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【理絵子の夜話】聞こえること見えること-02-

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 頭を下げる担任に作り笑顔で応じ、さっさと職員室を出る。まずは話を聞いてみるべし。
 マフラーを巻いて外へ。今日は風が強い。大寒という二十四節気の言葉の通り。
 突風に吹かれて思わず風に背を向ける。すると、目線の先、住宅街の道の真ん中で、その風に吹かれるまま立っている男子生徒が一人。
 彼だ。理絵子はゆっくり近づいて行った。しかし彼は何かに聞き耳を立てるかのように目を閉じて下を向いており、理絵子に気付く気配はない。
 なるほど変である。理絵子は納得した。教室でこの調子では確かに気味悪がられる。気づかなければ気にならないが、気にし始めると気になり続ける。
 風が一息。彼が首を持ち上げて目を開く。理絵子を見つけ、目を向ける。
「黒野……さん?」
 しかしさして驚いた風でなく、どころか事前に知っていたかのように、彼は言った。
「ひょっとして、君も聞こえてた?」
 その一言で、理絵子は、彼が普通の男の子とは違う感性を持っていると判じた。
 そしてそれは、避けられる方が多い言動であろう。ただ、自分が同じ反応をしてしまっては、色々ときっかけを失うこと必定。
「私は別に。何を聞いていたの?」
 ごく普通に訊いてみる。すると、
「風の声」
 彼が即答して程なく、再び風が吹いてくる。理絵子は彼がしたように目を閉じて耳を澄ましてみる。風が言う。風が語る。詩歌に聞くフレーズであるがしかし、いわゆる風の息と呼ばれる揺らぎは感じるが、それ以上のものはない。
「僕、変かな」
 風の切れ目で、彼は言った。
 理絵子は目を開く。
「他には、どんな声を聞いてるの?」
 理絵子は彼の問いには答えず訊いた。こういう場合、必要なのは理解者がいること。但し一人で必要充分。
「聞いているのは風だけかな。他には、光の顔を見たり」
「光の顔?どうやって?」
「どこでもいい。光の当たっているところを見るんだ。壁でも、地面でも、何でもいい」
 弾む声で彼は言う。理絵子は釈然としないまま、近場の家の壁を見つめた。顔すなわち表情。ということは表情が変わるのか、それとも意志あると考えて読み取ろうとするのか。
“共感覚”という言葉を思い出す。音楽に色を感じたり、文字列にグラデーションを見たり。風の声で実は何か見えているなら理解する。
 でも“光を見る”と“表情が浮かぶ”なら少し違う。

(つづく)

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