カムリのこと
(クリックで記事)
トヨタのクルマは伝統的に「冠」に関わる名前を付けている。「クラウン」を筆頭に「コロナ」(光冠)「カローラ」(花冠)……といった具合。ただ、このカムリに関しては、冠づくし尽きたか日本語の「かんむり」そのものが元になっている。
セリカの派生車種として、カリーナとほぼ同内容のセダン「セリカ・カムリ」として登場して程なく、オヤジが買ってきた。当時乗ってた中古のカリーナがエアコンなし・2ドア・ミッションがマニュアルという仕様で、家族車として不評(教習中の母親と小学生のオレにギャンギャン言われた)だったためだ。グレードXT、OHV4気筒1600cc、88馬力(ネット・以下同)、3速AT、パワステ無し。ちなみにセリカの本質は2ドアのスポーツ車だが、その名を意識してか、2000ccDOHCの「GT」というグレードもあった。めったに見かけなかったが、逆に扁平タイヤにエアロパーツ付きに改造されたヤツが良くあった。
小学生時分から、高校までの間、ずっとこいつと過ごした。図鑑と首っ引きで「クルマ」のメカニズムを知ったのもこいつだし、取り立て免許で最初に運転したのもこいつだ。教習所の仮免路上で「お前取り直しか?初めてにしては余裕ぶっこきすぎ。もっと緊張感もて」と教官に言われた事があるが、何のことは無い、感性最も鋭い期間にずっとオヤジをナビしていたのだ。操作法は勿論、クルマの挙動はおのずと身につく。身についてそれは、自身がハンドルを握った瞬間、自分の体感データとして即座に利用開始される。
そして経年、「たまにドライブに行く4人家族」が、カムリの後継にカムリを再度買ったのは自然な流れと言って良かった。時あたかも1990年。バブル真っ最中の浮かれ気分そのままに豪華装備をデコられ、カローラの上位に置かれたカムリのコンセプトは「広々とした室内のファミリーサルーン」……我が家のクルマライフにそのものズバリであった。グレードZX、横置きFF4気筒2000ccDOHC4バルブ(ハイメカツインカム)、120馬力、4速AT。横置きエンジンと5ナンバー枠いっぱいのボディはゆったりした居住空間を提供してくれた。当時の日本車は「ある制限の枠内で目一杯の物作り」に関して非常に長けていたように思われる。車載で出始めだったCDプレーヤをおごり、クルーズコントロール(オートドライブ)にモノを言わせて高速道路をダラダラ転がる……カムリという存在の面目躍如だったのではなかろうか。ちなみに彼はクルコンで100キロを指定しておくと、1800rpm前後で燃費20キロ/リットルを叩きだした。流行りのエコカー()ではない。20年前のスペックである。
(Wikiより)
でも、自分の、カムリに対する、好感は、ここまで。
以後狂い咲きというか、絶滅前に巨大化したアンモナイトのような様相を呈して行く。エンジンをV6にしてフロントヘビーに過ぎたプロミネント、FFは室内空間の確保が目的のはずなのに横置きエンジンのまま4WDを追加、そしてついには5ナンバー枠をはみ出たボディに2000cc超のエンジンを載せてきた。
そうなるともう「単に図体のでかいクルマ」
確かに広さが欲しけりゃデカくすりゃいいのだが、5ナンバー枠には「一定レベルの取り回しの良さを確保する」という側面もあったはずなのだ。大きなクルマでハイウェイを淡々とぶっ飛ばす。それはアメリカンスタイルであって、狭い日本とは相容れない。しかし、果たしてトヨタはカムリをアメリカ向けにした。そして、アメリカにおけるベストセラーになった。
バブル弾けて高価なクルマが売れない今、トヨタのラインナップはパラダイムシフトを迎えている。エントリークラスにパッソやBbが加わる一方、従来エントリークラスの象徴だったカローラが上位車の位置づけになったのだ。他方でクラウンの位置づけに変化は無いので、カローラとクラウンの間……カムリのニッチがあやふや中途半端になる。しかも、現在その中間ニッチで幅を利かせているのは皆さんご存じのプリウスだ。
現在カムリはカローラ屋に行っても現車が置いてあることは少なく、カタログだけラックの隅っこにこっそり置いてある程度。このモデルチェンジがどこまで日本市場を意識しているか知らないが、
カローラ経年したとして、次ワンランク上に乗ろうとしても、自分は今のカムリを選ぼうとは思わない。
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