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2015年11月

【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-18-

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 どうやら当てこすりの悪口を言っていると判る。それは溝口の“波長の違い”を裏打ちした。ただ、同様に探る気は無い。
 必要に応じ、天の意志で開示される。自分の力そういうもんだ。
 恐らく。
「では、解散」
 ノート教科書をカバンに収め、マフラー巻いて手袋をし、溝口を待つ。
「ああ、ごめんね待たせて……」
 いわゆるのんびり屋さんであることは瞭然。その間に教室からはどんどん生徒達が去って行く。
「姫ちゃんまたね~」
「ばいば~い」
「もう、友達になったんだね」
 首をひねって手を振っていたら、溝口が、ぽそっ、と言った。
 寂しそうに。
 少し考えて対応する必要がある。レムリアの抱いた気持ちまずそれ。そして、“天の意志”少し。
「みんなノリがいいね。いい意味ではみ出してると感じるよ。学校ってもっと統制というか画一的なイメージがあったから」
 カバンを手にし、
 イスを、机の中に。
「お待たせ」
 自分を見上げるその笑顔は無理矢理がありあり。
 下駄箱の履き替えでもレムリアが先に終わって溝口を待つ。
 それが彼女にプレッシャーになっているとレムリアは知る。
 学校で求められることに集団の統率というのはあるだろう。そこには自ずと行動速度の下限値があるだろう。この溝口という娘はその下限値以下であるという自覚があるのだ。
「いつも言われるんだ。遅い、って」
 スニーカーを履き、ようやく立ち上がった溝口の手をレムリアは取った。
 細っこく、冷たい感じがあり、柔らかく、筋肉の感触が薄い。低体温、或いはいわゆる血の気が薄いと言われる状態か。どっちにせよ、思春期で脂肪が乗って行きます、という感じではない。
 対し溝口は驚いたようにレムリアを見る。
「相原……」
「姫子か姫ちゃんでいいよ」
「姫ちゃん、手のひら、熱い」
 それはよく言われることで別に驚かない。
 

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天使のアルバイト-033-

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 すると、日焼け顔の若い男性……追ってたこ焼き屋の兄ちゃんと判る……から拍手が起こり、波のように広がってやんやの喝采。
「美人歓迎だと」
「ど、どうも………」
 照れて仕方ない。
 開店する。いわゆる朝ラッシュに重なるこの時間のお客さんは、出勤前に朝や昼用の弁当を買って行く、或いは犬の散歩がてら今日の買い物、そんな感じである。エリアは主として弁当の陳列を手伝った。
 客層からして常連が殆どであり、何か訊かれたり、と言うことはなかったが。
「新人さんかい?」
 と3人ほどに声を掛けられた。
 不思議なもので、店長と練習した限りではどうということはなかったのに、いきなり声を掛けられると“上がる”ものだ。
「え?あ、はい。よろしく……」
 ぺこっと頭下げるのが精一杯。が、その間に客の方はもういない。それは客から見れば誰もがみんな“店員さん”であり、人対人の初対面ではない……と、判ったのはもう少し後のことだ。ただ、初の“接客”が、そうした簡単な会話からのスタートで、客の側も手慣れていたのは、徐々に馴れて行くという点からは、エリアにとって良かったと言える。
 そのせいか、“通勤弁当組”が一段落付く頃には、品定めに迷う客に、今日の売れ筋を説明できるほどになった。
「あんた、スジがいいわねぇ」
 とは、その弁当造りの張本人である総菜担当のおばちゃん。
「そのさ、そっと添える笑顔がとってもいいよあんた。大事にしな」
「あ、はい。ありがとうございます」
 厨房に戻るおばちゃんに頭を下げる。ちなみに、笑顔は別に作り笑いではなく、喜んでもらえたのが自分でも嬉しいから勝手に出たものであるが。いいというなら無理に押し殺す必要もあるまい。
 そこへ店長。背後から肩をぽんと叩かれ。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-17-

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「ごめん、もう大体暗記してる。道も店も危ないところも。逆にレアものフィギュアの隠れた名店知りたいってなら案内できるし。あ、換気扇とかダクトファンの専門店もあるよ、そういう方面なら天国」
 サラサラっと話したら、平沢の目が大きく開かれた。それは彼の想定を外れた言動であったことを意味した。
「何それ。換気扇だけ?マジ?」
「マジ。あれ知らない?末広町(すえひろちょう)の方までは行かないの?」
「うわヒラだっせえ」
「姫ちゃんの勝ち」
 言われて、“両手でピース”をやったらチャイムが鳴った。
 男女二重の輪の外から、呆気にとられたように見ている溝口。
 
 
 帰宅時ホームルーム。本日より女子生徒の単独登下校は基本的に禁止、という達しが出たと聞かされた。曰く変態紳士が出没したためという。なので極力二人以上で。
「えーと、誰か相原さんと一緒に……」
 奈良井が言い終わる前に男子生徒達がこぞって手を上げたのであったが、
「逆に危ない」
 と一笑に付され、溝口が指名された。
「あ、はい……」
 溝口は驚いたように、次いで少し嬉しそうに笑み。
 これにレムリアは奈良井の何らか意図を感じた。半日だけであるが、彼女はこのクラスの持つノリというか波動と少し波長が異なるように思われる。特に女子はいずれも数名ずつグループで行動することが多いようだが彼女は違う。最も、今日の休み時間はいずれも自分の世話役だったのでそう見えただけかも知れぬ。
 ここで奈良井の意図をあらかじめ知ることは可能であっただろう。魔女であり応じた超感覚持っている。だが、レムリアはその方策を排除した。不自然に判ってしまうと不自然な言動に繋がり、それは往々にして誰か傷つける。
 一方で自分の利害に繋がる情報は勝手に拾い上げるのもこの能力の特徴で、不随意な部分である。その女子グループが今この瞬間に方々で形成され、何やら秘密の合意形成。
 

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天使のアルバイト-032-

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「そうだね。では、お客様にどう対応する?訓練だ。第一方針“お客様の立場で”」
 その問いにエリアはハッとする。まただ。“臨機応変”だ。
 ちょっと考える。ここで必要なのはスピードである。お客様に待っていただくのは避けられない。理由を伝える必要があるが、詳しい説明はくどくて長い。
“要点を、かいつまんで”それが答え。
「申し訳ありません。見習いで良く把握できておりません。他の者に聞いて参りますので、少々お時間頂けますか?」
 エリアは会釈を絡めて答えた。
 店長はちょっと笑顔。
「いい答えだ。ああ、その時これを持っておくといい。尋ねられた商品名を、復唱しながら書き留める。『間違いがない』という印象を持って頂ける」
「なるほど……」
 店長はメモと筆記具をエリアに渡した。
 エリアが受け取り、“メモして復唱”と書くとすかさず、
「“おおば”はどこにありますか?」
 店長が問う。再び訓練。
「あ、はい。おおば、ですね。申し訳ありません……」
 エリアは言った。ちなみに“おおば”が具体的に何か判らないので、ちょっと困った顔になったらしく。
「はっはっは。そこまでリアルに困らなくていいよ。かえってお客様の方が恐縮してしまう。演技は要らない。大事なのは言葉。明るい声で応対してくれればいいよ。ちなみに大葉ってのはシソの葉だ。野菜売り場のショーケース」
「判りました」
 エリアは書き留めた。
 開店5分前となり、総員集合で朝礼。エリアは店員に紹介された。
「……しばらくみんなに色々尋ねると思うが、よろしく頼む」
「茶色い髪の毛のドジですが、よろしくお願いします」
 エリアは頭を下げた。
 顔を上げると衆目が自分に集中していることが判る。店員達は一様にちょっと驚いた風の円い目であり、少々恥ずかしい。
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-16-

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「あーそれ聞いたことあるぜ」
 とは宮越(みやこし)という男子生徒。
「日本の援助って金に飽かせてって奴が多くて、便利だけど使いこなせないとか」
「それどういうこと?」
「地下水のポンプを援助とか、良くニュースでやるじゃんよ。だけど機械だから手入れがいるじゃん。でも手入れできる技術者がいないんだよ。故障しても直せないし。だから最初だけ便利。そのうち壊れると分解して売り飛ばすんだってさ。相手のこと考えた援助が出来ない」
 レムリアは頷いた。“日本の援助”は貧困地域に沢山なされているはずだが、援助結果の現品を見たことが無いのだ。
 売り飛ばされていたなら納得である。フィルタ詰まり程度のことであっても、多く現地の人に知識は無いし、フィルタ自体も入手できない。そこ行くと同じ日本の防疫用品でも、“蚊帳”は、ほつれを手直しできる上、類似品を作れる。伝染病が蚊によって媒介される地域には良く持って行く。
「それはダンナ候補も言ってたなぁ。『プラント作って誰が管理するんだ』って」
 レムリアがそう応じたら“ダンナ候補”に話題は移った。
「どうやって知り合ったの?」
 自分が空から降り立って拉致被害者の少女を託した……なのだが、さすがにそこは言えないであろう。空から女の子が……それこそ日本のアニメみたいではないか。
 ちょいウソ。
「秋葉原で目の不自由な女の子を一緒になって手伝ったことがあるんだ。まあそこから徐々に」
「アキバってロリコンとか多そうだけど」
「確かに変なのいたけどね。むしろ彼が一緒にいてくれて心強かった。へぇ男の人と一緒ってこういうことか、みたいな」
 惚けのつもりで言ってみたら。
「相原さんオレと一緒にアキバ行こうぜ」
 それは先ほどの平沢。復活、と言わんばかりに胸張って歯を見せる。
 

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天使のアルバイト-031-

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「開店8時。今は7時45分。15分前には店に入る。着替えて手洗いして朝礼……みんなに紹介したいしさ」
「あ、はい、判りました」
 もう、か。エリアは思ったが、何も今日一日空ける必要はないのだ。すぐに頭を切り換え、足早な店長を追って、半ば小走りしながら店の中へ入る。
 振り返ると母親が手を振り、そして後ろを向いて帰って行くところ。
 頼れる人はもういないのだ。エリアはそれに気付くと、ちょっと心配しながら、それでも気を引き締めた。
 
 
 貸与された制服は、サーモンピンク地のワンピース型。“研修中”と書かれた黄色い腕章を付け、エリアは店に出た。
 開店前のわずかな時間を用い、大ざっぱなオリエンテーションを受ける。この“スーパーマーケット”なる商店形態が、客が自身の手で品物をカゴやカートに取得、レジで精算するシステムであること、それ自体は知識として知ってはいた。
 しかし。
「君……沢口の奥さんの口ぶりからすると、あまり世間慣れしてないお嬢様って感じなんだけど、こういうところで買い物したことは?」
 店長が訊いた。ウソついても仕方がないので、「ありません」と答える。
「なるほどな。そうすると今君はお客さんの立場でモノが見られるちょうど良い状態にあるわけだ。何か買いたい物があるとして、パッと見て何がどこにあるか判るかい?」
言われて見回す。通路ごとに、精肉、総菜、等のカンバンが天井から下がってはいる。しかし例えば、今目の前にある“ダシの素”は、“乾物”の通路にあり、おそらくパッと見てここにあるとは判るまい。
「モノによっては誰かに尋ねたくなりますね」
 エリアは言った。店長は頷いて。
「そうだな。そこで仮に君がお客様に尋ねられたとしよう。判るかな?」
「いえ。私自身誰かにお聞きしないと」
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-15-

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 薮原の物言いに頷きが幾らか。
「ねぇ、本当にあのお姫様じゃないの?確かあの姫様も看護師でしょ」
 背後から訊いてきた女の子あり。名札には贄川(にえかわ)。
 レムリアはゆっくり首をひねり。
「魔法の国のお姫様……に見える?そら名前姫子だけっども」
 自分指さして問う。
 実際はそのものなのだが、突拍子のないことほど、真っ向から訊くと肯定は出てこないもの。
 ただ、嘘はつきたくない。
「微妙……かも……」
 贄川はそう言い、笑みを作った。“ごめんなさい”の微笑だ。
「だべしょ?」
 レムリアが応じたら笑いが取れた。
「ねぇ、姫さん彼氏ってかっこいいの?」
 野太い声。男子からだ。
 背が高くて筋肉質、短髪の少年である。随分大人びており、喉仏がぐりぐり動く。平沢という。
「かっこいい?どうかな。身長168。あなたより低いでしょう。メガネ顔のエンジニア。ロケットエンジンの設計やってるよ」
 男女拠らず、おー、と歓声。
「それめちゃくちゃかっこいいんですけど」
 男の子の瞳が開く。ロケットエンジン。すなわち大出力と宇宙。
 男子中学生には夢と憧れ……レムリアはようやく気付いた。彼女のこの辺の鈍さには理由がある。追って書くことになろう。
「でも秋葉原大好きのオタクだよ」
 するとガッツポーズの平沢。
「おれアキバ大好き」
「アニメやフィギュアより電子回路って手合いだけどね」
「そっちかあああ。うわああああ」
 平沢は古いビルのようにくずおれた。
「ヒラだせぇ」
「ちゅどーん。爆裂」
 笑いが収まり、以下インタビューのようになる。記者会見みたいと思いつつ彼女は答えて行く。前の居留地はアムステルダム。将来目標は医師か看護師。
「そのよく似た姫様に影響されてねぇ。彼女は手品を子供の目を引くキャッチアイテムに使ってるわけでしょ。応用できるなって。そこに、単純に、誰かの役に立ちたいって思う気持ちがくっついた。日本ってそういう国じゃんって思うしね。あと、日本語出来るって有利なんだ。日本の製薬会社とか良く海外向けに寄付や援助するけど、日本向けのパッケージなり取説のままなんだ。読めないんだよ」
 

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天使のアルバイト-030-

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 斯くて母親はあっさりとウソを信用させた。
「ええ、はい」
 エリアは伏し目のまま答えた。もし今店長氏を真正面から見れば、“泣き顔マッチョ”の組み合わせに吹き出してしまい、全部ぶち壊すに決まっているからだ。ちなみに、エリアの発言は話を合わすも何もなく、この一言だけ。
 再び主導権は母親。
「びっくりしましたよ。いきなりこの娘が尋ねてきたときには。しかもいきなりぶっ倒れて、熱が40度!。ということなんで、お願いできますかしら?」
「えーえーもちろんいいですよ」
 店長は二つ返事で頷いた。エリアは母親のセリフに含まれるものすごい論理の飛躍と、心理学的誘導に気付いたが、とりあえず何も言わない。
「エリカさんか。よろしく。しかし何だね。何かこう……不思議な……変な表現だけど、いい香りのしそうな何かをまとっているような……そんな女の子だね」
 まただ。エリアは気付いた。会う人にことごとく不思議と言われる。やはり何か“人間”と違うところがあるのだろうか。
「それでだ」
 店長の表情が引き締まる。恐らくここからは自分が自分の意志で答えるべき場面。
 エリアは店長を見上げた。
「勤務態勢、シフトのことなんだがね、どうしようかね。平日も毎日来られる?」
「はい」
「じゃぁ開店8時。閉店8時。休憩3回20分ずつ。昼食は11時半から13時半の間のどこかで1時間。時給は見習い期間中850。それ以降950。閉店後残業時は1000円。いいかな?」
「ええ。お任せします」
「アルバイトの経験は……」
「ありません」
「わかった。じゃあまずは商品陳列しながら、仕事の内容とお客様との応対から憶えてもらうかな」
「はい、よろしくお願いします」
 エリアは頭を下げた。
「じゃあ来て」
「え?」
 

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