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2008年2月15日 (金)

注意力の問題か?

総務ブチョ名義で工場全体に飛ばされたメール。
「昨今労働災害多発ノ状況ニテハ近々10年稀ニ見ル悪シキ事態に至レリ。係ル件各人ノ安全意識ノ低下及ビ規準違反ガ主因ニアルト鑑ミ各人一層注意奮励努力セヨ」
(大人の事情にて70年前くらいの文体に修正)
で、グラフがくっついてきた。

出ている数値は「災害件数」と「休業災害度数率」。で、この度数率の数値が激増と。

あん?

「件数」自体は2007年と1995年で変わらない。でも「度数率」は倍以上高い。

休業災害度数率

分子:休業災害罹災人数
分母:働く人の数×働いた時間(延べ実労働時間)

で、答えに100万を掛けると得られる。

この式を眺めて頂くと判るが、度数率が高いというのは、分子が大きい=事故が多い、または、分母が小さい。すなわち

人が減ったか。労働時間が減ったか。

分子は変わっていないのである。そう、分母が小さくなったのだ。そこで、人の数の割に事故が多い…注意力散漫でルール無視、という言い分になっているわけだが。

果たしてそうだろうか。

企業業績が揃って上向きという話は、テレビでギャンギャン言っているのでみなさんご存じのことと思う。式の定義とニラメッコすると「人数×労働時間」は減っているのに売り上げが増えていることになる。

生産性が上がっている…と言えば言えるが。
それは言い換えると一人当たりの生産が増えたわけで。

どうやって?

機械化・自動化が進んだ結果と仮定してみよう。すると当ったり前の話だが、「人が機械に触る」確率が高くなる。機械による事故確率は上がる。逆に言うと一人当たりが「注意しなくてはならない内容」が増えるわけだ。
人間が「進化」しているとしても、注意力までが10年でそこまで対応出来るか?

今の大量生産システムを確立したのはご存じフォードだが、同社は当初、安全より効率を優先する施策を取った。説明のために「部品を機械にセットして加工する」というプロセスを考えてみる。現行、そういう工程では、部品をセットし、人間がボタンを押すなどすると初めて機械が作動し、加工が行われる。対しフォードは機械を動かしっぱなしとし、人間の側がタイミング良く部品をセットしろ、というシステムにしたのだ。
「うわ危ねぇ」
少しでも工場という場所をご存じの方なら怖気を振るう話であろう。当然、事故が多発してその都度工場はストップ。効率は逆に下がった。

これから考えると、生産効率の向上は、「自動化・機械化」にあるとは考えにくい。

じゃぁどうやって?

全部を説明出来る仮説がひとつある。人減らして労働時間を少し増やしたのだ。

3人8時間の工程を2人が10時間でやるように「カイゼン」したと考える。実労働時間4時間分は機械化する。労働時間の増加は機械に触れる確率を高める。この場合二人とも25%増。4時間分の仕事を新しい機械にやってもらう。簡単のため、8時間で「8個の機械をいじった」と考えると2時間分更に機械が増えて10個。これまた25%増し。機械1個で1時間当たりに生じる「偶発事故確率」を一定とすると、触る数だけ、触る時間だけ、確率は上がる。

偶発確率×1.25×1.25

いや間違いじゃなくかけ算×かけ算ですよ。機械が増えて、その確率の状態で、扱う時間もまた増えるんですから。答え1.56倍。
で、当たり前ですが人間長時間同じ事していると注意力は落ちてきます。残業時の事故確率がそれだけ上がるとすると?

「度数率2倍」

…ルールだ意識だという物言いが一方的に思えるのは、ひんしつほしょーかとしてNGな姿勢なのだろうか。

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