4・25
鉄道マニアというのは24時間365日電車眺めてニヤニヤしている愚かな性分……のはずだが、そうあるべきなのだが、「4月25日」だけはのんきに鉄道を楽しめない日になってしまった。
尼崎事故の話をする。※は専門用語・マニア用語であって、文末に解説を付ける。
始めに書いておくが、電車に罪はない。単なる機械であって、扱った人間の側が悪い。
いろいろ「原因」が言われているが、制限を遙かに超過した速度で突っ込んだのが端的な事実であって、台車の構造による重心がどうの、構体の素材による強度がどうの、本質とは関係ない。コンクリの塊に100キロ超で突っ込んでも壊れない金属の箱が出来たところで、中の「人」が時速100キロで「箱ごと」突っ込むことだけの話だ。
「速度照査機能付きATS(※1)を付けておけば防げた」
確かにそうだろう。だがそれは結果論だ。それがあれば突っ込んでいいのかって話だ。よく、千葉都市モノレールがATC(※2)の制限に当てて自動減速するが、オレ個人はあまり好きな運転法ではない。
「彼」に訊かないと真相は不明だが、速度超過で突っ込んだ理由は、遅延に対するプレッシャーだろう。
「アーバンネットワーク(※3)」の売りが速度であり、しかしのべつ数分遅れで運転しているのは鉄道系のリンクでここに見えた諸兄には説明不要の現実であろう。要するにスジ立てすぎ(※4)なのだ。スジのために人命軽視、とりあえず自動減速装置を付けておけ、付けて置きさえすればよい……同じ本末転倒思想を感じるが違うか。
鉄道の使命とは「お客様を安全かつ快適に目的地まで」であると信じる。「速度」は「快適」の一成分に過ぎず、早いことが快適の第一条件・十分条件ではない。同じ理由で尼崎の同着同発乗り換え(※5)も秒単位でこだわることか?と思う(これが崩れることもプレッシャーになったのではないか)。単純に東海道線と東西線が同一ホームに交互発着するだけでも充分便利だと思うが違うか。
事故から5年を経たわけだが、出張などで乗る限り、「アーバンネットワーク」はこんにちもけっこう恒常的に遅延しているように思われる。また、調査情報の漏洩の件など、この事故をどれだけ会社として教訓としているか疑わしい部分を思わせる。電車のガワとイスの色変えたら終わりなのか。
「できること」と「やるべきこと」……原因追及に「心理的な要素を含むな」とオレは品質管理から学んだがいかがか。そして対策は「4M1I(※6)」の視点で仕組みに落とし込め、と。
鉄道が、日本の鉄道が最も安全であり続けることを鉄道ファンの一人として誠実に希求する。
※1 ATS:自動列車停止装置。元々何らかの要因で赤信号を無視した場合に自動的に非常ブレーキを作動させる機能。「速度照査機能」はこの発展型で、制限速度を超過した場合にも非常ブレーキを掛ける。
※2 ATC:自動列車制御装置。トンネルや運転速度が高いなど、信号の設置・確認が困難な区間のために開発。ATSが「止めるだけ」だったのに対して、ATCは「制限速度と比較して、それを越えている場合はそこまで下げる」機能を備えた。上記速度照査型ATSの開発で機能的には似てきたが、ATCは信号機の代わりに、「現在の制限速度」を運転席に表示する(CS-ATC:キャブシグナル型ATC)のが基本であることが異なる。
※3 アーバンネットワーク:JR西日本が大阪近郊の電車区間に名付けた愛称
※4 スジ立てすぎ:列車ダイヤで設定速度が高すぎるの意味。ダイヤグラムでは、高速運転の列車ほど、垂直に近い線で書かれるのでこう呼ばれる。
※5 尼崎の乗り換え:尼崎駅では、事故を起こした福知山線、東海道線、地下へ入る東西線が「X字」状に交わる。そこで乗り換えの便を図るため、行き先の違う列車を隣り合ったホームに同時に到着、発車させるダイヤを組んでいる。そこまで同時に拘ることはないだろうということ。
※6 4M1I:人(Man)、物(Material)、設備(Machine)、方法(Method)、情報(Information)。経営や工程の資源を分類した語。この事故で言うなら、人は運転士への教育(運転技術講座の類)、物は電車、設備はATS、方法は制限速度(ルール)、情報は運転のノウハウ(ルールを守らせる工夫)。
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