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2015年1月

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-66-

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 魔法である。が、今の作用はPK(念動力)に近い。相原は急に空が晴れ上がったという印象を持った。
 レムリアを初めて見た子供はまず笑顔になる。恐らく“淀み”を“晴れ上がらせた”主因はそれ。
 しかし、今の彼女は狩猟者のようである。コンクリート校舎に入り、階段を上がって行く。なお日本向けに記しておくが土足のままである。
 階段の上には待ち受けるように男が1名。スーツ姿で、老年とは感じないがほぼ禿げ上がった頭部の者。もみあげ等に金髪の名残。碧眼。
「これはこれは姫様」
 口角笑みして慇懃無礼。それが相原の抱いた印象。
「フィアンセです」
 レムリアは相原に手を向けて紹介した。
「お似合いで」
 皮肉に聞こえて間違いではない。相原はまばたきもせず、お義理に会釈。
「彼は肌がどうこう国籍がどうこう言いませんからね」
 意趣返しだが、通じないことも承知。
「オランダの暮らしはいかがでしたか?」
 訊かれたので答えることにする。
「沢山いるのにコミュニケーションを拒否されるのと、最初からひとりでコミュニケーションが必要ないのとでは随分違うんだということが理解出来ました。その結果、ひとりでいる子には何らか心傷付いてる可能性があるから声を掛けてあげよう。これは私の看護師としての活動で生かします」
 そこでレムリアは校長の目を真っ直ぐ見据える。校長はニヤニヤ笑って聞いている。
「それともう一つ、教員というのは平等かつひとりひとりに気を配れる……言うなれば真の優しさの持ち主でなければ務まらない、務めちゃいけないことも。これは貴殿の身の振りようで貴殿自らが示すべきと存じます。以上で報告とし、王族として強権を行使します。sayonara校長先生様」
 サヨナラは故意に日本語。
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-16-

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 風はまるで生き物のように、言うなれば不可視の竜のように“教会”の中に入り込んだ。そして棚の中や床の上の諸々を吹き飛ばし、巻き上げた。その場にいた田島綾以外全員の頭上になにがしか降ってきた。
 風の竜。竜巻そのものであった。
 意志持つ風の竜は轟々と音を立ててひとしきり渦巻いた。あらゆる物が元の位置からずれ動き。壁や天井に突き刺さった。
 人々は手を頭にかざし、その場を逃れようとのろのろと動き出した。すると窓ガラスが内から外へ向かって叩き割られ、次々割られ、その甲高い破壊音の連打が人々の咽頭から悲鳴を引き出した。
 風は巻き上げたあらゆる物とガラス片をごちゃ混ぜにして窓から外へと持ち去った。
 冬の空気に吹きさらしとなったその場に数名の人があった。ある者は呻き、ある者はのたうち、いくらかの出血も見た。
 自分は保護されたのだ。田島綾の第一認識、次いで北村由佳を気にする必要がありと見渡し、その姿を発見する。北村由佳は失神状態で横たわり、その母は彼女の頭を抱え込むように横座りの状態であり、やはり失神していた。
 人の気配に田島綾が見上げると、風を起こした娘があった。黒野理絵子であった。理絵子はセーラー服翻してそこに立っていた。その長い髪をなびかせて、仁王立ちで周囲を睥睨していた。
「綾はこっちへ」
 理絵子は田島綾に目線を向けることなく、左手を持ち上げ、親指で背中越しを指差し、部屋の隅の玄関寄りに移動するよう促した。田島綾がいざってその場に移ると、ゆっくりと身体の向きを変え、一歩ずつ慎重に歩き出した。その髪の毛は舞うように動き、セーラーの裾も翻っている。しかし今、風は皆無であった。
 それはそこに力が、何らかの力場が生じていることを証しした。
 理絵子が超能力を発揮しているのであった。田島綾は驚きつつ、しかし当然という気持ちで認識していた。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-65-

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 反するような、たおやかな歩みで幼稚園より角を折れること数回、街路進むこと数百歩。少し開けた空間にコンクリート2階建て。
「初等学校東」
 低い鉄柵で囲まれており、大人の男ならひょいとまたげる程。
 校庭はない。城下メインを挟んで反対側、国境税関も兼ねる駅の左方に古代ローマ様式のコロッセオがあり、運動系の授業は別の初等校と共同でそこを使う。
「何か雰囲気が淀んでんな」
 相原が言った。学校には校風に応じた雰囲気が漂うことがある。それは通う子供もそんな心理状態に導く。薄いスモッグの中にあるように見えると彼は言い「理系の仕事してる人間の言うことじゃないけどな」と、最後に加えた。
「間違ってないよそれ」
 レムリアは応じると、閉じた鉄の門扉脇、レンガの柱にあるインターホンのコールボタンを押した。
「いるかね」
「いるよ。いやむしろ来ると判ってて待ってる。向こうも待ってたんだよ、決着を」
 決着……レムリアがそう表現した理由を相原は知っている。
 ここアルフェラッツは欧亜境界に位置しており、人種的には欧州系、宗教的にはキリスト教系の色がそれぞれ濃い。王家の駆る魔法もキリスト教傍系のそれを含んだものが中心と言える。
 ただ、カバラ等現存の魔術と異なるのは、東洋のシャーマニズムの因子が含まれること。
 だから、人種的はコーカソイドである中、王家だけは東洋の、日本の街中で目立たない外見。
 その結果。宣誓台における住民の反応および、
「メディアです。完全に国を離れることにしました。オルフェオ校長はおいでですね?」
 レムリアは応じたインターホンに来意を告げた。
 相手の反応を待たず鉄扉に手をする。ガチャンと音がして動きを拘束、施錠を告げるが、レムリアが構わず再度引くと門扉は素直に開いた。
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-15-

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 りえぼー、助けてりえぼー、はまった。私は罠にはまった。
 助けて!
「滅却の儀式をします」
 信じられないようなことを書く。牧師と称した者は下半身の衣服をぺろりとはぎ取って己の性器を露出した。それはスラックスを履いてるように見えたが、両サイドにジッパーが付いており、簡単に取り外せるのだ。つまり“儀式”の常態化を示唆した。
「私はあなたに愛を捧げます」
 レトリック悪用ここに極まれりと書くか。字面の美とは裏腹、そこにあるのは興奮し怒張した男性性器。
 “主任務待機”状態にある成人男性のそれを唐突に見せられる女子中学生。
 人体が本来有する柔軟性と真逆と書ける硬質性、意識と連動した状態を明確にした“それ”の異様さと生々しさは、想定される事態も伴い、大抵の場合、パニックを惹起する。
 ただ、田島綾の場合、想定される事態への本能的なパニックは生じたが、露出されたそれを目にする“耐性”はあった。端的には父親の存在による現物の目撃であり、……男性同性愛を扱ったマンガが好きなのである。
 そのマンガに描かれた状態が目の前に現出しただけ。
 しかも、何ぶんマンガで描かれたそれよりは貧相な姿であった。
 そして、それが男のプライドを痛く傷つける攻撃手段になることも判っていた。
 以上、冷静な分析は彼女に利した。
 ハミングなりに笑い飛ばしてやる。結局それかいお粗末さん。
 暴れる一転クックックと笑った彼女に。
 興奮状態のそれがオジギソウのような変化を見せると同時に、
 彼女を押さえつけていた周囲の力が緩んだ。
「りえぼー!」
 叫んだ。田島綾はその一瞬に全てを乗じて声にした。
 爆竹の破裂に似た大きな音と、風が生じた。
「おん まゆら きらんでぃ そわか」
 唱える声が凛として響き、光と共に入って来た。その方向には開け放たれた玄関ドアがあり、猛烈な風を背にして立っている髪の長い娘がいた。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-64-

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「メディア姫……」
 驚きつつ、ぎこちなく頭を下げる。
「お久しぶりです。今日はご挨拶に伺いました」
「そんな、姫様が頭を下げられるなど」
 レムリアはもう、会釈という日本的挨拶が習い性になっている。対して頭下げられた“一般国民”は困惑するであろう。
「ああ、ついクセで。日本だとこんな感じなんです」
「日本(はぽね)……では、そちらの方が」
 件の発表は当然の如く国民個々に周知済みと考えて良い。囲む城壁で声が反射されるため、庭に来ずともほぼ全域にあまねく届く。耳を澄ませば。
「ええ、将来を約束した相手です」
 紹介され、相原は軽く会釈。保育士は笑顔を作り、
「そうですか、寂しくなります。でも……それで良いのだとも思います。姫様のご判断、物言いは、その時は不思議に思っても、後になって納得させられることが殆どです。今回も然りでありましょう。おめでとうございます。お幸せになられると信じています」
「ありがとうございます」
 この国で最大限の礼儀を示す拝礼は、右手を胸に右膝を突いて座し……云々と様式があるのだが、レムリアは機先を制してそれは止めてと言った。
「では。どうぞお元気で」
 自分から言う。女同士。気楽に。
「ええ、姫様も」
 ハグや握手をしたりは無し。尾を引くような別れ方は子ども達に感づかれると、子ども達以外の全てが認識している。
「ばいば~い」
 レムリアは無邪気に手を振る子ども達に笑顔で返した。
 門扉をくぐり、閉じて、背を向ける。
「もう一箇所、付き合って欲しい。こちらは……挨拶と言うより、決着」
「あいよ」
 相原は応じた。レムリアの相貌が文字通り豹変するのを相原は意識する。威嚇する母猫のよう。今にも髪の毛が逆立って湯気のように揺らぐが如く。
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-14-

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「ずれ?いいえ、明確に間違いです。私たちは、神様を介し、全て魂が繋がっているのです。イエス様が証(あかし)していらっしゃいます。すなわち、どのみち判ること。それを遮るなど、神様やイエス様に対して楯突く行為そのもの、恐るべき心理に他なりません」
 信仰同じくするお互いを姉様兄様と呼び合う……それはこの魂の繋がりに基づく物言いである。
 だが、何か違う、田島綾は思った。その概念に何か別の物を上乗せしてすり替えようとしている。それは端的には理絵子を否定されたことへの反発、に起因するのかも知れぬ。
 が、何故か確信がある。この連中はおかしい。この本質の周辺を引きずり回されて誤魔化されている感じ。ああそう、理絵子はそんな思わせぶり、勿体ぶった物言いはしない。正しいなら、なぜ、そんな遠回りする必要がある。
 りえぼー聞こえる?。私間違ってる?
「田島、さん」
 黙していた牧師が呼びかけた。
「はい?」
 疑心暗鬼。声に表情に出たであろう。しかし仕方ない。
「ああ何という目をなさっている。私たちは今、あなたの心に住む悪魔を呼び出しました。感じていますね。それがあなたの心にいつの間にか住んでいた悪魔そのものです。そのまま滅却します。さぁ皆さん田島さんを押さえて。悪魔が彼女を操り暴れさせようとしています」
 その時、笑顔が次々すっくと立ち上がりながら、
 笑顔ニコニコで立ち上がりながら、
 笑顔が、しかし、強奪の手指の形で自分に迫り来、次いで囲まれる。
 この恐怖心。襲われる。田島綾は答えを出した。
 こいつらは異常だ。
「りえぼー!」
 田島綾は叫んだ。
 もう一度、と思った瞬間口をふさがれる。
 が、諦めない。ハミングの発音でんーんーと声を、音を出し、そして心で呼ぶ。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-63-

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「現行人類科学力を超越していることは確か。電磁波が乱れてて測定器も使えないって。携帯電話の感度レベルをごらん遊ばせ」
 レムリアの言に相原が自らの携帯電話を取りだす。
“圏外”
「なるほど」
「逆に案外、無駄知識の無い15世紀の学者の方が出来る代物ってありうる?」
 レムリアの問いに相原が立ち止まり、レムリアがそうと気付いて振り返る。
「部分的に磁極があるのかもね。他には、例えばイギリスのストーンヘンジとか列石遺構は断層に沿って配置されてるんだとさ。断層は岩盤同士の摩擦で発電し電磁波出してる。同じような可能性が一つ。電磁波過敏症の人は古代もいただろうさ。巫女って崇められてね。後は磁力を持った隕石がぐるぐる回ってるとか」
「出来なくは無いと」
「まぁね。当時認識はそんな奴ら“魔法の石”だろうし」
 しかし深追いは今は良い。レムリアは相原の手を引いた。門扉を開けてもらい外へ出る。城下メインの街路を下って街を歩く。角を一つ折れ二つ折れ。
 最初に向かったのは幼稚園。
「保育園に近いかな。最低2歳から6歳まで預かります。2箇所あり。12歳まで義務教育。これも2箇所。その先は職業訓練コース6年か高等教育4年。更にその上は大学というか総合アカデミーが各ひとつ。義務教育以降は国外へ出てもご自由に、ってか、国内じゃもう賄えない」
 相原に説明し、幼稚園の園庭門扉を開くと、遊んでいた子ども達が闖入者に驚くが、
「おひめさま!」
 気付いたようである。レムリアはEFMMにおいては優先的に子ども達の対応を任せられるが、その理由として年齢的近しさ以上に子ども達に歓迎されるという部分がある。
 ここも然り。左右の手を交互に開いてお菓子を次々出現させ、集まってきた子ども達に次々配る。
 園庭奥方、L字の曲がり屋平屋建て、教室を5つ有する園舎から女性の保育士が数名。
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-13-

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 田島綾は言葉を失った。理絵子の心理行動人格を否定する向きが無いではない。いい子ぶりっこだ、エラそうだ。成績優秀をカサに着て見下してるように感じる。ムカついてる奴は多いけど親が警官だから手を出さないだけ……。
 ただいずれも“やっかみ”で理解できる。比してこの人たちの物言いは違う。
 異質というか、妙。言いがかりに近い。従い反論はたやすいが……聞くだけ聞いてみようか。
「と、言いますと?」
「あなたには必要の無い情報だ、とその彼女は判断したわけですよね」
「ええ恐らくは」
 そりゃそうだ。自分だって、ぶっちゃけ、この北村由佳がどうなろうと知ったこっちゃ無い。どころか、そんな話を持ってこられても困る。
「それは、つまり、あなたを値踏みしている、ということになるのではないですか?学級委員という立場を使って情報を集約するだけして、されど再配分にはコントロールを加える。それが親友に対して取るべき行動でしょうか。現に、私たちは、今ここで、私たちの全てをシェアしています。彼女はあなたに北村由佳姉の話をした。それに対し、彼女はあなたの見解を伺うなどの価値は無い、自分一人で十分だ、そう判断したのでしょう。傲岸という言葉が最もふさわしいような気がしますがどうでしょう」
 開いた口がふさがらない。が、逆に、北村由佳の底意、この母子に覚える違和感の本質を垣間見た気がした。
 それが当然で本来だ、という確信、信念、当然意識。
 それこそ、他ならぬ、自分たちが認識している傲岸不遜なのではないか。
 ……イエスキリストさん、ここ、本当の教会?それとも、これが普通?
「どうも、考え方にずれがあるようですね」
 田島綾はどうにかそれだけ言った。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-62-

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「オレ達に王家のじじばば養えってか?労働と納税たぁ簡単偉そうにほざいてくれるが、じじばばはどうやって働くんだ?」
 質問と言うには野卑な指摘。
「両親はセラピストの資格を有しています。国内外の養老院、孤児院とも契約を結んでいます。ご心配には至らぬかと」
 なお日本で“セラピスト”は国家資格ではない。
「城はどうすんだ」
「色々と解明されていない映画じみたからくりが多数あります。それらをそのまま観光資材として生かして頂ければ良いかと。ただ、この敷地に洪水を引き込むなど物騒なものもありますので、アカデミー会員諸氏の協力を得て慎重に進めて頂ければと存じます」
「自分達は何もしない?」
「私どもでよろしければそのようにしますが。ですが、王族3名しかおりません、フィアンセ含めて4名ですので、有識者の意見は頂戴しながら進めたいと考えます」
 その後もやりとりは続いたが、殆どが事後の国家運営に対する責任放棄の批判であり、略す。ただ、レムリアは終始冷静かつ恬淡と即応したと書いておく。総じて「惜しむ声が一つも無いのに驚いた」と後に相原は評した。
「以上で終わります。忙しい中ありがとうございました」
 国民がぞろぞろ引き上げて行く。
「さてと」
 レムリアは布告台の踏み台から降り立ち、相原の手を取った。
「という状況であっても、あなたを紹介して、ちゃんとお別れを言いたいところも幾つかあったり」
「さっきのおもちゃ屋さんみたいな……」
「そう。敵ばかりというわけでもなく。付き合ってもらえる?」
 相原が頷くと、レムリアは取った手を引き歩き出した。らせん階段を降り、玄関から門へ移動、なのだが、踏み石の経路は既にさっきと違う。
「テレパスじゃないとワカランようなもんは解析出来ないだろうなぁ」
 

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