さて科学三賞終わったし概要についてまとめようかな……おや?

東京理科大名誉教授 硤合憲三さん。バケ。まぁ、順番に。

ちゃっぴーに頼むと1次ソース(何なら英語)見に行かなくて楽だわ。
1.医学・生理学賞
受賞対象はオプトジェネティクス(optogenetics、光遺伝学)。
単細胞緑藻 Chlamydomonas(そおゆう学名) が、青い光を受けると開いてイオンを通す膜タンパク質「チャネルロドプシン」を保有。この存在にヒントを得て、このタンパク質の遺伝子を哺乳類の神経細胞に導入し、光を当てるだけで特定のニューロンを発火(電気信号を隣のニューロンに伝える)させる方法へ発展させた。2005年に培養神経細胞、さらに生きたマウスの脳へと技術を展開。
・受賞のポイント
これの発見と応用によって、脳科学を「観察する科学」から「因果関係を実験する科学」に変えたこと、だそうな。つまりオプトジェネティクスなら、たとえば遺伝学的に特定した神経細胞だけをミリ秒単位で光刺激して、
ON → 行動が起きる
OFF → 行動が消える
と試せる。そのため記憶、恐怖、報酬、食欲、睡眠、運動、社会行動などの神経回路を、「相関」ではなく因果関係(ナニを刺激するとこれらの感情が起こるか)として解剖できるようになった。ほーん。
ちなみにコトの発端は「藻がなぜ光に向かって泳ぐのか?」という純粋な基礎研究で、これが脳を制御する技術に昇華した。「これはノーベル賞らしい基礎研究の成功例」(カロリンスカ研究所)
・考えられる産業応用
最も現実的なのは、お薬産業。
神経回路を選択的に刺激して、「この回路を抑えれば症状が改善する」と突き止めれば、それを薬物で再現する化合物を探索できる。うつ病、不安障害、統合失調症、パーキンソン病、てんかん、認知症、依存症などの創薬標的探索に非常に有用。
もう一つ重要なのが視覚再生。網膜の残存細胞に光感受性タンパク質を発現させ、失われた光応答性を補う試みがすでに臨床研究途上。
他に人工内耳・神経刺激デバイス、将来的には高精度の神経インターフェースへの展開も。
2.物理学賞
IceCubeニュートリノ観測所への決定的貢献と、天体起源高エネルギーニュートリノの発見
「南極の透明な氷そのものを、巨大な粒子検出器にしてしまおう」というもの。だからアイスキューブ。
南極の氷の中に5,000個以上の光センサーを埋め込み、約1立方キロメートルもの氷を検出媒体として利用します。ニュートリノがまれに物質と反応すると生じる荷電粒子のチェレンコフ光を検出し、元のニュートリノの方向とエネルギーを再構成(推定再現する)。
・受賞ポイント
ニュートリノは物質とほとんど反応しない。ので、僅かな反応を拾うためにスーパーカミオカンデみたいな大げさな装置を必要とする。ただこの性質は
「宇宙をほぼ何にも邪魔されず一直線に飛んでくる」
という点で大きなメリット。つまりニュートリノはブラックホール周辺や活動銀河核など極端な環境の奥深くからでも情報を持ってくる可能性を与える。すなわち、従来の電磁波で見る天文学、重力波で見る天文学に加え、
「ニュートリノで見る天文学」
という第三の大きな観測窓を実用化した。
・産業応用
ないでしょ。「知りたい」という人類の飽くなき欲求に応えるもの。
3. 化学賞
受賞対象は
「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒作用の発見」
人間の右手と左手は鏡像だが、重ね合わせられない(右の手の甲に左手を乗せても重ならないでしょ)。
同じように分子にも
右手型 R
左手型 S
という鏡像関係の分子がある。これをエナンチオマー(enantiomer:鏡像異性体)と呼ぶ。これは化学式は同じでも、生体は三次元形状を厳密に認識するため、一方は薬として効き、もう一方は効きにくい、あるいは異なる作用を示すことがある(ネジだって向きが逆だと回らないでしょ?)。
普通なら、触媒の「右手型純度」が例えば60%なら、できる生成物の偏りもだいたいそれに応じるだろう、と考えたくなる……が、受賞者らは、「不斉触媒反応」で、触媒の光学純度と生成物の光学純度が単純比例しないという効果を示した。わずかな左右差が反応系によって大きく増幅されうる(生成比率が変わる)、と分かった。
さらに強烈なのが「硤合反応」で、生成した分子自身が、
「自分と同じ手型の分子をさらに作る触媒になる」
という自己触媒反応を実現した。
たとえば最初にほんのわずかR型が多いと、
R型
↓
R型を作る反応を促進
↓
さらにR型が増える
↓
もっと反応がR側へ偏る
という拡大再生産が起こるというもの。そのため、ごく小さな初期の左右差から、一方の鏡像体を圧倒的に増やすことが可能になる。
・受賞のポイント
生命を作るアミノ酸はほぼL型、糖は基本的にD型。普通の無生物化学反応なら、左右はほぼ50:50になりそうに思われる。なのに。
「なぜ地球生命は片方だけを選んだのか?」
という生命起源研究の難問が生じる。
これに対し「硤合反応」タイプの自己触媒は、
ごく小さな偶然の左右差 → 自己増幅 → ほぼ片方だけになる
という現実の化学的メカニズムが存在することを示したことになる。したがってこれは単に「便利な有機合成法」だけでなく、生命のホモキラリティー(homochirality:エナンチオマーの片割れだけが多いこと)がどう成立し得るかという根源的問題に実験化学から理解の手を付けたことが非常に大きい。
・産業応用
今年の三賞の中で既存産業への応用が最も近いのはこいつではと考えられる。
薬の候補分子について、「欲しいエナンチオマーだけ高純度で作る」技術を得られるから。
したがって、医薬品のみならず、 農薬、 香料・フレーバー、 ファインケミカル、機能性材料と幅広い応用がある。
以上!バケは一番「?」かも知れないが、「特定の形質の化学物質を物質自身が量産してくれる」という点で様々に応用が利く物。それこそ「ノーベル賞の仕事」と言えるのではないか。
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