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2018年12月

【理絵子の夜話】見つからないまま -26-

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 それは最前までの祖母の姿ではなかった。眉間に縦皺を寄せ、目は怒りに燃え吊り上がり、噛み締められた歯は今にもギリギリと音を立てそう。
 声に祖父が目を覚ます。祖母の姿に目を円くする。
 祖母の異様さが祖父の心理に恐怖を呼び込む。
 インクのシミのようにさっと心理に広がって行く恐怖の観念。
「連中がおばあさまを借りて喋っているだけです」
 理絵子はすぐ言った。
 しかし祖父の恐怖をぬぐい去ることはできない。
 仕方ない。
 独鈷杵を手にする。それこそ挑発するようにろくろ首へと向ける。
「それでお前に何ができる。真言を知っておっても聞く者がおるまい」
 勝ち誇ったように言い、そんな風になるのかと思うほど、唇をVの字につり上げて嘲笑する。
「鬼……」
 祖父がつぶやき、後ずさりした。
 鬼、確かに今目の前にいる“老女”は鬼そのもののようである。古来語り継がれる怨恨と破壊の権化、般若の形相をしている。
 しかし理絵子はあくまで攻撃をしようというのではない。
 ろくろ首と化してしまった、鬼女となってしまったこの人の過去を探る。超心理学の用語でポストコグニション(過去認知)。
「やめろ何をする」
 ろくろ首は拒否の反応を示した。
 襲われる。浮かぶ般若の顔が突如巨大化し、部屋の半分をも占めるサイズとなり、狂気のガリバーのように、文字通り理絵子に食ってかかる。
 巨大な顎が理絵子を捉える。パジャマの少女が口の中にすっぽりと隠される。
 傍目には、理絵子は巨大な顎により、飲み込まれたように思われた。
 しかし、理絵子には身体的な変化は何一つない。霊的存在と肉体は所属する次元が異なるからである。
 彼らは心に働きかけることはできても、肉体に直接力を及ぼすことは容易ではない。
 自分に対する優子たちの心配を強く感じながら、理絵子は自分を囲繞する環境のなんたるかを、心で捉えた。
 

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【大人向けの童話】謎行きバス-58-

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 月曜日。
 雄一は早速、ミヤマクワガタの水そうをかかえて、学校へ向かった。
 掘長恵といっしょになる。家が近くて、登校時間もいっしょだから、大体いつもこうなる。
「聞いたよ。謎バス乗ってきたんだって?」
 掘長は笑顔を作って言い、雄一の背中をポンとたたいた。
 雄一は目の上の少女を見上げ、すぐ気付いた。
 堀長の様子がいつもとちがう。
 笑顔だが、目がしんどそう。
 覚えていないころから毎日会っているのだ。そのくらいすぐわかる。
「調子悪いの?」
「え?まぁ、うん。だるいというか、ちょっとぼーっとしてるというか、熱はないんだけどね」
「大じょうぶ?」
 それは単純に堀長が心配だからでもあるし、由美さんの〝味方に〟というのが意識のかたすみにあるからでもある。
 果たして堀長は、あれっ?という目で雄一を見返した。
「ゆう君……」
 雄一は、自分の言ったことが、とっても〝らぶらぶ〟なじょうきょうを作り出したと感じた。
 顔がかぁっと赤くなる。
「だ、大じょうぶなら、……行こうよ」
 思わずどなろうとしたが、彼女をつき放してしまうような気がして、〝行こうよ〟は、ふつうに言った。
 彼女に冷たい行動が取れなくなった自分を感じている。由美さんに言われたことが、とても強く印象に残っているのだろう。
 道すがら、バスの行き先の事を話す。
「……そういうしせつなんだ」
「子ども達は虫好きなんだけど、虫にくわしい大人がいないからって。面白かったよ。センター長さんの部屋は中に木が生えてて、樹液が落ちるからって、カサさしてご飯食べた」
「へー」
 堀長は笑顔を作った。面白いのは面白いと思ってくれてるようだ。でも、それ以上に体の調子の方が悪いのか、声は何だか素っ気ない。
「で?それがおみやげ?」
 堀長は話題を変えるように、水そうを指差した。
 

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【理絵子の夜話】見つからないまま -25-

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「対決なんかする気ないよ。何も解決しないでしょ。敵だとも思ってないし」
 そもそもはかわいそうな存在なのだ。それを行動が攻撃的だからと言って排除するのはおかしい。
 むしろ必要なのは“慰謝・許容”ではないのか。
 刃向かう気持ちを弱めてみる。
 と、その時。
「出てくる」
「え?」
 理絵子は感じたままを言った。マジックミラーの向こうから、こちらへ出てくる。
 天井付近に陽炎のようなもやもや。
「あっ……」
 優子が気付く。彼女にも見えている。
 すなわち強い相手だ……理絵子は認識した。
 狐だヘビだ、というレベルではない。明確に幽霊、否、怨霊である。死して尚存在し続ける、意識だけの怨嗟の人。
 蛍光灯の光が失われる。
 但し暗闇に閉ざされたわけではない。わずかに、本当にわずかにではあるが、光が残る。天井の梁がうすぼんやり認識できる。
 わざとだ。理絵子は知った。怖がらせるための演出。
 梁が、それこそ陽炎越しにあるかのように、揺らめき、動く。
 続いて、陽炎のようなもやもやが、何か形を作り始めた。
 人の頭部であると判る。泥土で作られたかのような、グレーとも茶色とも付かぬ色をした、人の頭部。
 頭部がろくろ首よろしく、天井からぬーっと首を伸ばし、二人の方へ降りてきた。
 優子が絶句する。本物の幽霊である。驚愕が彼女の心を捉えている。
 しかし、これは最早鉄則だが、その驚愕が恐怖に転じてはならない。
 理絵子はタオルケットの下から優子の手を握った。
 ろくろ首が接近する。
 鼻先に触れるか位まで近づき、静止する。
 触れているかも知れぬ、しかし相手には実体はない。
 祖母がガバッと上半身を起こしたのはその時。
「許してやるなどおこがましい。地上げ屋の手先が」
 油の切れた機械装置のような、ギシギシした、“錆びた”声。
 

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【大人向けの童話】謎行きバス-57-

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 ただ、これは言えるだろうと思えることがひとつ。
「ああ、そのことですね、それだったら、〝男には負けると分かっていても戦わねばならない時がある〟ということを学びました」
 雄一のそのセリフに、センター長はクルマを止め、後席の雄一をふり向いた。
「え?」
 じーっとセンター長に見つめられる。ぼく、何かいけないことでも……。
 すると。
「かっこいい。すごいじゃないか」
 まじめな顔で、低い声で、センター長は言った。
「そ、そうですか?」
「実は、君が今朝ここに来た時、ああ傷ついてる子だなって思った。すぐ分かったよ。ウチに初めて来る子は、みんな傷ついてるからね。
 だからぼくは、君に無理言って引き留めた。君ならウチの子たち理解してくれると思ったし、ウチにいることで、君のその心の傷が、すぐには直らないかも知れないけれど、少しでも、傷のことを忘れられるかなって。
 でも、どうやらぼくの予想以上だったようだね。
 君がヤマカガシつかまえた時のみんなの顔を覚えてるかい?あの後ね、みんな口々にぼくに言ったよ。君が助けてくれたってね。自分たちのために命がけで教えてくれたってね。もちろん、君がヘビのあつかいになれていて、あんな事お茶の子さいさいだった、ってのは分かってる。でも、ウチの子達にとって、自分たちのために、危険をおかしてまで何かしてくれる人がいる、ってのは、すごいショックだった…おっと、このショックは傷つけたって意味じゃないよ、感動したってことだよ。
 だってそうだろ?
 君が見たように、ふつうの子に、そうじゃないって言われて、いじめられるんだ。オレ達ってワンランク下なのか、と思わされてしまうさ。でも、君は、そんなウチの子達に、毒ヘビだから気を付けろ、と言ってくれた、実際に毒に触れる危険をおかしてまで、きちんと教えてくれた。そこまでしてくれれば、感動するのも当然だろう。君は、君がウチの子達にとって仲間であると、態度と行動で、示してくれたんだ。
 しかも、君はちゃんと、単純にお茶の子さいさいじゃなくて、そういう子だって事を、実際に意地悪な子に立ち向かうことで、証明してくれた。命がけは大げさかも知れないけれど、勇気を示してくれた。弱虫とんでもない。それでこそ男の子だとぼくは思うよ。
 ありがとう。ウチの子達は君との冒険で、目に見えないけれどとても素晴らしい宝物を見つけたと思う。それでなお、君が楽しかった、学んだというなら、ぼくにとってこれ以上うれしいことはないよ。学校やお母様には話したけど、ウチのしせつに、君の学校からキャンプにでも来てもらえないかなと思ってる。その時はまた、先生を頼めるかい?」
「はい!」
 雄一はうなずいた。
 自分の冒険は終わったけれど、なんかとっても、すてきなことが、かわりに始まった予感……。
 

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【理絵子の夜話】見つからないまま -24-

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 救われない連中だと思う。意図を果たしたところで得るものは何もないのだ。そして最後には結局、力任せに排除される。
 排除されると、その悔しさも手伝って、また被害者を捜す。
 堂々巡り。
「このハイエナゴキブリ連中の目的って何なんだ?」
 優子が訊いた。
「楽しければそれでいい」
 理絵子は感じるままを口にしてみる。
「恐らくそれだけ。刹那的で怠惰な享楽主義者。でも、欲しいと思っている方向が破壊のもたらす刺激でしょ。刺激のもたらす快楽は、刺激のレベルを徐々に上げて行かないと、刺激を強くして行かないと、つまらなくなる。だから刺激では永遠に満たされない。行き着く先が刺激のためだけに破壊しつづける魔性の生命体」
 理絵子は言い、以前出会ったそんな生命体を思い出した。
“死神”である。
「お前が踏切でやられそうになったあいつだな」
 優子に当てられ、理絵子は頷いた。詳細は省くが、その時、理絵子の心を死神から現実に引き戻し、電車に轢かれる寸前だったところを助けたのが優子である。
 それをきっかけに、理絵子は優子に自分の力のことを話した。
“動揺”がマジックミラーの向こうに生じているのを理絵子は感じた。彼らに取り、彼らと同類でより強い存在、死神と渡り合ったという事実は、攻撃を躊躇させる大きな理由になったようである。この小娘は強力だ。とても敵わない相手だ……。
 作戦を変えよう。
「あんたらを力任せになんとかしようだなんて思ってないよ」
 理絵子はマジックミラーの向こうに対して言った。
「そんな力もないし。ウソだと思うなら調べてごらん」
「おいおい」
 理絵子の発言を、優子も、マジックミラーの向こうの連中も、“挑発”と受け取ったようである。
 でも理絵子にそんな意図はカケラもない。
 

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【大人向けの童話】謎行きバス-56-

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13
 
 探検隊の報告会をかねた夕飯をごちそうになり、再会の約束をし、雄一はセンター長のクルマでしせつを後にした。
 ちなみに、ミヤマクワガタと、その後見つけたカラスアゲハの卵だけは、持って帰ることにした。その中で、アゲハの方は、あのモンシロチョウを失敗したさきちゃんにも分けてあげた。〝どっちが先にチョウにするか競争〟というわけだ。最も、雄一には本気で競争する気なんか無くて、その方が張り合いがあるだろうと思っただけ。カラスアゲハにした理由は、モンシロチョウよりは育ちやすいと思うし、何と言っても成虫の姿と来たら……。
「いやぁ引きとめてごめんね」
 みんなの顔が見えなくなったところで、センター長は言った。雄一がいるのは後席。センター長との会話は、バックミラーごし。
「いいえ、とっても楽しかったです。兄貴になるって、あーいうことなのかなって」
「そうかい?」
「ええ。それよりも、ぼくの方こそ、おもしろ半分でバスに乗ったりして。もうしわけありませんでした」
 雄一は頭を下げた。知らなかったとはいえ、失礼な行動だと、今さらながら思う。
「あっはっは。いいよいいよ。あれは、わざとだからね。もしそれと分かると、君がさっき出くわした子ども達のように、ひどいことをするのが絶対出てくるんだ。だから、路線バスの姿なのさ。
 それに、君はバカにしに来たわけじゃない。強くなりたくてバスに乗った。おもしろ半分とは思わない。それで、どうだった?」
「え?」
 雄一はハッとした。
 に最初はそうだった。でも、いつの間にかそんなことは忘れて、センセイどころか、ぎゃくに自分の方が、モノスゴく色んなことを教えてもらった気がする。
「あれ?由美ちゃんは意地悪な子達を君がげきたいしたと」
 げきたいしたのは実質マルカメムシと由美さんである。
 

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【理絵子の夜話】見つからないまま -23-

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 縮こまる心につけ込み、入り込んでこようとする意識の動き。
 マジックミラーの向こうから見ているような視線。
 理絵子は、祖母の背中に手のひらを乗せると同時に、そのミラー越しの視線の方向……部屋の隅の天井へ目を向けた。私には全部見えている。犬にわざと姿を見せたでしょう。でも思い通りにはさせないよ。
 舌打ちといらだち。理絵子には判っている。連中は人の心に恐怖が生じない限り、マジックミラーのこちらには入っては来られない。
 だから出てくるのは夜だし、普通の人が昼日中にどうにかなることもないのだ。
 徐々に強まる、自分に対する、彼らの敵意。
「とにかく、まずはこの憑きものさんたちには帰ってもらわないと。このままじゃ真相が判らないし、その子どもたちもかわいそうです」
 理絵子は言った。
 
 
 夜11時。
 4人は同じ部屋に布団を並べた。
 照明は点けたままである。しかし、困難を任せた安心感と、これまでの精神的疲労もあろう、夫婦はすぐに眠りに落ちた。ちなみに、祖母の体調には、その後特に変化は現れていない。
「で、実際のところはどうなんだよ」
 優子が訊いた。理絵子が夫婦を安心させるため、本当のことを言っていない。そう思っているのだ。
 確かに、言っていないこともある。但し、安心してもらうためであって、欺すようなことはしていない。
「ものすごく嫌われてる私たち」
 理絵子はまず言った。
「邪魔で邪魔で仕方がないみたい。どこか行け、排除してやるぞ。そういう意思表示をずっと受けてる。彼らも出てくる場所が欲しいからね」
 理絵子は言った。こういった連中の行動エネルギー…動機は、憎悪と怒り、嗜虐性、そういった部類である。だから、相手の恐怖する様が好きであり、そこにつけ込む。
 

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【大人向けの童話】謎行きバス-55-

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 由美さんはまるで、自分の事みたいに、なみだをうかべて言った。
「由美さんも……」
「私?私は出ても行くところないもん。両親とも死んだから。でも死にたいと思ったことあったよ。だって最初、ただ生きてるだけ、みたいな気がしたもん。ここと学校を往復するだけの毎日。何の意味があるんだろうってね。それである日、夜の2時だったかな、雪降ってた。凍死(とうし)ってねむくなるって言うから、この寒さなら死ねるかなって。だって、痛いのとか、体ぐちゃぐちゃになっちゃうのって、いやじゃん。そしたら、センター長の部屋から泣き声聞こえてさ。だれか迷子にでもなったのかなって、ふすま開けたの。
 そしたら丁度、センター長がまた悲しい話を警察から聞いた後だったの。その時、今君に話してることを全部、センター長から聞いた。
 ボロボロなみだ流してさ、痛いくらいだきしめられて、言われた。死ぬなって。一人一人を覚えてる。その子がいなくなるのはとてもつらいって。私が死ぬことなんか考えたくもないって。
 で、ハッと分かった。自分のために泣いてくれる人がいるって。そのしゅんかんから、死ぬことなんか考えなくなった。でも私がそう言ったらセンター長はこう言うの。『人を好きになったことのある子どもなら、必要とされる、愛されることのうれしさは分かってもらえる。でも、そうじゃない子に、死ぬ、なんて考えさせないようにするには、どうすればいい?って。生きよう、と思わせるにはどうすればいい?』って。
 今日、センター長がわざわざ私に君のこと電話してきたのは、そのヒントが見つかったからだと思う。ありがとう。私もみんなに胸張って言えるよ。この虫をご覧、一生けんめい生きてるでしょって。そんな虫を君たち好きでしょって。同じように生きてる君たちを好きな人がいるんだよって。例えばね。
 でもその前に、虫に慣れなきゃダメかな。そうだ、今度は私に虫のさわりかた教えてよ。一生けんめい生きてるよ、と言ったそばから、キャー虫イヤーじゃ説得力ないもんね。
 だから君も、その女の子が傷ついてると思うなら言ってやって。お前らやめろって、この女はオレの仲間だガタガタぬかすな、って。ひゅーひゅーって言われてもいいじゃない。女にきらわれる男なんて1円の価値もないんだから。そうでしょ?どんなにハンサムで金持ちでも、女に好かれなかったら、生き物のオスとして生まれてきた意味ないじゃない。コイビトになれと言うんじゃない。味方になるの。すごいかっこいいと思うし、女の子も安心できるよ、きっと。
 そして女の子がもし、君になやみを打ち明けたら、傷ついてると相談してきたら、こう言ってあげて。
 ぼくはそんな風に思ってない。君はすてきだよ、って。
 私に、言ってくれたように、さ」
 由美さんは、ちょっと照れたように、ウィンクした。
 ところで、由美さんがうまい具合に通りかかった理由だが、なんのことはない、センター前の、雄一がバスを降りたあの道を、そのまままっすぐおくへ向かうと、雑木林を急坂で降りて、ここへ出るのだそうだ。
 

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【理絵子の夜話】見つからないまま -22-

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 理絵子は頷いた。そして、子どもたちの目撃を繰り返すにつれ、祖母の恐怖は増幅され、夜も電気をつけっぱなしにするようになり、やがて体調の変化が始まっていったのだと判った。
 ただ、体調の変化が始まってからは、逆に子どもたちの目撃回数は減少していったようである。
「よく判りました。怖いことを思い出させてしまって申し訳ありませんでした」
 理絵子は言った。
「いいえ。それで……何か判りました?」
「はい」
 理絵子は解説した。まず根本的に子どもたちはいわゆる幽霊さんである。そして、マンション建設のゴタゴタに何か関係がある。
 次に、子どもたちは恐らく何か伝えたいことがあり、祖母に接触を開始した。祖母は当然恐怖を憶えるものの、その恐怖が、人間が原始持っていた“危険を察知する本能”のスイッチをオンにした。その結果、精神で感じる能力が鋭敏化し、見えるようになった。
「でも、そのあとの体調の変化は子どもたちのせいではないと思います」
 理絵子は言った。
 折角認識してもらえるようになったのに、怖がらせては意味がない。
「と、いうと?」
「失礼な物言いですが、“怖がっている人がいる”と知って、その、昼も申しました憑きものたちが集まって来たんです。むしろ、そのせいで子どもたちはおばあさまに近づけなくなった、というのが実際のところではないかと思います」
「ハイエナかゴキブリかってところか」
 優子が言った。
 その感想は、そう言われた彼らにはしゃくに障ったようである。いらだちを含んだ怒りの感情が芽生え、自分たちに対し攻撃の意志を向ける。
 庭で犬がわんわん吠える。その者たちの姿が見えたのだろう。犬には霊が見えるという。
「あなたコロが……」
 コロ……犬が吠えた原因を、祖母は異変と感じ取ったようである。心に恐怖が、心霊現象と結びついた恐怖が、冬の結露のようにさっと広がる。
 

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