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【理絵子の夜話】圏外 -54-

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 時が来たと知る。彼女たちが形而上の世界へ旅立つ準備が整った。
〈さようなら。時を隔てたあなた達。いつか、友として同じ時代を生きることを、私達は望みます〉
 言葉と共に白い人型に変化が生じる。人型の背後に光が噴出し、羽のような形に広がる。
“天使化”と理絵子は認識した。今彼女たちは単に“死霊”と呼ばれる存在から、ワンランク上の霊的存在に進化したのだ。
〈信じていました。いつか、きっと、って。皆さんの会話を聞いているのは楽しかった。飛び交う優しさに安らぎました。ありがとう。信じていて、良かった……〉
 羽ばたいて、と記した方が直感的に理解できよう。彼女たちは光の身を持つ天使となり、スパイラルを描きながら天へ、強き電光の腕の出でた天空へと舞い上がり、去った。
 夜が戻る。
“ロックが外れる”感じ。
 理絵子は知った。仲間の意識が回復する。
 女の子達の携帯が、一斉にピロピロと着信音を鳴らした。
「え?」
「なに?」
彼女たちが順次起きあがり、それぞれに機器を操る。
「メールだ」
「あたしも。なんで?圏外……」
「あ」
 彼女たちは見た。
 そのメールにはタイトルも差出人もない。ただ、塚石を蹴散らし、蓋石にタガネを立てる某の姿が添付されている。
 メールに念写!。理絵子は感心した。時代を超えても、女の子達が、その時その時の“最新”を求める姿勢は変わらないのだ。

13

 夜が明けた。
 向坂は住民達が見守る中、両脇を私服警官に支えられ、パトカーの後部座席で旅荘塙を後にした。すなわち彼女たちが向坂を宿に運び込み、朝まで寝かしておいたのだ。
 向坂は逃げようと思えば逃げられたかも知れぬ。しかし、精神力を極限まで行使した疲労か、警官に起こされるまで一度も目を開かなかった。この間、理絵子は向坂の精神的な破綻の発生(要するに気が触れる)を心配し、ずっとそばにいたが、向坂はまるで胎児のように身体を丸め、時折怯えるような声を出すだけであった。“不動明王”(と、しておく)により、よほど怖い目にあったのだろう。
「あの娘が霊力を……あの娘が……オレは判っていたんだ。なのに……」
「はいはい……署で聞こうな」
 しゃくりあげながら警官に訴えるその様は、文字通り悪夢を見た子供である。ちなみに、当然の事ながら、警察でその辺の話をしても聞き流されるのは、前述の通り。

(つづく)

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