃん新しい人?」
 口さがない子供達の物言いにコラ!との声が奥からあり。
 大人が二名と女学生が一名。大人は北村由佳の母親、及びポロシャツの紳士。
 学生は北村由佳。休日だが制服セーラーなのは礼儀か敬意か。
「あのあたし……」
 胸元手にして服装を意識させる。私服そのもの。スカートにセーター。今日びスカートを常用する女の子は珍しいと言われることもあるが、ジーンズは足の動きを制約するというのが正直。
 理絵子とお出かけなど良くするが、ほっそりの割にムネもある理絵子がスカート派なので、自分の体格的ボロは出したくない。
 ……意識させられるコンプレックス。
「気にしないで、気分的なもんだから。兄様(あにさま)、お話しした田島さんです」
「どうも」
 紳士に頭を下げられる。名を名乗り牧師だと言った。どうもどうも初めまして。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-58-

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 メイドさんが国境審査セットを持って退場。
「んにゃ、歳差とは関係ない。古代一時期、赤く見えた時代があったんだよ。プトレマイオスだかセネカだかが書き残してる。こいつ二重星でね、今は子分扱いのシリウスBの方が実は親分だったらしくて先に寿命を終えたんだよ。だけどそこは元親分、つまり質量がでかいもんだから、今の白いシリウスAからガスをはぎ取った。結果、一時的だけどシリウスBの方で核反応が起きて赤く光った……というのが科学雑誌の受け売り説明」
「へえ!」
 そこで母君、
「ということは、逆に言うとこれが作られたのはその時代……」
「でしょうね。都合2000年」
 4人が天井を見ているそばで再びメイドさんが現れ、茶器を並べて行く。
「お座り下さい」
 茶が揃い、女王の促しに相原は腰を下ろし、レムリアは隣に座った。王座より見て左手に二人が並んだ形。
 そして、まず、レムリアが息を吸った。
「単刀直入に相談します。わたし、この人との結婚を前提に日本への移住を希望します。王位の継承は放棄します」
 厳かではないが、迷いもない。
 それは、レムリアの物言い、そのものであった。
 対し、女王は、間を置かず、しかしゆっくりと、頷いた。
「判りました。マナブさん、あなたのご意見をお聞かせ下さい」
 相原は「はい」と前置きして。
「日本の法が認める16歳の誕生日をもって婚姻届を提出したいと考えています。彼女の場合、日本での生活に必要なのは金銭面だけですが、私自身の給与水準で問題ないものと考えております」
 プロポーズ。レムリアは大いなる一線を越える自分を認識した。
「それまでは?」
 女王が尋ね、訳して伝え、レムリアは急に怖い気がして相原の服の裾を思わず掴んだ。
 なぜなら。
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-08-

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「とりあえず胃袋に食べさせてやって」
 田島綾の結論はそれ。食べることは好きなので、遠慮抜きで食べていれば、表情や所作には出ない。であろう。
 北村由佳が手を伸ばして来、フォークでミニトマトを抜いて行く。
「お母様料理お上手ね」
 誤魔化しがてらの世辞。なのだが言って失敗したと思う。サラダに調理もへったくれも無い。
「というか野菜が新鮮なんでしょ。それも『見つける会』で作ってる物なんだよ。キャベツとか虫食い穴があるでしょ」
「え?虫入ったりしてる!?」
 田島綾は反射的に言ってしまった。クモ昆虫苦手だが、とりわけイモムシは大の苦手だ。脚の有るだか無いだかのようなモノがモゾモゾ動く。
「大丈夫だよ。綾ちゃん結構怖がりなんだ」
 北村由佳は乾いた笑いを寄越す。小馬鹿にされてる気がする。そして同時に何だろう、この空回り感。
 その、会、とやらは何をしている?
 ネタに出来る。と思ったのは田島綾ならではの反応と言って良いだろう。文芸部ヘンな団体に潜入取材。山崎豊子ばりのノンフィクション超大作を発表!
 ……とは行かぬまでも、普通のファンタジーとは作風変えられるだろうし、リアル宗教団体という物に接したことが無い。厳密に言うと、理絵子は密教の団体に所属しているらしいが、彼女はそれ以上のことは一切語らない。訊くべき内容でもないし聞いても理解出来ないと田島綾自身認識している。遊び半分は失礼だろう。比してこちらは恐らく、ファンタジーの世界に厚みが付加できる。
 それに、所作や目線で見透かされないようにするには、見透かす方法を知っておいて損は無い。
 仕掛けるか。
「デブだしさ」
 果たして田島綾は言った。
「ん?」
「コンプレックスの塊なんだ自分。そのナントカ会が、そういう心のドロドロ無くす効果があるなら。それに、何だろ、北村さん生き生きしてるじゃん。自分の意思で行動してる。切り開いて行こうという意欲を感じる。そんなだったら、ちょっと覗いてみたいなって」
 

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