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2020年1月

【理絵子の夜話】圏外 -39-

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「重い」
「言うな」
「胸が、胸が~」
「ザマミロ」
 石の音。さっきよりはっきり。
「何今の!」
「多分、塚壊しの真っ最中」
 理絵子は言った。
「ようし、現場を確保だ」
「え?でも……」
「8人だよ8人。3人寄れば文殊の知恵。8人寄れば阿修羅の怪力」
「も少し可愛い喩えは……」
「じゃ、般若」
「あまり差はない」
 三たび石の音。
「行こう!」
 みんなして動き出す。着替えたり、パジャマに1枚羽織ったり。
 理絵子もジャージを羽織る。止める術はないし、止める必要もない。
“そっち”に行っても敵がいないことは、昼に確かめてある。
 裏口から客用サンダルを突っかけ、降りて行く。
 石の音。「うっ」とか「はっ」とかいう男の声も混じっていようか。
 理絵子は気づく。“犯人”は一名。しかし向こうは向こうで結界の中にいるため、超感覚ではイマイチ。
 せせらぎより足音が大きくならないよう注意しながら、流れの中を歩いて行く。
 石の音は上流より。塚と見てまず間違いない。
 ワサビの自生地。
 姿勢を下げ、慎重に接近して行く。
 見えた。理絵子には。
「判らんなぁ」
「暗いからなぁ」
「誰かいるっぽいのは見えるけど」
 仲間達が言うが、理絵子にはハッキリと見えている。超感覚のサポートがあるので、真の闇は存在しない。透視と言って良いかも知れない。
 理絵子は気づく。
 その男は。
 昼間の陰陽師。
 自作自演?その意図は?
 男の動作が止まった。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -24-

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「トンキンって呼び捨てかい」
「そこ突っ込むかい。真剣勝負。私は鼻くそほじりながら見てるよ。どう?やる?」
 ボレアリスは双方の目を見た。
「トンキン覚悟なさい。星の命で成敗いたす」
 メリディオナリスがステッキを振り下ろし、地面(ステージ)を指し示す。指揮棒サイズからステッキにシュッと伸びる。
「え?すげぇ」
「おもちゃじゃないの?」
 “おもちゃを手品で取り出した”その認識を超える事象であると気づき始めた子供達が数名。
「いいだろう。本気だぜ」
 トンキン大魔王が足を前後に広げて身構える。
「スタート」
 ボレアリスの指パッチンがいやに大きく響いた。
 トンキン大魔王は男の子の機動力にまかせて車いすの影を踏みに回った。
 一方車いすは左右の車輪を逆向きに回すなど、人体では不可能な急旋回・逆進を交えて逃げ回った。
 圧倒的かつ短時間と見られた勝負は白熱した。
「おおすげぇ」
「トンキン頑張れ。ああ逃げられた」
 男の子の中には大魔王の応援に回る子も出るほど。
 大魔王は次第に息を荒げた。当然、彼の病気を考えるとこの辺が潮時。
 メリディオナリスがステッキを弓のようにつがえる。
「チェックメイト」
 これでアニメでは虹色のビームがほとばしって敵がぐえー、となる。
 ボレアリスは左の人差し指を自らの唇にそっと当てた。
 誰にも聞こえない声でつぶやく。それは呪文なのであるが、意味だけ記す。ただ一つ強く思うこと姿を現せ。
 すると。
 遠くで何かに反射したようで、太陽光線がキラリと部屋の中に射し込み、ステッキ先端端の“ダイヤ”をプリズムにして、7色に分かれた。
 ビーム、でこそないが、天井を七色の光が波打つように走った。
 トンキン大魔王、バタリ。
「すげー」
「魔法みたい」
 勝負としてはこれでノーサイド。
 3人はステージに整列した。
「これで私たちのショーは終了です。最後まで見てくれてどうもありがとう。最後にこのお菓子もらっていってね」
 ステージ上のぬいぐるみを指さした後、頭を下げる。指をパチンと鳴らすとぬいぐるみの手にお菓子があふれ出してステージからこぼれ落ちるほど。
 拍手をもらう。お開きとなり、子供達が帰り始める。

(つづく)

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【理絵子の夜話】圏外 -38-

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「いやぁいいなぁ、女の子ばっか」
「おじさん露骨に鼻の下伸びてるよ」
「そうかい?。あ、そうだ、さっきの巫女ちゃん写真、オレのケータイに転送してくれよ」
 お構いなし。この時、エロゲバという言葉を何人が想起したかは定かではない。

10

 深夜。
「りえぼ、りえぼーってば」
 しきりに揺さぶられて、理絵子は目覚めた。
 問うまでもなく、異変が生じているのだと判る。
「どうしたん……」
 コーンという、石と石がぶつかる音。
「今の?」
「うん、竹下が気持ち悪いって言ってさぁ」
「部長~」
 起きているのはその竹下と大倉である。
「女将さんと……」
 主人氏は?と理絵子は訊こうとし、階下からの大いびきに気づく。女の子集団にデレデレの主人氏は、ピッチ良く日本酒をあおりデロデロ。女将さんも彼女たちのあまりのノリの良さに、“身内が来たみたいだ”とお気楽モードに入ってやはりデロデロ。
 理絵子は気づいた。また傍若無人な者共が塚を壊しに来たのではないか。
 テレパシーで探ろうとする。しかし、あいにくと結界の中では感度が悪い。
「見に行く?」
「えっ?」
 大倉が目を剥く。理絵子は立ち上がり、川に向いた側の窓を開けにかかる。
 建て付けが悪い。
 ドンガン窓を叩いているうちに田島が起き出した。
「うるさい~」
「あ、ごめん、窓開けたいんだけど」
「それコツがいるんだよ」
 田島が身体を起こす。
 が、半分寝ぼけていたのか、メガネを外していたせいか、隣の窪川に蹴躓き、仲間達の上に倒れ込んだ。
「……!」
 田島の(迫力ある)ボディアタックと、それを食らったメンバーの悲鳴とで、結局は全員が起きてしまう。
「深夜戦なんて聞いてね~」
「窪川ギブアップであります」

(つづく)

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【理絵子の夜話】圏外 -37-

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「巫女だねぇ」
「だろ?俺の目は間違いなかった」
 夫婦してしげしげと眺められる。古来巫女は少女が担ったが、理絵子はどちらかというと幼い顔立ちの娘であり、純白の装束に流れる黒髪と、そして何より漆黒の瞳が物を言って、巫女装束は確かに似合う。超感覚の有無以前の問題。
「そうですか?」
 理絵子は照れた。
「これ腹に一物ある奴見たら逃げるぜ」
「うん、悪い奴お前直視出来ない。正月のバイト巫女とはひと味違う」
「お前実は巫女だろ」
「あのね」
「でも……同じ供養祭やるなら、向坂より嬢ちゃんだな」
 主人氏が言った。
「えっ?」
「いやいや、やれって話じゃないよ。でも、神々しさという点で全然違う。それに祝詞(のりと)なんかも知ってるようだし」
「やって欲しいって聞こえるよ」
 女将さん。
「あの……」
「はっはっは。冗談。さ、もういいよ。いや~いいもん見させてもろた。さぁ、シャブやるか」
 主人氏は上機嫌で降りて行く。なお、“シャブ”とは覚醒剤の隠語ではなく、しゃぶしゃぶのことであるので念のため。
「脱いだらおいでね」
 女将さんが続く。
「私、脱いだらひどいんですってか」
「それ今日2回目」
 理絵子はクールに言い、脱衣にかかった。
 装束を畳み、作業をキリのいいところまで進めた後、階段を下りて行く。食堂には、お祓いの“売約金”であるしゃぶしゃぶセット。
「今日の釣果」
「部長っておいしいなぁ」
「じゃあ来年の部長は若井と」
「なるのはイヤ」
 女将さんが手をパンパン。
「はいはい。座って座って。じゃぁ部長さんは特等席」
 鍋直近。
 集中する羨望の眼差し。
「私の売り上げに何か質問でも?」
「いえ。ありません」
 と、主人氏が卓上に一升瓶をドン。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -23-

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 テレビアニメだと二人は赤と青のコスチュームに変身“星の命で成敗いたす”と決めぜりふを言って、以下、古い表現を使うなら“女だてらに殴り合い”の戦闘、となるが。
 レムリア改めボレアリスは大魔王の傍らに膝を折ってしゃがんだ。
「どうせ成敗されるの判ってるなら戦わないでお菓子返してくれない?」
 敵方の決めぜりふは“話し合いなど無駄だ!力こそ全て”なのだが。
「え?それなに?話し合い?戦わないの?」
「そう話し合い。見ての通り相方ケガしててさ」
 ど派手な戦闘転じてちまちました話し合い。このコンセプト全否定は子供達を大いに笑わせた。
「泣きべそかいて帰りたくないでしょ」
 負けた敵は泣きながら土の中に消えて行く。
「いやそれは……てゆーかこのお菓子食っていいか」
「だめ」
 突如現れた漫才のしばき用具“ハリセン”で軽くぺしっ。
「武器禁止!暴力反対!」
 大魔王は両の手で頭を抱えて泣き真似。
「お前がゆーな!」
 子供達から爆笑付きで突っ込み。
「これは話し合いなど無駄なようだな」
「来た!」
「来た来た」
「じゃんけんで」
「その手でやるのか?」
 大魔王は台所で熱い調理器具を持つ時に使うミトンを付けている。親指とそれ以外の4本に分かれたタイプであり、“チョキ”が作れない。
「あらかわいいお花のアップリケ」
 メリディオナリスが挑発しながら車いすで駆け寄る。
 そこでボレアリスは立ち上がる。
「“影踏み”で勝負。いかが?」
 射し込む陽光に出来た影、ボレアリスは指さした。
 車いすでも出来る。
「トンキンは車いすの影を踏みなさい。メリディオナリスは“ターミネーションステッキ”でトンキンの影をつつく。一発勝負」
 ボレアリスは両の手を合わせ、左右に開き、宝石プラスティックキラキラのステッキを出現させ、メリディオナリスに持たせた。
 看護師らがハッとした顔で見る。その作法はアニメのやり方そのものだが、実際にやってみせるのは手品の範疇。
 だが、子供達はなまじアニメと同じが故に現実の異常性に気づいていない。ちなみに、“ステッキ”と称するが、番組中では指揮棒サイズで取り出し、釣り竿よろしく振り出すことでステッキサイズに伸びる。おもちゃとして指揮棒サイズが販売されており、先端に大きなダイヤ様の透明プラスチックが輝いている。

(つづく)

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【理絵子の夜話】圏外 -36-

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 作業に入る。最も苦労すると見られたストーリー作りが午前中で終わったため、具体的な作画、および理絵子は文章の作成を行う。服装がどうの、背景がどうの、絵と文章の一致を図りながら作業を進める。特段脱線するでもなく、夕刻を迎える。
 和服のサンプルが欲しい。何せ落語。
「おばちゃん」
 田島が頼み、女将さんに用意してもらったのは。
 浴衣及び巫女の装束。
「随分古そうな…」
「おばあちゃんが着てたものだもん。それこそ供養のためよ。昔は各家持ち回りで巫女やってね。こだわる理由はその辺にもあり」
 女将さんの説明。
「へぇ~」
 そこへ主人氏が上がってきた。
「何オンナだけで盛り上がって……こらまた随分古いの出してきたな」
 巫女装束を持つ。
「そうな。昔は女の子これ着させてなぁ……」
 主人氏はそこで理絵子を見た。
 理絵子は目を剥いた。
『よっぽど凛として巫女らしい』
 まさか。
「着てみ」
「えっ?」
「あ、面白そう」
「似合う似合う。髪長いし」
「お清めも受けたことだし」
 7人が理絵子ににじり寄る。
「ちょ……ま……貴様らっ!」
 理絵子は超感覚能力者(エスパー)と言って過言ではないが、念動力保有者(サイコキノ)ではない。
 7人相手では抵抗する術もなく、ジーンズとTシャツの上からではあるが、巫女装束を着せられた。
 巫女理絵子。
「すっげー」(7人一斉)
「そーお?」
 理絵子は自分を見回した、着ている中からでは外観の判断付かない。
「写メ写メ」
 中井がカバンをゴソゴソし、ケータイのカメラで激写される。
「どうよ」
 見せられる。サイズ的にはちょうどいいらしい。
「ほえ~……」
 女将さんが感心したように上から下まで見回した。

(つづく)

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