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2007年1月21日 (日)

手のひらで…

悲しいお話。

昼下がり、特別仕立ての列車を発車させようとしたところだった。
ごつっ。
それは、過去に同じ経験のある者には、生き物を飼った経験のある者には、ずきっ、とする音。
立ち上がり窓ガラスに向かうと、付着したエメラルド色の羽毛。
小鳥。
窓を開き見下ろすと、横たわる小さな身体。羽根の色と目の回りからメジロと判じる。
「どうしたよお前」
思わず声が出て拾い上げる。鳥特有の高い体温。

P1210038_2

説明するまでもあるまい、窓ガラスに突っ込んできたのだ。
まず疑ったのは脳しんとう。だが、その身体は完全に弛緩しており、胸元を探っても心拍を感じない。
ただ身体は温かい。
「どうしたの?」
異変に様子を見に来た妻が、手のひらの重篤を発見し、あたふたする。
近所の地図を引っ張り出し、ネットを駆使して片っ端から獣医に電話する。
手のひらの体温が下がる。
鳥を心臓マッサージ?
エウリーの話を書く関係で、ある程度は把握している。あの羽ばたきを生み出す隆々たる胸筋を、左右から挟んで揉むのだ。
手のひらがカアッと熱くなる。しかしまた冷えてくる。
やばい。やばい。
お前、オレの手のひらで死ぬな。
獣医はどこも出ないか留守電。日曜の午後というのはミッシングリンクなのだ。診察は午前中まで。夜間救急は夜9時以降。
その間の時間帯。
2度、手のひらの命は熱さを取り戻そうとした。しかしその後体温は下がる一方。
オレの手のひらで。オレの手のひらで。
ようやく繋がった病院が一つ。クルマで5~6分といった距離。
事情を説明し、飛び出す。信号は全部青。これは何のメッセージだろう。運転しながらマッサージというわけにも行かず、手のひらにそっと包み、曇り空の下を走る。
到着し、駐車場に入れると、若い男性の医師が気付いて出てきた。
「電話の者ですが」
「どんな感じです?」
「体温が下がってきていて、正直ちょっと…」
「判りました。ちょっと見てみましょう」
そして5分後、医師はお代は要らないと言った。
「何もできませんでしたから」
つまりそういうことである。脳しんとうではなかった。頸椎を損傷していたのだ。

帰宅すると娘が飛び出してきた。
「とりさん、まだしんでるの?」
「もうずーっとだよ。もう飛ばないし、動けない。ちゅんちゅんも言わない。…神様のところに返してこよう」
「うん」
無邪気な娘。小鳥が動かないことは認識している。でもそれが不可逆現象だということは理解していない。
アパートの庭に埋める。スコップで深めに掘り、
オレの手のひらを離れる。
「お祈りしてあげて」
娘が幼稚園の流儀で両の手を組む。
「…このおいのりを、いえすさまによって、おねがいします。アーメン」
この写真。ある冬の日のハプニング、という気持ちで撮ったのだけれど。

君が生きていた証になっちゃったな。

神よ、この小さな命をあなたの元へお返しします。

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コメント

ツバメで似たような経験を持つ者としては。
うん、ただただ切ない話。

まあ、その小さな命を救おうとして人間の大の大人が必死になって右往左往した事は彼らも気付いてくれたろう。

ただただ冥福を。

そういや工場のツバメっこがそんなことあったっけね。
人間は小さな命一つ救えない。もっと何かできたんじゃないか、とも思うし。
無力なもんよ。

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