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【妖精エウリーの小さなお話】デジタル -02-

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 積極的に目撃・感知の情報を聞きに行くことにします。
 小川沿いに下って行きましょう。マスが数匹泳いでいます。
 彼らの答えは「感じたことはない」。
 すれ違ったトンボ。この近所が縄張り「知らない」。
 ビワの木陰で実を拾うリスたち。
〈あれかな?見られてる気がするのに誰もいない〉
「それはいつのこと?」
〈ここの実が落ちるようになってから。でも、オオカミたちかなと思ったけど〉
 ここのオオカミは動物を捕食しません。どころか、常に神々の守護として控えているので、野に降りる必要は無いのです。
「詳しく教えて、場所はここ?」
〈そうです〉
「他には?」
 栗の木。100メートルほど向こう。リスたちにとっては遠い遠い場所です。
「ありがとう」
 地図にプロットして飛びます。そこは小川から少し離れ、大きな栗の木が一本と、クヌギやコナラなど、どんぐり属が集まって雑木林。
 樹液に集まる昆虫たちがたくさん。
 の、はずですが。
 樹液は出ているのに誰もいません。昼間だから?昼間活動する虫たちもいるはずですが。
 “意識”を探します。テレパシーで〈誰かいませんか〉
 すると。
〈エウリディケさん。お話しをしたいなあ、と、思っていたところです〉
 ゆっくりした、ご高齢の男性、という感じの語り口。
 栗の木の精。木霊(こだま)さんです。動物担当である私たちニンフ属に頼みごととはよほどのこと。
「おそばに参りました。どうなされました」
 私は大きな栗の木の根元に立ち、見上げました。枝葉が風にそよぎ、サラサラと音を立て、木漏れ日がキラキラ光ります。
〈ここは危険です。虫と動物は私が精気を出して払っているところです〉
 すなわち、故意に追い払っている。
「と、おっしゃいますと?」
〈雷の時、何かがここへ来るのです。何かを欲しそうにしている様子。だが、姿が見えないのです。何が欲しいのか判らない。気がつくと、もういない〉
 それは、みんなの証言と同じです。
“存在感”だけ。
「雷と連動している、ということですか?」
〈恐らくは。ただ、気がつくと感じないので、雷が合図なのか、それとも目的なのか、判然としないのですよ〉

(つづく)

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