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【大人向けの童話】謎行きバス-50-

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 なさけなくてかっこ悪いと思ったにちがいない。手下達にだけは、自分の味方をしてほしかったにちがいない。
 でも、返ってきたのは、とどめさすような、きたねー。
 どうしようもなかったことを、一番身近な人間に、きたねー。
 自分がみじめで、それこそゲロかウンコにでもされたような気がしただろう。
「全部出しちゃいなさい。無理しちゃダメ、ガマンするともっと気持ち悪くなるよ……」
 気が付くと、由美さんが何らためらうことなく、しゃがみこんで、大きなヤツの背中をさすっていた。
 そしてさすりながら、まるでおこった時の母さんのような目で、後ずさった二人をにらんだ。
 こわいほどに。
「ひどい子たちだね。ピンチの時に助けるのが友達ってもんじゃないの?何があったか知らないけどさ、だれか呼びに行くとか、この子連れて行くとか。最低じゃん!あんたら気持ち悪くなったことないの?。君もこんなのと遊ぶのやめな。友達じゃないよ、こんなヤツら。……こら!見せ物じゃないよ。何も出来ないならあっち行け!」
 由美さんは〝こんなの〟と二人をあごで示した挙げ句、大声で追いはらってしまった。
「キョーボー女!」
 はなれた場所から、片方が犬みたいにほえ、自転車に乗って走って行った。
 しかし由美さんは無視した。
 ゲロをクズの葉でかくし、ティッシュで口と鼻血をぬぐい、残っていた雄一のお茶でうがいをさせる。
 雄一はそうした由美さんの動きをじっと見ていた。
 優しくて、そして、強いひと。
 センターでは一番のお姉さんのはずである。小さな弟や妹たちを……という気持ちは、さっき自分が感じたものより、何倍も大きいだろう。
 由美さんはティッシュをちぎって丸め、大きなヤツの鼻につめた。
「だれにも言ったりしないから。そのかわり、もうウチのしせつの子いじめるのやめてね。ウチの子達、君に何もしてないでしょ?あいつらみたいに君を笑い飛ばしたりしてないでしょ?」
 

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