仕事の準備は仕事か?【5】
・仕事を品質工学で捌いてみる。
品質工学はある機能を持ったシステムを対象とし、突っ込んだエネルギと出てきたエネルギとの差分でシステムを評価する。この差分を次のただ一発の方程式で表す。
y=βM
(機種依存文字はギリシャ文字ベータ。以下同)
yが出てきたエネルギ、アウトプット。Mが突っ込んだエネルギ、インプット。βがyを左右するもろもろの要因を一緒くたに表現したもの、となる。目標は(1)Mが同じならyを高く取る=効率を上げることであり、(2)βに相当する要因のどれが効率向上に寄与するか洗い出すことであり、(3)選んだ要因をyが最も安定して得られる状態にチューニングすることである。営業にたとえるなら、「景気に左右される単価が高い物を数多く売ろうと無駄な努力をする」より「そこそこの値段の物をあまり手を掛けず大量に売る」方が安定で効率の良い商売である。この考え方はどの仕事にも当てはまることが判ると思う。ちなみにこの考え方だと、「100点満点を目指すのがプロ」ではなく、βの向上をあくまでも求め続けること、になり、上限や満点という観点は存在しない。
で。
スキルとhowをこれに当てはめると、どっちもβに属する要因の一種となり、表面上区別されない。一方でお給金はyで評価されるように見えるが、実際に物を言うのはβの大きさである。例えば同じ売り上げデータで、「これが一番多く売れましたからガンガン宣伝してもっと増やしましょうと」言われるのと、「地域別、男女別、年齢別の観点から見て、この地域にはテコ入れしますが、こっちはむしろ縮小して別の味付けを模索しましょう。総売上は変わりませんが、縮小する分準備コストが下がりますので利益はアップします」と言われるのと、どっちが仕事してるように見えるだろうか。ちなみに後者は前述「寄与洗い出し」を経た答えである。
うん、自分の仕事の自己評価法を別途確立しておく必要があるのだ。
・翻って我が上司の発言
仕事の結果はアウトプットyだが、仕事の実質はβである。会社が見るのはyだが、そのためにはβを高める必要がある。で「勤務時間外でも」となるわけだ。アドバイスとして適切であり、yの生産そのものを要求しているわけではないからタダ仕事サービス残業の指示でもない。くっそ巧妙な発言だあ。なんだが。
書いた通り自己評価の手段を確立しておけば、βはyから自然と浮き上がる、と言える。βは費やしたプロセスそのものだ。そう、実作業しながら、その作業内容を記録しておけばいいのだ。追ってyを見て、個々のプロセスが適正だったか(やる必要性があったか?無駄な作業ではなかったか?)評価すればいい。そして書きだしたプロセスは週報でも月報でもそのままトランスファできるだろう。ここまでやっておけば、上司の発言に対し「業務外の業務を指示しているようで不適切だ」と言う論拠を備えることが出来るし、業務そのものを通じてhowの洗練とスキルの確立が出来るわけだ。
「やれ!」
「やります!」
言う方も言われる方も言うのは簡単。
ただ、求められている結果と、出せる結果が一致しているとは限らない。
ただ、効率を上げるという観点で仕事を評価することは、必ず何らかの結果を導く。
多くの上司世代は品質工学なんか知らない。
多くの上司は結果だけを求める。
品質工学は結果の変え方を示唆する。
「こんなに努力しているのに」というあなたへ。
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