日輪の光環~星好き少年の遠い約束~
最初に図鑑で知った時から、その日付は記憶していた。
2012 05 21
俺はその頃42歳か。どこで何をしてるかな。
でも見るだろうな。
小学生であるから、不確定要素は数多あったはずである。だが「見るだろう」と確信的に「わかっている」のだ。「思っている」ではない、願望ではなく決定事項なのだ。逆に言うと「必ず見る」とオレは太陽に約束したのだ。
大人になったら、家族で見よう。
かのコペルニクスは生涯、水星を見ることが無かったと言われる。水星=常に太陽のそばにいる、わけで、見られる条件は限られる。逆に言うと、常に太陽のそばをちょこまかし、すぐ見えなくなるわけで、足の速い伝令神という存在はさもありなん、といえる。
比して自分は天体ショーに恵まれた部類かも知れぬ。百武彗星、1996年ヘールボップ彗星、そして2001年しし座流星群。新婚3か月で富士山に連れて行かれて寝袋で夜通し流星見てたという新妻も少ないのではないか。おい百武さん、天国から見てるかい?
2012年5月
30年を経た約束の地は、どうやら名古屋に定まった。千葉に比べると中心線から外れる分、リングはちょっと歪むことになるが、皆既じゃないのでそんなことどうでもいいのだ。太陽グラス、デジカメ用の遮光フィルタ、後は天気だけ祈り祈りて、布団に入った。
そして今日が来た。予報は決してよくなかった。だが、子供のころの確信は以て意識の中にあった。雲の動きに一喜一憂しながら、太陽グラスを手に、家族であっちこっち立ち歩いた。食事中にうろつくのも今日は許そう。娘は小4。大人になっても、記憶は残る。
一時、雲が日輪を隠しはしたが、しかし。
金環日食@名古屋(フィルタND400+ND8+ND8 F8 1/60 ISO50)
英語ではannular eclipseという。「annular」とは環状の意。確かに間違っちゃないが、金環とした方が語感は素敵だ。表現する言葉は人それぞれあろう。一生に1度か2度のチャンス。奇跡でも、感動でも、美しいでも、全て正しい。
俺は「かっこいい」という印象を持ち、その言葉をささげ、この地球にとって太古から永遠のパートナーたちに感謝したいと思う。重力のバランス、暦と潮の満ち欠け、その条件を必須で生まれたわれわれ地球生命。そしてこうした天空のイベント、全て彼らの位置と大きさが絶妙な位置関係にあるからなしたこと。そりゃ億兆の母数が存在する宇宙では一定の確率でこうした関係を持つ星の並びができようが、それが地球であったとは。
(準天頂衛星「みちびき」撮影(c)jaxa 無断転載転用禁止)
あなたが見た金色のリングは、あなたが確かに地球に住まい、太陽が月と綾なして地球に落とした影の中に、あなたが入った証。
大人になりこの金環は家族で見た。そして娘よ、2035年の皆既は、今度は君が君の家族と見るのだ
以降の金環・皆既日食
2030年6月1日 金環(北海道)
2035年9月2日 皆既(富山-長野-北関東)
2041年10月25日 金環(金沢-名古屋)
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