日本の空と雲
ブログのアクセスが多いなと思ったらオクラホマの竜巻に絡めて「Fスケール」の検索に来た方が多いのであった。簡単に書いておくと、Fスケールは日本の藤田博士がビューフォートスケール(32m/sまで)以上の風速表現のために開発したもので、最大はF12(340m/s=マッハ1)になっている。このうちのF0~F5までを被害状況と絡めた早見表が竜巻用Fスケール(修正藤田スケール。略号EF)である。ちなみに「F6」が幻扱いで毎度ささやかれるが、F5の被害状況が「何も残らない壊滅」なので、F6が実在したかどうか後から確認する術がないというのが実際のところである。
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さておく。
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今回の東北行で一つ再認識したのは「雲のできる位置が低い」ということだ。何?不快感を覚える物言いだ?まぁ待ってくれ。
雲は水滴の集合体で、水蒸気水滴に凝結する条件は気圧と温度が決める。当然、凝結する温度は緯度で変わり、高緯度=寒い地域になるほどその高度は低くなる。理科の教科書には「雷雲は積乱雲で高度1万2千メートル」とか書いてあるが、応じた条件を満たせばより低い高度でも積乱雲になる。日本海側で「雪起こし」と呼ばれる雷を伴う強い降雪が冬の入り端に観測されるが、これは寒い時期ゆえに生じたそのような条件の積乱雲である。稲光が走り、雷鳴がとどろき、でも雪が降る。関東以南ではピンと来ない光景だが、そういったわけで実際起こる。
ここで智恵子抄を引用する。
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智恵子は東京に空が無いといふ。
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間(あいだ)に在るのは、
切っても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出ている青い空が
智恵子のほんとうの空だといふ。
あどけない空の話である。
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「あどけない空」だが、これの解釈として東京は大気汚染が~と書くとだいたいマルをもらえる。が、上に書いた説明と「どんより~」のフレーズを絡めるとどうだろう。実際には智恵子は感じたままの違いとして「より、雲が近い」福島の空に好感を持っていたのではないか。
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戻る。
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さて毎度竜巻が起きると日本はどうよという話がいつも出てくる。Fスケールで言う限り、日本でF3と推定されるものが過去4回(千葉・豊橋・佐呂間・つくば)、以外はF2以下である。竜巻が巨大化するには応じた「均質な」空気を集める必要があり、上昇気流が相応の長い時間保持される必要があるが、山脈があるためそこまでの均質な気流は集まらない。国土構造上起こりにくいと一応は言える。しかし
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・F1:33 ~49m/s
屋根瓦が飛び、ガラス窓が割れる。ビニールハウスの被害甚大。根の弱い木は倒れ、強い木の幹が折れたりする。走っている自動車が横風を受けると、道から吹き落とされる。
・F2:50 ~69m/s
住家の屋根がはぎとられ、弱い非住家は倒壊する。大木が倒れたり、ねじ切られる。自動車が道から吹き飛ばされ、汽車が脱線することがある。
・F3:70 ~92m/s
壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車が持ち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半は折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。
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である。
人死にが出る点では何ら変わりない。
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