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2015年10月

【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-14-

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 それは二人同意した話。って中学生に刺激強すぎないか?
 反応はこうだった。
「濃いぃな」
 濃いって何だ。そして。
「すげー。何それマジすげー。婚約済みってこと?」
「うん」
 レムリアは頷いた。
「何年付き合ってるの?」
「もうすぐ2年」
「それでその歳で結婚てすごくね?それとも同い年じゃ……」
「ううん、自分タメだよ。みんなとおんなじ14歳」(タメ:同い年の意)
 おおー。という感嘆の意。
「一気にそこまでってすごいね。あーでもあれか。先生と生徒の恋とか、たまーにあるのと一緒か。ステキかもね。はーあ。自分恋愛経験ありません。この組ガキしかいないので」
 薮原が皮肉を言ったら男子軍抗議。
「おめーみてーなやかましー女、こっちから却下」
「エロしか興味ないくせに」
「エロのかけらもねぇ奴に言われてもな」
 レムリアは笑った。
「あ、ひど!」
「違う違う。あたし通信制で“教室”って経験無いからさ。こんな楽しいもんだったのかなって」
 この物言いにはウソがある。厳密には当初学校に行った。
 しかしクラスメートは王族の娘と距離を取った。要は無視系のいじめなのだが、首謀したのは教員であった。実質異国の勢力であり、王権対抗のため、子供のうちから洗脳しようという企みの一環であった。彼女は超常の感覚で攻撃を感じ取り、逃げるように故国を離れ、身分を隠してオランダ・アムステルダムへ出た。そこでフリースクールに入ったのである。
 そうした背景から“王族”を表に出すのはある種のトラウマ。なので極力避けている。
「へーそーなんだ。自分も転入生ってもっと恥ずかしがって控えめってイメージあったけど……なんか、すごい。溶け込み方が、何だろ、魔法みたい。保育士とか看護師とか凄く相性良さそう」
 

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天使のアルバイト-029-

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 しかし。
「家庭内暴力」
 と言いながら、通り過ぎざま、父親の額を指ではじいた。いわゆる“デコピン”だ。
「痛いの」
 父親が横座りになり、さめざめと泣くマネ。
「あはははは!」
 エリアはついに吹き出した。もう笑いが堪えきれない。必死に笑いを堪えようとするが、腹筋が意志に反して勝手に震えてしまい、結局食事が進まない。
 そして同時に、見ず知らずの自分をこうやって夕食に迎えてくれる家庭である理由を納得する。オープンであり、ありのままであり、とても気楽だ。他人であるのに、自分が印象良く見えるように“作る”必要性を感じないのだ。自分が何者であるのか隠しておくのが申し訳ないほど。
 要するに落ち着くのである。ひょっとしてこれも……リテシア様の差し金だろうか。
私はなんて、幸せ者なんだろう。
 
 翌日。
 エリアはそのまま由紀子の家に泊まり、由紀子を学校へ送り出したあと、母親がアルバイト先としてクチを聞いてくれた、近所のスーパーマーケットへ向かった。
「私が適当なこと言うからあなたは話を合わせてね」
 そう言う母親が店長に語ったエリアの“身の上話”は、エリアが話したこととはかけ離れた内容であった。ありがちな話……と言おうか、芸能ワイドショーの“波瀾万丈物語”をテキトーに切り貼りしたものだった。
 それによるとエリアは、国際結婚夫婦の娘で、由紀子の“はとこ”であり、父親は紛争地帯から3年も戻らず、母親はその間に男を作ってアメリカへ行ってしまったという、無茶苦茶な設定の悲劇のヒロインにされてしまった。
「そーなんだ。こんな可愛い娘残して……じゃ、髪の毛は染めたんじゃないんだね」
 店長がエリアの顔を同情の眼差しで覗き込む。ちなみに店長はがっしりした体格であり(あとで学生時代ラグビー部にいたと判る)、誰が見ても“頼れそう”という印象を抱く男である。が、その外見の印象に似合わず涙もろいらしく、母親のウソ話に目の周囲がちょっと赤い。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-13-

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 女子軍(?)が座り込んで陣取り、その周囲に男子達が立って覗き込んだ。
 居並ぶ学生達の中で、異彩を放つとはまさにこのことと言って良かった。レムリアにはこの年代特有の浮わついた感じは無く、逆に自信に満ち、落ち着いて悠然としている。看護師資格という職もありフィアンセもいるのだ。不確定な未来への不安はなく、応じて反映された振る舞いとなる。そして薮原はレムリアを美人と評したが、新天地への興味がもたらす見開かれた双眸は満ちた自信のゆえか黒々とし、僅かな外光の挙動にすら煌めき、微笑みを刻む。もって彼女は一気にヒロインになった。
 内奥に光源を蔵したかの如き、文字通り輝くような美少女である。
「ちょっと半端なくね?」
「ちょー萌える。震える。なんだこれええ!!」
 男子二人が雄叫び上げるように言って笑いあう。それらは本来ひそひそと交わされる内容であろうが、桁違いの故にその場で口を突いて出た、のであろう。
「帰国子女……」
「みたいなもん」
「彼氏は?」
 薮原が訊いて自分で照れる。
「お、ダイレクト」
 囃す声。しかし、
「おるよ」
 彼女は素直に即答した。もったいぶるものでもあるまい。
 あーと声を上げてくずおれる男子軍。同時に怒濤のように離れ去って行く“一目惚れ”の圧力感。
「たはは、ごめんね」
「えーガイジンの男の子?」
 男子軍に比して女子軍の瞳輝く。
「うにゃ。おっさん臭い社会人。ここから歩いて10分に住んでる。彼女がコレです世間に露見したら彼の社会的地位が危ない」
 レムリアはこれですと自分を指さした。
「えーエッチとかしてるわけ?」
 そう来るか。彼女は微笑した。が、マンガみたいにイヤン恥ずかしいとか思わない自分も大概か。
「あ、それはない。本当に大事だから結婚するまでしないって。若すぎる妊娠は母体を傷つけるし」
 

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天使のアルバイト-028-

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 プイッと横を向く。すると父親がテーブル越しに腕を伸ばして来、そんな由紀子の頭をゴシゴシ撫でた。
「まーまー、由紀子も可愛い」
「取って付けたように言わないでくれる?誰の遺伝子だと思ってんの?」
「難しいことお父さんわかんなーい」
 由紀子は父親の缶ビールをひょいと取り上げた。
 そこでエリアはちょっと驚いたように由紀子を見た。
 まさか……飲むの?
「こら、由紀子!」
 否。ビールは由紀子から母親へリレー。
「愛のプレゼント……らしいよ」
「あらお父さんありがとう」
 母親がビールを全部飲んでしまう。
 エリアは可笑しくて口元を緩ませた。まるで漫才である。しかも意図して面白おかしくしようというのではなく、日常茶飯事というか、自然にこうなる、という流れを感じる。
「毎晩こんなことしてんの?」
 エリアは目尻に出てきた笑い涙を拭いながら、由紀子に訊いた。
「おもちゃのオトナ」
 由紀子は父親を指差した。
「そう、ボクちゃんいじめられるの。このふたりスケ番なの」
 父親がいじける真似。
「ふっる~」
 由紀子と母親が同時に声を発し、父親のスケ番なる語彙の古さを責める。ちなみに女子の不良生徒を言う語で、1980年代に使われたであろうか。
 すると。
「仕返し!」
 父親が箸を伸ばし、由紀子のおかず……鳥の唐揚げを簒奪する。
 そのまま食べてしまう。
「あ、ひどい。児童虐待だわ。警察に訴えてやるんだから」
 由紀子、そう言って残りの唐揚げをひょいひょいと口の中に確保。
 目一杯頬張ってそのまま喋る。
「……!……!」
 母親がため息。
「何言ってんだか判んないよ。ほら。バカやってると冷めちゃうよ。早く食べな」
 母親は立ち上がり、空になった自らの食器を重ねて持ち上げた。冷静な発言はこの場を切り上げるかのよう。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-12-

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「そう?」
 実際問題、簡潔明瞭が求められる現場にいるわけで、自ずとそういう文字になるのであろう。ちなみにブロック体で書く。筆記体は書けるは書けるが、逆に読めないと言われることが多いので使わない。“流動的に変化している”のである。
「あなたの字も綺麗だよ」
 言ったら、溝口は照れたように肩をすぼめた。
 答え合わせ。
 成句as soon asを使わせたかったのだと皆の答案で彼女は気付いた。
「先生」
 溝口が挙手。
「はい」
「相原さんwhileを使っていて意味は一緒ですが……」
「いいよ。というか相原さん。もし、教科書の言い回しで別の表現が出来るものがあったら積極的に発表して欲しい。『これを使わなくちゃ』って意識が英語に対するハードルを上げてると先生思ってて」
 予想外の物言い。だがそれは“自分をクラスに溶け込ます算段”だと彼女は気付いた。
 一般に英語ぺらぺら数学バキバキはやっかみを買う……とは相原から聞いた話で、前述、いじめられていた女の子のトリガーがまさにそれ。
 対して、元より得意で当然であるから、逆手に取る作戦ということか。
「判りました……というか、こんな公文書的な言い回し殆ど使いません。at the same timeと何が違うんじゃいって話です」
 これにまた薮原が足バタバタさせて爆笑。
「ブハハ。ごめんね。理由分かった。あなた転入生なのにまるで最初からここにいたみたいだし、めっちゃ美人なのに面白いこと言うから笑えるんだよ」
 
 
 一時限目終了。溝口がトイレの要否を訊いてきたが、無いと答えたら、彼女はひとりで立ち上がって去った。
 するとレムリアのそばに薮原が飛ぶように走って来、相次いで他の女子、そして男子達も駆け寄ってきて、要するにレムリアは級友に囲まれた。
 

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天使のアルバイト-027-

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「コンポはあたしの……ごめんねお古で」
 由紀子が言った。
 エリアは涙が出そうになるのをこらえながら、それでも嬉しいので笑顔で荷物の搬入を見ていた。
 道が開けた……そんな気がする。
「あの……あと私が自分でやりますから」
 勢い込んでエリアは言った。
「掃除して、整理して、これ以上お手間を取らせるつもりはありません」
 実際、この上掃除手伝ってもらうなんて気が引ける。
「あ、そう?OK判ったよ。じゃこれ部屋のカギね。夕食用意しておくから、終わったらいらっしゃい」
「はい」
 エリアは答えた。優しさは人を元気にする……どこかでそんな文言を読んだ気がする。
 
 
 その晩、エリアは由紀子の父親とも顔を合わせ、忙しい土日に店……不動産屋で雑務を手伝う代わりに、朝と夜の食事、および洗濯と入浴を由紀子の家で済ませて良い許可を得た。
 そして今は夕食。父親がエリアを見てニコニコしている。
「いや~いきなりこんな可愛い娘が増えたらお父さん照れちゃうな~」
 日溜まりの猫が目を細めるが如く、父親は額にしわを寄せて感想を述べた。アルコールが入ってほろ酔い加減のせいもあり、いわゆる“でれでれ”状態。
 由紀子はあきれ顔。
 しかし、父親は由紀子の表情が目に入っていない。
「ほん……っと、お姫様か天使って感じだなぁ。こんな女の子が世の中にいるんだねえ」
 エリアを文字通り“眺め”ながらコップのビールをゴクゴク。それは“視覚的おつまみ”以外の何ものでもなく、公衆の場では社会通念上どうかと思われる行動ではある。
「……恐れ入ります」
 エリアは恥ずかしくて“耳まで真っ赤”。こうも見つめられたことはなく思わず目を伏せる。見つめられながらの食事は進まないもんだ。
「えーえーどうせあたしは病弱ブスですよ」
 由紀子はエリアをチラッと見てからひねくれて見せた。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-11-

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「住んどると短期間でクセになってまうでぃかんて(なってしまうから困る)」
 今度はハイタッチした女の子が吹き出した。
「薮原(やぶはら)、ツボか?」
 奈良井はテスト用紙を小分けして各列先頭に配りながら訊いた。笑いのツボにはまったか?の意。
「めちゃくちゃおもろい」
 薮原というその少女は、振り返ってレムリアを見、両の手人差し指で彼女を差して言った。長い髪で瞳の大きな、ちょっとニキビのある子だ。その瞳がキラキラし、楽しいこと大好き、という印象。
「ありがとがんす」
 彼女は敬礼にウィンクを添えて応えた。
 それでまた薮原は大笑いし、その際座っている両足をバタバタさせ、その仕草にクラス中が“またか”みたいになって沸いたのだが、さておく。
「お前ら笑い倒してテスト潰そうと思ってもお見通しだぞ。始め!」
 拍手1回パンと共に一気に静かになる。テストと言っても英文問いかけに英文で答えろ10問。これに20分費やすというのだ。そして終わったら答え合わせを兼ねて復習。何のことは無い。教員側の手抜きだ。“かったるい”のである。
 答え合わせは隣同士交換して採点。37名でひとり余るがそれは奈良井が採点。
 ひとときの静寂が過ぎ、終わり。
「はいそこまで。採点しましょう」
 ざわっとなり、感想の言葉が方々で飛び交い、答案を交換するガサガサ言う音。
 彼女は溝口と交換した。
 溝口の答案は筆記体。丁寧に覚えましたという印象。少し神経質というか、“形象”にこだわりすぎなのではないか。ただ、勉強自体は出来るのであろう。
「わぁ」
 その溝口が驚きの声を上げた。
「え?変?」
 彼女は覗き込んだ。もちろん、クラス中の目線が釘付け。
 これに溝口は萎縮。
「いや、あの、ごめんなさい。日常的に英語書いてる人の文字だなって。すごい読みやすい」
 

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天使のアルバイト-026-

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 ちょっと嘘つきになった気がする。実際は、エリアの発言は一般論である。仲間から聞かされた“子供のことを考えない親のいる家庭”、からの抜粋だ。
 由紀子がエリアから目線を外す。
 そして。
「ごめんなさい、私贅沢だよね」
 寝たまま、謝るように首を小さく動かす。
「親に見守っていてもらえる……」
「我が娘にしては殊勝な発言だこと」
 母親が戻ってきた。
「由紀子らしからぬ殊勝さだわ。明日雪かしら」
「もう!」
 由紀子が目だけ動かして母親を見つめる。
「ほんっとに憎たらしいんだから」
「あんたの親だもん」
「!」
 由紀子は反射的に上半身を起こした。
「あ、もう大丈夫そうだね。ほらミルクティー。急に立つんじゃないよ」
 母親は食ってかからんばかりの由紀子に紅茶の缶を持たせた。
「はい、エリカちゃん」
「すいません」
 エリアも缶を受け取る。
 と、下の道路にトラックのエンジン音。
 母親が首を伸ばして道路を見やる。エンジンが止まり、ドアが開閉。続いて荷室の扉を開ける音と、アパートの階段を上がってくる足音。
「やっぱりそうだ」
 母親は言うと、今度は廊下に顔を出し、作業服姿の男性と声をかわす。
「エリカちゃん。荷物届いた」
「え?」
 エリアは驚く。身ひとつで落ちてきたので何もないが。
「何もなしで女の子放っておけるわけないでしょ。少しだけどね。身の回りのもの用意したから」
 エリアは言葉にならない。どうして、どうしてそこまで見ず知らずの自分に……。
 母親が小さく笑う。
「あげるんじゃないからね。立て替えただけだからね。バイト代入ったら少しずつ返してもらうよ」
「はい!」
 そういうことなら……エリアは元気良く頷いた。荷物は衣類と、ボール紙の組み立て式タンス。安売り店で叩き売られている輸入品の怪しいテレビ。古いCDコンポ。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-10-

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 彼女は奈良井教諭に目を合わせた。
「えーと、給食当番の割烹着というのは個々人で持つんですか?」
「いいえ、順番に使います。アイロンがけして次の当番の方に渡してもらう仕組みです」
「判りました」
 チャイムが鳴る。1時限目はそのまま奈良井教諭の持ち分で英語。
 彼女は記したように帰化したわけだが、それまで国際的な医療ボランティア団体に属し、世界中を飛び回っていた。このため英語はもちろん、母国語含め12カ国語を操る。
 その目で中学2年の英語テキスト見た感じ、挨拶程度の簡単な会話に使えるレベルと感じた。ただ、文法に偏った内容であり、これでは読み書きできてもリアルタイムの会話は苦しいだろうという印象。いちいち順序や形態を考えながら喋る形になるからだ。日本語で顔文字やネットスラングが流行るのと一緒で、英語も日常会話は流体の如く変化している。比してこの教科書英語はシャーロックホームズ時代のイギリス気取りな印象だ。
「まぁ3学期いきなり授業もかったるいので、まず復習小テストね」
 え~、というブーイングがクラス中から上がる。かったるいから難しくない話、と思うのが普通のところ、テストだ、と真逆に攻めた。それはある種のギャグなのだと判る。
 軽妙な会話、応じたクラス一体の反応、それはこの担任奈良井がクラスを掌握し、ドライブできている、というのがレムリアの印象。
「てなわけでいきなりテストなんだけどいいかなぁ相原さん」
「一応教科書サラっと見てきましたし、英語使ってましたが、ショボーンな(しょぼーんとするような散々な)点だったらその化けの皮が剥がれたということで」
 返したら、担任奈良井はもう我慢の限界とばかり吹き出した。
「はっはっは。あなた丁寧なのに面白いのね。会話で相手を楽しませよう、そんな意図を感じる。出身は大阪?ああでもさっき名古屋弁って言ってたねぇ」
 

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