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2015年3月

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-74-

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「マインドコントロール」
 レムリアは言った。
 船がコンピュータグラフィックスの合成画像のように忽然と空間に現れ、舷側に口が開き、スロープが延びて地に降りる。
 ウェットスーツを思わせる黒い着衣の男2名と、神話に出て来る女神のような、ひらりとした白装束の女性1名。
 男達はレムリアの背丈ほどもある長銃を抱えている。メガネ型端末を顔面に装着しており、碧眼の顔つきは瓜二つ。“アリスタルコス”“ラングレヌス”と称する双子であり、女性がセレネである。
 男達はレムリア達の脇をすり抜けて走って行き、歩いてくる人々に銃口を向けた。
 すると反射的に人々の手に得物が現れる。刃物であったり銃器であったり。
 得物に向けて各々長銃から光線が走り、炙られたオモチャのように得物はぐんにゃり。
 一方、船の背後から近づいた者があり、レムリアが気付くより早くセレネが動く。その装束を舞うようにひらめかせて近づき、レムリアが校長にしたように額にタッチ。
 電撃を受けたようにその者は倒れた。スイッチが切れたロボットのように、瞳開いたままごろり。
「罠です」
 セレネは日本語で言った。
「お城へ。ここは私たちが」
 大量のマインドコントロールに襲わせ、対応に追われている間に。
 両親を。
 レムリアは罠の中身を知り目を見開いた。
 スロープに更なる人影があり、レムリアはその水晶体を振り向ける。同様に黒衣を身につけ、長大な銃を抱えた男は船長“アルフォンスス”。
「相原、船を任せる」
「行くぞ」
 相原はレムリアの手を取り、船長とすれ違いにスロープから船に乗り込んだ。
「ドクター、城へ」
 スロープ脇の格納ボタンを押しながら相原は話す。イヤホン機械は骨伝導で声も拾う。
『アイ。3G加速する掴まれ』
 スロープが格納され、スライドドアが閉じられる。アイはアイアイサーの意。3Gは加速度で、この数値はジェット旅客機の離陸時加速相当。
「了解」
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-24-

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 自分が正しいからこそ、選ばれた者しか自分に近づく権利は無い。それが北村由佳に醸成された基本行動心理であった。自己正当化の言そのものであるが、そう教育されれば、そう思うであろう。
 以上、理絵子が見通したことに、北村由佳を操る者……それは、悪魔をこの場に呼び寄せた本体であった……が、意外な反応を示した。
 曰く理絵子には知られたくなかった。近づかれたくなかった。
 知られると破壊されるから。この築き上げてきた“裏側の秩序”。
 怯えるようにじたばた暴れる。応じて北村由佳の手足が操り人形のようにカクカク動く。しかし、由佳の心に取り憑いたそれは、心丸ごとの浄化プロセスに取り込まれてしまった以上、逃げる術は無いのであった。
 「おん あびらうんけん ばさらだどばん」
 真言。大日如来。すなわち、太陽の聖霊を密教の流儀で召喚。
 日射しの暖かさ、心地よさ。
 それは北村由佳という女の子本来が有する女性性を共鳴励起した。
 北村由佳を操る者は、己が消されるものと恐怖した。霊的存在であり“死”は考える必要はないはずである。が、完全なる消去はあり得るとして恐怖する。
 虚無となる。人間は死を恐れているのではない。死の向こうにあるこの状態を恐れている。死の向こうに何があるのか確信の持てる者は無いから。
 北村由佳が目を開いた。
 夢の続きであるかのように彼女は感じている。そして、操る者の正体は、自分から別れて暴走した自分の一部であると認識している。
「人間だから、邪悪な部分もあって当然だよ」
 北村由佳の声なき問いに、理絵子は微笑みと頷きで答えた。
「そういうことか……」
「そう。人は大地の子。大地地球は太陽の子。太陽は死した他の星の残骸。人も同じ」
「私は一介の女の子。答えはこうかな“私と共にありなさい”」
「それで結構」
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-73-

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 その時、相原には正直なところ若干の不安があったようだが、レムリアの言葉に首肯して見せた。
 対してレムリアは立ち止まった。相原は抱いた不安を見透かされたと思ったようだが。
「船を呼んだ?」
「うんにゃ?……おっ」
 相原は気付いた声を出し、着ているスーツの上着ポケットからオーディオ用のイヤホンケースを取り出し、中からイヤホンの先っぽだけのような、すなわち耳栓を思わせる機械を取り出した。
 機械は小刻みにバイブレーション。
「アルゴ号だ」
 アルゴ号。それは二人が出会ったきっかけ。世界レベルの最高機密。
 空飛ぶ船の名。
 
12
 
 来るらしい。どういうものかは飛来すれば判じよう。
 相原は耳栓型の機械、すなわち通信機、兼、その船の思念コントローラを耳に挿した。
「相原です。どうしました」
「セレネさんから。降りるって。そして私に……」
 相原が聞いているであろう内容を先んじて言いながら、レムリアはウェストポーチをゴソゴソし、同様に機械を耳に挿した。
 二人は同時に学校前の街路を見やる。轟と音を立てて空気の流れが突如発生し、もうもうと砂煙が上がり、枯草街路樹がギシギシしなり、周囲家屋のドアやガラスが鳴動する。
 “船”アルゴ号が降りたのである。但しそこに姿は見えない。
 見えないように小細工(クローキング)をしている。船の側では“透過シールド”と称しているが、一般には光学迷彩と書いた方が通りが良い。街中に空から船が降りてくる、その異常性の故に身を隠した、であろう。
『私どものところへ』
 ハープの弦のようなその声はアルゴ号副長の女性、コールサイン“セレネ”の声。
 二人は手を取り走る。階段を降りて昇降口を抜け。
 気付く、学校の中から、校舎のそこここから、そして街の中から。
 吸い寄せられるように歩いてくる人々の姿。
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-23-

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「おん まゆら きらんでぃ そわか」
 理絵子が突如真言を口にした。その理由を綾が知ったのは1秒後。
 それは、人の挙動ではなかった。
 文字通りの操り人形であった。当初ニコニコし、そして自分を襲い、失神していた人々。糸釣られる動きで身を起こし、立ち上がる。まぶたを開き、しかし何処も見ていない目を向け、二人へ向かって歩いてくる。
「憑依(ポゼスト)」
「その通り。まともに対処するなら殺人になるだろうけど」
 理絵子は綾の前に立ちふさがり、迫り来る人体をぐるり一瞥した。
 結界が、バリアが、彼らの前進を阻止している。
 の、うちの一名。
 北村由佳に向かって理絵子は指を弾く。空中にある何かを指先で弾く有様に似て。
 北村由佳の身体を抑止していた力が外れ、勢いよく理絵子めがけて突進してくる。
 爪を立て、歯を剥き、醜悪に顔を歪めたその様は、吸血鬼のそれを思わせた。
 だが。
 対し理絵子は彼女を、北村由佳の身体を……抱きしめた。
 その包み込むような所作は、愛する者に対するそれであった。
 母が子に成すそれというより、将来を誓い合った恋人同士のそれであった。
「由佳……傷ついたあげくの……」
 北村由佳に友達はなかった。それは自明でもあった。生まれた時点で母親がすでにこの組織の影響下にあり、その中で正しいと信じ生きてきたのだ。それは傍目には不気味であったことも知らず。
 通り一遍の会話はするが誰も近づいてこない。自分の会話相手は“同級生”であるが“友達”ではない。その真実気付いた時のショック、深甚さたるや如何ばかりか。
 さておき、抱きしめるという理絵子の反応は他の者の動きを凍り付かせた。その同期は同一の主体が複数の人体を操っていることを示唆した。無線操縦で一人が複数の機器を操ることがあるが、類例と言えた。理絵子は抱きしめるという行為を通じ、操縦者に直接干渉し、その動きを封じてしまったのである。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-72-

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 レムリアは出された相原の手握り返し、引き寄せ、腕を巻き付けて言った。
 験比べ……それは密教の超能力対決を意味する語。
 歩き出しながら彼女は語る。
「私には魔法に付随して超能力がある。ご存じの通り。比して同じ能力を持って世界征服を企む者が何故いないのか。いないのでは無い。いるけど抑えることが出来ている。これまではね。そういう者達は破壊や殺戮という手段を実は使わない。太古の覇権主義の方法を使わない。心を操り、社会体制を変革するように仕向ける。勝者と敗者が固定された状態を目指す。吸い上げる一方の形態になるように改変しようとする。すると、搾取される側は諦念を抱き、ついには光に背を向け、闇を見るようになる。そのようにさせる」
 レムリアの指摘が、格差社会の背景を意味することは説明するまでもあるまい。
「まぁ、日本もなりつつあるけどな……興味深いことを教えてあげよう。1900年代初頭、日本の秩序こそ真の平和の規範と信じ、これを世界へ広めようとした依り代の女性がいた。が、不運にも当時帝国政府の拡大政策の波に飲み込まれた。そして世紀を超えて振り返ったとき、日本の言う平和と、武器を掲げた国々の言う平和と意味が違うことがようやく浸透してきた。武器の国が言う平和は、君が言った勝敗の固定された状態。日本の言う平和は……循環だ」
 相原の言う女性とは“出口なお”のことである。息子の王仁三郎(おにさぶろう)と共に、いわゆるカルトの始祖のように言われた時代もあったが、政治思想や拝金主義とは無関係のもっと純粋なものだったとする分析が21世紀以降は主体的だ。
「ならば私が感じているのは……それを壊そうとする勢力なのでしょう。ここは長く宗教間の対立に対し緩衝地帯に有った。応じたどちらの勢力も排除する力の場にあるから、あなたの心配は無用」
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-22-

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 綾は確信を持って認識した。そして今、自分は守られている。
「気にしないで。だとすればそれが私の運命で使命。りえぼーが普通の女の子でいるために私がいるんだと思う」
 田島綾は即座に言った。言えた。自動的に言うべき言葉としてそれはもたらされた。
 その言葉に理絵子が目を見開いた。
「文芸部のオカルト知識が本当に役立つとは思わなかったけどね。でも、何かあったらりえぼーが助けてくれる。私そう信じてる。すごいじゃん、ファンタジーそのものの世界にいられるんだよ……ああごめん、遊び半分じゃないことは判ってる」
 隠された何かが目覚める。その時が来れば判る……良くある設定。しかし、今がまさにその“その時”が自分に訪れていると綾は自覚している。
 理絵子は頷いた。
「良く、オカルトで念力戦争ものあるでしょ。でも実際の魔物ってそういう戦争、絵に描いたようなハルマゲドン仕掛けてこない。何故だと思う?心は力で屈服しないから。肉体死は心殺さないから。心動かすのは心だから。だから、心を攻めてくる。でも、肉体と心は繋がる部分もある。薬物依存とかね。それは心も病んだ状態。肉体に働きかけて心をコントロールする。それが彼らの現状攻撃法」
 綾は理解した。一方で疑問一つ。
「すると、悪魔の目的って、何だろう?殺したり、とかく破壊にイメージが向かうけど、全部壊しても心屈服しなかったらそこで終わりじゃん。自己矛盾、論理破綻に思うけど」
「彼らはそうとは思っていない。破壊、死、残忍、何でもいいけど恐怖が心を屈服させると信じている。それにこっちが気付けば無意味、ってことに気付いていないだけかも知れないけどね。意のままにし、虐げ、管理君臨する。それらが彼らと親和性が高いのは確か。それは屈服した状態そのものだからね。だからベクトルが現状の破壊へ向かう。魂を虜とし、対価としてカタルシスを得る。とりあえずの論理はそう……」
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-71-

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 相原の認識、去来した記憶をここに記すことは控える。ただ、そういう者達は、人権・差別というコトバを武器とし正当化している、とだけしておく。
 レムリアは相原がこれまで聞いたことの無い言葉を口にし、校長の額に手のひらを触れた。
 指をパチンと鳴らす。
「放していいよ」
 相原は校長の表情を見、変化に気付き、引き起こした。
「消した?」
「ロックした」
 このやりとりは日本語。
 校長はきょとん。立ちんぼ状態で目の前の二人を交互に見る。
「私は……。お嬢さん、突然で申し訳ないが、私に何が起こったのか私には判らないのだが。知っていたら教えてもらえないか?」
「気絶なさっておりました。家庭の事情で校長を辞する。必要な荷物を引き上げに来たと伺っておりますが」
「おお、そうでしたそうでした。どうもありがとう」
 校長はいそいそと校長室へ戻って行く。
「思惟の上書きか」
 相原は他に誰もいないにもかかわらず、小声で言った。
 他人の指示であるのに、自分の考えであるかのように思わせる。もってして、本来の目的を消去する。
「その通り。私は魔女。応じた恐ろしい、あなたに教えていない力も一杯持ってる」
「でもそれが今の日本に必要になってきたってこったろ。総合すれば」
「ええ、ただ、あなたに対する気持ちは本当」
「言わんでもええ。疑う気も無い。お前はオレの女だ」
 相原はポケットからハンカチを取り出し、校長に触れた手を拭ってから、レムリアに向けて差し出した。別に校長を出血させたわけではない。伴い相原の手に何か付着したわけでもない。
 手を清めたくなったのである。
「しかし君がいなくなると、ここへの攻撃が激化しないか?」
「人種という話では決着は付いてしまった。しかし“験比べ(げんくらべ)”という点では」
 

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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-21-

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 大声に気が付いた者はなく、誰も反応しない。
「ここにいる誰もが同じ。人格改造というか洗脳というか。そこに入り込んで魂レベルで分かちがたく結びついてるよ。だから相手してたんだけどね。私に絡んで、どうにかなりそうと思わせ続ける分には、他の子には手を出さないでしょ。失敗したのはむしろ私。パラレルで手を出してくるとは思ってなかった。読めなかった」
 理絵子は言うと、綾の前に腰を下ろし、手のひらを開いた。
 金色の髪の毛一つ。
「これは?」
「お守り。持っていれば接近すらしてこないから。ていうかこいつらには見えなくなる。本物の霊物(れいぶつ・理絵子の造語)。常に近場に。出来れば身につけて」
「ああ、うん」
 綾はそれを自身の財布に収めた。
 未知なる感覚が綾を囲繞する。真夏に木陰へ入ったような、涼やかで爽やかな。
 髪の毛が何らかの力の場を発生させ、自分に不快と思わせる諸々を排除している。綾の持つオカルト知識ではそう理解された。
 本物の超能力が自分に行使されている。
 超絶の認識は、興奮とは真逆、癒やされる心理を綾に与えた。コンプレックスと感じていた諸々が矮小化して行く。
 守られたかったのか、自分。
 そして、自分、ひとりじゃない。
 自分、りえぼーと一緒にいられればそれでいい。
 むしろそのために自分という存在はある。
「むしろ……」
 心に浮かべた同じ言葉を理絵子から聞き、綾は驚き半分理絵子を見た。
「えっ」
「どうしたの?」
「ううん。何でも。なに?」
「むしろ謝らなくてはならないのは私の方だね。あなたを巻き込んでしまった」
 理絵子の言は普通のそうしたトラブル、学校でのゴタゴタ事象と重みが違った。
 困難で尋常じゃない……理絵子の“巻き込んだ”の趣旨はそういうことであろう。
 

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