29人のパパとたった一人のお父さん
悲しい話だよ。
今日は計画休暇。寝ぼけ眼には雲間の青い空。
娘を幼稚園に迎えに行って、椎間板引かれに整形外科。ああ水曜か。だったらバレエの送り迎えも。娘がいない間に列車転がしてうだうだして。「女神」更新しないとね。そんな予定。
電話。妻が取った。
「幼稚園お休みだって。大雨警報なんて出てる?」
雲間の青空。しかし、昨今のパターンはそれが晴天を保証しない。
「レーダー見てみ」
何度も紹介している気象レーダー。
「雲はあるけど……ずっと南の方」
「上がって来んじゃね?横の方のメニューに警報注意報ってあんでしょ」
「あ、出てる」
「その雲が来るって気象庁の読みなんだよ」
とまれ、これで普通の休日に条件が等しくなった。娘と遊ぶか。
電話。再度妻が取る。休みの話の別ルートか。
否。
「え?うそ……」
悲痛な妻の声。
事件が起こったのだ。
幼稚園の友達のお父さん。労働災害で命を落とした。
36歳という。夏前に3人目の子が生まれたばかり。
事故自体は、動力装置のスイッチを切らずに調整を行い、動き出した機械によって、という、こういう書きた方はしたくないが「多いパターン」。
「あのお宅、お爺さんがこの間亡くなられたばかりなんだよ……」
事情を知る妻が涙を見せ、つられるように娘も泣き出す。
神よ、あんた残酷だ。
程なく驟雨となる。南から上がってきたその雲が市の上空に達したのだ。叩き付ける雨音を聞きながら、黒い服や、お香典の袋。娘の靴のサイズの確認。
5歳で父を失うということ。
妻子残して世を去るということ。
前記したように「パパが迎えに来る」パターンも見られる幼稚園である。でも、その子を、お父さんが迎えに来ることは、もう永遠にない。
その子が、父の死という事実と、もたらす現実の意味を知るのがいつかは判らぬ。ただその時が来たなれば、オレたちパパは多分、笑顔で子どもを迎えに行くのが苦しいだろう。
「パパのように」は振る舞えるかも知れない。なれば、29人のパパがいる。
ただ、お父さんそのものにはなれない。
でも、それしかできない。
顔違うけどよ。
声違うけどよ。
腰痛持ちだからパワフルな身体使った遊び苦しいけどよ。
いつでもおいで。
バレエの送り迎えをした後、夕食作りを手伝う。
妻は、オレが休みでいてくれて良かったと言った。
その子もそのお母さんも知っているのだ。そればかり考えてしまうだろう。さもありなん。
オレが休みを取った日に。
何なのかこの同期性は。
書いてたら何だか腹立たしさと悔しさがこみ上げてきた。
なぜかって?
何にって?
だって基本さえ守っていれば防げた事例だと思うからだよ。オレ自身書いたように「労災」やったばかり。紙一重なのさ。
指差唱和
機械操作時の停止確認よし。
敬礼
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