惚れて貢いだ話だが独身時代のことだから許せ
修理から戻ってきた。
定価30万円超である。ふたりの任務は個人情報隠しだ気にするな。
「図体金無垢か?」という突っ込みを入れたくなる人もあるであろう。15年前の話だ。
現在単にCDを聞くだけのキカイであれば3000円程度で買える。比して常軌を逸した狂気の価格と捉えられて不思議ではない。
今日はこの弁明。
●CD再生における「高音質」とは?
原理原則論。CDはデジタルデータ化された音楽信号をレーザ光の反射有無で読み取り、大元のアナログ音楽信号に復調、出力する物である。これより、主たる機能は次の3つに集約される。
1.レーザ光によるディスクからの読み取り(光学系と称す)
2.読み取ったデジタル信号の処理(デジタル系)
3.デジタル→アナログ変換(DA系)
更にこれらの機能の実現において、以下の性能(数値で表せるスペックの確保)が各部に要求される。
1.光学系
1)ディスクを所定の速度で回転させること
2)レーザビームをディスクの所定の位置に焦点を結ぶよう正確に照射すること
3)反射してきたレーザ光を確実に補足し、電気信号に置き換えること
2.デジタル系
1)光学系で生成されたデジタル信号を正確にデジタル演算回路に伝達すること
2)デジタル演算回路はエラー補正、データ変換など、規格通りの信号処理を行い、DA系に正確に伝達すること
3.DA系
1)デジタルデータをアナログ連続信号に高精度かつ高速に変換すること
2)変換して得られた音楽信号に歪みやノイズを重畳させることなく外部へ出力すること
そしてこれらを支える基幹パーツ・アッセンブリが次の通り。
・ディスク回転用モータ
・滑らかに回すための軸受け
・レーザ光発生回路
・レーザ光受光回路
・レーザ光フォーカス回路
・処理基準信号発生回路(マスタクロック)
・デジタル信号整形回路
・デジタル信号演算回路
・デジタルアナログ変換回路
・それぞれの回路が動くためにそれぞれ専用に設けられた電源回路
・コンセント電力をそれぞれの電力に分配する大元の電源回路
以下がノウハウとなり
・DA変換の方式
・各回路の構成・部品選定・配置・配線
・自分や外部の振動が光学系に伝わらないようにするボディ構造
・ノイズの発生・混入を防止する工夫
・個体感のバラツキ無く同一の品質性能を確保できる量産技術
3000円でもこれだけの内容を盛り込んでいる(売れる=儲けが出る=製造コストはもっと安い)というのも、ある意味技術であり、それはそれでスゴイのかも知れぬ。ただ、これだけの内容をそれぞれ個々に突き詰めれば、それはまたそれなりの価格になりかねないこともご納得いただけよう。「音質の違いはオカルト」「ゴールドム(以下自粛)」という意見は非常に多いが、少しずつの差でも積み重ねれば相応の差が生じるのは事実である。3000円と30万は価格差百倍だが、「回路的に繋がっているだけ」と「前後比べて変化がないように回路と部品を考慮」の差がそれだけになった、ということだ。そして後者もそういう技術を駆使してたどり着く領域であり、応じた対価が百倍になったのである。
●ハード依存は時代遅れ……への反論
ソフトの時代と良く言うが、ハード存在せずに動くソフトはない。ソフトだけ、というのは人間で言えば幽霊だ。意志が活動できるのは脳が必要であり、ソフトと言えどその結果は回路を走る信号だからである。ただキカイを作るだけなら人件費の安いところが最終勝利、性能なんか無問題日本のコダワリ勘違い。しかし本当にそうだろうか。
拙記事「技術者モードにスイッチオン」の中に、ろーでしゅわるつのオシロの画面を貼ってあるが、
アレが測定しているのは単なる矩形波パルスである。すなわち。
こんなのだ。が、画面を見ると判るように、その波形の立ち上がり、立ち下がり(垂直部分)になよなよしたところが見られる。本来スパッと直角・垂直・水平の繰り返しであるべきエッジ部分が歪んでいるのである。但し、元のパルス発生回路の精度か、測定器自身の精度(プローブ容量含む)か、測定器の表示部分の精度か、どの影響かは判らない。ただ、扱う信号(=情報量)が今後さらに増大すれば、このなよなよ部分が信号と誤認される世界に達することは容易に想像が付くだろう。その世界で要求されるのは、部品と部品を電線で繋ぎ所定のスペースに押し込めることではなく「前後比べて変化がないように回路と部品を考慮」する意識と技術である。この点で苦労の結果を掠め取ってくるだけの見識の持ち主共は、根本的にその世界に存在できないと言える。「ソフト事大主義」は表面だけしか見てない本質無視の空論。
それこそ、幽霊だ。
« いや変人ですから | トップページ | 補遺雑記 »
« いや変人ですから | トップページ | 補遺雑記 »
コメント