オーディオあれこれ~DSP-Z11パート2~
カーオーディオを新車に移植する。
夜行路の目的半分はそれである。
とまれ開店まで間がある。起き抜けDSP-Z11の電源を入れ、ベートーベンを突っ込む。
リスニングレポート続編と行こうか。
●クラシック(交響曲)
カラヤン自身がデジタル技術を駆使し、自身の演奏を残そうと立ち上げたプロジェクト「TELEMONDIAL」で制作され、グラモフォンからリリースされたCDである。しかも普通のCD銀色アルミと違い、よりレーザ反射特性の良い、金を蒸着したもの。
カラヤン/ベルリンフィル ベートーベン1番2番。1984年 ポリドール POCG-9362
静寂から音が立ち上がる。それは無音の湖面に風が吹き始めるが如く。
映画館のスクリーンに映像が映るように、眼前にオーケストラが展開される。左右だけでなく、高さ方向、勿論手前にも楽器が粒立って並ぶ。まずはそのスケールの大きさが心地よい。耳を傾けるとはこのことか。円熟のマイスターにドライブされたハーモニクスが美しい。弦はこすって音を出し、ブラスは震えて音を出し。
音の一つ一つは細かい。細いのではなく繊細。それが折り重なって32段スコアを音に具現化している。
クラシックを、聴きたい。
そう思わせるシステムは滅多にある物ではない。大体がオーディオというのは電気駆動の糸電話だ。元が弦であれ管であれ、コイルと磁石の反発で紙なり何なりの振動板を動かす。発音原理が全く異なるものなのだ。ピアノソロを聴いてみるとよく判る。ピアノと判っているからそう聞こえるが、実際のピアノが持つ「ピン!」とでも形容すべき鋭く跳ねた音はオーディオでは容易に出てこない。
それをここまで。
朗々と大きなスケールで鳴らす。これこそ交響曲の聴き方なんだろうなと思いつつ、シャケをつついてみそ汁を飲む。
ここで弟夫婦が合流する。カーオーディオショップに開店早々クルマを預け、帰宅後、DSP-Z11を本格的に聞き込む。
折角なので弟夫婦オキニのCDを回す。
●ヒップホップ系。トランス系。
2chピュアで鳴らすとヴォーカルが眼前中空に定位する。ステレオフォニックの録り方ではなく、バックサウンドとヴォーカルを別々に録り、パンポッドで「置く」からこうなるのである。
DSPに通し、ヴォーカルをセンターに抜く。recitall/operaモード。
最初のソースはサックス/ドラム/シンセ/ヴォーカルという構成だが、アコースティックとシンセが見事に「生音と電子音と別々」聞こえるのが面白い。アコースティックの音色に艶があるので、シンセがいかにも「故意」だ。但しシンセにありがちな音の「キツさ」(中高域の張り出しと歪み)はない。これはこれで逆にエレクトロニクス同士の相性の良さを感じさせる。
「わからないかと思ったけど全然違う」
とは義妹の弁。情報量、密度、SN感…いずれもが図抜けて違うのだ。特段オーディオファイルでなくても絶対的な差が感じられて当然。
●ディスコ(ユーロビート)
avexの「スーパーユーロビート」186~あたりをとっかえひっかえ鳴らす。これもバラ録りで「置く」作りだが、2chでもヴォーカルは出しゃばって来ることはない。源流がレコード時代「ハイエナジー」なので、そのあたりは古典的(正当?)なのであろう。
さてこのコンピ・シリーズは、いくつかのレーベルの曲をアソートしているが。
レーベル間の音作りというか機材の差が判る。A-BEAT-CやTIMEの方が音が深い。勿論どれにせよ「ドンシャリです!」と如実に物語った音ではある。ただ、音の一つ一つが明確で、ドンシャリに多い荒っぽさ、うるささよりは、硬質で締まった音の集合体というイメージになる。よく「行間を読む」というが、ここまで解像してくれると「音と音の間を読む」なんて感じになる。結果、それぞれの曲に与えたイメージ・空間(夜空とか、更にそこを飛んで行く)までも伝わってくるように聞こえるのは、「単に鳴ってればよい」から一歩進んでいるから、と言えるであろう。なお、重爆ビートを基礎に置いた曲でも、サブウーハは「そっと添える」程度で、「ちゃんとウチにも信号来てますぜ」的な鳴り方。サブは本来のべつデロデロ唸らせるものではないのである。
●ジャズヴォーカル
Verveレーベルの50周年記念ライヴ。発売当時高音質で知られたディスクである。
Carnegie Hall Salutes The Jazz Masters/カーネギーホール ポリドール POCJ-1228 1994年
まずピアノが違う。書いたようにピアノはオーディオ再生が難しく、録音から再生まで相当に質を高めないときちんと聞こえない。
ああこれはピアノの音だ。
弦の残響は勿論、「叩く」アタックがちゃんと出るので、聞いていて非常に楽しい。また、ライヴ盤なのでヴォーカルは2つのスピーカの真ん中にぴたりとフォーカスされ、ヴォーカリストがわずかにスウィングさせながら歌っている様子が判る。こっちまで踊り出してしまいそうだ。
次いでDSPに通す。ヴォーカルが引っ込むかわり、わき上がる拍手などがワッと包み込んでくる。
その心地よさと臨場感。
基本2chで十分に音の密度が高く、そこに添加するようにサラウンドの音が加わる、そんな感じだ。この鳴り方は完全に自分のこれまでのシステムと様相を異にする。これまでのシステムは途切れずサラウンドから音を出す、事に注力していた形だ。しかしそれは裏返せば根本的な情報不足を複数のスピーカで何とかしようとしていた、のかもしれない。
●特殊ソース
コントラバス・マリンバ・エクスプロージョン
ソニー 32DC 5027 1988年
CD普及初期、ソニーはその能力の限界に挑戦するようなCDを幾つかリリースしたが、そのうちの一つ、32.7Hzという重低音を奏でる木琴の怪物「コントラバス・マリンバ」の演奏を収録した物だ。
マスターは当時の業界標準、PCM1630。なお、再生にはサブウーハを通さないと話にならないので、ソースストレートモードを使用。
ずしっ
サブウーハの本気モードと言うべきか。空気が動いて鼓膜を揺さぶる感覚が脳をも揺さぶるが如くだ。ただし出しゃばりはしない。マレットが木板を叩く柔らかい音に地鳴りが加わるとでも書こうか。サブウーハ自体はアンプ内蔵なのでZ11そのものの音ではないが、確実に分離され、そしてスムースに帯域が繋がってる辺りは「YPAO」の効能だろう。
●シアター再生
スターウォーズエピソードII
ルーカスさんなのでTHXモード。アンプがドルデジを拾ってディスプレイにわらわら点灯。
「解像して粒立ち」の感覚はここでも発揮された。それが6.1でちりばめられるのだ。
移動音の真ん中が薄くなるのはホームシアターで良くある現象だが、それは感じない。後ろから前へ、上から下へ(!)。しかしそれ以上に印象に残ったのがバックサウンドの美しさ。映画の音ってこんなに「綺麗」だったっけ?
しかしこれシナリオがひどいね。全編見ようと思ったが、あまりにもご都合主義なので音が回りそうなところだけつまみ食い。「絵と音」だけで…えー以下自粛。
ロードオブザリング
口直しにこれの1作目を。最後の方の化け物集団が地下から出てきてホビットと仲間たちが立ち向かう…の場面。同じくTHXモード。
あまりの迫力に見入ってしまった。飛んでくる矢が単にそういう画像だけでなく、音の方が先に前から後ろへ突き抜けるので、思わず目をつぶりそうな迫力がある。剣と剣がぶつかり合うところでも少しサブウーハが唸ることも判った。大剣の重量感を音でも持たせているわけだ。
更にこの場面、熾烈な戦闘と、潰える戦士を「驚愕の静寂」で追うシーンとで構成されるが、その対比が見事。
ひきつづきあれこれ聞いている。「あれはどう聞こえるんだろう」…とっかえひっかえ。
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