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【理絵子の夜話】見つからないまま -18-

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 自分は拒否されているのだ。いきなり中枢に乗り込めば、相手は激しく反応するだろう。
 それが祖母にどんな影響を与えるか。
 天使か妖精か、人格だけの存在に依頼し、直接交渉できれば早い……か?
 否、力任せに強引にやれば向こうは逃げるだけ。
 むしろ、“武力”を持たない自分の方がいいのかも知れない。
 超感覚の囁き。
「放す」
 理絵子は囁きをそのまま言葉にした。
「えっ?」
「お……」
 祖母が目を開く。
 人格が解放されたのである。そのまま“人質”に取っておくのは不利益と判断したようだ。
 この者の目的……仕返しは、桜井家を困らせること。苦難を与えること。
 なのに自分が来たことにより、優子や祖父の困惑は消滅し、依存と安心が育ち始めた。
 それではお呼びでないのである。しかも、祖母を乗っ取って自身の人格を出現させたところで、自分に発見されるだけのこと。
 そのまま祖母の人格を帰還不能にするだけの能力もない。しょせん憑きもの。恐怖で縮こまった心を羽交い締めにできる程度。
 憑きもの。その概念に理絵子は納得した。大した力を持たないことは、自分を怖がっていることからも明らかだ。判明してしまえば何のことはない。
「蛇とか狐とか呼ばれるものですね」
 理絵子は言った。霊的愉快犯、それがこの昏睡事件の犯人であると納得が行く。但し本質ではなく、マンション幽霊とも関係ない。本来無関係な“意識だけの存在”が、恐怖する心を見つけ、つけ込んできたのだ。祖母の人格を活動不能にし、祖父や桜井家の困る様子を楽しんでいただけ。
「といっても、本当にそうした動物の幽霊が、というのではありません。人の気持ちの断片です。つまり、過去に誰かの心から放たれた、憎しみとか、怒りとか、妬みとか、そういう感情が、そういう感情だけの人格に成長したものです。憎しみだけの幽霊、怒りだけの幽霊、そんなのが、おばあさまの心を乗っ取った、そうお考えください」
 

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