かわいそうな29
「にく」ではない。
風呂上がりの数かぞえ。
「いーち、にー、さーん……」
20までは丸暗記させた。当初せとでんの駅数がちょうど20であることから、栄町から尾張瀬戸まで何となく憶えさせようとしたのであったが、この企みは妻に見破られ、脆くも崩れ去った。
そして昨今娘は30へ手を伸ばし始めた。
だがしかし。
「27……28……なんだっけ」
指立てて「9」を示すと。
「9……10……」
29の9の意だという理解がないのである。むろん、ユークリッド的な数の概念、直線性の理解はない。28に1を加えると29になるとは判っていないのである。
数は数える。数字は読める。しかし両者の連結はない。
「いっこといっこ、合わせて幾つ?」
現物を見せると数えて答える。「1個同士」と「2個ある」は別次元なのである。
斯くて今日も29は忘れ去られて飛ばされる。「早くゴールしたい」という気持ちもあるのだろう。28の次は30である。
「29はどこ!?29かわいそう~!!」
泣き真似して言うとケタケタ笑う。29の存在はこの思い出と共に刷り込まれると思うが、やっぱり今日も忘れ去られる29なのである。
貴重な素数なのに。←そこかよ
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