【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-25-
これは違おう。金曜か、今さっきのお手々繋いでを、溝口に関するウワサからこう見たのだ。
「いや……」
背後から聞こえた呟き。
それは、非常警報。
溝口は痩せているせいもあろう、目と口が見開かれたその顔は、それら造作を、ことさらに大きく見せた。
「なんで……折角の……折角の……」
そして。彼女は、絶叫した。
ひそひそ話で事態を見ていたクラスはもちろんのこと、近隣の教室で一斉に人が動くのが感じ取れた。
溝口がカバンを放り出して走り出す。
レムリアはカバンを持ったまま後を追う。
「待って!」
廊下に出たところで、遠くから担任奈良井。
「みぞぐ……相原さん?」
「ここは私にお任せ願いたく」
レムリアは立ち止まってそれだけ告げ、階段を駆け登る溝口の後を追った。
「ちょ、待って何が……相原さん、相原さん!」
奈良井の声が遠ざかる。溝口はきびきびどころか、女子中学生としてまさかと思うような速度で階段を駆け上がって行く。3階を過ぎ、埃だらけの細く、暗い階段。
屋上へ出ようというのであった。薄いエメラルドグリーンに塗られたドアに“生徒立ち入り禁止”のプレートはあれど、鍵は掛かっておらず。
溝口は引きちぎるようにそのドアを開けた。
その“ドアを開ける”ために一旦止まったことでレムリアは距離を縮められた。
ただ、捕まえるには至らず。溝口は屋上に出るや、奥手の柵めがけて一目散に走る。
柵に取り付いて昇ろうとする。よじ登る、を要する高さ。柵の向こうには何もない。
そこで、今度こそ、レムリアは、追いついた。
「ちえちゃん!」
溝口智恵美。彼女のフルネームに基づく。
一瞬動作が止まる。そこでレムリアは彼女の腰に腕を回すことに成功した。
「だめ!離して!死ぬ!お友達が出来たのに、お友達が出来たのに。お友達の全てを壊してしまった。私なんか死んだ方がいい。消えてしまった方がいい!」
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