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2016年6月

天使のアルバイト-064-

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 ただ、人類がその方面で互いにいがみ合っている以上、形而上側としても、人間に合わせた姿形、概念形態を取らないと受け入れてもらえない状態になっており、その点でエリアは“天使”の属性を備えている。
 従って日本の“八百万の神々”を有する神道体系は、一般教養的な部分でしか対応できず……。
「お~いエリカちゃん。どうした難しい顔して」
 店長が言った。
「あ、いえ、巫女さんとなると儀式とか祝詞とか真言とか……」
 そのセリフに店長は笑った。
「真剣に考えすぎだい。そういう卑弥呼みたいな本物じゃなくてバイト巫女だよ。ぶっちゃけ巫女姿の売り子さん」
「へ?」
 エリアは力が抜けた。
 神々と交流し、その依り代として未来を語り、一族を繁栄に導く……。
「本当に世間ズレしていないんだねぇ。日本の正月は今やお祭りの一種。形だけのものだよ。そりゃ清めの儀式はするけど、真剣に八百万の神々……なんてのが果たしてどれだけあるか。巫女装束着て当店から“出向”してくれればいいんだよ。いつも通りにありがとうございました、ってね」
 店長のセリフは、エリアとしてはホッとしていいのか、それとも形而上側の一員として問題視すべきなのか。
「だめかい?」
 店長が再度訊く。エリアはそこで、店長と母親とが“目線で会話”していることに気付いた。それは二人に暗黙の了解があり、自分の反応を最終回答として待っている、ということ。要するに。
 裏取引成立済み。
「どう?エリカちゃん」
 母親が小さく作り笑いをして訊いた。
 エリアは納得した。道理で、“土壇場休み”を取らせてくれないと言われる店長が、母親の一言で休みを出したわけだ。
「判りましたお引き受けします。でも、全然判んないので教えてくださいね」
 エリアは苦笑混じりに言った。
 

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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-006-

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 14時46分。
 相原は勤務先にあり、実験室から執務室デスクに戻り、備え付けの給茶機でマグカップにコーヒーを淹れたところであった。
 工場内“研究棟”と呼ばれる建屋で、地上部分は2階建ての白ビル。中は7割方が壁なしのオフィススペース。パソコンの置かれたデスクがズラリと並び、課ごとに机の集合体“島”を作っている。島の末端に係長なり課長なりの机が配されている。そんな状況。青い作業服の技術者達は、日中殆どが建物地下の実験室“ラボ”に詰めており、大体3時を目処に午後の休憩。相原は試験装置の使用順もあり、先んじて戻って来た形。
 相原は自分のパソコンにログオンする。CTRL+Alt+DEL。パスワード。
 経済新聞のサイトにアクセスして程なく、緊急地震速報の画面がポップアップ。但し、オフィスであり音は出してない。
「ん、来たか」
 緊急地震速報。揺れを検知し、震度を推計し、テレビや携帯電話に流すシステムとして知られる。しかし、実はテレビや携帯に流されるのは、その中でも緊急性の高いもの(「警報」と呼称)である。すなわち、

 

①最大震度5弱以上
②しかも、住んでいる地域(携帯の所在する地域)で震度4以上と推定される場合

 

を満たした場合となる。但し、研究家、専門家向けには検知情報自体は全てインターネット経由で流される。それを使ったフリーウェアの速報表示ソフトを相原は使っている。従い、単にどこかで震度3以上、或いはマグニチュード(以下M)5以上で彼の机には表示が出る。

 

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(速報ソフトの例。なお、壁紙は友人の筆によるレムリア (c)chabo-z2016)

 

 ここで、相原の「来たか」の背景を記しておく。この2日前、3月9日に僅かな津波を伴う宮城県沖の地震があった。M7.3であった。宮城県沖では30年程度の間隔でM7.5級の「宮城県沖地震」が発生しており、前回の同地震は1978年であるから、2011年時点「30年以内の発生確率99%」とされていた。9日の同地震はそれにも思われたが、発生場所が従前の宮城県沖と異なりプレート内部であり、規模も小さかったことから、別物、前触れ、と相原は見ていた。もってしての「本当の宮城県沖」が「来たか」であった。

 

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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-005-

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「ハイハイ学子(まなぶこ)ちゃん、忘れ物はありませんか?ハンカチとちり紙は?」
 母親がリビングから出て来、降りてくる相原を見上げて言った。降りてくるのを待っていたようである。
「ジェットタオルって奴があるので最悪忘れても大丈夫」
 相原は言った。

 

Photo_advantage_0_point02

 

(ジェットタオル)

 

「面白みの無い男だねお前は」
 母親は応じながら、玄関で靴履く息子の肩をトントン。
「んぁ?」
「いや、今日の姫ちゃん、ちょっと変かなって」
 小声で言う。
「あ、いや、あのね……」
 それは、母親としては、聞こえないようヒソヒソ話……の意図だったようだが、レムリアはテレパス(超常感覚所有)なので自分の思惟はほぼ丸見え、という説明を相原学は飲み込んだ。たとえ母親でも他言無用と言われているからだ。全て見透かされてると思うほど気分の悪いものはあるまい。一方彼女も余計なこと勝手に判るので、遮断能力会得するのにそれなりの苦労があったと言った。なお、相原とレムリア二人の間は、彼女の能力のたまもので“当然のように”双方向筒抜けにしてある。別に隠すこともないからだ。最も、無線通信に似ている部分はあって、意思疎通できる条件は距離や心理状態に依存し、一定ではない。
「まぁ、普通に遠足前の眠れぬ一夜でしょ。実際、俺あの子を遊園地とか連れてったことないからね。純粋に嬉し楽しワクワクするし、だと思うよ」
 相原は言った。無難な回答。ただ、少し引っかかる部分はある。ハイテンション過ぎるきらいは否定しない。されど問題視するには大げさすぎる。
「そう?ならいいけど」
「そういう場所を喜ばないひねた息子でしたからね~」
「まぁね。こっちは遠出もしないしカネも使わない。楽で良かったけどね。ハイ、行ってらっしゃい」
「いてらせー」
 これはリビングから声だけレムリア。
 このように、送り出された朝は、いつも通りの平凡、であった。

 

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天使のアルバイト-063-

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「いつも悲壮な顔してさ、中世の暗い感じの絵を見るとか、そんな娘だったんだよ。店長があんたのこと不思議だっていつもこぼすけど、ホント私もそう思うよ。あんたが来てからあの子は変わった。あ、さっき店長にねぇ、明日あんたを休みにするようにって頼んでおいたから」
「え?」
 エリアは母親の顔を見た。
 明日は土曜……何かあるのか。
「由紀子がね……」
 母親は長野県にある著名な高原の名を口にした。
「行きたいって。前からずっと言ってたんだけどね。だけど、すぐに乗り物酔い起こす娘だからさ、行ったことなかったんだよ。でも、最近元気だろ?大丈夫そうだから連れてってやろうかって。もちろん、あんたも一緒にね」
「わあ。いいんですか?」
 エリアは笑みを作った。その高原は中部山岳地帯の中にあり、景色の美しさと頂上にある美術館で知られる。その魅力のほどは由紀子から聞いている。絵が好き、なるほどである。
「ぜひ!」
「でね。その代わりに……ちょっと店長さんっ。さっきの話」
 母親は受付脇カウンターの店長を呼びつけた。
 店長が気付き、小走りにやってくる。
「はいはい。ああ、エリカちゃん。君、お正月までこっちにいるかい?」
 エリアは解答に窮した。
 それを決めるのは自分ではない。ただ、それまでに呼び戻してもらえるという感じはない。
「ええ。今のところは」
「じゃさあ。悪いんだけどさあ。オヤジの神社で巫女やってくんないかなあ」
 店長ははにかみながら言った。
「……は?」
 エリアは目をしばたたく。
 み、こ。?
 か、神様が違う気がしますが……?
 無論、そんなことは人類全体を視野に置いた場合、些細なことだと判ってはいる。
“神”と、それに準ずる“聖なる存在”とがいる。そのシステムや与えられた資質等は、呼び名やその他は違っても、大枠の部分では多く共通であろうからだ。
 

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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-004-

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 レムリアは傍ら置いたウェストポーチをぽんぽん叩き、開いて見せる。そこには彼女が言ったそれらの他、ケガなどの応急処置用具一通り、件のお菓子も少し入っている。
 及び、衛星携帯電話。
「そういや電話どうするね?その“野郎”じゃみんなと繋がれないだろ」
 相原は電話機を顎で指し示した。彼女の電話は世界中を飛び回る関係で衛星携帯電話である。微弱な電波を扱うことと、元来の想定ユーザの用途を踏まえ、携帯電話というには無骨な外観をしている。さながら軍用無線機を思わせ、その男性的なゴツいデザインを捉えて相原は野郎と呼ぶ。なお、繋がるとはインターネット経由の各種SNSを指す。それら専用アプリが使えないだろうというのだ。来日定住して3ヶ月、彼女は元々持っていたアカウントを友人達に公開し、主としてパソコンで各種コミュニケーションをしている。が、今日は集団行動であり、電話機自身がそれら機能を備えていた方が早いであろう……というのが相原の考え。ちなみに、電話機でメールの送受信は出来るが、日本語には非対応。また、それ以外のデータは“ダイヤルアップ接続”扱いになる。

 

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(「イリジウム」サービス用端末の例。KDDIサイトより)

 

「あたしの貸そうか?」
 母親。
「あ、大丈夫です。基本みんなくっついて動くし、ローマ字で書いてもらえばいいって言ってあるし。そんな濃いのや長いのはやりとりしないし」
「そう?」
「はい」
 彼女は頷いた。
「判った。んじゃ俺は行くぜ」
「はーい。行てらせー。パジャマのままで行てらせー」
「流石にパジャマはダメだべ」
 相原が席を立ち部屋を出て行く。彼はいわゆるサラリーマンであるが、ドレスコードの敷かれた半年間の研修が明け、通勤スタイルは私服に変えた。
 着替えて降りて長袖の襟シャツにダウンジャケット。東京多摩地区3月は春まだ遠い。

 

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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-003-

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「多分相原家の母子漫才が伝染したのかと」
 レムリアは相原を指さす。
「親のせい」
 相原は母親を指さす。
「突然変異」
 母親は相原を指さして返した。
「あっはっは」
 レムリアは笑った。
「ホラ……そういうのが伝染ったんだって……ダメだツボる(笑いのツボにはまる)」
 レムリアはそう言うとパンをかじり、思い出したか再度笑った。
「あっはっは。ダメだ助けて」
「大丈夫かキミは」
「こちらに住まわせていただくに当たり、大丈夫か、はナンセンスな質問かと」
 笑い涙を目尻に拭う。
 相原が和んだような笑顔を見せたのをレムリアは見逃さない。ここに住み始めて以来、笑ってばかりの毎日である。母子が気を遣って演出しているようには思われぬ。この同棲を始める前にも長い逗留は幾度かしているが、その頃と変わったところは感じない。万事こんな調子なのだと納得する。
 そして、自分も確実に笑う回数が増えた。相原の浮かべた和みの意味を理解する。
 これまで、こんなにも笑い転げる日々を過ごしたことはない。
 幸せなんだろう。自分。
 相原の表情変化に気付く。黙り込んでいたからか。
「なんか思い詰めてる?」
 レムリアは首を横に振った。
「ちゃう、幸せをかみしめてるって奴」
「このパン、耳まで味が浸みてて、噛みしめるとんまい(美味い)ねぇ」
 それは相原の“ボケ”。こうやってすぐ笑いに引っ張り出す。但し、多く滑る(つまらない内容で失敗する)。
「ああ寒いオヤジギャグ朝から聞いた。風邪引きそう」
「じゃぁ休め」
「学が会社行っちゃえば済む話」
 そこで母親が参戦。
「亭主元気で留守がイイ」
 それは流行語にもなった古いCMのフレーズ。
 相原は舌打ち。
「ちぇ。ハイハイ姫子ちゃん、忘れ物はありませんか?ハンカチとちり紙は?」
「残念、身だしなみに関わる部分は女の子真っ先に完璧ですので」

 

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天使のアルバイト-062-

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 女性はこう発言し、うっすら涙。
 動揺に似た感慨が衆目に広がるのが判る。店長や他の店員の、自分に対する認識が変化しつつあるのを感じる。
 対し、エリアは困惑した。
 言う通り、奇跡が起きたのかも知れぬ。或いは封印されているはずの自分の“力”が、ちらりと顔を出したのかも知れぬ。超能力とは言わないまでも、一般に“不思議”と思われる“能力”を、自分が発揮した蓋然性は多分高い。
 でも、今の出来事は不思議というには少々“度が過ぎた”ようだ。エリアに取ってそれは困る。
 なぜなら、“普通”でいられないから。
 思われる資格もないから。
 私はただ、沢口さん家のはとこのエリカ……。
「あの、申し訳ないんですけれど……今日のこと、皆さんの秘密にしておいてもらえますか」
 一瞬の躊躇の後、エリアはその場の全員に向かって言った。
 店長の少し驚いたような目。
「え?どうして?いい話……」
「別に……出来ることをしただけですし。それよりは変なヤツだと思われたくないんです。友達が“変なヤツと付き合ってる”とか言われて迷惑かかる……」
「勘ぐりすぎだよ。それに由紀子ちゃん、だっけ?きっと喜ぶ……」
「沢口さんには何も言わないで!」
 エリアは自分自身も予想外な大きい声で言った。
 店長が驚いてちょっと身をのけぞらせる。
「……ごめんなさい。沢口さんの家族には、言葉で言い表せないくらい世話になってるから……余計なことで迷惑かけたくないんです」
「OK判った」
 店長は切り替えたようにあっさり言った。
「でもホント、つくづく不思議な女の子だよ君は」
 
10
 
 秋の足音が聞こえる季節。
 エリアの一人暮らしもすっかり軌道に乗り、彼女自身、自分がずっと人間として生きてきたのではないか、と思うくらいになった頃。
「見違えるほど元気になったよ」エリアは由紀子について、買い物に来た母親にそう言われた。
 

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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-002-

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 普段、相原家の朝食は和食であるが、今日は集合時刻に合わせた時間短縮でトーストにベーコン。ただ、ならば手伝えるとレムリアがフレンチトースト作成を志願して、早起き、が、ここまでの経緯。
 焦げた糖分がいい匂いの完成品がこたつに到着。
「どうぞどうぞダンナさま」
 彼女はこたつに正座し、紅茶のティーバッグを揺すりながら相原に勧めた。
「初めての手料理って奴か?」
 相原が紅茶のマグカップを受け取る。
「そうだっけ?でもお菓子は何度か食べてるじゃん」
 レムリアは答えて相原を見た。彼女は国際救助ボランティアで人命救助に携わる。その際、特に子供達とコミュニケーションの糸口になればと、焼き菓子を自作して持ち歩いている。
「ありゃ毒味ってんだ」
「あ、ひどい」
「進歩したけどな」
「正直でよろしい」
 レムリアは相原の頭をなでた。いい子いい子。
 母親がキッチンから焼いたベーコンを持って来る。相原学は22歳であるからして、母親は応じた年齢である。髪の毛は白い物が目立つ。
「はいお待たせ~。あら、凄く美味しそう」
 母親は件のトーストを見て言った。ふんわり感に少し焦げ目。
「いただきまーす」
 手を合わせてそう言うのは日本ならではなのだが、レムリアの所作はすっかり板に付いている。
 それぞれフレンチトーストひと囓り。
「おお」
 相原は目を見開いた。
「どう?どう?凄いべ?だべ?」
 レムリアが覗き込む。語尾に「~べ」と付けるのは神奈川北部から東京多摩地区に見える方言である。するりと出てくるのは喋りも慣れた証し。
「ちょっと甘すぎるけどな」
「学なんか今日ひどい、嫌い」
「あら、あたしは丁度いいと思うけど」
「ですよね。ハイ2対1、学の負け」
 負け~、負け~と二人でののしる。
 相原は苦笑。
「おまいさん、そんな面白かったっけ」

 

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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-001-

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 2011年3月11日。金曜日。月齢6.3。
 相原家の朝の始動は早かった。
 6時。相原学(あいはらまなぶ)が起きてリビングに降りてくると、彼女レムリアは既に着替えてキッチンにあり、母親と共に朝餉の準備をしていた。
「学校集合7時半じゃ」
 相原学はこたつの上、広げられた遊園地案内図を眺めて言った。
 あちこちのアトラクションに、絶対という文字だの、回る順番であろう数字が入っている。
「目が覚めちゃったし」
 彼女はまな板から振り向かず答えた。Gパン姿でアウターはフード付きパーカー。そんな姿にエプロンをしている。
「遊園地遊び、ってイメージじゃなかったけどな」
「学が連れてってくれなかっただけですよ~だ」
 彼女は今度は顔を向け、べっ、と舌を出して応じた。今日は学年末の“お別れ遠足”。ネズミのキャラクタで知られる千葉県浦安(うらやす)の巨大遊園地に行くという。
「これと遊園地行ってキャーキャーしたいか?」
 相原学は自らを指さして訊いた。オレと一緒で場に似合うか?という意味。
「誘拐犯だわね」
 レムリアはしわくちゃパジャマのメガネ男を上から下まで見回し、うんうんとため息を混ぜて頷いた。彼女14歳、学22歳。されど、将来を約束し合った仲。さらさらのショートカットが軽やかに揺れる。
 16歳まで彼女が相原宅に同居同棲。これは彼女が日本人では無かった故の処置。
 瞳キラキラの顔立ちは異国の感はなく、どころか、渋谷や原宿でスカウトされそうな程であるが、それでも彼女はれっきとした王女であった。否、過去形は正確ではない。祖国における王女としての地位は存置されている。ただ、王家は存続させず、現在の王と女王の死を持って解体と決まっている。
 フライパンでジャーと派手な音。

 

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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【目次】-000-

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●前書き

 

彼女レムリアのライフワークとアルゴ号の主たる任務は“人命救助”である。
かかる者達が、主題の地震がもたらした未曾有の災害、東日本大震災の場にあったなれば、どこまでの、何が、出来たであろうか。
本作は当日までに入手可能であった地球物理学的知見と、アルゴ号に与えた情報処理・人命救助能力に基づき、その可能性に挑戦した一種のシミュレーションである。
私個人の体験した地震動や見聞きした災害の内容を記録する意図も含める。
知り得たこと出来たこと、そして、今般なしえなかったことは、南海トラフに代表される次なる類似の大災害への課題を浮き彫りにすることであろう。
物語を開闢する。冒頭に当たり、失われた万余の御霊に祈りを。
生き残った我らのなすべきは、再びの類似な大規模犠牲を出さないこと。これこそ最大限の慰霊と信じる。

 

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魔法少女レムリアのお話【作品リスト】

魔法少女レムリアシリーズ

★どういう順番で読んでもかまいません。分かるように作ってあります。手始めに短いのから、というのパターンもOK。今後については、彼女次第(笑)

(予告)「(仮)」

「転入生担当係(但し、魔法使い)」(全36回)
  -01-05- -06-10- -11-15- -16-20- -21-25- -26-30- -31-36終-

「アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~」(全138回)
(趣旨・前書き・目次)
【第1話】

●「転入生(但し、魔法使い)」(全45回)
(目次)
【第1話】

●「Baby Face」(全90回)
・あらすじ
正真正銘姫様なのだが誕生パーティもんじゃ焼き。しかし、どうにも体調が優れない。その理由を知った時、彼女は自分の居場所に気づいた。
(目次)
【第1話】

●リトル・アサシン(全26回)
・あらすじ
内戦後、復興支援の医療活動。地元民族の実効支配地域で流行病と話を聞き、向かった先で待っていたのは機関銃ぶら下げた男の子。病気なのは彼女の妹、そして、その病気は。
(目次)
【第1話】

●夜無き国の火を噴く氷(全16回)
(目次)
【第1話】

●博士と助手(但し魔法使い)と。(全12回)
(目次)
【第1話】

●豊穣なる時の彼方から(短編・全5回)
【第1話】

●Good-bye Red Brick Road(グッバイ・レッド・ブリック・ロード)(全240回)
・あらすじ
東京の知り合い宅で供された茶器「常滑焼き」。
魅せられた彼女は、実家土産に買って行こうと愛知県の同市を訪れる。
どうせなら即売してくれる工房で…煉瓦の煙突が並ぶ小道を歩き、立ち寄った先の娘はしかし、よそ者いじめを受けていると知る。
彼女は、持てる全てを持って、遮る手を伸ばした。
(目次)
【第1話】

●東京魔法少女(全21回)
・あらすじ
携帯電話の修理でやって来た東京・秋葉原。どうせならCDでも探して帰ろうかと大通りを横切ろうとした時、困った顔の女の子が通りがかる。どうやら犬の散歩中、リードが切れて逃げ出したらしい。彼女は一肌脱ぐことに決めた。
(目次)
【第1話】

●夏の海、少女(但し魔法使い)と。(全13回)
(目次)
【第1話】

●ブリリアント・ハート(全45回)
・あらすじ
夏休みのお子様が聴衆の講演会。自然で飢餓で貧困で云々。つつがなく終了し、一礼して立ち上がり、ステージに背を向けた時、背後から勇気の声。あ、あの質問があるんですけど。
彼女は立ち止まって、声の主の来るのを待った。
(目次)
【第1話】

●魔女と魔法と魔術と蠱と(全15回)
・あらすじ
マジックショーを終えた彼女に、男の子が頼み事「僕にも魔法を教えて欲しい」
「何に使うの?」咎めるように答えてしまった彼女に、彼の答えた「用途」は。
(目次)
【第1話】

●マジック・マジック(短編・全8回)
【第1話】

●ミラクル・プリンセス(全123回)
あらすじ
近所に住む子どもさんが重く進行も早い病気。その母親は「魔法使いが来て治してくれる」とごまかしていたとか。そんな折、その子どもさんは「魔女の血を引く」という小国の姫君の存在を雑誌記事で見てしまった。「なんとかごまかせる方法はないか」相談を持ちかけられた相原学が連れてきた「客」は。
(目次)
(第1話)

●アルゴ・ムーンライト・プロジェクト
【第1部】全131回
【第2部】全127回
【第3部】全92回
・あらすじ
極秘任務。世界一の列車に乗れ。
一通の手紙が全ての始まり。彼女はアルプス山懐の小国へ招かれる。
救助ボランティアを立ち上げるので参加せよと言うのだ。
地球規模で、しかも極秘。
距離4万キロというスケールで活動を展開できるその理由とは。
現代の魔女はホウキで飛ばない。その代わり。 
(目次・3部分)
【第1部第1話】
【第2部第1話】
【第3部第1話】

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天使のアルバイト-061-

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 どっと疲れが出てへたり込む。自分に出来ることは全てやった。あとは医療機関に任せ、無事を祈るより他ない。
 託します。
「ふぅ」
 店長のため息。
「あのバカ女……エリカちゃんにはひとことの礼もなしか……」
 サイレンの音が消えてから、彼は腕組みしてゆっくり言った。
 そして、エリアを見る。
「しかし……君は不思議な女の子だな。どんなに泣いてる子も君見ると泣きやむし、瀕死の子供も救っちゃう……」
 その時。
「あのう……」
 声を発したのは、最初に店に駆け込んできた女性。
 エリアと店長が彼女を見る。
「あのう……」
 女性は何か言いたげなのは判るのだが、どうやら二の句が継げない。
 店長がそばへ行く。
「どうしました?。何か精神的にショックを受けたなら、店員休憩室でよろしければ……」
「いえ……」
 店長の申し出に首を左右に振る。そういうことではないようだ。
 女性はちょっとうつむき、少し考えるようにし、再度顔を上げ、エリアを見、そして。
「あなた、ドアロックどうやって開けたの?」
 エリアは最初何を言われているか判らなかった。そんなこと微塵も考えることなく、何の疑いもなく、ドアは開くと信じていたからだ。否、ドアが開かないなどとは思っていなかった。
 ロック…そういえばそう言われていた気がする。
「え……はぁ……」
 どうやって開いたんだろうと考える。“力”があれば容易だが、封印されているはずである。“上位”の誰かが力を貸してくれたのか、それとも……。
 女性の目から涙が一粒。
「あなた……ものすごく一生懸命だったの私判った。だから、あの……こういうこと軽々しく口にしていいのかどうか判らないけど……私、これ、奇蹟……が、起きたのかなって」
 女性は言った。そして、
「確かに彼女、店長さんが言うように不思議な娘さんだし、泣いてる子供が急にニコニコし始めるの見たことあるし……」
 

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-45-終

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 許さない。その言葉は教室の持つ“鳴き竜効果”もあったか凜と響き、大桑はびくりと電撃受けたように身体を震わせ、着座のままレムリアを見上げた。
 彼女の着座姿勢の良さ、それを支える鍛えられた体格、とりわけ幅広の胸元は、“武道をしている”、とレムリアに教えてくれる。でも、その幅広胸の内にある心は繊細。否、繊細の故に身体を鍛え、物理的に強くなることでカバーしようとしたのだろう。
「これでも護身術レベルで“一本背負い”位はできてね」
 レムリアがそう言うと、大桑の表情に笑みが浮かんだ。
“自分が武道をしていると判っている”と、大桑はレムリアを理解したのだ。
 ぱん、と快活な音がし、二人の手と手が空中で合わされる。その瞬間、レムリアは判ってしまう。大桑の抱えた思いと記憶が、一気に心に走ったために。
“強すぎる女の子”として、特に男の子達に、口さがないこと言われてきた過去を。
 それ故、一気にクラス男子の人気をさらい、果てにフィアンセまでいるという自分に嫉妬したこと。
 目から何か出た。
「……どうした?あ、痛かった?」
 大桑が心配そうに腰を浮かせる。目からこぼれ落つひとしずく。
「違う。嬉しいんだ。腹割って話が出来る友達またゲットだぜ」
 レムリアは笑って見せた。上手くごまかせた半分、事実でもある。自分の人間関係はそう。最初から嫌われるか、魂の友達か、どっちか。
 彼女は最初から……のなりかけだったと思うが、後者に変わった。
 それは恐らく、自分の進歩と判断して良いのであろう。
「俺は~?姫ちゃん」
 平沢。
「相原さん、とお呼び」
 お高く止まって返す。彼にはこのノリで良さそう。
 すると。
「じゃ、姫様」
 ぶっ。
「だって自分で言ったし」
 このツッコミは溝口。
「あきらめさない」
 奈良井が言った。
 こうして、彼女のあだ名が確定した。
 チャイムが鳴る。
 2011年1月11日午後2時10分。

 

転入生(但し魔法使い)/終

 

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天使のアルバイト-060-

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 まっすぐに、落ち着いた、茶色の瞳で。
 店長に“太陽”と思わせた瞳で。
 そして。
「大丈夫」
 彼女は、言った。
「大丈夫。この子は、必ず、助ける」
 エリアは言った。先ほど同じで、根拠があるわけではない。だが、言って良いとふと思った。
「そう、絶対に大丈夫」
 救急車のサイレン音が大きくなってきた。
 すぐそばまで来たと判る。
 そして止まる。
 程なく、店の自動ドアが開いた。
 救急隊員。
「たびたびすいません」
 店長が入口に向かって声をかけ、救急隊員を店内に案内する。先ほどと同じ二人である。
 エリアはそこで手を止め、救急隊に目を向ける。ストレッチャーと、そこに載せられたビニール製の簡易浴槽。中には敷き詰められた濡れタオル。
「あなたですか」
 隊員の一人がエリアを見るなり言った。
 エリアはゆっくり立ち上がる。胸に赤ちゃんを抱いて。
「心拍も呼吸もありません。蘇生動作を行っていますが苦しい状況……体温も……」
「診ましょう」
 隊員が赤ちゃんを抱き取り簡易浴槽に横たえる。
 耳の穴に体温計。
 39・9度。
「望みはあります」
 隊員は笑みを見せて言った。すぐに手動ポンプによる人工呼吸と心臓マッサージを開始。
 同時に輸液のために手首を消毒。
「後はお任せ下さい……で、この子の親御さんは?」
「オラ、行け!」
 店長が母親の背中を突き飛ばすようにして押す。
「あの……あの……」
「とにかくご一緒に。詳しいことは病院で診察を受けてから……」
 うろたえる女性の腕を取り、隊員がストレッチャーと共に店を出てゆく。
 クルマのドアがばたばた開閉する音。
 サイレンが鳴り出し、救急車が動き出す。
 そのまま徐々に遠ざかる。
 エリアは、サイレンの音が聞こえなくなるまで、ずっとそこで動かなかった。
 

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手のひら端末でも読めそうな「夢見るようなファンタジーで、命を守る」お話を、ぼちぼちリストして行きます。

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【理絵子の夜話】「午前二時の訪問者」(11/21 毎週土曜更新)

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お話カタログ

●連載タイプ(掟破りの携帯で長編)
魔法少女レムリアのお話(現在15編)
超感覚学級委員理絵子の夜話(現在10編)

●長編
「天使のアルバイト」
天使が、人に近い属性を備える理由、そして、だからこその過ち。その結果。
(目次

●短編集
大人向けの童話(現在10編)
恋の小話(現在13編)
妖精エウリーの小さなお話(現在22編)
(分類不能)「蟷螂の斧」

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色んな切り口色んな長さ。他の「ココログ小説」の方々の物語。「へぇ、こういうのもアリだな」そんな発見をどうぞ!

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