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天使のアルバイト-098-

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 エリアも正直なところ同じ気持ちである。しかし自分たちは、“お願いしている”のだ。文句を言える立場じゃない。
「いいえ、レジじゃ全然……だったし。14枚も持って行ってくれたなんてすごいと思います。助かりました」
 エリアは笑顔を作ると、山のような残りのビラをスーパーのビニールに収めた。
 若い母親がフッと笑い、エリアの手を握る。
「そうね。私の赤ちゃんをあなたが助けてくれたように、あなたのお友達を助けてくれる人がきっといる。私はそう信じる」
 エリアは握られた母親の手に、心からの温かさを感じた。
 その手を強く握り返す。寒空の下、二人とも素手である。理由……ビラを持って行ってくれた人に、握手で謝意を表したいから。
「明日また配りましょう」
「はい。ありがとうございます」
 エリアは答えた。正直言って、今日の14枚が直接事態の解決につながるとは思えない。
 ただ、少なくとも、手をこまねいているよりはマシだと思える。
 もちろん、それは単なる自己満足なのかも、何かしている“つもり”でいたいだけなのかも知れないが。
「じゃあ」
 ビラ配りの許可をくれた駅事務室に一礼し、二人はそれぞれ家へ向かった。ちなみに、赤ちゃんは母親が実家から出て来て面倒を見ているとのこと。
 エリアの場合、家へは線路沿いの田んぼのあぜ道を歩いて行くのが近道である。当然街灯など無く、一般的には若い娘が夜歩くべき場所ではない。しかし、そんな懸念は元よりエリアにない。
 最も、知っていたとしても、彼女はそこを通っただろう。なぜなら彼女の思惟は“由紀子を救う方法はないか”それ一点に占領されており、その他の行動は全て自動的に近い状態で行われているからだ。
 正面から光芒。電車である。都心へ向かう上り最終が接近し、轟音と共に行き過ぎる。
 

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