郷愁の電車
名鉄モ750形。
1928年の誕生だが、廃車はなんと2001年である。70年余り、21世紀になるまで使い続けられた文字通り古豪だ。外板はリベットでびっしり覆われ、床板は木製である。
こういう古い電車には、その後作られた電車にはない独特の味わいがある。人間なら「枯れた」とでも言おうか、馴染み、慣れた、人なつっこいとすら言える親近感があるのだ。そこ行くと例えば、現在大阪環状線に残っているオレンジに含まれる「クハ103-1」(昭和39年)や、秩父鉄道で青いストライプ巻いて走っているアイツ(旧国鉄101系:昭和32年)は、…確かに古いが、古いという感じしかしない。昨今流行りの銀ピカステンレス電車に至っては、後年古くなったらどう見えるんだろう。
この違いはどこから来るのか。
一つ言えるのは、後年の電車は「マスプロダクション」に主眼をおいた設計・構造である、ということだ。なるべく職人技を必要とせず、安く簡単に作る、そういう電車である。ボロ電車は、リベット一つ打つにも熟練の技が要求され、メインテナンスを施すにも技術力を要求される。
人は、手にしたそれが人手をどれだけ経ているか、直感的に感知する能力を持つのかも知れない。
ちなみに、この電車の現物は最終的に3輛残っていたが、全て、有志なり個人のファンなりに引き取られ、保存された。
他方、そのクハ103-1に始まる3500輛の大通勤電車軍団は、現在ガンガン廃車中だが、ゼヒ一両、という声を聞いた事はない。
…ただ、冷房装置が貴重だというので、インドネシアで特別料金を徴収する電車として運転中と聞く。
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