【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-06-
36名72の瞳が自分を向いてまばたきすらしない。
それは何か特異な感情が36名を残らず捉えていることを意味した。
黒板には既に白いチョークで名前が大書きされ、ルビまで振ってある。
「こっちへ。相原さん」
「はい」
招かれて教壇へ上がる。彼女が視線を教員に向けると、ひそひそ話が幾つか。
教員の手が肩に回された。
「今日からみんなの仲間になる相原姫子さんです。長く外国で暮らしていたそうで、このたび日本に戻ってきて、本校この組に編入になりました」
「よろしくお願いします」
両の手を前に学生カバンを持ち、頭を下げる。短い髪がさらりと頬撫で。
見上げ、そして見渡す。彼女は一瞬ずつ全員と目を合わせた。その目が合った瞬間、誰もが一様に驚愕を示した。それは彼女の目線に異分子の存在を見て取ったせいだ、と思われた。
独特の距離感と緊張を感じる。ただ、それは彼女の予測の範疇。自分は“よそ者”。
「とは言え日本と縁無しって訳でもないもんで、どっちかてえと名古屋弁が判ったりするもんでいかんだて。向こうじゃフリースクールって通信制みたいなとこだったんで、こうやって制服着て学校通うっての初めてなんです。判らないこといっぱいなんで教えて下さい」
それは芽生えた緊張を崩したが、ギャグとしては“滑った”と彼女は直感した。
「だめ?あ、得意な科目は英語、特技は手品で」
カバンを下ろし、手を握って開くと携帯電話。
どよめく教室とギョッとした担任教諭。名は奈良井(ならい)。
「え、それあたしの携帯」
「はい、すいません」
返す。
担任奈良井は目を白黒させながら電話を見、そもそも入っていたであろう胸元を撫で回す。
級友がひとり、ハッとした顔で立ち上がった。
女の子である。長い髪で、利発そうな。
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