二転三転の末
遠足の日。夜明け前。
娘がしくしく泣いている。
夜泣きなんぞついぞしたことはない。ただ、妻によれば、見知らぬ環境でそれなりに辛い思いを押し殺していたらしく、名古屋に帰りたいと呟いたこともあったという。
「どうしたの?」
「耳が痛いの」
は?
娘がマイコプラズマだ百日咳だ以前書いたことがあるが、実はその後スッキリ咳とおさらばしたわけではないのだ。咳だけ残り、風邪を引き、長引き、中耳炎になり、治ったと思っても咳だけ残り。
診察は二転三転した。喘息疑いと言われ、蓄膿を疑えと言われ、心因性咳(ストレスで喉が渇く→咳が出る)と言われ。
今日はとりあえず中耳炎の疑いが濃いので耳掃除。耳たぶが火照り、耳垢が多いので、炎症を起こしていると見て間違いない。濡れタオルを持たせて耳を冷やし、体温を測る。熱はないが夜が勝負だろう。ネットで行きつけの小児科をチェックすると臨時休診。
しかし、それは思えば導きであったかも知れぬ。
代わりに妻が見つけたのは「小児科・耳鼻科」兼業であった。ピンと来た。総合的な視点が期待できる。
「結局何なのか当を得ない。オレも行く」
会社に午前休みの連絡をし、咳をする娘の姿をビデオに撮り資料とし、クルマを走らせる。
「蓄膿っぽいですね」
聡明そうな女医はこちらの経緯説明とビデオ、診察でまずそう当たりを付けた。
「でも、そうではないって……」
「レントゲンでハッキリしますよ」
ネブライザーで現像待ち。予防接種が多いらしく、幼い子達のすごい泣き声。
子どもは一般に他の子の泣き声を聞くと不安に駆られるのか自分も泣き出したりするが。
比して娘は大きく、強くなった。
結論。
「喘息の傾向もあるかも知れませんが軽微です。それよりはアレルギー性鼻炎起因の副鼻腔炎があって、この影響で咳が出て中耳炎になったと考えられます」
二転三転……の全て複合。
喘息とは気管が炎症を起こし、炎症の原因を排出しようと咳をし、原因を侵入させまいとギュッと縮み、双方によって息が苦しくなって……という状態である。
副鼻腔炎、すなわち蓄膿症とは、鼻の奥で風邪などにより炎症がおこる。炎症により膿が発生するが、炎症で腫れているから鼻の穴などから排泄されず溜まる。するとこの膿の刺激で炎症が……という悪循環の状態である。
で、この膿、鼻汁が喉へ流れて気管の炎症を呼ぶ。一方で咳でゲホンとやったのが副鼻腔へ流れて炎症を起こすこともある。すなわち喘息と蓄膿症はニワトリと卵の関係。
そしてこれらの炎症が耳へ繋がる穴へ達すれば中耳炎。つまり中耳炎は上記状態の延長線上。
理に適っている。納得した。
「まず中耳炎を集中的に治しましょう。大人用の抗生物質を少なめに用います。次いで少し時間が掛かりますが、副鼻腔に溜まった鼻汁を出させましょう」
で、咳が鎮まればよし。咳が続くなら喘息が卵の疑いと。
長期戦。
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