小説・大人向けの童話

町に人魚がやってきた【11】

「わからんよ。ふーん、海の底でも生きてられるんだなぁ。それで?」
 先生そこ医者として大いに突っ込む所じゃないのか?
 いいけど。
「はい。まぁ、海の神様の所へ行け、という話だったので、海の底って坂になってるんですよね。そこをてくてく歩いて行きました」
「大陸棚か」
「大陸斜面だろ」
「どっちでも行き着く先は海溝でしょう」
 しかし萌えボイスで学術用語言われると……イイなぁ。
「でも海って少し潜っただけで真っ暗って聞きましたけど」
「それが底の方がむしろ明るいんですよ。鍛冶場みたいに真っ赤で、温かいんです。そこで神様とお会いしました」
「へ……」
 オレ達は揃って絶句した。
 神様を見た?
「こんな感じの殿方で」
 人魚が言う〝殿方〟とは……おじさんのこと。
「オレか?オレ神様か?いや~社長とか大統領になったことはあるけどなぁ」
「そういや飲み屋の客引きって神様ワンセット3000円ですよとか言いませんね」
「僕はぁいつも『先生』だけどな」
 そりゃそうでしょ。
 以下、人魚は神様と会話したそうだ。その内容をそのまま書くとこうなる。
神「何しに来た」
人魚「地震の鎮魂の生け贄です」
神「生け贄とな?命を引き換えに何を求める。オレはどうすりゃいい?」
人魚「地震と津波を起こさぬように」
神「そりゃ無理だ。大地神明の理(ことわり)を欺けば、より大きな災いを生み、アカホヤの如く地引き裂け国滅ぶ」
 一旦戻る。この神様のセリフの意味するところは?
 すると先生は腕組みしてう~んと考えて。
「プレートテクトニクスに無用な干渉をすれば、解放されるべきエネルギが蓄積され続けて歪みとなり、もっと大変なことになるぞ、という意味だろう。自然を制御しようという人間の思い上がりに対する警告だ」
 
(つづく)

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町に人魚がやってきた【10】

「ああ、これ地図か」
 されど、その地図はスーパーのチラシに描いてある〝当店位置〟のレベル。
 縮尺も、どの地区かもワカランでは探しようがない。そもそも日本なのか…まぁこの人魚日本語喋るし、日本と考えるのが自然なのだろうが。
 各人でその〝地図〟を回して眺める。
「これだけじゃ正直ワカランなぁ。どこに何しに行きたいか、差し支えなかったら教えてくれんか?」
 おじさんの質問に、人魚はまずお茶を飲み。
「話せば長いんですけど」
「おお、ええよ」
「延宝(えんぽう)五年の話になります」
「1677年だな」
 先生即答。水戸黄門大好き。
「そら長いわ」
「なゐ(地震)とかいしょう(海嘯・津波のこと)がありまして、これは海の神のお怒りだとお告げがあったとかで、人身御供を出そうと言うことになり、私が」
「なんだ短いじゃないか」
 先生ちょっと待ってください。彼女は元は人間で生贄として海に入って、そのまんま何百年か生きていて人魚になってしまったということになりますぜ。
「延宝地震か」
 おじさんが訊いた。
「後世の方々はそう呼んで?」
 人魚の問いに、回答は萌えボイスから。
「揺れは小さかったのに津波は大きかったって地震かしら?」
「はい」
「じゃぁ、その地震だわ」
 先生、頷いて膝を打つ。
「なるほどなぁ。神様のお怒りと感じるだろうなぁ。揺れは小さかったのに津波ばかりがでかいんじゃぁなぁ。しかし、お前さん良く生きてた。なんでだ?」
「それが海に投げ込まれた直後は苦しくなって諦めたのですが、その後突然楽になりまして」
「それは死んだんじゃなくてか?」
「私もそう思ったのですが。どうも海の底だと息ができまして」
 人魚苦笑い。
「先生、それは医学的にどういう」
 オレが訊くと。
 
つづく

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町に人魚がやってきた【9】

「エビと小麦粉、デンプンを練り固めた物よ。塩で味を付けて植物油で揚げてある」
 萌えボイスが答えてカリカリ。
「えらく詳しい答えですね」
 オレが訊いたら。
「あら、この位この職にある者として把握してて当然でしょ。アレルギーやカロリー制限については常に念頭になくちゃ。リスクの自己管理ね」
 そんなもんか。
「僕はぁ。こんな菓子の成分まで気にしたことはないなぁ」
 先生、その血圧なら塩分は余り気にならないと思います。
「ふ~ん」
 人魚は寄り目になるほどえびせんをじいっと見つめて、真似してカリカリ。
「……なるほど、アカエビ、キシエビ、サルエビ」
「入ってるエビの種類が判るのけ?」
 驚いたのはおじさん。まぁおじさんも調理場の人だから、舌は肥えてると思うが、えびせんの〝原材料〟をテイスティングするのはさすがに無理か。
「時々エビの種類が変わってるのは知ってたが。具体的な品種まではなぁ」
 それでも種類の変化判ってたんかい。
 以下、しばらく人魚囲んでおやつ。ぽりぽり、かりかり。
 人魚囲んで。
 ちょっと待てそれでいいのか。
「で、何で海岸に打ち上げられてたわけ?」
 オレは訊いた。
「おおそうだよ。何か忘れてるなぁと思った」
 おじさんが膝を叩いた。
「ああ、忘れてました。ええとですね」
 人魚はこともなげに言い、慣れた手つきで粉だらけの手をパンパン叩いて、
「ここを探しに来たんです」
 どうやら首に何かぶら下げているらしい。波打つ見事な金髪をたくし上げ、ゴソゴソ。
 さすがに見慣れたお乳の谷間。細いチェーンの先に水晶のインゴット。手のひらサイズの六角柱。
 中をくりぬいて何やら紙が丸めて入れてある。ネジ式の蓋を開いて取り出す。
 手渡されたそれの感触は和紙。何か描かれてあるが、広げると文字というより幾何学模様。真ん中には穴が開いている。
「地上では、何がドコに置かれているか、このような模様で表すとか」
 
つづく

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町に人魚がやってきた【8】

「先生、平気そうですよ」
「そうかい?じゃぁ、まぁ、良しとするか、残念だが」
 先生ションボリ。……て、患者が「イイ」と言ったら「イイ」ってのは、医者としていいのか。
「だけどカルテだけは作りたいなぁ」
「カルテ?」
 首を傾げる人魚。さっきから話聞いてると、〝地上〟に関する知識は有ったり無かったり。
「まぁ、診察室へ来ておくれ」
「はい。あの、じゃぁここ入っていてイイですか?陸に長いこと上がってると重くて」
 無論OK。バスタブストレッチャーをみんなでガラガラ押して診察室へ。
 温水を足そうかと言ったら、嬉しいけど真水で充分というのでゴムホースで湯沸かし器。
「ゴムはいやです」
 バケツリレー。
「生でもイイですよ」
 凝った浄水器を通しているのを見ての発言。とまれバスタブにそれなりの湯水を継ぎ足し完了。
 その間に先生カルテを書き書き。体温36.2℃……いつ測った?
「ふう。なんだかいろいろお手間を取らせたようでありがとうございます」
 この辺、昨今のジャパニーズガールより言葉丁寧。麗しの身体をバスタブの中に横たえてゆっくりまばたき。それが〝お辞儀〟の代わりのようだ。確かに水中で頭下げたところで、でんぐり返って一回転。
「何か食べる?」
 萌えボイス。
「普段。何食べてるんだい」
 これはおじさん。
「わかめ、昆布、のり……」
「草食だねぇ」
「貝、タコ、イカ」
「想像付かんな」
「ウニ、魚は淡泊な方が」
「グルメだねぇ」
 で、とりあえず医院のおやつとして準備していた〝えびせん〟登場。
「これ何ですか?」
 人魚、一つつまんで一言。
 
つづく

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町に人魚がやってきた【7】

「何すかこの宇宙船の人体転送装置みたいなのは」
 オレは思わず尋ねた。そいつは、ベッドの枕の部分に美容室のパーマ機械の巨大な奴をハイテクデザインで包んで設置した、そんな機械。この医院の外面を見て、中にこれがあると想像推定できる人は100%いない。
「3次元画像レンダリング連動オープンタイプ核磁気共鳴断層撮影装置なんだ
な。耳が遠くなって聴診器だけじゃ心許なくてなぁ」
「かっこいいでしょ?」
 萌えボイスが言いながらスイッチオン。ランプやら数字やらズラリ点灯してイルミネーション。
「ほう、トンネルじゃなくて挟むMRIか。張り込んだなぁ。こいつは患者がうるさくないのか?総合病院のトンネルタイプは耳栓しても意味なしでいかん」
 おじさんが言いながら、そのパーマ装置の下に頭を突っ込む。
「オレが聞く分には、うるさくないがな」
 先生、確かご自身で耳が遠くなったと…。
 てか、聴診器頼りからどえらい飛躍。
 その時。
「すいません、感じるんですけど」
 こざっぱりした娘の声。
 え?
 オレ達が声の方向に目を向けると、水槽の中からびしょ濡れ娘が半身を起こしてこちらを見ている。
 人魚、気付いた。
「感じるのか?マグロじゃなかったのか?」
 先生違います。
「その機械アタマ痛いんですけど」
 人魚は頭痛薬のCMみたいに頭を押さえ、口から取り出した体温計でMRI装置を指さした。
 オレは気付いた。
「あんた電波とか磁力とか嫌いか」
「て、言うの?これに限らず陸上機械からビンビン出てくる変なの。アタマくらくらする」
「先生、これで診なくても大丈夫じゃないすか?彼女これから出てくる電磁波に弱いんだよ」
「しかし骨折やその他の問題点が無いか把握しないと…」
「どこか痛い?」
 オレは訊いた。
「いいえ」
 人魚は速攻で首を左右に振った。

つづく

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町に人魚がやってきた【6】

「おお、人魚だ」
「ウロコの色つやが悪いわ」
 以上医療関係者の感想。
 バスタブに身を伸べる。ぬるま湯程度に温めてある。
「あはん」
 人魚の口からそんな声。ただ、気が付いたわけじゃない。
「おめドコ触っただ!」
 おじさん、えらい剣幕。
「あ~、今のは違うんだな。肺の空気が温められて、圧力が上がったもんで気道から出てきたんだな。その時に声帯が震えて艶色に聞こえたと。ところで直腸温を測りたいんだが」
 先生、電子体温計を片手に、サカナの下半身を持ち上げたりひねったり。
「直腸温って」
 オレは思わず訊いた。文字に置き換えて、体温計の形状を考慮すると、どこからどうやって測るものか、自ずから想像が付くのであるが。
 する?
 まさか、と首を傾げたオレに萌えボイスの解説。
「直腸で測るから直腸温なんです。成人の場合括約筋の影響を受けず、さりとて直腸を傷つける心配の少ない5から6センチ程度の深さまでソーコーして……」
 えーと、それはつまり、要するに。
 待て。医者の診察って最初に直腸温だっけ?
「まぁいい。人間と同じかワカランが口腔で測ろう。えーと」
 先生、人魚の口を開いて体温計をぱくっ。
 ……確かその体温計で挿肛しようとかさっき。
 普段は?
「運び込むぞ」
 ストレッチャーに老若男女群がり、女一人マイナスして、計3人でせーのでどっこいしょ。
 水面に仰向けで失神状態の美女有り。
 ストレッチャーを動かすと、重心の関係かくるりと回転して俯せ状態。
 そのまま微動だにせず。傍目に非常に印象悪い。
「この体温計……防水だったかねえ」
 先生、心配点が違うと思います。
 院内に運び込む。確か昭和ヒトケタの建築と聞いた。古い建物のギシギシ言う木のドアを開けてもらい、ストレッチャーをガラガラ。鉄筋で建て替えればいいように思うが。
 受付待合いを横切る。〝患者様〟がいないのは単に過疎だから。
 行き先は診察室前を通過してその隣〝検査室〟。
 
つづく

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町に人魚がやってきた【5】

「人魚が…寝たらマグロだったのかね?」
 先生違います。
「マグロと一緒にいるだけだで。えーと、その風呂桶は水入っとるんけ?」
 おじさん水槽のバルブを開いて水を抜き始める。傍らで58歳の萌えボイス。
「さっき海水サンプル取って見たけど大腸菌が多いので。手持ちの海洋深層水と生理食塩水をしこたま」
 語尾上がりの文末に「♪」とでも脳内で補っておいてくれ。
「何せ…ウチには何も資料がないからなぁ。まぁ大丈夫だと思うがねぇ」
 これは先生。そりゃそうだ。人魚の資料があってたまるか。
「どう思うよ佐久間の。これで大丈夫か?」
 おじさんは突然オレに訊いた。
「は?」
「あんだよ。インテリくせぇこと言うから判るのかと思ったじゃねーかよ。判らないならゴタゴタぬかすな。まぁいいや、お前が反対しても多数決で実行だでな。ほれ、中入って人魚出せ」
 おじさんは言うと、脚立を「ハ」の字から更にまっすぐに伸ばし、水槽の中へ下ろした。水を抜いたので水面はかなり低くなり、裸足で入るのに労はない。
「オンナ抱かせてやる」
「人聞き悪いわっ」
「あっはっは!」
 だから萌えボイスで笑わないでくれ。
 以下しばらく足の下でオレに関わる与太話。反論できる状況にないと知っているから言いたい放題。覚えとけよと思いつつ脚立で水槽の中に降りると、その与太話は頭の上から降ってくるような状態に変化。袖をまくり、マグロがパニックみたいに泳ぎ回る中に手を差し入れ、人魚の腕を取る。しかし良く考えたら、入れる時もこうすりゃドッポンの必要性は無かったんじゃないかと思うが。
 しかし結果論。オレは人魚抱き上げて肩に載せ、脚立を登り始める。
 この背中の感触は。
 少しゆっくり登ろうか。
 すると。
「早く登ってこないと酸欠になるぞ。だんだん苦しくなるとかじゃなくて、一瞬で失神するからなぁ」
 おじさん、のんきに一言。
「ちょ!」
 だからさっきはドッポンしたのか。
 どうにかよじ登って水槽の外へ出、今度は別の脚立で荷台へ地上へと降りて行く。

つづく

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町に人魚がやってきた【4】

 自分だけ異邦人の気分。
「おじさん」
 オレは鼻歌ハンドルのおじさんに訊いた。
「あんだよ」
「何でみんな人魚なのに驚きもしねぇんだ?」
「驚いてどーすっだ?お前」
 その答えにオレが驚いた。
「だって人魚だぜ?いるわけがないってのがいたんだぜ?科学の常識を根底から覆す…」
「あに大げさ言ってっだおめぇは。干からびそうだから助ける。それだけじゃねぇか。科学の常識なんかどーでもええんだよ。干物にしたら世界中から非難だぞ」
 いや、そーなんだけど、そーじゃないだろ。
 どう言えばいいのか。
「人魚って現実を受け入れてるわけ?」
「おめ、さっきからおかしいぞ」
「だって人魚……」
「それが何かマズイんか?驚いたところでこのねーちゃん目を醒ますんか?目に見えてるモノをイチイチこれは本当けえ?とかインテリくせぇこと思ってるうちにどんどん干からびるぞ。おめぇには現実即応能力が身についてねーな。早くヨメ娶れ。父ちゃんやってるとなぁ、判断する前に考える余裕なんか与えられないこともあんだよ」
 何だこの説得力。
 言い返すセリフを考えるが、ジョン・カーペンターの映画みたいに殴り合いになっても困るし。それにまぁ、第一に考えるべきはこの人魚の命だろうから、ここで色眼鏡は邪魔だ。
 オレはあっさり試合放棄した。そのうち岩窟のトンネルをくぐって、咲間診療所の看板「ようこそ!」
 ……病院にウェルカムボードが適切けえ?という話はさておき、診療所の前では先生と作間さんが待機している。ストレッチャー(車輪付きベッド)に、石けんのCMで乳タレントが入ってるようなバスタブを載せ、中では湯だか水だかゆーらゆら。
 何だこの用意周到。
 軽トラックを横に着ける。
「暴れてる……ようだが……?」
 バシャバシャという音にコメント有り。ゆる~い声はここの医師、咲間花一郎先生、御年92。ひょろっとして白衣の上に聴診器。老眼鏡。頭は山崎豊子の超大作。
「マグロマグロ。人魚は寝とるよ」
 おじさん軽トラから飛び降りながら軽く一言。確かにおじさんはちょいと早口だとは思うが。

つづく

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町に人魚がやってきた【3】

 水槽の上まで担ぎ上げ、さて。
「よし、入れろ」
「入れろって」
「ドッポン入れればいいが。他にどーすんだ」
「でも出来ればそーっと浮かべて……」
 半分人間なんだし。しかし水槽の中を覗き込むと、水面は水槽の縁よりかなり低いところ。
「あにグズグズしてっだよ。魚ひからびたら死んじまうべよ。ホレ行くぞ」
 おじさんは言うが早いか、人魚の魚の方を手放してポイッとやった。
 いやそっちはサカナかも知れないがこっちはオンナそのものなわけで。
 しかし脚立の上に立った状態でニョタイを上半身だけで支えるってのは重い。
 あーだめ。
 ドッポン。マグロが驚いて飛び上がってバッシャン。
 人魚、仰向けの状態で微動だにせず沈んで行く。水面に落ちたくらいじゃ失神から回復しないってどんだけ。
 って、水に飛び込むのは多分日常茶飯事。
「溺れてるみたいだ」
「ん?平気だ平気だ。人魚だし。ホレ、お前も乗れ。一緒に咲間(さくま)先生んとこ持ってくぞ。携帯かけろや。人魚持ってくで診てくれって」
 おじさんは水槽のフタを戻し、脚立を畳んで荷台から飛び降りる。
「……判った」
 オレは携帯電話掛けながら助手席へ。おじさんはエンジンを掛けて軽トラ発進。
 隣の集落の咲間診療所。呼び出し3回。
『はい』
 アニメの女の子みたいな可愛い声を想像して欲しい。ここの看護師作間(さくま)さん。
 勤めて40年。
「あ、あの松浦の佐久間ですけど。えーとですね、人魚なんです」
 よく考えたらすごい馬鹿なことを言ったオレ。
 ところがどっこい。
『人魚かい。そら難儀だろう。乾かないように注意してやって。往診するかい?連れてくるかい?』
 あっさり対応。
 拍子抜けしてオレも普通に反応。
「連れて行きます。今その佐久間旅館のおじさんと一緒で、水槽に入れて輸送中ですわ。もうすぐ着きます」
『そうかい判った。先生に言って準備しておくよ』
「ああ、じゃあ、よろしく」
 作間さんは電話を切った。
 これ現実?

つづく

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大人向けの童話

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