メトロポリスの片隅で
タイトルはユーミンの同名曲から。
-場所の名を伏す。
工事をしている大きな駅。
フェンスの脇を歩いていたらクロネコ一匹。
すれ違うネコには声を掛ける習性があるので(オレが)、目があった瞬間に「にゃぁ」と言った(オレが)。
これで見ていた人がブッと笑ってくれでもすれば基本的にはOKなのだが、そのクロネコはなんと「にゃぁ」と返した。
とは言え驚くに値せず。人なつこいネコってこんなもんだ。ヤマネコの一部にあったこの「人なつこさ」がイエネコの起源だ。
さておき。
立ち止まってもこっち見たまま逃げないのでしゃがみ込んで撫でてみる。自分から寄ってくるようなヤツに鼻先あいさつは要らぬ。ノドをくりくりやってやると目細くしやがって。
「慣れてんなお前」
「にゃぁ」
「でもスーツにスリスリするの禁止な」
オフィスと飲み屋しかない駅前である。誰かに飼われて定住しているわけではあるまい。ただ、何せ飲み屋があるから食い物には困らない。
と、あと一つ。
人が「住んでいる」ワケではないのに人を信じてるネコだということ。
逆に言うと裏切られたことがないという証。
この街を行くニンゲンは、オレ達みたいなしがないリーマンとお店の人たち、後は夜を知るホームレスさんたち。
お金がないと生きて行けない、それをまざまざと見せつけるこの駅前で、このネコは平和に生きているわけだ。人々も分け隔てなくこの真っ黒ネコに優しいのだろうし、ネコにとっても自分を「可愛がるニンゲン」という点でみんな同じ。
どんな境遇にあってもネコに優しい「ゆとり」が、それでもまだこの大都会には残っているということか。
大量破壊兵器を手にすることを「喜び」と本気で言い、殺す道具を手にすることを「誇り」と本気で思うより良いのかも知れぬ。
近所の公園ネコ。オレのこと初めてのクセに平気。娘がドタバタ遊んでいても平気。
すなわちここに遊びに来る子ども達、そして大人達にひどい目にあったことがない。
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