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2008年10月14日 (火)

名鉄4000

カーブの向こうに現れたのは、せとでんでは過去になかった白銀の光。

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高輝度放電灯を燦然と輝かせ、銀色の車体が雨のホームに滑り込む。
名鉄4000。
瀬戸線専用車として実に30年ぶりの新車である。これが「瀬戸線初の新製冷房車」と言うのだから恐れ入るが、その30年の技術の進歩余りに激しく、隔世の感際だたせるサイドビューである。駅照明を弾くステンレスの鮮烈なシルバー。名鉄のアイデンティティであるスカーレットのストライプ、ドットの細かい液晶の行き先表示。

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無駄はないが意匠性もない。そのシンプルに徹したな銀色の外観には、窓がスクエアに切り取られ、やや青みを帯びた紫外線吸収ガラスがはめ込まれる。ガラス越しの室内は目を瞠るほど明るく鮮やか。

青と白と銀色に彩られ輝く電車。素っ気ないほどシンプルだがテクノロジーは積んでいる。それらディテールはこの電車が21世紀に生まれた新時代の車輛であることを否が応にも見せつける。
プロパルジョンもメカニカルな音はしない。純電気ブレーキ。減速し止まるまで機械的摩擦音皆無な姿は、軽やかでスムーズなこと比類無く、既存カルダン車を一気に過去へと遠ざけ、畢竟つりかけをヴィンテージのステージへと引き上げる。

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電動スライドドアに導かれ乗り込むと色と光が満ちあふれる。個々の調度はそれぞれ切り取れば「どこかで見た」である。同社本線系ステンレス車であり、東京を走る現代の電車達だ。液晶案内はそこだけ見れば山手線か中央線か。

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地下鉄かそれこそJR東日本を思わせるチャイムと共にドアが閉まる。ブレーキが緩解し、ゼロベクトルが出てからVVVFが誘導電動機を駆動する。インバータ制御車に付きものだったメロディアスな電磁音はこの電車から聞こえて来ない。ただ僅かに聞こえるノイズに近いシューという音こそはIGBTが電流を切る彼の音のランダマイズ。知らん顔して加速しながら中央本線をオーバークロスする勾配を駆け上がる。

そのレールの継ぎ目を刻むジョイント音は弾むようであり耳に心地良く、まるでこの電車に意志があり、走ることが楽しいのかと思わせるほど。車内で他に携帯のカメラ画面を開く人あり。歓迎され珍しがられ、そして愛されていることを感じる。

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せとでんに21世紀がやってきたのだ。

矢田を出てすぐに急カーブである。このカーブの故に4000はボルスタ付きモノリンクを履く。仮に今でも堀の中を走るならば、現代の技術よ、「サンチャインカーブ」をいかにしてクリアしたであろうか?
カーブを軋らず、そして空転もせず、4000はその軽さと粘着に物をいわせて帰宅の人々を矢田川橋梁に引き上げる。ゲルリッツに叩かれると重い音で答えるここのガーダーも、加速に合わせて歌うかのよう。カーブを巡り自衛隊前。そしてせとでんの象徴、瓢箪山との短い駅間。

君はゴール前で軽く流す予選出場のアスリートのようだ。

瓢箪山はカーブにかかった駅である。カントが付いているので荷重が偏倚し、軽量で雨天であるから粘着が心配される。
果たしてノッチオンして程なく滑る。但しそれと判るのは「空転」の存在とその状態を知る鉄道ヲタク位であろう。dq変換の演算回路がそれを捉えたか再粘着制御。やや前後に衝動を発したが、抵抗制御のつなぎ替えほどですらない。イタズラを誤魔化す子どものように知らん顔して君は加速し、駅間のカルダン車最高速度である75キロに達して軽やかに、まさに軽やかに転がって小幡。

赤くなければ名鉄じゃない。確かにそうであろう。
昨今銀色の電車は安っぽい。その意見に首肯する。

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しかし明るく清潔で液晶画面を備えたその内外装こそは、今を生きる人々に歓迎されるのではないか。
ワゴン・リからイス無し電車まで、SLから新幹線まで、ここ100年鉄道車輛は大いなるパラダイムシフトにあった。しかし鉄路を走るという根本だけは当時も今も、そしてこれからも変わりはない。

エレクトロニクスに身を包んだ銀色の風が、枕「木」の並ぶ20キロの鉄路に爽やかな秋を運んできた。

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「銀のせとでん」走れ。

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